2020年2月23日

真菌、コレステロール、癌18

2020.2.23

誰だって死にたくない。それは人間に限らない。
生きようとする衝動は、すべての生物に共通するもので、細菌もその例外ではない。
抗生剤、スタチン、肉類・乳製品(飼育過程で大量の抗生剤を使うため残留している)などのカビ毒によって、生存に不利な環境になると、細菌は様々な変異を起こして、何とか生き抜こうとする。

たとえば、腸内に、いわゆる善玉菌がいる。
普段はビタミンや脂肪酸など、宿主にとって好ましい物質を産生してくれる味方だ。人間と腸内細菌、win-winの関係にあるわけだ。
しかしここに、カビ毒(mycotoxin)など、何らかの毒物が流入してきた。善玉菌は生存のために、やむなく変異し、いわゆる悪玉菌になる。

どのような変異を起こすかは、どのような毒物であるかによって異なる。
たとえば、ペニシリン。
そもそも抗生剤が菌だけを殺し人間には無害なのは(そんなことあり得ないけどね)、抗生剤が細菌と人間の違いに付け込むからだ。
たとえば細胞壁の有無。細菌には細胞壁があるが、人間にはない。
ペニシリンにはβラクタム環が含まれていて、これが細菌のPBP(ペニシリン結合タンパク)に結合し、細胞壁の合成を阻害する。これは医学部の細菌学の授業で必ず習う。
教授がこんなふうに説明していた。
「レンガを積み上げてせっせと壁を作っているときに、そこにレンガと”似て非なるもの”、たとえばレンガと同じサイズのチョコレートが来たらどうだ。
細菌はうっかり、そのチョコレートをレンガとして壁のなかに組み込んでしまう。そうすると、粗悪な細胞壁ができて、結果、細菌は正常な機能を保てなくなり、破綻するわけだ」
なるほど、うまい比喩だね。
では、このペニシリンに対して耐性を発揮する機序は?一般的には、βラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)という酵素の産生能を獲得することによる、とされている。
つまり、チョコレート(偽レンガ)が来たら、それを溶かす酵素を作るようになることで薬剤耐性菌になる、と。
なるほど、そういう機序もあるだろう。しかしCWDsに注目すれば、別の機序が見えてくる。

実はCWDs(細胞壁欠如細菌)は、細胞壁を持った普通の細菌から、シャーレの上で人工的に作ることができる。ペニシリンを少量注入して、培養してやればいい。
顕微鏡で観察すれば、”普通”の細菌が強固な細胞壁を脱ぎ捨て、アメーバ様の”皮膚”をそのままさらしながら生存している姿が確認できる。マイコプラズマそのものである。
抗生剤を除去してやると、再び細胞壁を身にまとう。抗生剤を入れると、また細胞壁を脱ぐ。その繰り返し。
細菌は非常に賢明である。ペニシリンの性質をすばやく見抜き、「細胞壁を持っていては生存に不利だ」と認識して、すぐに適応する。
この人工のCWDsは、特にL型CWDsと呼ばれている。このL型が、癌をはじめ様々な慢性疾患の発生に関与していることが、研究で明らかになっている。
CWDsにとって、細胞壁を脱ぎ捨てるメリットは、抗生剤による死を免れただけではない。白血球は、細菌の細胞壁上に発現しているタンパクを感知することによって、異物の認識を行っている。CWDsに細胞壁を脱がれてしまうと、白血球は裸の細胞膜のままで体内を移動するCWDsを認識できず、彼らに対して免疫能を発揮できない。

ウレアプラズマやマイコプラズマといったCWDsは、まるで小さな脂肪球(大きさはヒト細胞の100分の1ほど)のように見える。
実際、内部にコレステロールを蓄えており、細胞膜は脂質が豊富で柔らかく、すぐに形態を変える。
真菌のように毒素を産生するものもある。また、やはり真菌のように、エネルギーを他の生物細胞に依存しているため。あらゆるタイプの細胞に侵入して栄養分を奪う。
特にウレアプラズマは泌尿器・生殖器系に侵入するマイコプラズマであり、慢性的な膀胱炎に罹患している人は、まず、このCWDsにやられている。

ペニシリン系薬剤は細胞壁の合成阻害によって効果を発揮するが、別の作用機序の抗生剤もある。
たとえば、生存に必須なタンパク質や脂質(イソプレノイド)の合成阻害である。これらの攻撃に対して、CWDsはどのように対応するのか。
なんと、タンパク質や脂質を合成する遺伝子を放り出すのである。その代わりに、ヒト体内の細胞に侵入し、タンパク質や脂肪を盗む。
抗生剤を使い続ける限り、これらのCWDsは体内に潜み、人間から栄養分を奪い続ける。しかし抗生剤の投与をやめると、また細胞外に出てくる。
CWDs微生物に言葉があれば、このように言うだろう。
「抗生剤を魔法の薬とか言っているが、そんなもん、効いてませんから!残念!(←波田陽区風)
そういう攻撃を続けるようなら、死ぬのはむしろ、あなたのほうだよ」
この百年の間、人間は細菌と戦争し、真菌と領土争いを延々続けている。
カビ毒を使ったこの戦争を終わらせないのなら、終わりになるのは私たちの命かもしれない。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)

HPVワクチン

2020.2.23

今話題の岩田健太郎先生はワクチンの推進派なんだな。
『ワクチンは怖くない 』(光文社新書2017/1/17刊)など、ワクチンの積極的な接種を呼びかける著書も数多い。
そこらへんの素人ではなくて、感染症のプロが「ワクチンは大丈夫!」と太鼓判を押しているわけだから、一般の人は黙ってお説を拝聴するしかない。
プロを相手に「でもネットか何かで『ワクチンは危険だ』って読みました」と反論したところで、冷笑されるのがオチだろう。

上記著書を取り寄せ、読んでみた。
「どうせ製薬会社から金つかまされてるんでしょ」と思いながら読んだけど(今もその可能性はゼロではないと思うけど)、この先生は、HPVワクチンの子宮頚癌予防効果を始め、ワクチンの有効性を芯から信じているのだなと思った。
岩田先生の個人的なことは知らないけど、ご自身もきっとワクチンを打っておられるだろうし、子供がおられるなら、息子か娘かに関係なく、きっとHPVワクチンを始めたくさんのワクチンを打っていると思う(まさか世間一般にワクチンの有効性を説きながら、自分の大事な人には打たないなんて、あり得ないでしょう)。

人が何かを信じるその思いは、基本的には尊重したい。僕は特定の宗教はないけど、熱心に神様に祈る人は否定しないし、科学であれ何であれ、ある種の信念に基づいて行動する人は、美しいと思う。
ただ、同時に、弱者の視点も持ちたいとも思っている。
現実問題として、ワクチンの後遺症に悩む人はたくさんいる。ワクチン接種後後遺症の診断を受けた人はむしろ幸せなほうで、ワクチン接種と症状の因果関係を認めてもらえない(あるいは患者自身認識していない)人は、たくさんいる。
岩田先生は、ワクチンを積極的に打たないことによる「不作為」を糾弾しているけど、ワクチンによって健康被害を受けた人(なかには健康被害どころか、人生を失った人もいる)の存在をどのように思っているのだろう。
僕には岩田先生のような感染症のプロとしての経験はないけど、一臨床医として、上記の著書に反論したいと思った。
そういうときに、ネット上に以下のような記事を見つけた。
『HPVワクチン被害に関して(2018/6/18 )の岩田健太郎医師 @georgebest1969 への質問13とその帰結』
https://note.com/sawataishi/n/n2761cf272862
この記事を書いたのは、澤田石 順さんというお医者さん。
極めて的確な批判だと思った。この記事を見てしまったら、もう僕には新たに付け足すことなんてない。無理して書いても、澤田石先生の拙い模倣になってしまう。
だからここに、澤田石先生の岩田先生に対する質問状を引用させて頂こう。

「HPVワクチン について岩田医師 に昨日13の質問⇒結果、彼は私をブロック。彼とはメールのみの知り合いですが、信頼している私からすると意外でした。ブロックすることで何を守りたいのでしょうか。患者への責任だけは果たして欲しいと願います。

HPVワクチン について、私が心底から敬愛し尊敬する岩田先生に twitter でメンションしたことを以下にそのまま記します。
村中璃子こと中村理子という「自称」医師(医師免許を有することについて、幾度も幾度も証明をお願いしましたが、沈黙のみ)の言説はどうでもよいです。岩田先生は医者として人間として日本国民に珍しい自らと事実について真摯な人物。そんな岩田先生だからこそ、私は批判的な問いかけをしました。

質問1
HPVワクチン 接種後の患者の多くが 筋痛性脳脊髄炎 や 線維筋痛症 と共通する症状を有していることを知ってますか?
私は後二群の患者を数十人、HANS患者を4名、実際に診察し病歴を詳しく聴取し、それを根拠に問題提起してます。

質問2
HPVワクチン 接種後患者 HANS 筋痛性脳脊髄炎 線維筋痛症 の多くに共通する症状として痛み以外に筋力低下、筋力持続時間退縮、筋疲労からの回復遅延、光・音・臭いへの過敏があります。身体表現性障害/機能性身体障害という概念で説明できると考えてますか?

質問3
HPVワクチン 接種後患者 HANS と 筋痛性脳脊髄炎 線維筋痛症 患者の症状群は驚くほど共通してますが、身体の病気だと認めてくれる医者に出会うまで非常な苦労をすることも共通してます。あなたは HANS 患者を何人診察しましたか?

質問4
HPVワクチン 接種後患者 HANS と 筋痛性脳脊髄炎 線維筋痛症 に共通する苦境は1人1人に関して原因が確定できないこと、対症療法しかないこと、数年もほぼ終日臥床なのに身体障害者手帳を取得できない方が多いこと。ご存じでしょうか?

質問5
「僕はプロとして責任ある進言をしてます」と。「責任」あるなら、どうかこの質問にだけは回答して下さるようにお願い
HPVワクチン 接種後、5年以上経過しても日常生活に支障有りの頻度を何人に1人と推定していますか?

質問6
「僕はプロとして責任ある進言をしてます」と。ならば質問
HPVワクチン 接種後、5年以上経過しても日常生活に支障有りの頻度を私は0.5~2万人に1人と概算してます。先生は何人に1人ならば中央政府として積極的勧奨を再開するべきと考えますか?

質問7
「僕はプロとして責任ある進言をしてます」とのこと。私の元友人である久住/上君は先生と同様に実名で HPVワクチン 推奨を提唱してますが、両人は責任という重い言葉を用いたことは私の知る限りありません
責任の意味について解説をお願いします

質問8
HPVワクチン 接種後、5年以上経過しても日常生活に支障ありの方が0.5~2万人に1人が私の概算。 HANS 患者の中で 筋痛性脳脊髄炎 や 線維筋痛症 の診断基準を満たす方は「紛れ込み」と考えているのですか?それら二種の疾患は原因不明ですよ

質問9
先生は私より数年しか若くないのでEBMを重視し、同時に症例報告の大切さを知っていると思う
HPVワクチン 接種後五年以上経過しても日常生活に支障有りの患者さんの「原因」が同ワクチンか否かについては一例毎に検討するほかないと思いません?

質問10
HPVワクチン 接種後五年以上経過しても日常生活に支障有りの患者さんの「原因」が同ワクチンか否かについて確定する手法は存在しません。なので患者を診察した医師は蓋然性(高低)についてのみ言えます。確定できないから否定するのですか?

質問11
HPVワクチン 接種後五年以上経過しても日常生活に支障有りの患者さんが0.5~2万人に1人との概算が「妥当な数値」とは思いませんか?

質問12
「僕はプロとして責任ある進言をしてます」とのこと
HPVワクチン 接種後の有害事象がアジュバントによるとの仮説はご存じでしょう。対照をアジュバントでは無い明らかに無害な生理食塩水等を用いた大規模試験はありますか?

質問13
a)私は予防の原則と慎重の原則を遵守してますが、先生もそうですか
b)先生は HPVワクチン 接種を「責任」を持って推奨することが間違いと後日判明する恐れは抱いてないのですか
(私は二原則からして慎重意見ですが過ちの可能性は認識してます)」

いきなりこれだけたくさんの質問が来たら、うんざりしてしまって、無視を決め込む岩田先生の気持ちもわかる^^;
この質問の多さ自体が、ある種の攻撃だと感じられても仕方ない。
ただ、これらの質問に対する岩田先生の答えは、僕もぜひ聞いてみたい。
個人的には「この一つだけでも、答えて欲しい」となれば、質問13。
「科学の進歩によって、有益だと信じてやっていた医療行為が実は有害無益だった、と後で判明することはしばしばあるものですが、岩田先生、ワクチン接種にその可能性がないと、本当に断言できますか?」

あくまで一般論だけど、「プロ」を自称する人が、変に歪んだ結論と信念で医療行為に従事した場合、とんでもない規模で悲劇が拡散する可能性があると思うんだよね。
岩田先生のワクチンについての信念は、人々の健康に、本当に貢献しているのかな。