2020年1月

嫉妬

2020.1.31

マスコミが俳優の不倫で騒いでいるけど、まぁ、すごくどうでもいいニュースだね^^;
どのコメンテーターだったか、「東出昌大や唐田えりかを批判できるのは、妻の杏さんだけ」と言ってたけど、その通りだと思う。家族内のもめごとであって、世間が騒ぐことじゃない。
マスコミ(および世間)が東出氏を批判しまくった結果、東出氏はドラマやCMの仕事から完全に干されてしまった。今後の俳優人生がどうなるかさえ、危ぶまれている。
もし離婚するとなった場合、どうなるか?
不倫による離婚だから東出氏は多額の慰謝料を払うことになるだろうし、さらに、幼い子供が三人もいるということだから、養育費も相当な額になるだろう。そういう状態で、仕事が空っぽならどうなるか。慰謝料も養育費も払えない。そうなったら、困るのはむしろ杏さんだ。
マスコミが妙な正義感を振り回して、内輪のもめごとを好き放題にかき乱し、結果、誰も得していない。有名人って本当に気の毒だ’Д’
しかし、マスコミがこういう不倫騒動を大きく報道するのも、数字がとれるからなんだよね。誰も関心を示さないなら、さすがのマスコミも報じない。つまり、下劣なニュースの繁栄は、僕らの下劣な心の反映、ということかもしれない^^;

『”不倫罪”の女性を石打ちで殺害 アフガニスタン』
https://www.bbc.com/japanese/34718223
信じられない話だけど、女性の社会的地位がずいぶん向上したこの21世紀にも、不倫が文字通り、”命がけ”の国もある。つまり文化圏によっては、今回の一件で唐田さんは命を落としていた可能性さえある。恐ろしい話だね ゚Д゚
しかし、女性には理不尽に聞こえるかもしれないけど、不倫した男性側(東出氏)が殺されることは、どの文化圏においても、まずあり得ない(ただ、現在の東出氏を見ればわかるように、マスコミの力が荒れ狂って、社会的に”死に体”にまで追い込まれることはあり得る)。

一体、この男女差は何なのか?こういう論文がある。
『男性の性的嫉妬』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0162309582900279
Male sexual jealousy
「性的な嫉妬は、父性としての自信を守ろうとする機能であり、従って、男性心理の普遍的に見られる側面であると思われる。これには複数のエビデンスによる裏付けがある。
不倫に関する法律の各文化間の比較研究(および時代ごとの比較研究)のレビューによると、不倫に関する考え方が驚くほど共通している。つまり、それは「既婚女性が他の男と性的接触を持つことは罪であり、被害者はその夫である」という考えである。
デトロイトで起こった不倫が原因の殺人事件(1982年)のように、男性の性的な嫉妬こそが根本にあると我々は考えている。殺人事件の発生原因を各文化間で比較したレビューによると、男性の性的嫉妬を動機とする犯行はどこの文化にも普遍的に見出されるものである。”普通”の嫉妬を対象にした社会心理学的研究、”病的”な嫉妬を対象にした精神医学的研究、いずれの研究も、男性が抱く嫉妬と女性が抱く嫉妬は質的にまったく異なるものであり、研究者らの理論的予測と一致しなかったことを報告している。
男性が暴力を行使したり、あるいは暴力で威嚇したりして、女性の性的行動を強制的に拘束していることは、どの文化圏にも普遍的に見られる現象のようである。女性の性的自由が近親相姦の禁止則によってのみ制限されている社会もある、と唱える研究者もいるが、この主張は記述人種学(ethnography)と明らかに食い違っている」

なんだかんだで、男が文化(社会、法律、学問、芸術など)を作っているから、その産物であるたとえば法律には、男の欲望が反映されている。
それは、根本的には体の解剖学的違い(男性が産ませる性であり、女性が産む性である)に起因するものだから、仕方がないのかもしれないし、是正のために何らかのアファーマティブアクションが必要な場合もあるかもしれない。
しかし、嫉妬という人間に普遍的に見られる感情が、男女で全然質的に違うという指摘はおもしろい。

男の嫉妬、と聞けば、映画『アマデウス』が思い浮かぶ。
モーツァルト(ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト)の映画ということになっているけど、完全にサリエリ(モーツァルトと同時代に活躍した宮廷音楽家)の映画だと思った。
精神病院で晩年を過ごすサリエリのもとを、神父が訪れる。物語はサリエリの回顧を中心に展開する。
このサリエリ役の俳優(マーリー・エイブラハム)の演技がすごかった。サリエリのモーツァルトに対する”複雑な思い”が見事に表現されていたと思う。
女の尻を始終追いかけまわし、大便がどうのこうのと下品な言葉で大笑いし、賭けビリヤードに狂う遊び人。
しかしひとたびペンを持って五線譜に音符を書きつければ(それはものの5分とかからない)、譜面にあるのは途方もない美をたたえた天上の旋律で、そのことごとくが音楽史に残る傑作なのだった。
サリエリが数年の歳月、身悶えしながら書いた音楽よりも、モーツァルトがビリヤードのキューを持ちながら鼻歌交じりに書いた音楽のほうがはるかに美しいのだった。
天賦の才というものが歴然と存在するという、この残酷さ!
サリエリに与えられた才能は、ただ、モーツアルトのすごさがわかるという、その才能だけだった。
https://www.youtube.com/watch?v=-ciFTP_KRy4
「グラッチ」と神に祈りと感謝を捧げつつ、苦心して作った曲を、サリエリが皇帝に献上した。彼にとって、最も誇らしい瞬間である。
その曲を、モーツァルトが皇帝の面前で遠慮なくけなす。「単調だな。こうしたらもっとよくなるんじゃない?」とモーツァルトがアレンジすると、たちまち華やかな曲に生まれ変わる。
サリエリの当惑と屈辱が伝わってくるようだ。次にサリエリがつぶやく「グラッチェ」には、神への怒りがこもっているようだ。「なぜ私ではないのだ!なぜ、あんな下品な男に才能を分け与えたのか!」
しかしモーツァルトへの感情は、憎悪だけではない。
モーツァルトの曲の魅力を語るサリエリの様子は、彼の才能に対する賞賛と憧れを隠そうともしない。そういうときの彼は、「モーツァルトの偉大さを一番理解しているのは、この自分なのだ」と、誇りに思っているふしさえある。「私はね、彼を知らなかったことがない。私が育ったイタリアの片田舎にさえ、彼の名声は聞こえていた。14歳の私は、8歳にしてすでに皇帝や教皇の前で演奏を披露し11歳で交響曲を書き上げる神童がいることを知った。彼こそがまさしくアマデウス(”神に愛された子”)であり、私の崇拝する偶像だった」

しかしそういう具合に、モーツァルトの才能がわかるというそのこと自体が、彼への嫉妬をも掻き立て、ついにはモーツァルトを殺害するに至った。
そう、嫉妬は、人を殺す。
嫉妬は莫大なエネルギーを持つ感情だから、うまく使えば大きなパワーを与えてくれるに違いないんだけど、これを上手に使いこなすのは相当難しいようだね。

ところでこの映画でモーツァルト役を務めたトム・ハルスは、他にこれといったヒット作のない俳優なんだけど、同性愛者であることをカミングアウトしている。
男女のしがらみに関する嫉妬と完全に無縁な彼にとって、嫉妬という感情と無縁なモーツァルト役は、この上ないハマリ役だったんじゃないかな。

パニック障害と酸塩基平衡

2020.1.30

「体内の酸性化は万病のもと」という言葉は、パニック障害にも当てはまるようだ。
まずは、『パニック~その原因と治療』(“Panic: Origins, Insight, and Treatment” Leonard J.Scmidt著)の一節を紹介しよう。
「パニック発作は、ホルモンバランスの変化によって起こる。パニック発作が起こると、ホルモンによって心臓の調律リズムが影響を受けやすくなり、不愉快な動悸を生じる。
この調律リズムを落ち着ける簡単な方法がある。それは、重曹(炭酸水素ナトリウム、ベーキングソーダ)を使うことである。
小さじ4分の1ほどの重曹を水に混ぜて飲む。それだけである。
体のpHバランスが整い、洞房結節(心筋に電気信号を送っている)に対するホルモンの影響を打ち消すことができる。さらに、重曹によって、胃が神経節(十二指腸の裏側にあって、交感神経、副交感神経の切り替えに働く)を圧迫する力をゆるめ、結果、心臓の洞房結節に対してもリズムをゆるめる信号を送ることになる」(Larrian Gillespie博士)

パニック発作の原因は不明とされている。
ただ、疫学を見てみると、女性の発症率が男性よりも2倍以上高い(パニック障害に限らず、不安障害は全般的に女性の頻度が高い)。また、平均20〜30代の若年で発症するというデータがある。

若い女性に好発するということは、女性ホルモンが関与しているのでははないか、というのは当然の類推だとして、さらに、「ホルモンバランスの乱れの背景には酸塩基平衡の異常があり、その是正に重曹が有効だとはないか」というのが上記の文章のエッセンスだ。

パニック障害には酸塩基バランスの異常が影響しているというのは、今や多くの学者が指摘している。たとえばこんな論文。
『パニック障害における酸塩基平衡調節障害と化学感受性のメカニズム』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4471296/
パニック障害は、再発性のパニック発作を特徴とする複雑な不安障害であり、その発症機序はいまだに十分にはわかっていないが、本疾患に罹患する患者において、死亡率や自殺企図(および既遂)のリスクが有意に高いことが知られている。
しかし、近年、脳機能イメージング(neuroimaging)やパニック発作誘発テストを使った研究により、パニック現象の病因についての洞察が深まり、その発症の背景にある神経的機序が明らかになりつつある。
蓄積しているエビデンスによると、パニック発作の誘因として、アシドーシスの関与が示されている。パニック発作誘発テストにおいて、CO2の吸引や乳酸ナトリウムの注射といった酸塩基平衡を乱すような要因によって、パニック発作が誘発されることが明らかになった。
従って、血中pHがパニックに関連する恐怖、自律神経、呼吸反応に影響する化学感受性のメカニズムの解明こそが、パニック障害の病態生理の解明に直結している。
本稿において、我々は酸塩基のアンバランスや化学感受性のメカニズムがパニック障害に影響を与えていることを示す研究を供覧し、これらの発見が将来に持つ意味を議論していく」

ごく控えめにいっても、革命的な意味を持った論文、だと思う。
この論文がどうすごいのか、わかりますか?
精神科をやっていれば、”不安”を主訴に来院する患者は後を絶たない。会社のストレスとか、家族間の問題があるのなら、傾聴し相手の悩みに寄り添う精神療法が有効なときもあるだろう。でもほとんどの場合は、そうではない。患者は、対象のない、漠然とした、ぼんやりとした不安に苦しんでいる。こういう患者には、これまで抗不安薬を出すぐらいしか方法がなかった。
抗不安薬は十中八九ベンゾジアゼピン系で、これは事実上の”覚醒剤”だ。依存性と耐性があって、患者はこれなしで次第に生活できなくなる。もう薬をやめることはできない、つまり、延々精神科に通い続けるしかないのだから、精神科にとっては、正直、”固定資産”で、こういう患者がクリニック経営を支えている。こんな具合に、精神科医にとっては”蜜”だが、患者当人にとっては地獄である。
しかし、上記論文の内容「パニック障害は酸塩基平衡の乱れが原因であり、そのバランスを是正することで治癒可能である」という知識が一般化すればどうなるか?
不安やパニックを訴える患者に対しては、抗不安薬を処方するのではなく、まず、重曹の飲用を勧める。これだけで多くの患者が救われ、精神科に通う必要がなくなるだろう。新たなベンゾジアゼピン依存患者が生じなくなることは、精神科経営にとっては痛手かもしれない。しかし日本の精神科医療は、今よりはるかにすばらしいものになるはずだ。
そう、パニックに対する重曹の有効性は広く知られるようになれば、精神科の治療現場は一変するだろう。
上記の論文にはそれだけのインパクトがあると思う。

万病が酸性化した体液のせい起こるのなら、理屈上、体液をアルカリ性にするアプローチで万病が治ることになる。
しかし考えてみると、僕がこれまでブログで提唱してきた治療法の多くは、結果的にアルカリにするアプローチでもあったようなんだ。
たとえば、以前のブログで、ベンゾジアゼピンの離脱に液体のマグネシウムやケイ素をお勧めしたことがあるけど、ああいうのも要するに、体液をアルカリ化するアプローチなんだよね。
ビワの種(アミグダリン)が癌に効く、という以前のブログも同じ意味合いで、アミグダリンは体液をアルカリにしてくれるから、癌体質(酸性)を是正してくれるわけだ。

しかし、一般の医者はもちろん、患者当人だって、まさか、そこらへんの掃除に使うような重曹飲んで万病が治るなんて、信じてくれないだろうなぁ^^;

犬の話2

2020.1.30

犬の話をした前回の続き、というわけでもないけど、犬を飼っているおかげで罹患率の低下する病気がいくつかある。たとえばこんな論文。
『幼少期におけるペット(犬、猫)への曝露と、統合失調症あるいは双極性障害の発症リスク』
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0225320

「統合失調症や双極性障害などの重篤な精神障害は、人生の早い段階での環境曝露との関連性が指摘されている。たとえば犬や猫などの家庭内ペットとの接触は、幼少期における環境曝露の一要因である。
出生後から12歳までに犬か猫を家で飼っていたことと、後年統合失調症(あるいは双極性障害)の診断を受けることとの間に相関があるかどうかを調べた。これは、396人の統合失調症患者と381人の双極性障害患者、594人の対照群を使ったコホート研究である。
結果、幼少期に犬への曝露があることは、後年統合失調症の診断を受ける可能性が有意に減少した(ハザード比0.75)。さらに、出生直後および生後一年以内に犬に曝露していると、統合失調症の相対リスクが有意に減少していた。
犬への曝露と双極性障害の間には有意な相関は見出されなかった。また、猫への曝露は、後年、統合失調症、双極性障害、いずれの罹患リスクとも有意な相関がなかった。」

犬にはわかりやすいメリット(統合失調症の罹患率低下)があって、猫には特にそういうメリットがないという。
何かいかにも、犬らしい結果だし、猫らしい結果だと思う^^
でも猫好きにとっては、そういうメリットのあるなしは当然関係なくて、ただもう、かわいいから飼っている。僕も実家で猫を飼っているけど、飼い始めたのは僕が高校生のときからだから、幼少期の曝露、という意味では関係なさそうだ。

猫もときどき、飼い主への親愛の情として顔を舐めてくれたりするけど、頻度としては犬と全然比較にならない。
犬はもう、舐めまくってくるからね^^;ああいうのが、結果的に飼い主家族の健康にものすごく大きなメリットになっている。特に恩恵を受けるのは、腸内細菌叢(つまり免疫系)が形成期にある小さい子供だ。

幼少期から犬を飼っている人のアレルギー発症率が低いことは多くの研究が示している。たとえばこんな論文。
『幼少期のペット飼育が用量依存性にアレルギーのリスクを減少させる』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30566481
「幼少期のペット飼育によって、後年のアレルギー発症から幼児を守る、と示唆する研究は複数ある。そこで我々は、その関係性(生後一年以内の猫と犬の飼育と、後年のアレルギー発症)が用量依存性であるかどうかを調べた。
【結果】用量依存性の関係が見られた。つまり、生後一年以内の時点で、家庭内で飼っている犬や猫の数が多ければ多いほど、各種アレルギー症状(ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎)が少なかった。
アレルギーの罹患率はペットを飼っていない人では49%だったのに対し、5匹以上飼っている人では0%だった(P=0.006)。
【結論】7〜9歳の児童におけるアレルギー疾患の罹患率は、生後一年以内の時点で家庭内で飼っていたペットの数に応じて、用量依存性に減少している。これは、猫や犬がアレルギーの発症に対して予防的に作用する”ミニ農場”効果(“mini-farm”effect)を示しているものと考えられる」

清潔志向の行き過ぎが、現代におけるアレルギー患者の大群を作り出した。
病気の予防に対してするべきことは、消毒しまくることでもなく、ファブリーズを撒きまくることでもない。犬や猫を飼って、むしろテキトーに不潔にしておくことなんだ。
安保徹先生が言ってた。「トイレで用を済ませても手を洗わないこと。まず、そこからです」と。
普通の医者にはなかなかできないアドバイスだなぁ^^;

犬の話

2020.1.30

読んでて何か、妙に胸が温まる感じがしたので、翻訳してみなさんにも紹介しよう。


『毎日一人でバスに乗って公園まで行き、遊び、それからバスに乗ってまた帰ってくる犬』
https://www.irishpost.com/news/dog-rides-bus-every-day-play-local-park-takes-bus-home-178196?fbclid=IwAR1i2hJnXbSM_LW5LLUApX_CMHtvNRpRzNX3wBgrJ0l4vyPrOGFsd8JnEiU

「みなさんに小さいお子さんがおられるなら、子供を一人でバスに乗せるなんて、とてもできない、と思いますか?もしそうなら、このワンちゃんをご覧なさい。
エクリプスちゃんです。

ラブラドールとマスチフのミックスで、なんと、公園まで自分一人でバスに乗って遊びに行くのです!人間の助けが要らないんですね。

ワシントン州シアトルに家があって、家の近くのバス停でバスに乗って、行きつけの公園で降りて、そこでおなじみの友達(犬ですよ)となんやかんやと何時間か遊ぶ。
それで、またバスに乗る。首輪にバスチケットをくっつけてて、そのチケットを使ってバス賃を払い、それで家に戻る。家で夕ご飯を食べて、エクリプスちゃんの一日は終わり。

このエクリプスちゃん、一体どんなふうにして、一人でバスに乗るようになったと思いますか。
ある日、公園に遊びに行こうと、飼い主のジェフさんとバスに乗ろうとしていたときのこと。エクリプスちゃんは公園に行くのが楽しみで、ものすごくワクワクしていた。でも、バスがすでに来て停車しているのに、ジェフさん、タバコを吸っていて、その一服が終わるまではバスに乗ろうとしない。退屈で待ちきれなかったエクリプスちゃんは、なんと、停車しているバスにさっと飛び乗って、そのままジェフさんが気付かないうちにバスが発車してしまった。

幸いバスの運転手はエクリプスちゃんのことを知っていて、この”果敢な旅行者”をガッカリさせたくなかったから、いつもの公園のところで降ろしてあげた。ジェフさんが追いつくより前に。

ジェフさん、「あれ、この子、全然一人でバスに乗って行けるんじゃね?」って気付いたんだな。何度かそういう具合に一人で公園に行かせてみた。何も問題ない。首元にバスの乗車券をつけておけば、ちゃんとその意味がわかってて、数時間後にはちゃんと家に帰ってくる。エクリプスちゃん、ジェフさんの思った以上に頭がよかったんだ。

エクリプスちゃん自身、この毎日の一人旅を大いに楽しんでいるようなんだ。
しかし最も大きいのは、バスのお客さんへの影響だった。いつもバスに乗る人は、エクリプスちゃんのことを知るようになった。
いつもの場所でバスに乗って、いつもの場所でバスを降り、何時間か遊んで、またバスに乗って家に帰るワンちゃんと、同じバスに乗り合わせれば、みなさん、どんなふうに思いますか?
何だかニッコリしてしまいますよね。

そう、エクリプスちゃんはみんなを笑顔にする。エクリプスちゃんの毎日の旅を紹介するフェイスブックの投稿は、30万もシェアされた。」

アメリカという国は問題も多いけど、こういう、いい話も多いな。
日本ではこういう話は生まれにくいと思う。
「公共交通機関に犬が侵入しているわけで、こんな話は美談でも何でもない。犬が苦手な人への配慮を怠っているバス会社の責任はどうなるのか?」
「飼い主のネグレクトであり、ある種の動物虐待だろう。飼い主の責任が追及されるべきではないか?」
「公共交通機関は動物のために運行しているのではない。この一匹だけがバス停にいた場合、運転手はどう対応すべきか。動物を乗せるためにわざわざ立ち止まるというのは、人間のための交通機関というそもそもの趣旨に反しているし、犬への配慮という、運転手に過剰な負担を強いるものではないか?また、盲導犬のように特別なトレーニングを受けているならまだしも、ただの一介の大型犬である。そこらへんに小便を引っかけないとも限らない。衛生的にどうなのか」
みたいな未熟な正論をいうアホがうじゃうじゃわいてきて、いい話の芽も何もかもつぶして、ますます笑顔のない日本になっていくっていうね^^;

もし僕がエクリプスちゃんが乗る路線のバスの運転手だったら、乗せたり降ろしたりのために停車することは、余計な労働どころか、むしろうれしいんじゃないかな。他のお客さんが笑顔になってくれる”お犬様”なんだよ^^?こういう負担なら、喜んで引き受けたい。

こういう話を読むと、ますます犬が飼いたくなるなぁ。

コロナウイルス対策2

2020.1.29

コロナウイルス対策として、ティーツリーオイルが有効、というのをネット上で見かけた。
ティーツリーオイルはその抗菌力で有名で、以前のブログで、歯周病に有効なエッセンシャルオイルのひとつとして紹介したことがある。

基本的に、ウイルスと細菌は別物である。
どちらも病原微生物という点では共通している(そもそもウイルスは「生物」なのか、という問題は置くとして)。
しかし、サイズが全然違う。ウイルスはナノ(10の-9乗)レベル、細菌はマイクロ(10の-6乗)レベルの世界に住んでいる。ざっと、千倍違う。
身長が1メートルの人間はあり得ても、1000メートルの人間はあり得ない。サイズが千倍違うのだから、生物としての特性、繁殖機構、病原性の発症機転なども違うはず、というのが自然な推論である。
ところが一般の病院では、単なる風邪(ライノウイルスなどによる感染症)に対して抗生剤を使う医者がたくさんいる。抗生剤は、細菌に対して殺菌作用なり静菌作用なりがあり得ても、ウイルスに対しては効果がない。
効果がないどころか、抗生剤によって腸内細菌が壊滅的な打撃を受け、体調を一層くずすことになるだろう。患者は、風邪の病勢が悪化したのだと考える。まさか、医者からもらった薬のせいで体調が悪化したとは思わない。実に、無知は幸せである。こんなデタラメを知ってしまったら、医者に腹が立って、心穏やかではいられないだろうから^^;

こんな具合に、細菌とウイルスは別物だから、ティーツリーオイルがウイルスにも効くという情報を見たときに、意外な感じがしたんだな。本当に根拠があるのかな、と思い、論文を調べてみた。
『メラレウカ・アルテニフォリア(ティーツリー)オイルのインフルエンザウイルス(A/PR/8型)に対する活性~その作用機序の研究』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166354210008120
「我々の以前の研究で、メラレウカ・アルテニフォリア(ティーツリー)オイルには、MDCK細胞内のインフルエンザA型に対して抗ウイルス活性があることを示した(MDCK細胞というのは、イヌの腎臓からとった細胞で、こういう研究でよく用いられる)。
具体的には、ティーツリーオイル(およびその構成成分)は、細胞毒性を持つ用量よりも少ない用量の投与で、インフルエンザウイルスの増殖・複製を抑制する効果があることを、我々は確認した。成分としては、テルピン4オール、テルピノレン、アルファ・テルピネオールが主要な活性成分であった。
本研究の目的は、MDCK細胞内でインフルエンザウイルス(A/PR/8型)H1N1型に対してティーツリーオイル(およびその成分)が、どのような作用機序で効果を発揮しているのかを調べることである。
【結果】どの成分にも、殺ウイルス活性やMDCK細胞の保護作用は見られなかった。ウイルス複製のどの段階にティーツリーオイルおよびその活性成分が効いているのかを調べるために、細胞にウイルスを感染させて以後様々な時間差をおいてからティーツリーオイルを投与した。すると、ウイルス複製が最も抑制されるのは、感染から2時間以内にティーツリーオイルが投与された場合であることがわかった。これは、ティーツリーオイルが、インフルエンザウイルスの複製サイクルの初期の段階に作用することで効果を発揮していることを示している。
ティーツリーオイルは、ウイルスのノイラミニダーゼ活性を抑制しているわけではなかった。このことは、4メチルウンベリフェロン(蛍光性基質の 2′-O-(4-メチルウンベリフェリル-N-アセチルノイラミン酸からウイルスのノイラミニダーゼによって切り出される)の量を測定することで示された。
細胞内リソソームの酸化に対してティーツリーオイルが及ぼす効果を、アクリジン・オレンジを使った生体染色で調べた。比較として、バフィロマイシンA1(マクロライド系抗菌薬)を使う対照群を設けた。
染色する前に、細胞を0.01%ティーツリーオイルで37℃で4時間処置すると、酸性の細胞質小胞にアクリジン・オレンジが蓄積するのが抑制された。これは、リソソームの酸化に干渉することでウイルスの脱殻が抑制されたことを示している」

ちょっと難しい内容だけど、要するに、「ティーツリーオイルはウイルスにも効く」ということです。
もう少し言葉を足すと、ティーツリーオイルは、ウイルス感染の初期段階(ウイルスが細胞内に寄生してどんどん増殖していく段階)に作用して、ウイルスの脱殻を防ぐことで増殖を抑制する、ということだ。
この研究で効果が示されたのは、あくまでインフルエンザウイルス(A/PR/8型)H1N1型に対してであって、他のウイルスに効くかどうかは不明だけども、ウイルスの増殖機構は基本的に共通しているから、一応の効果は期待できると思う。

では、さらに具体的に、ティーツリーオイルをどのように利用すればいいのだろう?
飲む、というのは、さすがにワイルドすぎると思う^^;「薬は毒で、毒は薬」。体にいいものも、大量投与ではかえって毒性が出たりするものだ。
マスクに何滴かつけるだけで、気道粘膜に侵入するウイルスに効果があるだろう。

また、これは当院でやっていることだけど、こんな具合にアロマディフューザーにティーツリーオイルを何滴か入れて拡散させる、という方法でも、いい感じに呼吸器を保護してくれるだろう。

コロナウイルスによるパンデミックは、これまでに前例がない。でも、前例がないからなす術がないかといったら、全然そんなことはない。医者に頼らず自分でやれることは何かとあるから、予防のためにやっておくといいよ。