2020年2月13日

真菌、コレステロール、癌8

2020.2.13

マイコトキシコーシス(mycotoxicosis;真菌中毒症)という言葉は医学部ではほとんど習わなくて、むしろ獣医のほうがこの病気について詳しい。
獣医学科では真菌中毒症の診断と治療について、1セメスターかけてみっちり勉強している。動物が罹患する病気にはカビ毒由来のことが多いから、獣医としてやっていく上で必須の知識なんだ。

一方、医者は真菌中毒症についてほとんど知らない。抗生剤やスタチンがカビ毒から作られていることも知らない。もちろん「最初の抗生剤ペニシリンがアオカビから作られた」ということは、医学史としては知っている(国家試験に出たりするので^^;)。しかし臨床現場で抗生剤を処方するとして、「自分はカビ毒を投与している」という意識のある人はまずいない。
コレステロールの高い患者にスタチンを長期間投与して、「コレステロールは下がってきましたが、血糖値が上がってきましたね。糖尿病です。糖尿病のお薬も始めましょう」という医者は、自分が薬害(薬剤性真菌中毒症)を垂れ流していることに気付いていない。
逆に、コレステロールの低い人に対して、「何か薬飲んでいませんか?抗生剤とか」と疑ったり、住環境や食習慣におけるカビ曝露がないかを疑うことも大事だ。

『海綿由来真菌ペニシリウム・クリソゲナムE01-10/3のポリケチド産生に関する遺伝的ポテンシャルの分析』
http://hss.ulb.uni-bonn.de/2011/2454/2454.pdf
255ページにわたる大論文がpdfの形で丸々アップされている。この論文の一節『Fungal mycotoxin』(14ページ)にカビ毒の何たるかがよくまとまっているので、紹介しよう。
「カビ毒(マイコトキシン)は、糸状真菌の二次代謝産物として産生される低分子量の天然物質である。これらの代謝物は化学的に構成は異なるが、共通するのは、どれも毒性を持っていることである。
そもそもカビ毒の定義は、『糸状真菌により産生され、脊椎動物(およびその他の動物群)に対して極めて低濃度(マイクログラム単位)で毒性を発揮する』ことである。
これらの真菌代謝物が食品中に存在するときには、急性症状(たとえば肝機能や腎機能の悪化)として、あるいは慢性症状(たとえば肝臓癌)として毒性を生じる。
突然変異原性や催奇形性があるため、真菌代謝物への曝露によって、皮疹、免疫抑制、先天性奇形、神経毒性、死といった症状を起こす。
二次代謝産物のうち、特にスタチン系は3ヒドロキシ-3メチルグルタリル-コエンザイムAリダクターゼ(ヒトにおけるコレステロール産生の中心酵素)を強力に抑制する」

麦角菌(Claviceps purpurea)もカビ毒のひとつである。これは、ライ麦、小麦、大麦に寄生する真菌で、中世ヨーロッパで猛威を振るった。
麦角中毒(ergotism)にかかると、神経系には手足の燃えるような灼熱感、循環器系には血管収縮を引き起こす。脳の血流が低下することで、精神異常やけいれんが起こることもある。妊婦では子宮血流が低下して流産を起こす。
『毒は薬で、薬は毒』である。子だくさんで、もうこれ以上生まれては困る貧困女性が堕胎のために麦角(ergot)を飲むことは古くから行われてきたし、出産後の止血に用いられたこともあった。麦角菌の成分を利用した頭痛薬エルゴタミン(ergotamine)は現在でも使われている。幻覚剤のLSDは麦角成分のリゼルグ酸の誘導体である。

頭痛持ちの人にはエルゴタミンはなじみの薬だろう。しかし、薬の危険性をきちんと理解している人は少ない。そもそも医者自身、エルゴタミンがカビ毒から作った薬であることを知らないし、この薬が血管疾患を引き起こすことを知らない。頭痛持ちの人はそうでない人と比べて脳卒中と心筋梗塞のリスクが3倍高いという統計があるが、医者はこれを頭痛が原因だと考える。薬のせいで発症リスクが上がっているとは考えない。
真菌中毒症という疾患概念自体が頭にないし、自分の処方している薬がカビ毒だと知らないわけだから、薬剤性真菌中毒症という診断なんて、到底下せない。


この図をご覧あれ。
左側半分は有名な”セントラルドグマ”。高校で生物を履修した人は習っただろう。遺伝情報DNAがRNAポリメラーゼによって転写されてメッセンジャーRNAができて、転写されたRNAがリボソームに結合して翻訳されて、タンパク質が合成されるという、原核生物から真核生物まで、すべての生命体が共通する根本原理だ。
右側半分が、この図の真骨頂。どのカビ毒がどの代謝プロセスに干渉するか、を表している。

リダクターゼなどの酵素は、核内にある遺伝情報(DNAやRNA)から作られて、三大栄養素(脂肪、タンパク質、炭水化物)の代謝をコントロールしているが、カビ毒はDNAやRNAの機能を破綻させ、三大栄養素の代謝を狂わせる。たとえば具体的には、脂質代謝が停止して、コレステロール産生がストップする。
要するに、カビ毒の作用は、細胞の変性(degeneration)、分解(decomposition)、腐敗(decay)である。

カビ毒に曝露しないために、どのように気をつければいいだろうか。それにはまず、カビ毒の拡散経路を知っておくことである。
人類が真菌中毒症に罹患するようになったのは、穀物食が一般化して以降のことである。穀物(ナッツも含めて)は栽培、収穫、保存のどの段階においても、カビ毒に汚染する可能性がある。環境中にどれくらいカビがいるか、昆虫がいるかどうか、また、温度や湿度もカビ毒汚染を左右する条件である。傷がついていたんでいる穀物や、暑くて湿度が高く風通しの悪いサイロで保存した穀物は、カビが生えやすい。

肉や乳製品がカビ毒に汚染されているのは、これらを産する肉牛、乳牛自身がカビ毒を含む穀物を食べているためである。
獣医は職業上、家畜用穀物にカビ毒がしばしば混入していることを知っているし、家畜に日常的に真菌中毒症の診断を下しているものである。

カビ毒→カビ毒に汚染された穀物→カビ毒に汚染された穀物を食べた家畜=カビ毒に汚染された家畜

つまり、人がカビ毒に曝露する経路としては、空気中からのカビ毒の直接曝露はもちろん、カビ毒由来の薬、カビ毒に汚染された食物(穀物、ナッツ、畜肉、乳製品)があり得る。
得体の知れない産地の妙に安い食材を見れば、飛びつくのではなく、「本当に大丈夫?」とひとまず疑う姿勢が大事だ。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)

真菌、コレステロール、癌7

2020.2.13

スタチンの投与によって、ヒトを含めた動物には様々な症状が生じる。
真菌は進化のなかで、いかにして有機物を破壊し自らの養分とするか、を追求してきた。そうして獲得した方法が、各種のマイコトキシン(カビ毒)である。
1960年にアフラトキシンが発見されて以来、現在およそ400種類ものカビ毒が同定されているが、その数は毎年増えている。
カビ毒の研究が進む背景には、科学者の純粋な好奇心ももちろんあるだろう。しかしそれよりはるかに大きいのは、製薬会社の経済的野心である。抗生剤、免疫抑制剤、コレステロール降下薬など、カビ毒の研究から多くのブロックバスター(ボロ儲けできる薬)が生まれた。つまり製薬会社にとって、カビ毒は宝の山である。ここに多額の研究予算をつぎ込むのは、当然それ相応のリターンを見込んでのことである。

しかしカビ毒の研究から、細胞の代謝機構について多くの貴重な知見が得られたことも事実である。
スタチンが細胞の癌化を促進することについては以前のブログで書いた。しかしそれ以外にも、様々な疾患を引き起こす。列挙すると、
ALS(筋萎縮性側索硬化症)、SLE(エリテマトーデス)、多発性硬化症、ギランバレー症候群、各種筋疾患(筋ジストロフィー、重症筋無力症など)、糖尿病、慢性疲労症候群などである。
これらの疾患のなかには、発症メカニズムが不明で難病指定されているものもある。
しかしスタチンによって、これらの疾患に意図的に罹患させることができるとすれば、どうなるか?
1.モデル動物の作成が可能となり、様々な研究が進展する。
2.病態の発症機序の解明によって、治療や予防のために有用な知見が生まれる。
3.生物兵器にも応用可能である。
(3.は実際に行われているのですが、えぐい話なのでここでは触れません^^;)

問題は、スタチン研究によって得られた重要な知識が、薬の開発に応用されているだけで、実臨床にまったく生かされていないことである。
このあたりから、製薬会社の本質が透けて見えるだろう。人類の健康福祉なんてどうでもいい。コレステロールの高い健康な人は、むしろ彼らの”資産”である。カビ毒を利用する彼らの存在自体が、まるで社会をむしばむカビのようになっているのは、興味深い相似形である。

以前のブログで、HPVワクチン接種を受けた女性が診断された病名を列挙したが、上記、スタチンによって起こる疾患とずいぶん似ていると思いませんか。
ワクチンに含まれるアジュバントが免疫系を低下させ、結果、カビ毒の影響を受けやすくなったのではないか、というのがすぐ思いつく仮説だけど、それだけかな。
ガーダシルにしてサーバリックスにしても、人への安全性が確認されていなかった。安全性が未確認のものを定期接種に昇格させるなんて、厚労省の役人にも一応の良心があるはずで、普通はあり得ない事態でしょ。それでも、こんなデタラメが通ったというのは、よほどの”大きな圧力”があった、と考えないといけない。メルクやグラクソ・スミスクラインは民間の製薬会社ではあるけど、巨大グローバル企業で政府とのつながりも太い。
日本は、”仕掛けられた”んじゃないかな。子宮頸癌予防、という反対しようのない大義のもと、微量のカビ毒を混入させたワクチンの接種を義務付け、日本人女性の不妊化計画を飲まされた。
というのは、あくまで僕の妄想です^^;

ただ、この一件に限らず様々な経済分野で、グローバル企業のデタラメな要求に対して日本はもはやノーと言うことができなくなっている。国が、自国民を守れないんだから、もう終わりだよね^^;
あれだけの被害をもたらしたHPVワクチンも、再び定期接種へ昇格するために着々と動きが進んでいて、早晩そうなるだろう。
それでも、それでもなお、抵抗したい。
「あきらめたらそこで試合終了ですよ」と誰かが言っていた。あきらめるのではなく、知識で武装することを、僕は提言したい。
以前のブログで柳澤先生の論文を紹介したが、ワクチン接種の副作用に対して、事後的にであれ、各種ビタミンの静注や経口投与が有効だったということは、事前に服用しておけば相当な副作用の軽減が見込めるだろう。
自分の娘が、学校の強制のもとHPVワクチンを受けるとなれば、事前に”体作り”をさせておくことだ。接種の1週間前からは大好きなお菓子をやめさせ、サプリを飲ましておく。それだけで、副作用が出現するリスクは格段に減るだろう。
そう、サプリは使い方を誤れば”代替療法原病”の原因になり得るとしても、それでも、オーソモレキュラー栄養療法は困ったときの味方になってくれる。国が守ってくれないんだから、我が身は自分で守るしかない。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)

真菌、コレステロール、癌6

2020.2.13

以前のブログに書いたように、スタチンを抗癌剤として利用できるのではないか、と考えて、研究が行われていたことがある。
一体どのような機序によってか?
「スタチンは細胞周期を停止させる。ということは、リダクターゼをブロックするスタチン(およびその他のカビ毒)を使えば、癌細胞の増殖も防ぐことができるのではないか」
この考え方に基づいて実験を行うと、実際確かに、癌細胞の増殖を止めることができた。ただし、ごく一時的に。
実験期間を長くすると、スタチンの投与によって、細胞はますます多くのリダクターゼを産生するようになり、Rasタンパクが阻害され、細胞周期が狂い始める。
現在流通しているスタチンは可逆性があり、citrinin(遠藤先生が研究していたカビ毒)やcerivastatin(バイエル社から販売されたスタチン)ほどの強い毒性がないため、癌を発症するまでには年単位の時間がかかる可能性がある。このあたりは、アフラトキシンの毒性が数週間で出るのと対照的である。
短期間の研究だけを見れば、スタチンは見かけ上、癌細胞の細胞周期をブロックしている。一見癌に効くように思えるが、それは全体像とは言えない。
短期的にではなく、本当の意味でリダクターゼを減少させるのは、植物性イソプレノイドである。

『イソプレノイドを介したメバロン酸合成の抑制~癌に適応できる可能性』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10460692
要約部分をざっと訳してみよう。
「植物性メバロン酸代謝物のイソプレノイド終末産物は、3-ヒドロキシ3-メチルグルタリルコエンザイムA(HMG CoA)リダクターゼの活性を抑制する作用がある。この作用は、HMG CoAリダクターゼによるmRNA転写とHMG CoAリダクターゼのタンパク分解を調整している。そのような転写後作用は、直接的には非環式イソプレノイドによって、間接的には環式イソプレノイドによって、活性化される。
イソプレノイドは、ステロイド産生の支配的転写エフェクターに二次的に作用して、コレステロールを軽度に低下させる。ただしその作用が現れるのは、食事由来のコレステロールが豊富にあることによって、コレステロール産生が抑制されていないときだけである。腫瘍増殖に関連した異常(ステロールのフィードバックに対して抵抗性のあるHMG CoAリダクターゼの活性化)によって、ステロール産生経路の中間産物が蓄積する。そうした中間代謝物が、成長ホルモン受容体、核内ラミンA、B、発癌性rasが膜に接着したり、生物活性を持ったりするための脂溶性アンカーとなる。腫瘍のHMG CoAリダクターゼは、イソプレノイドによって仲介される二次的調整に対して、感受性は高いままである。
植物由来のイソプレノイドによってメバロン酸経路を抑制すると、rasやラミンBのプロセシングが減少し、細胞がG1期で停止し、アポトーシス(細胞死)が始まる。この腫瘍特異的感受性をうまく使えば、イソプレノイドを癌治療に利用することも可能である。スタチンの作用に似ているようでありながら、副作用がまったくないのである。一般的な食事から摂取できる程度の量で検証しても、イソプレノイドの単剤投与ではコレステロール合成や腫瘍増殖に対して、まったく作用しない。しかし、イソプレノイドを介した活性は相加的であり、ときには相乗的である。植物を豊富に含む食事では癌リスクが低いことが分かっている。この理由は、植物体を構成する23000とも推定されるイソプレノイドの組み合わせや、他のフィトケミカルとの相乗作用によって、説明できるかもしれない。ただし癌リスクは、食事(果物や野菜、穀物)の代わりにサプリ(つまり、食物繊維、βカロテン、ビタミンC、E、葉酸のサプリ)を摂っても、低下しない。」

重要なのは要約の後半部分。
イソプレノイドには癌の抑制効果があるが、一種類のイソプレノイドだけを投与しても、食事から摂取できる程度の量では、癌には無効だった。たとえばコエンザイムQ10(イソプレノイドの一種)のサプリは、癌の予防の一助にはなっても、恐らく癌の治療には効かないだろう。
以前のブログで内海聡先生の”精製物質毒”の話を紹介したが、結局サプリメントは天然の野菜のパワーにはかなわない、ということかもしれない。

野菜の摂取量が多いほど癌の発症リスクが低いという研究は無数にあるから、今さら論文を紹介するまでもないだろう。逆に、肉の摂取量が多いほど癌の発症リスクが高いという研究も多いが、近年日本では高タンパク(肉食励行)がブームで、癌の増加にますます拍車がかかるのではないかと心配だ(個人的には、肉が悪いというよりは、粗悪な畜肉が癌の原因だと思っている)。
植物性イソプレノイドの大量摂取によって癌が治癒可能であるということは、野菜ジュースの積極的摂取を勧めるゲルソン療法がやっぱり正しかった、ということだろう。ゲルソン療法についてはまた改めて紹介したい。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)