院長ブログ

ナイアシン

2019.1.15

「先生、ナイアシンを飲み始めて2週間ほど経つんですけど、いい感じです。
冬のこの時期、毎年決まって、膝のこのあたりがカサカサになるんですけど、今、それがないんです。特に保湿しているわけでもないのに、潤ってます。
あと、私、夜寝ているときにトイレに起きちゃうんですけど、ナイアシンを飲み始めてから、それがなくなりました。
ナイアシンは睡眠の質を高めてくれる、って先生が言ってたから、そのおかげかな、って思います。確かに眠りの質もよくなりました。
あと、肩こりも何だか楽になりました」
連休明けの勤務。事務員から開口一番、このような喜びの声をもらった。
彼女は別段持病があるというわけでもないんだけど、ここで働くようになってからナイアシンのことを知り、試しに自分でも飲み始めてみたのだ。
文献から知識を得ることも大事だが、何よりも、こういうナマの声に接することが一番参考になる。
1日どれくらいの量を飲んでいるの?
「ソラレー社のナイアシン100㎎を1日3回です。
でね、先生、私、興味を持っていろいろインターネットでナイアシンのことを調べてみたら、怖い記述も見つけちゃって。
ナイアシンは肝臓によくない、っていうのを読んだんだけど、どうでしょうか。
私としてはお肌がきれいになったし、睡眠もよくなったから、続けたいと思っているんですけど」

そう、確かに、ナイアシンによって肝数値(AST、ALT)が軽度上昇することは普通に起こり得る。
しかし結論から言って、この軽度上昇を恐れてナイアシンを忌避するとすれば、それはまったくナンセンスだ。
心配ない。飲み続けてもらっていい。効果を実感しているなら、なおさらだ。
ナイアシンの肝臓への影響については、すでに十分な研究が行われている。
ここでオーソモレキュラー栄養療法の第一人者、ホッファーの論文を引用し、彼がナイアシンの肝臓への影響についてどのように考えていたのか、紹介しよう。
http://orthomolecular.org/library/jom/2003/pdf/2003-v18n0304-p144.pdf

肝機能検査に対するナイアシンの影響
ナイアシンやナイアシンアミドは、メチル基と結合する。つまり、体内で数少ないメチル基受容体として働いている。
従って、このビタミンの大量投与によって、メチル基欠乏が起こるというのは、筋の通った話だ。
別のメチル基受容体としては、ノルアドレナリンが挙げられる。ノルアドレナリンがメチル化すると、アドレナリンになる。
我々としては、ノルアドレナリンからアドレナリンの産生を抑えることによって、アドレノクロム(催幻覚物質)の産生を減らし、統合失調症の改善につなげたいと考えていた。
しかし、脂肪肝を生じる可能性を、我々は懸念していた。1942年、動物実験でナイアシンが肝臓にダメージを与えるという報告があったのだ。
しかしアルトシュールがこの動物実験を実際にやってみたところ、肝毒性は見られなかった。組織学的に調べても化学的に調べても、肝臓は至って正常だった。
我々はナイアシン治療を受けた患者に一連の検査を行ったが、肝臓へのダメージは存在しなかった。
ごくまれに、閉塞性黄疸を生じる患者があった。そういうときに私は、黄疸が軽快するまでナイアシンの投与を中止した。
中止したため、患者の一人では精神症状がぶり返したため、ナイアシンを再開したが、再び黄疸が生じることはなかった。
黄疸が生じることは極めてまれであり、私はこの20年、一例も見ていない。
しかし肝機能検査を行うと、ナイアシンやナイアシンアミドを服用している患者の一部で、数値の上昇が見られることがある。
これを見て、ほとんどの医師が「肝障害が進んでいる。ナイアシンは危険だ」と考えた。
パーソンズもそのように懸念していた医師の一人だったが、長らく研究と観察を続けた結果、最終的に「肝数値の上昇は、肝病変があることを意味しない」という結論に至った。
彼の結論は「ナイアシンには肝毒性はない」というものである。彼の考えは、1966年から1974年に行われたthe Coronary Drug Projectの結果を見て、確信に変わった。
この研究はナイアシンを服用する1100人を5年から8年追跡したものである。主席研究員のポール・カナーは、パーソンズに「ナイアシンに起因する異常は見られなかった」と語った。
パーソンズは以下のように結論した。
「肝数値の上昇は、上限値の2倍から3倍を超えているときにのみ、肝臓の異常を示している。肝機能を反映する酵素の軽度上昇は、ナイアシン治療の正常な反応であって、治療を中断する理由にはならない」
上昇した肝数値は、ナイアシンを継続して飲み続けていても正常値に戻るものだが、ただし徐放型ナイアシンを服用している場合は、肝数値の上昇はさらに大きくなる傾向がある、とパーソンズは指摘した。
私は肝炎のある患者に対しては、ナイアシンを高用量で投与しない。その理由は、それが有害だから、ではなく、もし何かが起こった場合にナイアシンのせいにされることが分かっているからだ。
カプッチは数十年にわたりナイアシンの研究を続けてきた。彼はレシチン1.2gを1日2回与えた患者では、肝数値の上昇がまったく見られないことを発見した。
マッカーティーはナイアシンによって生じるメチル基欠乏は、血中Sアデノシルメチオニン濃度を減らし、そのためにホモシステイン産生の増大につながるのではないかと唱えた。
この事態を避けるためには、ナイアシンと一緒にベタインのサプリを摂るといい、と彼は勧めた。
レシチンは安価で、手に入りやすい。レシチン、ベタイン、いずれもメチル基の供与体である。

徐放型ナイアシン(ナイアシンアミド、フラッシュフリーナイアシン)のほうが肝数値上昇への影響が大きい、というのは興味深い。
会社の健康診断などで、肝数値が高いと困る、ということであれば、健康診断の数日前からナイアシンの服用をいったん中止すればいいだろう。そうすれば数字はすぐに正常化する。
メーカー間の差異について、最近また「ナウのよりソラレーのナイアシンのほうがいいと思う」という声を聞いた。そろそろ切り替え時かなぁ。

奇跡のリンゴ

2019.1.14

オノ・ヨーコが東京からニューヨークに戻るため、空港のラウンジで飛行機を待っていたときのこと。
備え付けにある本の中からたまたま手に取った本が、リンゴ農家木村秋則氏の半生を綴った『奇跡のリンゴ』(石川拓治著)だった。
読み始めたら、止まらなくなった。
飛行機の搭乗時刻が迫ってきた。ラウンジの受付嬢が「そんなに興味を持たれたのであれば、どうぞお持ちください」と言ってくれ、その好意に甘えた。
一気に読了し、確信した。「この本は、革命だ。世界中の人々に読まれる価値がある」と。
一人の農家が十年間の苦労を経てリンゴの無農薬栽培に成功した、というのが話の大筋だが、それだけではない。
この本には、確かに、「哲学」がある。
無農薬、無施肥、無耕起、無除草という、四無。
農薬はいらない。肥料もいらないし、耕したり、雑草を抜いたりする必要さえない。
人為は、いらない。むしろ、人間が下手に手を加えるから、バランスが崩れてしまう。
リンゴに群がる虫は、憎むべき悪者ということになっている。しかし、虫たちは、自然のバランスを是正する有り難い存在なのだ。
人間が口にすべきでないような果物が実ったとき、虫たちは人に代わってそれらを食べてくれているのだ。
木村さんが栽培したリンゴは、腐らない。自然のままに育った果物というのは、本来、そういうものなのだ。
木村さんの農法は、リンゴだけに当てはまるものではない。他の農産物の栽培にも適応できるものだろう。
世界中に木村さんの農法が広まり、私たちが口にする食品すべてが、そういうふうに自然に育った農産物であるならば、、、
私たちの体は根本から変わり、この世から病気は消滅するだろう。世界は、はるかにすばらしい、住みよい場所になるだろう。

オノ・ヨーコはすぐに動いた。
出版社と著者に連絡をとった。翻訳され、世界中で読まれるべき本だと伝えた。
あのオノ・ヨーコが、英語版の出版に尽力してくれると言うのだから、出版社としては断る理由はない。
彼女はアメリカの出版社にも働きかけた。具体的に翻訳の作業も着々と進めた。
そうしていよいよ、アメリカの書店で英語版『Miracle Apples』が販売、となる直前。
不測の事態が起こった。

木村さんのケータイに、電話があった。「非通知の番号だ。誰だろう」と思いながら、電話を取った。
「もしもし、木村さんですか。ヨーコです」
「ヨーコって、どちらのヨーコさん?」
ちょっと前なら覚えちゃいるが、一年前だとチトわからねえなぁ、というわけでもないが笑、木村さん、聞き返した。
「オノ・ヨーコです。英語版の出版の件でお話がありまして」
そこで、以下のことを伝えた。
アメリカでの出版が中止になった。
出版の契約自体がご破算になったわけではないから、契約金などは翻訳者らに支払われる(それだけに、他の出版社に出版を持ちかけることはできない)。
ただ、とにかく、翻訳版がアメリカで出版・流通することはない。

巨大な力が動いている。
彼女はそう直感した。
様々な情報筋や探偵などを使って、背後の事情を調べた。
出版の差し止めに動いたのは、モンサント社だった。
そしてモンサント社のバックに控えるのは、ロックフェラーだ。
彼らにとって、この本は、ただの農家のサクセスストーリー、ではない。看過することのできない「危険思想」である。
こんな思想が世界に広まることは、断じて容認できない。芽は、小さなうちに摘んでおかねばならない。
そこで彼ら、本気で潰しにかかったのだ。
夫を殺された彼女には、彼らの恐ろしさが誰よりもよく分かっていた。
電話の最後に、言った。
「木村さん、アメリカには絶対来てはいけません。来たら、間違いなく殺されますよ」

警告を受けるまでもなく、身の危険は感じていた。
町を歩いていて、いきなり背後から羽交い締めされた。
「自然栽培をやめろ」そして、妻の名前、娘三人の名前を言い、「危害が及ぶのはお前だけだと思うなよ」
木村さん、そういう脅しに屈せずに、自然栽培の普及活動を続けた。
暴力に屈しないと見るや、今度は金で丸め込もうとしてきた。
高級ホテルの一室に招き入れられ、紳士が小切手を示す。驚くような金額が書かれている。
「アメリカのモンサント本社にご案内します。ファーストクラスの旅費はもちろん、当社が負担します。お越しになられれば、このお金はあなたのものです」
木村さん、その提案を断った。
それでも何とか懐柔しようと、押し問答が繰り返されたが、木村さんの答えは変わらなかった。
翻意の不可能を悟ったとき、紳士は血相を変えて言った。
「お前はどうしようもないバカだな」
木村さん、澄ました顔で答えた。
「そうです。私、バカです」
暴力にも金にも屈しない。それが木村秋則という人だ。

旧約聖書で知恵の実を象徴する果物はリンゴだが、木村さんが自然農業の本質的な知恵を獲得できたのもリンゴのおかげだった。
この本のすばらしさに気付いたオノ・ヨーコがThe Big Apple在住だというのもどこか暗示的で、リンゴをめぐって様々なものがつながっているようだ。
インターネットの時代である。本として出版できなくても、少しでも多くの人に知ってもらえたら、という思いで、翻訳版をネット上に全文公開することに踏み切った。
http://imaginepeace.com/miracleapples/

ジョン・レノンは本気で世界平和を願っていた。
その本気さが彼らの逆鱗に触れ、彼は殺されてしまった。
夫の無念は、彼女にそのまま引き継がれた。
85歳になってなお、彼女は彼らとの静かな戦いを続けている。

参考動画

ワクチン

2019.1.13

ワクチンにはアジュバントが入っている。
アジュバントというのは、抗原性補強剤のこと。抗原を注射するだけでは充分に免疫がつかないから、抗原性を高めるために含まれている。
アジュバントとして使われることが最も多いのは、アルミニウムだ。

アルミは単独で投与しても、マウスに関節炎や脳脊髄炎を起こす。
というか、関節炎や脳脊髄炎のモデルマウスを作るためにアルミを投与しているぐらいだから、これは研究者にとっては常識的な知識だ。
単独投与でも毒性のあるアルミに加えて、ワクチンには他にも様々な化学物質がチャンポンされている。
「病気を予防するため」という名目のワクチンに、別の病気の原因になりかねない物質が含まれているわけで、実に、本末転倒とはこのことだ。
そんなワクチンを、たくさんの人が、わざわざ自分で進んで病院に受けに行く。倒錯もここに極まれり、だな。
もうちょっと、自前の免疫力というものを信用したほうがいいよ。
そもそも体には白血球がいて、感染症にならないように防御してくれている。ワクチンなんて打たなくても、人類は種として500万年生存してきた。
それなのに、なぜ、いまさら、病気予防のためと称して、ワクチンが国から推奨されているのだろうか。
ここ百年弱のあいだに、人類は免疫が急激に弱って、ワクチンなしでは生存できないようになってしまった、とでもいうのだろうか。
そもそも現代西洋医学は、人間の体というものをバカだと思っている。自然治癒力なんて信じていない。手術や薬で病気を強制的に取り除いてやらねば、回復しない。
そういう前提からスタートしている。前提から破綻している論理というものは、どんな御託を並べたところで、好ましい結果には結びつかないものだよ。

ワクチンという異物を注入された体は、何とかしてその異物を排除し、恒常性を保とうとする。その排除の際の悪戦苦闘が、症状という形で出現する。
ワクチンの副作用と言われるもので、「副作用」などというと、さも意外、想定外の事態、といった印象を受けるけど、むしろ体の正常な拒絶反応だ。

ワクチンの意外な副作用の現れ方として、ナルコレプシー(眠り病)が挙げられる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24721530
論文のタイトルは、『アジュバントに含まれるαトコフェロールが、Nrf2の調節を経て、試験管内でヒポクレチン(オレキシン)の発現および代謝回転を引き起こし、ナルコレプシー発症の引き金となる』。
要約をざっと訳すと、、
H1N1型豚インフルエンザのワクチンを打ちましょうというキャンペーンの後、小児および思春期のナルコレプシー症例の増加がスカンディナビア地域で観察され、後に同様の増加はヨーロッパ諸国でも見られた。これはAS03アジュバントインフルエンザワクチン(パンデムリックス)の接種と関連している。
ナルコレプシーとは慢性的な睡眠障害であり、脳脊髄液中のヒポクレチン(オレキシン)が減少していることが特徴である。この減少は、脳弓周囲から視床下部のヒポクレチン産生ニューロンが選択的に破壊されているためである。
99%以上のナルコレプシー症例において、HLAサブタイプ(DQB1*602)が関係しており、このため自己免疫系に異常が生じると考えられている。スクアレンをベースにしたアジュバントでは、これまでのところナルコレプシーの報告はないが、AS03にはさらにαトコフェロールが含まれている。
最近、αトコフェロールは転写因子Nrf2を活性化することが観察された。Nrf2は、抗酸化剤応答配列(ARE)に結合することで、細胞防御遺伝子(タンパク分解酵素の触媒活性のあるサブユニット)の発現を引き起こす。
結果
αトコフェロールは、Nrf2の活性化を経て、ヒポクレチンの発現および代謝回転に影響を及ぼし、DQB1*602に結合するヒポクレチンα特異的断片が増加する。
αトコフェロールは、試験管内において神経細胞のNrf2を活性化する。プロモーター分析により、ヒポクレチンプロモーターにARE配列があることが明らかになった。αトコフェロールは、Nrf2の活性化により、ヒポクレチンの発現を増加させる。並行して、αトコフェロール依存性のNrf2の導入は、タンパク分解酵素の触媒性サブユニットの発現を増大させ、ヒポクレチンの分解を促進する。さらに、Nrf2の活性化は、NFκβ活性の減少と関連しており、このためにアポトーシスを起こす刺激に敏感に反応するようになる。
結論
遺伝的傾向 (DQB1*602) のある症例では、αトコフェロールは、Nrf2の活性化を通じて、ヒポクレチン由来の断片産生を促進し、ナルコレプシーを引き起こす。この断片を発現する細胞は免疫系に認識され、また、そのアポトーシス刺激への過敏性もあいまって、破壊され、こうしてヒポクレチン欠乏状態になる。

「日中に、急に異常なほどの眠気に襲われるようになった」という主訴を聞いて、「ひょっとして、最近ワクチン打ちませんでしたか」と聞ける医者がどれくらいいるだろう。ほぼ皆無だと思う。

同様に、筋膜炎を見て「ワクチンの副作用」を鑑別に挙げるなんて、知っていないと絶対にできない。
https://academic.oup.com/brain/article/124/9/1821/303280
タイトルは、『マクロファージ性筋膜炎は、ワクチン由来の水酸化アルミニウムが筋肉内に長期間残存している現れである』。
要約すると、、
マクロファージ性筋膜炎は、びまん性の筋・関節痛および疲労感を訴える患者に見られる原因不明の症状で、PAS染色陽性のマクロファージとリンパ球が筋肉に浸潤していることが特徴である。一部の患者では、マクロファージの内部に細胞質内封入体が観察される。
40症例に対し、電子顕微鏡と化学分析(微量分析および原子吸光分光法)で調べた。
封入体が常に検出され、これは水酸化アルミニウム(ワクチンのアジュバントとしてしばしば用いられる免疫刺激性化合物)に対応して出現していた。マクロファージ性筋膜炎の病変部には常にリンパ球が観察された。血液検査は、水酸化アルミニウムへの曝露を示していた。
ワクチンの接種歴を分析すると、50人中50人でワクチンを接種しており、そのうちB型肝炎ワクチンは86%、A型肝炎は19%、破傷風毒素は58%であり、生検を行う前の3ヶ月から96ヶ月前(中央値は36ヶ月)にワクチン接種を受けていた。
びまん性の筋痛症はマクロファージ性筋膜炎のある患者では、そうでない患者に比べて、より高頻度で見られた。(P<0.0001)94%の患者で、筋痛症の発症はワクチン接種の後(中央値は11ヶ月後)に起こっていた。マクロファージ性筋膜炎をラットで実験的に再現することもできた。 我々の結論はこうである。マクロファージ性筋膜炎は水酸化アルミニウムの筋肉内注射によって生じ、水酸化アルミニウムの長期的残存および継続する局所的免疫反応が存在することを示すものである。 「ワクチン接種からしばらくして、筋肉や関節が妙に痛くなった。病院に行くと、膠原病と診断されて、ストロイドとか抗リウマチ薬を飲み始めた」みたいな経過の人は世の中にたくさんいると思う。 膠原病の診断基準に当てはまったとしても、これは誤診と言うべきで、投薬治療なんて始めちゃいけなかった。薬のせいで、いよいよ本物の病気になってしまうから。 整体マッサージに通うとか、断食をする、栄養療法を始めるとか、他のベターな選択肢があったのにね。 病院が、病気を作っている。 嘘みたいな本当の話。 悲しい世の中だね。

ゴーン

2019.1.12

ゴーンが特別背任容疑で再逮捕されたとか、拘置所で高熱出して接見できないとか、ゴーン関連のニュースがメディアをにぎわせている。
日産自動車の前社長でルノー自動車のCEOという、超VIPが逮捕されたということで、ニュースバリューがあるんだろうけど、実際のところどういう人なのか。
何をした人で、どう偉い人なのか。
簡単に言うと、日産の社長に就任して以後、彼は従来の日本人社長と真逆のことをした。
ゴーンが日産の社長に就任した1999年、日産の経営状態は最悪だった。
これまでの社長が、株価への配慮などから、経営状態を糊塗しようと必死だったところ、彼は逆に、その最悪ぶりを白日の下にさらけ出した。
今まで隠していた赤字を全部洗い出して、もうこれ以上悪くなりようがないという状況を世間に知らしめた上で、改革を始めた。
わずかな改善で、「さすがゴーンだ」と評価される下地を作った。
日産には優秀なエンジニアがいて、技術力も高い。全国に販売網があり、営業能力もある。
魅力的な商品を作り、その販売を軌道に乗せることができれば、経営状態は必ず改善するはずだ。
自身の強いリーダーシップのもと、機能不全に陥った日産の各部門に喝を入れ、様々な改善に取り組んだ。
こうして倒産寸前だった日産を奇跡のV字回復に導いたということで、一躍その名を知られるようになった。
つまり、ゴーンがやったことは、既存の体制にメスを入れ改善したということであって、彼がゼロから何かを作ったわけではないんだ。
それだけのことなんだけれど、従来の社長には「それだけのこと」もできなかったわけで、そこはやはり、ゴーンのカリスマ性のなせる技かもしれない。
従来の社長が日本人特有の忖度とかめんどくさい根回しとかにとらわれて身動きできなかったところ、そういうのを一切気にしないで独断で采配をふるえたっていうのも、外人ならではの強みだったと思う。

彼の「独裁」が見事に奏功した例としては、GT-Rの成功が挙げられる。
ゴーンは日産復活のために『新たな顔』を作ろうとして、「プリメーラ、スカイライン、フェアレディZに次ぐ、新たなフラッグシップを作れ」と命じた。
こうしてGT-Rの開発プロジェクトが動き始めた。
GT-Rの開発に際して、社内では既存のFR-Lプラットフォームをベースにしようという意見が多くを占めていたが、エンジニアの水野和敏はそれに反対していた。
「それでは日産のフラッグシップたり得ない。PMプラットフォームを採用すべきだ」と主張した。
水野はどちらのプラットフォームの開発にも携わっていて、彼はその強みも弱みもすべて把握していた。
過去にはプリメーラやスカイラインの車両パッケージの設計を担当するなど、車のデザインセンスに図抜けた才能があり、また、耐久レースのチーム監督として何度も優勝するなど、社内から一目置かれている人物だった。
ただ、職人気質で我が強く、意見が衝突しても自分を曲げない頑固さがあって、上層部からは時に煙たがられる存在でもあった。
水野は、実績を残しているとはいえ、社内ではエンジニアの一人に過ぎない。上層部の誰も彼の意見を真剣に汲み入れようとはしなかった。
しかし、ゴーンが来て以後、風向きが変わった。
ゴーンを前にしても、ものおじせずに堂々と自分の意見を言う。通訳を介しながらではあるが、ゴーンの目を見て、はっきりと自分の考えを語る。
ゴーンはこの職人がひどく気に入った。
「GT-Rの開発はお前にすべて任せる。必要なことがあれば、何でも言ってくれ」
これは極めて異例のスタイルだった。
ゴーンは1車種の開発に際して3トップ制(車両開発主管、商品企画立案責任者、販売目標責任者)を基本とするよう命じていた。
しかしGT-Rの開発にだけは、例外的に水野にすべての権限が集約する1トップ制とし、社長直轄プロジェクトとしてゴーンと水野が直接つながる人事体制となった。
こうして水野に、エンジニアとして最高のパフォーマンスを発揮できる機会が与えられ、彼はその期待に見事に応えた。
2007年の発表からわずか1年半で、GT-Rは世界のトップブランドになった。

すばらしい性能のスポーツカーを作ったとしても、それが世界のトップブランドとして認知されるとは限らない。
しかし彼はそれを成し遂げた。どのように?
『バカになれ!カリスマエンジニア「ゼロからの発想術」』(水野和敏著)に、彼の方法が余すところなく公開されているので、そのさわりの部分だけ紹介しよう(僕が多少加筆した引用です)。
「ゴーンから「日産のフラッグシップとなるスーパーカーを作り、世界のトップブランドにしろ」と言われたとき、エンジニアとして自分自身を徹底的に造り込んできた俺には、その構想がすでにあった。
車のメカニズム、ハードウェアに関しては即座にイメージがわいた。問題は、「世界のトップブランド」にするにはどうするかである。
普通の人が考えるのは、大々的に広告を打つことだろう。しかし俺に言わせれば、それは最もやってはいけないことだ。
ダメな新商品をマスコミに金を払って宣伝させている、と思われかねないからだ。実は、GT-Rの宣伝費は、ゼロだ。
大事なのはブランドというものの本質を創ることだ。
ブランドとは、自分たちが「これは最高級品です」と言ってなれるもんじゃない。世界中の上流貴族や富裕層から認められ、彼らがこぞって手に入れたいと思うものがブランドになっていくのだ。
今現在、世界で最もセレブリティの称号を持っていて、しかもトップブランドを買っているマーケットリーダーは誰か?
アラブの王族だ。ハリウッドセレブや金融関係者など、しょせん成金。王族のブランド力にはかなわない。しかも没落した欧州貴族よりアラブ王族は断然パワーがある。
「アラブの王族が金に糸目をつけずに買いたいと思っている車がある」
そんな噂が世界に広まった途端、その製品は最高のブランドとして認知される。
では、アラブの王族に欲しいと思わせるにはどうすればいいのか?(以下、略)」
実に、読ませる本だ。
GT-Rの開発秘話、ゴーンのこと、エンジニアとしての創造性、人生観など、水野氏のエッセー集のようになっていて、ストーリーテラーとしても巧みだと思う。
この本の出版は2014年なんだけど、文中、ゴーンの先行きを不安視する記述があって、まるで現在の状況を予見していたようにも思える。
「一緒に仕事をしていた頃のゴーンの決断力と実行力は大したものだと思う。でも最近は昔のようなオーラや輝きが感じられない。
孤独な王様のようだ。提言する人間がいないのか?ゴーンというリーダーの今の唯一の問題はそこにあると思う。
「私はこうしたい」というブレーンが不在で、「こうしましょうか?」というご機嫌取りに囲まれているようだ。
むろんゴーンのような人間に提言するのは並大抵のことじゃない。半端なことを言えばすぐ話を打ち切られる。ビジョンと存在を認められていなかったら、文字通り、話にならない。
日産に来た当初はゴーンに提言できる人材は何人もいた。昔からの同志であるパトリック・ペラタやコリン・ドッジなどはその代表だ。
俺から見ても本当に優秀なサポート役だった。ところが経営の苦しいルノーを立て直すためにペラタをCOOにしたあたりからバランスが崩れ始めた。
結局信頼の厚かったペラタが情報漏洩問題でルノーを辞めざるを得なくなり、提言できる人間がまた一人いなくなった。
ゴーンのカリスマだけに頼り切っているように見える。
強すぎるカリスマのもとでは、本当にものを言えるブレーンが育たないということがしばしば起こる。
戦国武将でも武田家のように、イエスマンばかりになって滅亡した例は腐るほどある」
エンジニアでありながら同時に人間通でもあって、水野氏にはゴーンの孤独が見え透いていた。
水野氏を手放すなんて、日産はもったいないことをしたね。

MSG

2019.1.11

「無添加がいい、化学調味料なんてもってのほかだ、とか急に健康オタクになった夫が言い出してさ。味の素がいかによくないか、電子レンジがどれだけ体に悪いか、みたいなのを力説するわけ。
今まで散々そういう文明の利器に頼っておいて、いきなり何だよ、って思うんだよね。
手間がかかるけど、これまで味の素を一振り入れて味付けしてたのをやめて、昆布やかつお節をわざわざ煮出してダシをとるんだけどさ、化学調味料の強い味付けに慣れちゃってるもんだから、薄いとか味気ないって文句を言う。
もうね、お前が自分で料理しろよ、っていう。
仕方ないから、これ、旦那には言ってないけど、今でも味の素使ってる。ただし、量は減らしてね。
『うん、うまい。やっぱり天然の味はいいなぁ』なんて言ってて、本当、バカ舌なんだよ」
話を合わせて一緒に笑っておいたけど、怖い妻やなぁ笑
そう、化学調味料の発明は実に偉大で、いまや外食産業はこれなしでは成り立たないだろう。
どんな粗悪な食材でも、おいしくしてしまう魔法の粉。ダンボール肉まんというのがあったように、その気になれば食べ物ではないものさえ、おいしくできてしまう。
しかしこのおいしさには、リスクが潜んでいる。

肝毒性をテーマにした論文があったから、紹介しよう。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0896841107001400
表題は、『グルタミン酸ナトリウム:肝臓の炎症および異形成を促進する悪役』
タイトルにvillain(悪役)なんていう、比較的感情的な言葉があるのは珍しい。小説には出てきても、論文には使われる語彙じゃないからね。
内容は、、
自己免疫疾患を含め様々な病気の経過において、慢性的な炎症こそ、共通のテーマである。慢性炎症の経過は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を見ればよくわかる。
NASHは西洋化した社会で患者数が急増している。西洋式のライフスタイル、特に食事が直接的な影響を与えている。
懸念すべきことは、NASHが悪化すれば、最終的に肝細胞肉腫になる可能性があることだ。
我々は以前、ICRマウスにMSG(グルタミン酸ナトリウム)を注入すると炎症が起こり、中枢性肥満や2型糖尿病になることを報告した。炎症に対してMSGが長期的にどのような結果を及ぼすかを調べるために、MSG注入マウスの、特に肝病理に注目して、継続的な分析を行った。
6ヶ月齢および12ヶ月齢までに、すべてのMSG注入マウスでNAFLDかつNASH様の組織像を呈した。特に、12ヶ月齢のマウスの脂肪肝炎像は、人間のNASH像と見分けがつかないほど類似していた。 さらに、繊維化した肝組織内に異形成結節病変が見られる個体があった。
MSG注入マウスでは、人間のNAFLD、NASH(前癌病変)とよく似た脂肪変性および脂肪肝炎が起こっており、肥満と糖尿病を呈することを我々は観察した。
これらの結果は、日常生活でMSGが広く用いられていることを考えると、非常に重要である。我々としては、MSGの安全プロフィールが再検討され、食品市場からその使用が禁止されることを提案する。

肝臓の病理像に変化が見られたということは、MSGは肝臓で代謝されて、その際に肝臓に負荷を与えるということだろう。
うまみ調味料であって、砂糖みたいに甘いわけではないMSGが、肥満や糖尿病の原因になり得るというのは、意外なことだ。
ただ、あくまで動物実験であって、MSGを体内に注入するという、人間の日常生活ではあり得ない状況での結果だということも気にとめておきたい。
だから、健康オタクの旦那さんが、天然の昆布ダシだと思いながら毎日MSGを盛られていたとしても、少量なら大きな問題はないだろうけど、この夫婦は、信頼関係とか、もっと根本的なところでやばいと思う^^;