院長ブログ

真菌、コレステロール、癌3

2020.2.7

「すべての発癌物質は、ラクトン構造を含む」
これこそが遠藤章の成し遂げた発見であって、彼がノーベル賞を贈られるとすれば、この功績に対してであるべきだと思う。
授賞理由が「コレステロールの産生機序の解明とコレステロール降下薬(スタチン)の開発」ということであれば、ノーベル賞選考委員会はまったく何もわかっていないと言わざるを得ない。
コレステロール降下薬(スタチン)を開発しようという努力自体はすばらしく、その途中過程で得られた知見は、人類の健康福祉に貢献するものだった。しかしその努力の結果商品化されたスタチンは真菌毒そのもので、人類の福祉に貢献するどころか、むしろ人々の健康にとって有害無益だったと僕は考えている(高コレステロール血症の遠藤先生自身、スタチンを飲まないんだよ^^;)。そんな具合に、遠藤先生の仕事には、光と影が、功と罪が、相半ばしていると思う。
具体的にどういうことか、説明していこう。

高校で生物を習った人は、グルコースからピルビン酸ができ、ピルビン酸がアセチルCoAになってクエン酸回路(クレブス回路)に入る、と勉強しただろう。

このアセチルCoAは生命にとって絶対的に必須のもので、ここから様々なもの(コレステロール、中性脂肪、ステロイド、アミノ酸など)が作られる。
たとえば、細胞がコレステロール(およびその他のイソプレノイド)が必要なときには、まずアセチルCoAの2分子がくっついてHMG-CoAとなり、HMG-CoAにリダクターゼ(還元酵素)が作用してメバロン酸ができる。
メバロン酸がコレステロールをはじめとして、様々なイソプレノイドを作り出すもとになる。

この図で特に重要なのは、後半、HMG-CoAからメバロン酸が生成されるところである。
分子構造も含めて書くと、以下のようである。

注目したいのは赤い丸で囲ったところで、これは化学的にはラクトンと呼ばれる構造である。スタチンにもラクトン構造が含まれていて、しかもスタチンは、リダクターゼとの親和性が、HMG-CoAよりも1万倍高い。
どういうことか、わかりますか?
スタチンはHMG-CoAを押しのけてリダクターゼと結合し、結果、メバロン酸の産生が停止するということだ。この点こそが、スタチンの作用機序の核心(HMG-CoArリダクターゼ阻害)であり、スタチンの毒たるゆえんなんだ。

遠藤先生は真菌の一種であるPenicillium citrinumを使って、スタチンの研究をしていた。Penicillumという名前から見当がつくように、これはアオカビの一種である。フレミングはここから抗菌薬(ペニシリン)を作ったが、遠藤先生はスタチンを作った。いや、正確には、Penicillum citrinumから精製したスタチン(citrinin)は医薬品にはならなかった。毒性が強すぎたためだ。
初めて医薬品として承認されたのは、Aspergillus terreusの産生するカビ毒から作ったロバスタチン(“love a statin”)である。

citrinin、ロバスタチン、いずれもラクトン環構造を持っている。というか、ラクトン環構造は真菌類全般が普遍的に持っていて、彼らにとって有機物を腐敗させる強力な武器になっている。
そもそも単細胞生物であれ多細胞生物であれ、すべての生命体はHMG-CoAやリダクターゼを利用してエネルギー産生を行っている。細胞は進化の歴史の中で、HMG-CoAを含む物質を「おいしい」と感じるようになったが、真菌はここに付け込んだ。リダクターゼと結合する”ニセHMG-CoA”(ラクトン環)を他の有機物に送り込み、細胞機能をかく乱させ、ひいては生命機能を破綻に追い込む。そうして、有機物を自身の栄養物として頂く。これが、”擬態(mimicry)”と呼ばれる真菌の生存戦略である。

スタチンの添付文書をみれば、うんざりするほどたくさんの副作用が挙げられているが、これらは決して”副作用”ではない。
カビは、ものを腐らせる。同様に、スタチンは体を腐らせる。
作用機序を考えれば、”副作用”と言われているものは、カビ毒によって起こる当然の主作用なんだ。
ただ製薬会社としては、薬として販売するにあたって、あまり露骨に毒性が現れては(つまり、薬の服用と体調の悪化という因果関係があからさまに現れては)、さすがに市場に流せない(Cerivastatinのように、市場に堂々と出ておきながら、その後の有害事象報告(横紋筋融解症と腎不全による死者52人)で撤退になったスタチンもあるんだけど^^;)。

薬としての認可を得るには、毒を毒だとわからないよう、上手に加工することが必要である。
ポイントは二つある。まず、カビ毒がリダクターゼをどれぐらい阻害するのか、ということ。もうひとつは、阻害が可逆的であるか否か、である。
この二点が、細胞の致死性と発癌性を左右している。
遠藤先生が熱心に研究していたPenicillum由来のcitrininというスタチンはは実用化されなかったが、これは阻害が不可逆で、作用が強すぎたためだ。
バイエル社から売り出されたCerivastatinは、可逆的であったものの、リダクターゼの阻害作用が強すぎた。スタチンを処方された患者がすぐにバタバタ死んでしまうものだから、こんなに因果関係が露骨ではさすがの製薬会社も反論できず、やむなく撤退となった。

遠藤先生の論文。
『HMG-CoAリダクターゼ阻害薬の発見と開発』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1464741
論文中にこのような一節がある。
「ある種の微生物は、その他の生物(成長にステロールやその他のイソプレノイドを必要とする生命体)に対して、武器となる化合物を産生するのではないか。そうであるならば、HMG-CoAリダクターゼの阻害は、こうした生物にとって致命的な作用をもたらすだろう」
遠藤先生のこの推測は当たっていた。
イソプレノイドのなかでも、ドリコール(dolichol)は細胞膜の構造維持に、コエンザイムQ10はエネルギー産生に、イソペンテニル・アデニンは細胞周期の促進に、メッセンジャータンパク(たとえばRas)は細胞周期の抑制に、それぞれ必須のものだった。
リダクターゼを阻害することは、同時にイソプレノイドの阻害でもあり、結果起こることは、これらの必須栄養素の欠乏である。
具体的な症状としては、
・細胞が形態を維持できなくなり、”球体化”する(ドリコール欠乏)
・細胞分裂の停止(イソペンテニル・アデニン欠乏)
・エネルギー欠乏、易疲労性(コエンザイムQ10欠乏)
・細胞増殖の暴走、癌化(メッセンジャータンパクの欠乏)

こうした知見は、逆用すれば癌の予防(および治療)に利用することも可能で、遠藤先生の研究成果はこういうふうに使ってこそ、初めてノーベル賞級の仕事だと言えると思う。スタチンみたいな毒物を医薬品として垂れ流しておいて、それでノーベル賞をもらうだなんて、そんなデタラメはさすがにないでしょ。
ノーベル賞は存命中の人にのみ贈られるから、「ノーベル賞をもらう秘訣は、長生きすることだ」と言われたりもする。遠藤章先生は、現在86歳。平均寿命的には、そろそろタイムリミットを意識する年齢である。
先生がノーベル賞をもらうとしたら、同じ日本人として喜ばしいことだけど、もらい方(授賞理由)も大事だと思うんだな。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(Jamaes Yoseph)

真菌、コレステロール、癌2

2020.2.6

スタチンはカビ毒そのもので、その毒性は恐ろしいものだけど、スタチンの開発プロセスで、癌や糖尿病などの発生機序の一端が解明されたこと自体は、とても有意義なことだった。これらの疾患に大きく関与していることが明らかになったのは、コレステロールである。

生化学の研究により、コレステロールが細胞膜や各種ホルモン、ビタミンDの構成材料であることが知られていた。疫学的には、癌患者でコレステロール値が低いことや、コレステロール値が低い患者で癌の発症率が高いことがわかっていたが、スタチンの研究はこの理由を解き明かすことに貢献することになった。
前回のブログと内容的にやや重複するかもしれないが、この点について、少し角度を変えて見てみよう。

理科の授業で、「”何とか”アーゼ、というのは”何とか”を分解する酵素のことだ」と習っただろう。たとえばアミラーゼというのはアミロース(でんぷん)を分解する唾液中の酵素だし、リパーゼというのはリピッド(脂質)を分解する膵液中の酵素のことだ。

上図は、酵素が基質に作用して、基質を分解する模式図。
酵素と基質は、カギとカギ穴の関係にたとえられる。ばっちりハマる相手に対してのみ、作用するということだ。そして、反応の前後で酵素は変化しないが、基質が変化して、新たな物質が生じる。
反応を定式化して書くと、
酵素 (E) + 基質 (S) → 酵素基質複合体 (ES) → 酵素 (E) + 生産物 (P)

大学で生化学を勉強するとうんざりするほどたくさんの酵素が出てきて、その名前を覚えることになるが、小学校や中学校の理科で習ったこの反応式が基本であることは変わらない。
たとえば、リダクターゼ(還元酵素)という酵素がある。医学部で習うのは、せいぜい
5αリダクターゼ(前立腺肥大、男性型脱毛症に関連)とHMG-CoAリダクターゼの二つである。
後者はコレステロールを含むメバロン酸代謝のプロセスで超重要な酵素だが、扱いは軽い。
生命にとってメバロン酸経路がどれほど重要であるかを医学生に教えてしまうと、スタチンを投与することがどれほど体に悪いかが、みんなにバレてしまうから、あえて教えないようにしているのではないか、と個人的には思っている。

メバロン酸は、HMG-CoAから作られる。
上図でいうと、HMG-CoA(基質)に対して、酵素HMG-CoAリダクターゼが作用することで、メバロン酸(生産物)が作られる、という流れだ。このメバロン酸からコレステロールやイソプレノイドが作られていく経路を、メバロン酸経路(mevalonate pathway)という。
Sipersteinによると、彼が調べたすべての癌細胞では、例外なく、メバロン酸経路(およびコレステロール代謝)が破綻していた。
三共が犬を使った実験で、腸に癌(リンパ腫)が発生することを報告したが、スタチンを経口で投与した場合、消化されたスタチンがまず吸収されるのが腸であることを考えれば、この理屈がわかる。
腸は免疫の最前線で、白血球が密集している。スタチンを貪食した白血球は、メバロン酸経路が破綻し、リダクターゼが増加する。ここで細胞表面にLDL受容体が多く発現していればコレステロールの取り込みが亢進してアポトーシスを起こすところだが、LDL受容体の発現が乏しい白血球では癌化する。これが血液癌の発生機序である。

いわゆる発癌物質は、細胞内に取り込まれて発癌を起こす前に、まずメバロン酸経路を破綻させているのではないか。これがすべての癌の根本原因ではないか。これがSipersteinの考えた仮説である。

1960年、イギリスで養鶏場で飼われていた数万匹の七面鳥が一気に死ぬ騒動があった。この事件は世界中に報道され、人々を不安に陥れた。原因は何だろうか?細菌か、ウイルスか?自然発生した病原菌によるものか、生物兵器によるテロか?世界中の科学者が、原因究明に乗り出した。
結果は、驚くべきことに、カビによるものだった。七面鳥のエサとして与えられていたピーナッツに、真菌の一種アスペルギルス・フラブス(Aspergillus flavus)がわいており、この真菌が産生するカビ毒によって七面鳥たちは中毒死したのだった。このカビ毒はAflatoxin(AはAspergillusから、flaはflavusから)と名付けられ、多くの研究者がその毒性を調べたが、Sipersteinもその一人だった。
正常な細胞にアフラトキシンを与えると、1週間以内にメバロン酸経路が破綻し、その後癌化することを、彼は報告した。
『正常細胞および癌細胞におけるコレステロール合成の調整』
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780121528027500098

メバロン酸経路こそ、癌とコレステロールを結ぶミッシングリンクであることを、彼は証明したのだった。メバロン酸経路は細胞の分裂周期を調整する中枢であり、また、コレステロール(およびその他のイソプレノイド)の産生に中心的な役割を果たしている。癌細胞ではメバロン酸経路が破綻しており、リダクターゼの産生が高まっているが、スタチンはこれと同様の状況を作り出す。

癌はスタチンの副作用ではない。作用機序を考えれば、むしろ主作用である。
利にさとい製薬会社である。スタチンのこういう性質は当然知っていて、当初はスタチンを、なんと、抗癌剤として売り出そうという話さえあった。”スタチンが細胞周期をかき乱すのならば、癌細胞に投与してやればいい”というアイデアである。
腫瘍の退縮どころか、正常細胞の癌化を促進してしまうことから、研究段階で頓挫したものの、スタチンの何たるかを端的に示すエピソードだと思う。
もっとも、一般の病院で行われている抗癌剤による化学療法もスタチンと大同小異で、最終的には癌の促進にしか働かないのだけれど。

参考
“Proof for the cancer-fungus connection” (James Yoseph著)

真菌、コレステロール、癌

2020.2.4

医師国家試験にこんな問題が出る。みなさん、解けますか?
【問】地上における死体の腐敗速度を 1とした場合、土中での腐敗速度として正しいのはどれか。(平成26年第108回医師国家試験E-25より)
a 1/8 
b 1/2 
c 1 
d 2 
e 8 

法医学の問題。
まず、地面に置いた死体と土中に埋めた死体。どちらの分解速度が速いと思いますか?
「土のなかのほうが微生物とかミミズとか多そうで、分解も速そう。だから正解は、dかeだろう。しかし8倍速いというのはいくらなんでも速すぎる気がする。だから、dかな。
ブッブー×
違います。それでは医者になれません^^
法医学の授業で、カスパーの法則(Casper’s Law of decomposition)というのを習う。
それは「死体を土中、水中、地上に放置したとき、その腐敗速度の比は、1:2:8である」というものだ。
土の中のほうがはるかに分解速度が遅いなんて、一見意外な感じがするね。でも、以下の解説を見れば納得するだろう。
「死体の分解速度を左右する要因は、主に4つある。
最も重要なのは温度だ。温度が10℃上がるごとに、死体の化学反応の速度は2倍になる。30℃の環境下の分解速度は、0℃のときより8倍速い、という具合だ。
さらに、環境中の湿度の影響も大きい。水がある(湿度が高い)と、分解速度は遅くなる。
また、環境中の㏗(酸性かアルカリ性か)も影響する。極端な酸性、アルカリ性の状況では、酸素による生体分子の分解が速まるが、やはり水の有無によってこの影響も緩和されたりする。
最後に、環境中の酸素濃度。土の中や水の中、あるいは高地では、酸素濃度が低いため、分解が遅い。
これら4つの要因次第で、死体が白骨化するまでわずか2週間ということもあれば、2年以上かかることもある」

どうですか。温度、湿度、㏗、酸素濃度がポイントであることに気付けば、正答できるわけです^^そういう意味で、医学というか、むしろ科学の問題だね。
個人的には、これらの4要因に加えて、もうひとつ、真菌による分解、という作用もかなり大きな影響力があると思う。
真菌の働きがもっとも活発なのは、土の中ではなくて、地表なんだ。地面に穴を掘ってみたら、土の中でカビがわいていた、という状況は見たことがないでしょう?土の中に生えているキノコ、なんて見たことがないでしょう?つまり、土の中というのは、真菌にとってはむしろ住みにくくて、酸素のほどよくある地表が生育に適しているわけだ。
このあたりは、人間との相似を感じる。
人間の体表(および腸内の体表である腸粘膜)には無数の微生物が住んでいる。しかし、その少し下は、免疫部隊が厳重に見張っていて、菌はほとんどいない。菌が侵入しているのは、癌(真菌)か敗血症(細菌)などの異常事態のときぐらいだ。

そう、癌が真菌(カビ)によって起こることを示す研究は複数あって、科学的な裏付けは充分にある。カビの産生する毒が、どのように癌を発生させるのか、その機序も明らかになっている。
ただ、こういう知識は医学部では教わらないため、医者にとって一般的な知識ではない(死体の分解速度より、はるかに本質的な知識のはずだけどね^^;)。

正常な細胞内では、リダクターゼ(HMG-CoA reductase)によってHMG-CoAからメバロン酸が作られている。
メバロン酸をもとにして、イソプレノイド(tPNA、コエンザイムQ10(ユビキノン)、その他、シグナル伝達に関与するタンパク質)やコレステロールなど、生体に必須の分子が作られる。

しかしここにある種の真菌毒(アフラトキシンなど)を投与すると、リダクターゼと結合して、その働きがブロックされる。つまり、メバロン酸の産生が停止する。結果、イソプレノイドやコレステロールの産生も停止する。
体にとってこれは一大事である。細胞は小胞体でリダクターゼをより多く作ることで、この異常事態に対応しようとする。
ここからが運命の岐路で、もしこの細胞が膜表面にLDL受容体を発現していれば、細胞内にLDLコレステロールが流入する(結果、血中コレステロール濃度は下がる)。細胞内で産生できなかったコレステロールを細胞外から取り込むことに成功したわけだが、他の代謝も滞っているため、その先のカスケードが進まず、細胞は死ぬことになる(コレステロール毒性)。
一方、この細胞が膜表面にLDL受容体を発現していなかった場合、コレステロールの細胞内流入は起こらない。しかし、メバロン酸の産生停止により、細胞周期を調節するイソプレノイドが不足しているため、細胞は癌化することになる。
「細胞死(アポトーシス)するぐらいなら、癌化してでも生き延びてやる」という、細胞の”意地”だとも思える。しかしアポトーシスも癌も、できれば避けたいものだ。

一体、僕が何の話をしているのか、わかりますか?
コレステロール降下薬の代表格、スタチン系薬剤の作用機序を念頭に置いて話しています。スタチンは、はっきり言って、カビ毒(mycotoxin)そのものだ。カビ毒が有機物(死体も生体も含めて)を分解・腐敗させようとする機序そのものを、「薬効」と称している。カビ毒が流入して機能が破綻しそうになった細胞が、生きようとして必死になって細胞内にコレステロールを取り込む。その結果、「ほら、血中コレステロールが下がって、よかったね」と言っている。
もうね、いい加減こんな茶番はやめにしない?^^;

スタチンの副作用をざっと挙げると、糖尿病、横紋筋融解症、認知症、癌がある。
なぜ、糖尿病が起こるのか?
膵臓のβ細胞は、細胞膜表面にLDL受容体を発現している。つまり、スタチンによって細胞内へのコレステロール流入が起こり(おかげで血中コレステロールは下がるのだが)、β細胞が死ぬ。結果、インスリンが出せなくなって糖尿病になる、という具合だ。
横紋筋融解症や認知症の発症機転も同様だ。筋肉やニューロンにLDL受容体が発現しているせいで、コレステロールの流入により細胞機能が破綻してしまう。
スタチンを取り込んだ細胞が、LDL受容体が細胞膜表面に発現していない(あるいは少ない)場合には、細胞周期の破綻により、癌細胞になる。
副作用として、他にも、体重減少、筋緊張低下、ふらつき、震顫などがある。

当然、製薬会社は研究段階でこういう副作用に気付いていた。
実際、三共は、犬への投与で腸内で血液癌(リンパ腫)が生じたことを報告し、スタチン系薬剤の開発中止を表明した。かつては良心的だったんだね。今ではジェネリックをしれっと売ってるけど。
スタチンの開発には日本人の遠藤章の尽力が大きくて、他の2名(BrownとGoldstein)は1985年にノーベル賞を受賞していることから、遠藤さんのノーベル賞受賞が期待されている。
たとえばこんな記事。
『ノーベル賞候補・遠藤章さん 10年間笑顔で待ち続ける秋田の実家』
https://mainichi.jp/articles/20191018/k00/00m/040/310000c

遠藤さんはスタチンの開発者だから、当然、その毒性についても精通している。
海外メディア(『ウォールストリートジャーナル』)相手だから気が緩んだのか、遠藤さん、こういう発言をしている。
「2004年に受けた検診で、LDLが155だった。スタチンを飲んでもおかしくない数値だけど、薬は飲まずに、頑張って運動して130まで減らしたよ」
「なぜスタチン開発者のあなたが、自分の発明品を飲まないのですか?」という記者の質問に対して、
「日本には、紺屋の白袴という言葉があるんだよ」

自分では絶対飲まないような薬を市場に流通させておいて、それでノーベル賞候補だなんてさ、何かの悪い冗談でしょう?

参考
“PROOF FOR THE CANCER-FUNGUS CONNNECTION”(JAMES YOSEPH著)

ショウガ

2020.2.3

『安心』3月号が全国の書店で販売中です。

小医の寄稿した文章も掲載されております。興味のある方はご一読くださいm(._.)m

安心の編集者さんが僕に一冊献本して頂いたおかげで、購入の労が省けた格好だけど、僕としては初めての全国誌デビューである。うれしいので、自腹でもう二冊購入しました^^
ぱらぱらと本を開いて、他の記事も読んでみる。様々な健康法、健康食材が挙げられている。
エビデンスがどうのこうの、という話になれば、強い根拠があるわけではないだろう。しかし、少なくとも、どれも害のないものである。全国のおじいちゃんおばあちゃんが安心して試せるものである。
西洋薬を見よ。有効とするエビデンスはある。しかし実際に飲めば、健康になるどころか、むしろ副作用で様々な病気になるだろう。
「何よりもまず、害をなすなかれ」が医聖ヒポクラテスの教えるところである。何らかの不調を感じたら、西洋薬に頼る前に、まず『安心』を読みましょう^^

ショウガについて特集されていて、おもしろいと思った。
だいたい、ショウガ科の植物が体にいいことは古くから知られている。生姜は、ショウキョウとして漢方薬に用いられるのはもちろん、調味料として当たり前に用いられているし、今や二日酔い対策の定番となったウコンもショウガ科の植物だ。
薬味として僕の大好きなミョウガもショウガ科だし、「スパイスの女王」として有名なカルダモンもショウガ科である。

ショウガ、ウコン、ミョウガ、カルダモン。
どれも風味が強くて、大量摂取には向いていない。単体で食べるというよりは、他のメイン食材の引き立て役、という感じだ。
どれもショウガ科であり、どれも健康効果があるのだから、ショウガ科植物は、実に偉大だ。この素晴らしい植物を、生活に使わない手はない。

具体的にどういうふうに体にいいのだろうか。
それは今月号の『安心』のメインテーマだから、ここでは詳しく話しません^^
ここでは、『安心」で全然触れられていなかった効果、つわりに対する有効性について、論文を紹介しよう。
『妊娠悪阻に対するショウガの効果』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/002822439190202V
「30人の女性を対象として、妊娠悪阻に対するショウガ(Zingiber officinale)粉末とプラセボを用いた無作為化クロスオーバー二重盲検を行った。
クロスオーバーというのは、実薬群とプラセボ群を、観察期間中に入れ替える操作をかます研究で、単なる二重盲検より、エビデンスレベルが高くなるよ。
観察期間の前半4日間、参加者は1日250㎎のショウガ粉末を含んだカプセルを飲むか、あるいは乳糖の粉入りのカプセルを飲んだ。で、2日間のウォッシュアウト期間(ショウガもプラセボも飲まない期間)をおいて、後半4日間は、飲むカプセルをこっそり入れ替えた。観察期間中つわりの症状の重症度(および軽快度)を二通りのスコア(主観的評価、客観的評価)で評価し、そのスコアを統計的に解析した。
結果、主観的な評価として、19人(70.4%)がショウガ粉末投与中に症状の軽快を感じた(P = 0.003)。客観的な評価でも、ショウガ投与後にはつわりの症状がプラセボ群に比べて有意に軽快していた。
副作用は観察されなかった。
結論:ショウガ粉末の投与は妊娠悪阻の症状の消失および軽快に対して、プラセボよりも有効である」

非常にきれいな、クリアカットな結果だね。
妊娠中、つわりに悩む人は多い。こういう人は病院に行って、メトクロプラミドとかプロクロルペラジンなどの処方を受ける。これ、どういう薬だと思いますか?
どちらもドーパミン受容体拮抗薬です。
と言っても、一般の人はピンと来ないでしょう。だからもっとはっきり言うと、ずばり、統合失調症の薬です。
つわりで気分の悪くなった妊婦さんに、統合失調症の薬を投与している。これが現在、産婦人科病棟で行われている治療です。

不気味ですよね。「妊娠中にこんな薬飲んで、大丈夫?」って思いますよね。
でも一般には安全とされている(だからこそ、妊婦にも遠慮なく処方されている)。
『妊娠時におけるメトクロプラミドと先天性奇形および胎児死亡のリスク』
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/1752754
結論:大丈夫、有意差は出なかったよ。
という論文だけど、、、
こんな不気味な薬飲むより、自分でショウガをすりおろして水に溶いて飲んでいるほうがリスクがないし、効果も多分、ショウガの方があるんじゃないかな。
少なくとも、僕に嫁がいるとして、妊娠したとして、つわりに苦しんでいるとしたら、妙な薬よりショウガを勧めたいな。

ポーカー

2020.2.2

大学時代に仲のよかった同級生連中と、ときどき飲み会をする。
みんな仕事やら家庭やらがあって忙しいから、定期的に開催しているわけではない。
誰かがふと、「飲み会をしよう」とライングループでつぶやいて、突発的に決まるのがお決まりの流れだ。平均すると、年に1、2回くらいの頻度でやっている。

そういうわけで、きのう仕事を終えてからすぐに東京に向かい、友人宅で皆と酒を飲みながら近況を話し合った。

学会などで東京に行くとなれば、山手線沿線の、ビルや商業施設が林立して人が猛烈に混み合うようなところに行くことが多いけど、今回お邪魔した友人宅は、井の頭公園駅の近くにあった。
驚いたのは、井の頭公園の自然の多さである。小さな川が流れていて、木々が茂っている。「こんなに静かな、落ち着いた町が、東京にもあったのか」と思った。
大阪で言えば、山手線は環状線、京急沿線は阪急沿線に似ているようだ。都会の喧騒とは距離を置きながらも、しかしその気になれば30分で新宿まで行ける。梅田へのアクセスがいい阪急沿線の駅と同じような感じがした。

そう、関西出身の僕は、東京のことを何も知らない。
飲みながら、こんな話が出た。
「開成中学の社会科の入試問題に、こういうのが出るんだってさ。ネットの記事なんだけどね、問題、読むよ。
『御徒町で地下鉄に乗り、都庁に行くことにしました。そこで大江戸線に乗ることにしました。上野御徒町駅で大江戸線に乗るときについて、次の文のうち正しいものを1つ選び、記号で答えなさい。
ア 都庁前駅に行くためには1番線に乗らなければならない。
イ 都庁前駅に行くためには2番線に乗らなければならない。
ウ 都庁前駅に行くためには1番線・2番線のどちらに乗ってもよい』
さて、どれだと思う?
これさ、正解はウなんだけど、東京出身者ならだいたい解ける。でも、東京出身者ではない人には、多分解けない。つまり、東京出身者には有利で、そうでない人には不利な問題なんだ。なんでこんな問題が出るのか?
それはね、開成中学の先生の、ちょっとした”思い”なんだ。
開成中学を受験するのは、開成に行きたい子供だけじゃない。合格しても全然開成に行く気もないのに受験する子供がたくさんいる。なぜか?塾の実績作りのためだよ。たとえば灘中学を合格したような子は、まず開成にも受かる。塾としては『開成に何人合格』と宣伝できるのは大きなメリットだから、優秀な子供に受験を勧めて、実績作りに貢献させる。
開成の先生だって、そういう子供がいることは百も承知だよ。ただ、あまりいい気持ちはしていない。だから、東京出身者が少しだけ有利になるような、さっきみたいな問題を出す。露骨なひいき、というような大げさなものではないよ。せいぜい2、3点の話であって、合否を左右する問題じゃない。この問題を落としたって、受かる子供は受かる。ただ、『東京出身の人、頑張ってね』という、ちょっとしたメッセージなんだ」
なるほど、しかし灘中学の先生も同じような気持ちを持っているんじゃないかな。
開成中学が本命の子供が、塾の実績作りのために、行く気もない灘中学を受験している。早稲田アカデミー(東京で有名な進学塾)はバス3台も出して、大挙、灘に乗り込む。塾業界のえげつなさは、西も東も変わらんよね。

友人の一人が最近ポーカーにハマっているという。
昼ご飯を一緒に食べながら、あまり熱心にポーカーの魅力を語るものだから、それなら僕もひとつ、と思って、渋谷にあるポーカーバーに行った。
ポーカーといえば、多くの人がまずイメージするのは、クローズド・ポーカーだろう。5枚の手札を配られて、役を作るためにカード交換をして、その後全員がカードをオープンにして勝敗を競う、というスタイル。
今回、ポーカーバーで経験してきたのは、テキサスホールデムというスタイル。
詳しい説明は省略するけど、結論を言うと、もう、むちゃくちゃにおもしろかった。
何がおもしろいといって、完全に”心理戦”なんだ。クローズド・ポーカーしかしたことのなかった僕は、この歳になって初めて、『ポーカーフェイス』という言葉の意味を真に理解した。そう、テキサスホールデムのポーカーでは、ハッタリが超重要だ。
役がワンペアさえなくても(いわゆる”ブタ”)、澄ました顔で高額のチップを張ったりする。その澄ました顔の裏にある感情を読み合うのが、カイジの世界にいるようで^^、本当におもしろかった。
ハッタリだけではなく、頭のよさも当然必要で、特に期待値の計算ができないようでは、安定した勝率をあげることはできない。
数学の参考書を開くと、確率の問題は、サイコロを投げたりトランプをめくったり、バクチみたいなことばかりしているものだけど^^;、これは確率論の発展がそもそもバクチの研究に由来することを考えれば、当然のことだ。

おもしろいと感じたのは、勝ったせいもあるかもしれない。
そう、ビギナーズラックのおかげか、5時間ほどプレーして、僕はボロ勝ちしてしまった。ただ、一円の得もしていない。換金できればいいんだけど、それをやると完全に賭博で、お縄を頂戴することになるからね^^;
勝ちたいと思いながらも、「どうせ勝ったところで、ただのチップやし」と妙に冷静なところがあって、それぐらいの心理状態の方が勝ち運に恵まれるのかもしれない。
ポーカーのおもしろさを知って、すぐにポーカーのアプリをダウンロードした。将棋、バックギャモンに続き、ポーカーも僕の趣味のひとつに加わった格好だ。
仕事そっちのけにならないよう、気を付けなくては^^;