2019.5.31
俗にキス病(kissing disease)という病気がある。
「うちの上司だよ。酔っ払うと誰彼かまわず、チューしまくるんだ」
いや、それは単なるキス魔であって、キス病ではありません^^;
たとえば大学生になって初めて異性とお付き合いを始める。若い二人だから、自然な流れとして、キスなんかもするようになる。それも唇が触れ合うだけの軽いのではなくて、舌の接触を伴うような「濃ゆーい」のをするようになったり。
医学的にはこれはなかなかの事態だ。
唾液中にはアミラーゼなどの消化酵素やリゾチーム、ラクトフェリンなど抗菌作用のある有機物もあれば、口腔内細菌、ウィルスなども含まれている。
いいもの悪いもののごちゃ混ぜになった唾液が、口腔粘膜の濃厚接触を通じて、双方の体内に流れ込むわけだ。
しかしほとんどの場合、何も問題は起こらない。
健康な性欲を備えた健康な若い男女は、健康な免疫をも備えているものだから、多少の異物が体内に侵入しても病気にはならない。
しかし、「初めてのチュー」の後、明らかに体調を崩す人がいる。最初は風邪かな、と思う。ところが1週間経っても熱が下がらない。ひどい倦怠感があって、のどやリンパ節がずいぶん腫れている。素人目にも明らかにおかしい。そこで病院に行く。
テキトーな医者(ほとんどの医者がこれ)に当たれば、「風邪ですね」で終わり。PL顆粒あたりを出してお茶をにごす。
ヤブ医者ならご愁傷さま。抗生剤が出て、ムダに腸内細菌が損なわれる。治療どころか、今後ますます病気にかかりやすくなるだろう。
しかし、有能な医者に当たればどうなるか。細かく問診して、患者が最近初めて異性と付き合い始めたことを突き止める。そして、伝染性単核球症と正しい診断を下す。
そう、「初めてのチュー後の長引く発熱」を見れば、EBV(エプシュタイン・バール・ウィルス)感染による伝染性単核球症を疑う。
9割の人は思春期までにEBVに不顕性感染して、抗体を持っている。
しかし幸か不幸か、感染せずに思春期を迎えた人は、せっかくできた恋人との甘いキスで、苦い思いを味わうことになるかもしれない。
つらい大人の洗礼だが、普通は自然軽快する。ただの風邪と誤診されようが名医が伝染性単核球症と正しく診断しようが、治療法は特にない。妙な薬を飲まず、安静にしていることが一番の治療だ。
しかし、なかには症状が重症化する人がいる。慢性疲労症候群やうつ病になって、延々取れない疲れに悩まされることになるのはまだマシなほうで、肺炎や肝脾腫、さらには多臓器不全や悪性腫瘍によって死亡するケースさえあるという。
初めてのチューが原因で死ぬなんて、すごい話だな。
一般的には打つ手なしとされているEBV感染症だが、有機ゲルマニウムによって治癒する可能性がある。
『慢性エプシュタイン・バール・ウィルス症候群(CEBVS)における有機ゲルマニウムの使用』
http://orthomolecular.org/library/jom/1988/pdf/1988-v03n01-p029.pdf
CEBVSの症状で苦しむアメリカ人は数百万人にのぼると見られる。本症は疲労が主な症状であり、EBVだけが唯一の原因だと確証されていないこともあって、慢性疲労症候群と呼ばれていることも多い。
CEBVS患者に対して有機ゲルマニウム(Ge-132)が効いたという初めての報告は1987年である。1日500mgを舌下に複数回投与すると、疲労およびうつが改善したという。
その後の研究で、Ge-132に対する反応は、大きな個人差があることがわかった。患者の半数近くは、1日使用量を1gまで増やしても、慢性疲労がほとんど軽快しなかった。しかし、半数の患者では確かに改善した。ただし、改善するのに必要なGe-132の量は、やはり個人差が大きかった。はっきりとした改善を自覚するためには1日1000mgの摂取を必要とする患者もいた。Ge-132を服用したCEBV患者の少なくとも20%が、劇的な改善を維持していた。
CEBVSに罹患し1年半症状に苦しむ医師がいたが、彼はGe-132によって劇的に改善し、いまや彼自身がこのサプリメントの熱烈なファンになって、疲労やうつに苛まれる患者にこれを勧めている。
1日300mgのGe-132によりCEBVS患者の約25%が著明に改善した、と報告する医師もいる。
CEBVS患者に対して栄養療法を行う医師が、Ge-132を治療に取り入れたところ、これによって著明に改善した患者もいたが、反応に乏しい患者もいた。1日150から300mgのGe-132によって、大半の患者ではCEBVSの症状が軽快したが、改善するまでにさらに高用量(多いと1日1gも)が必要な患者もいた。患者のうち25%はノン・レスポンダー、つまり、Ge-132をどれだけ投与しても何の効果も示さなかった。
Ge-132は他の栄養素と相乗的に働くのではないか、一部の患者でまったく効果がなかったのはGe-132が協調して作用するべき他の栄養素が不足していたためではないか。この推測にもとづいて、様々なサプリメントと組合わせて投与して、その効果を検討した。
その結果、Ge-132をコエンザイムQ10、DMG(ジメチルグリシン)と組合わせて投与することで、ほとんど全ての患者で改善することがわかった。改善するには非常に高用量のGe-132を必要とした患者も、コエンザイムQ10とDMGを併用するともっと少ないGe-132で有効性が見られた。
Ge-132はどのように作用を発揮しているのか。動物実験では、Ge-132の投与によって、インターフェロンの産生が高まることが明らかになっている。これが患者の免疫系に好ましい影響を与えていると考えられる。
何をやっても疲れがとれない、というのはうつ病患者にありがちな主訴だ。
背景に、EBV感染があるかもしれない。さらにその背景には、栄養バランスの偏りによる免疫系の弱体化があるかもしれない。
そういう人は、まずは有機ゲルマニウムを試してみて、それでダメならその他の栄養素(コエンザイムQ10、DMGなど)を追加するのも手だろう。
2019.5.30
「有機ゲルマニウムの作用の一つとして、抗酸化作用が言われますが、実は有機ゲルマニウムそれ自身にはin vitroで抗酸化作用はありません。
抗酸化物質の誘導作用がある、というのが正確な表現です。
有機ゲルマニウムの摂取によって、体内でビリルビンやウロビリノーゲンが増加しますが、抗酸化作用はこれらの物質によるものです。
ビリルビンはビリベルジンが酵素的に還元されて生成されますが、この還元にはATP (エネルギー)が使われています。わざわざそれだけの手間をかけているのは、抗酸化力を高めるためだと考えられています。
実際、ビリルビンの抗酸化作用は強力で、フリーラジカルの消去能でいえば、αトコフェロール(ビタミンE)やβカロテン(ビタミンA)をはるかに上回るほどです。
実験動物で四塩化炭素を経口投与すると活性酸素が発生して肝障害が起こりますが、有機ゲルマニウムを投与すると肝数値(AST、ALT)の上昇が抑えられることを確認しました。
同様に、免疫の活性化、抗炎症作用、解毒作用についても、有機ゲルマニウムが直接の作用を及ぼしているわけではありません。
免疫については、有機ゲルマニウムは白血球のトール様レセプター(TLR)の抗原認識を高める作用があって、結果、インターフェロン産生が高まり、抗癌作用などが発揮されます。
抗炎症作用については複数の機序があるのですが、まず、有機ゲルマニウムの摂取によって赤血球の代謝亢進が促され、ヘムが増加します。ヘムは肝臓で分解されるときにCO(一酸化炭素)を放出します。そのCOに強い抗炎症作用があります。
また、有機ゲルマニウムを摂取すると、抗炎症作用のあるプロトポルフィリンが増加します。
これは動物ではヘムになる一歩手前の前駆体です。プロトポルフィリンの環状構造の真ん中に鉄が挿入されると、ヘムになります。植物では、中央に鉄ではなくマグネシウムが挿入されてクロロフィルになります。つまり、ポルフィリンは動物にとっても植物にとっても重要な分子ですが、その産生が増加するわけです。
先ほど触れましたプロパゲルマニウムは慢性肝炎の治療薬ですが、COによる肝血流の増大とプロトポルフィリンによる抗炎症作用が薬効の本態だと考えられます。
動物実験でも、肉芽腫の抑制、胸腺重量減少の抑制、体重増加の抑制、抗リウマチ作用など、炎症由来の症状への効果を確認しています。
アミロイドーシスや白内障といった老化に伴う病態に対しても、アミロイド沈着の抑制や白内障の進行抑制作用が示されています。
さらに、骨代謝調節作用があって、過剰な骨吸収の抑制と骨芽細胞の分化促進作用があります。つまり、骨粗鬆症に対しても効果があると考えられます。
なぜ、こんなにも多様な作用があるのでしょうか。
それは、有機ゲルマニウムが、体の不調和を整える司令塔としての役割を果たしているからだと思われます。司令塔とはいっても、有機ゲルマニウム自体があちこちにしゃしゃり出るのではありません。カナメとなるメディエーターに働きかけ、様々な作用を誘導します。
有機ゲルマニウムは、ワンマンスタイルのスタープレイヤーなのではなく、ちょっと引いたところから全体を俯瞰している監督のようなイメージでしょうか。要所要所で各選手を鼓舞し、いいところを引き出し、活躍させる、といった感じです。
有機ゲルマニウムの毒性の低さ、つまり、安全性の高さは、ここに理由があるのではないかと考えています。
自らは抗酸化性も持たず、反応性にも乏しいが、有用物質を誘導することで、生体本来の健康維持機能を引き出しています。優れた教師や監督は、自らでしゃばらず、「ただ示唆し、導く」ものですが、有機ゲルマニウムのふるまいは、まさにそれに近いと感じます。
今、我々が研究しているのは、有機ゲルマニウムの鎮痛作用です。
特に、ATPを介した痛み刺激に対して、有機ゲルマニウムが著効するメカニズムについて、研究しています。
ATPというのは、ご存知のように、生体内でエネルギー通貨の役割をしますが、通常は細胞内に存在します。しかし細胞が壊れると、血中に漏出します。
実はATPは炎症源であり、発痛物質でもあります。細胞が壊れるという現象は、体にとって異常事態なわけですから、ATPにこうした催炎症性の性質があることは、生理にかなったことだと言えます。
この炎症が生体に様々は反応を引き起こします。
たとえば炎症を察知した白血球が現場に向かって組織の修復を行ったり、炎症により神経細胞が痛みを感じたり。そして有機ゲルマニウムには、鎮痛作用があります。痛みの伝達経路に作用して、痛みを緩和します。
経口摂取でも作用を発揮しますが、興味深いことに、経皮的にも効果があります。しかもこの作用は即効性です。虫歯の痛みに塗布してもいいでしょうし、湿布としてやけどなどの患部に貼付することも可能だと思われます。
ただ当社としては、そうした医薬品としての応用よりは、化粧品に配合するなど、誰でも使える形での普及を考えています。
実際、当社の有機ゲルマニウム入りの化粧品は、多くの女性からご好評を頂いています」
有機ゲルマニウムは、もはや、僕の臨床には欠かせない存在になっている。
単剤で使うことはあまりないが、他のビタミンとの併用で非常に大きな効果を上げている。
多様な症状に作用し、しかもナイアシンによるホットフラッシュのような副作用がなく、使いやすい。このあたりが、ビタミンCによく似ていると思う。
あえていえば、値段がちょっとお高いのが難かな^^;でもそれだけの価値は十分にあると思う。
すでに臨床で効果を実感していたが、改めて有機ゲルマニウムのプロフェッショナル(それも生半可に詳しい程度ではなく、世界一詳しい現役研究者)に直接話を聞いて、理解が深まった。
中村さんから頂いたパンフレットによると、有機ゲルマニウムを脳障害児95人に投与した研究があって、先天的なもので決して治らないと思われている症状(IQ低値、自閉症など)に対しても著効したという。
子供でも安心して使えるぐらいだから、大人が日常の健康維持に使う分にも、何ら問題ないだろう。
興味のある方は一度試してみてください。
2019.5.29
以前、有機ゲルマニウムの有効性について当ブログで紹介した。
そのブログのなかである論文を引用したところ、なんと、その論文の著者ご自身から僕にファックスで連絡があった。
「浅井ゲルマニウム研究所の中村宜司と申します。
ゲルマニウムをブログに取り上げていただき、また、拙著の論文も引用紹介いただき、光栄に思います。
もしよければ、貴院に一度お伺いして、情報交換できれば、と思うのですがいかがでしょうか」
まさか論文の著者その人から連絡があろうとは夢にも思わない。
世界ってこんなに狭かったっけ?笑
世界で初めて石炭からゲルマニウムを抽出し、高純度に精製することに成功した浅井一彦氏は、ゲルマニウムの人体への治療効果に注目し、生涯をゲルマニウムの研究に捧げた。
浅井ゲルマニウム研究所はその浅井氏の意思を受け継ぐ組織であり、そこでは現在も有機ゲルマニウムの有効性の機序を解明しようと、日夜研究が行われている。
中村さんはその組織の取締役である。同時に、現役の研究者でもある。
世界一有機ゲルマニウムに詳しい人、と言っても過言ではない。
そんな人から直接お話を伺える機会なんて、普通はあり得ないことだ。
二つ返事でオファーを受けた。
中村さんの話
「ネットをざっと見ましても、有機ゲルマニウムに関する情報はずいぶん錯綜しているように思われます。毀誉褒貶が相半ば、という感じです。
一番の原因は、かつて悪質な業者が無機ゲルマニウムを偽って有機ゲルマニウムとして販売し、死者が出たことにあります。
無機ゲルマニウムは長期大量投与で致死的な腎不全を起こしますが、有機ゲルマニウムにはそのような毒性はありません。
様々な試験(単回投与、反復投与、抗原性、生殖毒性、遺伝毒性、皮膚毒性など)で毒性のないことが示され、安全性は極めて高いことが証明されています。
現在、有機ゲルマニウムを製造販売するメーカーは国内に4社あります。どれがいい、悪い、とはあえて申しません。
ただ、多くのメーカーは二酸化ゲルマニウム(毒性あり)をハロゲン化するプロセスを経て有機ゲルマニウム(毒性なし)を製造しています。
一方、当社は多結晶ゲルマニウムを直接精製し、そこから有機ゲルマニウムを得ますので、毒性の生じる余地がありません。
二酸化ゲルマニウム経由とはいえ、純度100%であれば、まぁ問題はないのですが、当社は浅井の開発した方法にこだわっています。
その分製造にお金がかかる点がネックで、消費者の財布に負担をかけてしまうのですが、それでも、本物を提供したいと思っています。
当社は相当な資金を費やして、私を含め研究者が有機ゲルマニウムの研究に取り組み、論文を生み出していますが、他社にはそういう研究施設を備えたところはありません。
他社は、二酸化ゲルマニウム経由のプロセスで製造費を安く抑え、かつ、Ge-132を名乗っています(これはもともとは浅井ゲルマニウム研究所での開発番号です)。
独自の研究がないどころか、当社のパンフレットをそのまま利用している他社さえあります。
誤解のないように申し添えますが、「他社製品は有害だ」、と言っているわけではありません。
有機ゲルマニウムによって、病気に苦しむ人が一人でも多く救われれば、というのが浅井の願いでした。
このようにゲルマニウムを扱う業者が複数あり、患者、業者ともに共存共栄の関係になれれば、これはむしろ浅井の望むところかもしれません。
しかし、こういう他社と市場で競合していくことは、実に骨の折れることです。
現在の製薬企業のスタイルは、一病一薬が基本です。つまり、ひとつの病気、たとえば高血圧に対して、血圧を下げる薬を作ろう、というように。
しかし浅井の生み出した有機ゲルマニウムは、そうした医薬品のカテゴリーに収まるものではありません。
免疫賦活作用、抗酸化作用、抗炎症作用など様々な効果があって、有効性を示唆するデータは無数にあります。
しかし厚労省から薬としての認可を受けるには、「万病に効く薬」として申請するわけにはいきません。
そこで、別会社が有機ゲルマニウムの分子構造に若干の修飾を加えたプロパゲルマニウム(医薬品名はセロシオン)という慢性肝炎の治療薬として申請し、厚労省の認可を得ています。
ただ、その製造販売権を持っているのは当社ではありません。
そして当社は、有機ゲルマニウムを医薬品としてではなく、食品(および化粧品)として扱っています。
このあたりの事情は入り組んでいるため、ここで詳述することは控えます。
有機ゲルマニウムの作用については非常に多岐にわたるのですが、何をお話ししましょうか。
有機ゲルマニウムを飲み始めると、まず、わかりやすい変化として、便の色が変わります。
便秘の人は固くて、黒みがかった茶色の便の人が多いですが、黄色い軟便になります。尿の黄色味も増します。
なぜこのような変化が起こるのか。
有機ゲルマニウムによってマクロファージやクッパー細胞が活性化し、老化した赤血球が網内系で除去されます。
赤血球の内容物であるヘモグロビンが分解されてヘムになり、これがビリルビン、ウロビリノーゲンへと代謝されます。
ウロビリノーゲンは酸化されるとオレンジ色に着色されてウロビリンになって、便中に排出されます。
つまり、古い赤血球の破壊亢進に伴って、ビリルビンやウロビリンが増加していることが、便の色が変わることの原因であるわけです。
「赤血球が破壊される?体に悪いんじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし有機ゲルマニウムを継続的に摂取している人の血液データを見ても、ヘモグロビンやヘマトクリットの低下は見られない。
つまり、単なる破壊というよりは、代謝の亢進であって、新しい赤血球が次々と産生されているわけです。
赤血球の寿命は120日とされていますが、「長生きならいい」というものではありません。老化した赤血球は連銭形成を起こしやすく、肥大化し、末梢の微小血管を通りにくくなっています。
古い赤血球には体内から退場してもらい、新しい後進が生まれ育つことが必要なのですが、有機ゲルマニウムの仕事はまさに、赤血球の「破壊と創造」です。
浅井は著書に「ゲルマニウムが酸素の代わりをすることで、体内の酸素が豊富になり、様々な効能をもたらすのではないか」と書いています。
これは現在の目から見て不正確な表現です。ゲルマニウムに酸素運搬能はありません。
しかし、ゲルマニウムが赤血球の代謝を亢進し、酸素供給能が高まるわけですから、結論的に浅井の予見は当たっていたと言えます」
2019.5.28
そもそも、コレステロールの値が高いと何が悪いのか。
一般的には「動脈硬化の原因になるから」というのが理由になっている。
だから高いコレステロール値を見れば、医者は薬を処方して、躍起になって下げようとする。
もはや現代においてコレステロールは、それ自体、追放されるべき悪者、治療されるべき病気なのだ。
しかし、重大な事実が見落とされている。
コレステロールが原因で動脈硬化が起こったことは、有史以来、ひとつの例もないし、今後もあり得ない。
なるほど、コレステロールが高いことは動脈硬化(およびその延長にある心筋梗塞や脳梗塞)の発症に関連するリスク因子ではある。
しかしそれだけのことだ。
それだけのことであるはずが、いつの間にか相関関係と因果関係が混同されてしまった。
いまや、あたかもコレステロールにすべての非がある、といった状況に至った。
まったくナンセンスな事態である。コレステロールのせいで動脈硬化になる、というのは、消防士がいるから火事が起こる、といっているようなものだ。
確かに、ある種の血中脂質増加と動脈硬化(および心筋梗塞)の発症率増加との間には弱い相関があるが、だからといって、その血中脂質が問題の張本人というわけではない。
体内で脂質がどのように働いているかを考えてみるといい。
皮膚で太陽照射を受けてビタミンDに変換されるなど、コレステロールはれっきとした抗炎症物質なんだ。
コレステロールは不当な批判を浴びている。では何が真の原因なのか。
現代人が好んで過食する砂糖や精製小麦。これこそが問題の根本だ。
これらの糖質は体内で炎症を引き起こす。体はその炎症を何とか鎮静化しようとして、コレステロールの血中濃度を上げる。
しかし、絶えざる糖質の流入に対して、コレステロールの増産で対処できなくなったとき、古いコレステロールが動脈に沈着しはじめる。これが動脈硬化の始まりだ。
勘違いしてはいけない。コレステロールは何も悪くない。炎症を鎮めようとしてわざわざ出張ってきたのだ。
火消しにやってきた消防士が、放火の犯人だとして批判されている。こんなデタラメな話はないだろう。
しかしこんなデタラメに基づいて、大真面目に「治療」が行われるのが現代医療だ。
根本的なところで考え方を誤っているのだから、患者にメリットのあろうはずがない。
俗に善玉コレステロール(HDL)、悪玉コレステロール(LDL)などというが、善玉、悪玉という別種のコレステロールが存在するわけではない。
コレステロールはコレステロールで、一種類しかないが、血中の移動様式が異なるだけだ。
軽自動車に乗っていようが高級外車に乗っていようが、あなたはあなたでしょう?それと同じことだ。
HDL(高密度リポタンパク)はコレステロールの回収屋で、体内の各組織にあるコレステロールを肝臓へと運ぶ。
HDLの血中濃度が高いのは好ましいことで、動脈硬化の発症を防いでくれる。
LDL(低密度リポタンパク)は逆に、肝臓から全身にコレステロールを輸送する運び屋だ。
これは「悪玉コレステロール」と言われているが、LDLが本当に「悪玉」、つまり体に害をなすのは、LDLが酸化したときだ。
HDLをクリーンな電気自動車だとすると、酸化LDLは散々排ガスをまき散らす燃費の悪いディーゼル車のようなものだ。
血中脂質を調べることは、動脈硬化の進展具合を見るのに役に立つ。
ただ、総コレステロール(HDLとLDLの合計)は計っても意味がない。
100台車を持つのは悪いことか?それ自体では何とも言えない。
100台全部が能率的なクリーンな車なのか、錆びついたおんぼろの車なのかで、全然話が違ってくるだろう。
HDLの数値が高いことは好ましいことだ。この数字は、高ければ高いほどいい。
逆に、LDLが高いときには、さらに精査して、リポタンパク(a)を調べるといい。
LDLの酸化の度合いを知ることができる。
このリポタンパク(a)濃度が30mg/dl以上になると、動脈硬化を背景とする合併症(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)の発症率が激増する。
おもしろいことに、高脂肪食を食べた後には、この濃度が低下することがわかっている。
動脈硬化は血管にアブラがつまっているんじゃない、ということが、この一事からでもわかるだろう。
コレステロールの値をまったく無視するのも、それはそれで問題だ。
LDLが非常に高い原因は、体が大量のコレステロールを産生する必要に迫られているか、コレステロールの利用効率が落ちているか、あるいはその両方だ。
これには何らかの対応が必要だが、薬を飲んで万事解決、とはならない。
スタチン製剤は肝臓のコレステロール産生を止めるが、これは火が燃え盛っているのに消防士を帰らせるようなもので、何の根本的解決にもなっていない。
人為的に下げるのではなく、自然に下がるようにする。
これが正解だ。
そのためには、コレステロール上昇の背景(インスリン抵抗性、炎症、酸化ストレスなど)に取り組むことだ。
過剰な精製糖質の摂取を控え、ビタミンK2、D3といった脂溶性ビタミンや、ビタミンC、ナイアシンなどの水溶性ビタミンを意識的に摂ることで、症状改善の助けになるだろう。
参考
Vitamin K2 and the Calcium Paradox(Kate Bleue著)
2019.5.27
力士同士が立ち合いで正面からぶつかったとき、双方が受ける衝撃は軽く1トンを超えるという。
いかに当たり負けしない体を作るか、衝撃に耐える強靭な体を作るか。力士は常にこの課題と向き合っている。
食べることも稽古のひとつだった、と元力士が語っている。
そう、体を大きくするための秘訣は、力士の食事にある。
力士の食事と健康についての研究がある。1976年と古い研究だが、今読んでもおもしろい。
https://www.researchgate.net/publication/22180569_Some_factors_related_to_obesity_in_the_Japanese_Sumo_Wrestler
力士の食事は、朝夕の1日2回。ちゃんこ鍋というポークシチュー様の鍋を主食とし、一日の総カロリーはおよそ5500kカロリーである。
そのカロリーの内訳は、780グラムの炭水化物、100グラムの脂質、365グラムのタンパク質である。
なお、平均的な日本人は1日に3回食事し、平均摂取カロリーは2279kカロリーである。また、その内訳は、炭水化物359グラム、脂質50.1グラム、タンパク質82.9グラムである。
よって、平均的日本人と比べた場合、力士の総カロリーおよび炭水化物の摂取量は2倍以上、脂質は2倍弱、タンパク質は4.5倍ということになる。
力士の食事は、総カロリーの57%を炭水化物が占め、脂質の割合は16%と低い。
さらにこの研究では、番付が下位(幕下以下)と上位(十両、幕内以上)の力士で、体格や食事量の違いを見ている。
下位力士では、上位力士と比べて、体重が同じであったとしても、有意に脂肪が多く、かつ、筋肉が少ない傾向にあった。
また、下位力士はちゃんこ鍋を1日平均5120kカロリー摂取するが、その内訳は炭水化物が1000グラム、タンパク質が165グラム、脂質については、わずか50グラムだった。
つまり、下位力士の食事は80%近くを炭水化物が占め、脂質はたったの9%しか摂取していなかった。
この研究は示唆的で、多くのことを語っている。
「いかに太らないか」を考えて食事している人が多いこの現代社会で、力士は例外的に、いかに太るか、いかに体を大きくするかを考えて食事している。
そしてその力士の食事は、上記の研究が示すように、高炭水化物・低脂質食である。
ただし、炭水化物が多ければ多いほどいいのかというとそうではなく、実力上位の力士の食事は下位力士よりも炭水化物が少なく、脂質が多かった。
やせたい人にとって、この研究は非常に参考になるだろう。
つまり、やせるためには、力士の食事スタイルの逆(低炭水化物・高脂質食)をいけばいいわけだ。
さらにこの研究では、力士の血液データや慢性疾患罹患率も調査している。
力士の血中の中性脂肪、リン脂質、尿酸、総タンパクは、健康男性と比べて、いずれも有意に高かった。
また、力士の糖尿病、痛風、高血圧の発生率は健康男性と比べて、それぞれ5.2%、6.3%、8.3%高かった。
体重は、皮下脂肪厚、収縮期血圧、総コレステロール、尿酸と有意に相関していた。
体重、尿酸を独立した変数として重回帰分析で処理したところ、肥満、高脂血症、高尿酸血症は、主に高カロリー(炭水化物主体)の食事が原因だと考えられる。
力士は体を作るために、高炭水化物・低脂質食をとっている。
この食事スタイルは、現役の力士生活が続く限り、変わることはないだろう。
しかしこれは力士の体に大きな負担を強いるもので、その結果が、上記のように、各種疾患の増加に反映されている。
ここにも健康へのヒントがある。
高炭水化物・低脂肪食が、糖尿病、痛風、高血圧のリスク因子になっているのだから、逆を心がけるといい。
近年、糖質制限という言葉は、医療関係者だけではなく、一般の人にもずいぶん浸透してきたが、すでに1976年の研究でその有効性が示唆されていたということだ。
ただし、やりすぎはご用心。
「糖質が諸悪の根源だったのか!」とばかりに、一切の糖質を断つなど、ストイックにやりすぎる人がいる。
それはそれで、また別の弊害があることが指摘されているので、何事もほどほどにね。
参考
“Good Calories Bad Calories” (Gary Taubes著)