院長ブログ

白内障

2018.7.31

眼科の先生。
「先天性緑内障で生まれた赤ちゃん。医者が病気に気付けば治療することになるが、気付かなければその子、失明するだろう。
でも、それはそれでかまわないとも言える。なぜか。
それはね、最初から光のない世界に生まれた人は、それを当然のこととして受け容れるからだ。
『あら、あの人、生まれつきの盲目なのね、かわいそうに』
などと世間の人は言うかもしれないが、それこそ偏見であり、差別というべきだろう。
むしろ本当にかわいそうなのは、成人してから光を失う人のほうではないか、と思う。
とはいうものの、先天性緑内障を見落とした、我が子が失明したとなれば、親は『子供を不幸にしてくれたな』と激怒して、裁判沙汰になること必至だろう。
だから見落としちゃいけない疾患なんだ。
ハナから与えられなかったものに、執着なんてわきようがないが、与えられたものを取り上げられるとなれば、人間の執着はすさまじい。
たとえば70歳のおじいちゃんが、白内障の手術をしようかどうしようか、悩んでいるとする。
相談に応じると、彼、こんなことを言う。
『目を手術するのが、怖くて怖くて。局所麻酔だから、手術中、意識があるっていうじゃないか。せめて全身麻酔でこっちが何もわからないうちにやってほしい』
いえ、白内障の手術は基本的には局所麻酔で行います。認知症があって動いてしまうなど、やむを得ない人には全身麻酔もありえますが、例外的です。
『頭ぼけたフリすれば、全身麻酔でやってくれる?』
いえ、しっかりしている方だともう分かっているので、ダメです笑。痛みはほとんどないので、その点は心配しないでください。
『もうね、いっそ見えなくなってもいい、とも思うんだ。でもせめて、あと十年、見える状態で過ごせたら、と思う。もうすぐ孫が生まれるんだが、失明するのはせめて孫の顔を見て、孫の成長を見守ってから、と思う』
謙虚なじいさんだな、と思ってはいけないよ。十年たってみなよ。
80歳になったおじいさん、『あともう十年』と言うに違いないんだ。
『人生80年。美しいものも醜いものも、もう充分、この目でたくさん見てきた。心をかき乱す視覚の世界から解放されて、余生は心の目を開いて生きていこうと思う』なんて、マンガみたいなこと、言うわけがないんだ。
仏教では執着を煩悩の一つだとしているが、視覚への執着は、人間として当然だろう。
緑内障、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症など、成人になってから失明を来す疾患は数多いが、自分が失明するなんて、想像するさえ恐ろしい。
もっとも、白内障が原因で失明することはまずない。手術で治る病気だからね」

そう、白内障は手術で治る病気かもしれないが、栄養療法がお助けになる病気でもある。
そもそも白内障は目の水晶体が濁る病気で、濁りの原因としては、アトピーなどの外傷、薬剤、放射線、その他の炎症が挙げられる。
外傷を除けば、要するにどれも、酸化が根本にある。だから、抗酸化力のあるビタミンの投与が白内障に有効なはずだ。
ただし、白内障になってから急にあせってビタミンCのサプリ飲みだしたところで、それで白内障がすぐ治癒する、ということはさすがに難しいけど。
https://academic.oup.com/ajcn/article/66/4/911/4655981
10年以上ビタミンCのサプリを飲み続けた人は、そうじゃない人に比べて水晶体がクリアだった、ということが示されている。
いろんなサプリがあるけど、健康維持のために毎日どれか一つだけ飲むとすれば、ビタミンCがおすすめだよ。

冠動脈疾患

2018.7.30

動脈硬化が進むと、狭心症とか心筋梗塞など、心臓に症状が出ることがある。
一般的な病院にかかって治療するとなれば、とりあえず以下のような指導をされることが多いと思う。

1.禁煙
2.塩分・糖分・脂肪分を取り過ぎないバランスのよい食事
3.適度な運動
4.ストレスを避け、規則正しい生活を送る
5.血縁者に心筋梗塞の患者がいれば特に注意
6.高血圧・糖尿病・高脂血症の早期発見
7.強い胸痛を感じたらすぐ病院へ

おおむね同意だけど、いくつかコメントしたい。
「タバコは体に悪い」としばしば健康の敵としてやり玉にあげられるタバコだが、この言葉は不正確で、正確には「タバコに含まれる添加物は体に悪い」である。
ナス科タバコ属の植物の葉を乾燥させて、それに火をつけてその香りを吸引することは、むしろアロマテラピーに近い行為であって、ストレス緩和作用をはじめ、様々な薬効が期待できる。
循環器に対するストレスの悪影響を軽減するためには、むしろタバコは推奨されてもいいと思う。ただし、それは添加物を含まないタバコに限る。一般に販売されているタバコは、やはり、「体に悪い」。

塩分が高血圧の原因というのは神話であって、現在ではすでに否定されているが、いまだに減塩指導がされている。人間にとって塩は不可欠であるにもかかわらず。
この間違った指導のために多くの人が無用の苦しみを味わっている。
制限すべきはむしろ、塩よりは化学調味料だ。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21372742)
味の素がどれほど体に悪影響を与えるかということは、日本ではほとんど知られていない。マスコミの一大スポンサーだから、味の素に否定的な報道はたとえそれが真実であっても言えない、ということだろう。
糖分の害については最近多くの人が知り始めたところなので、ここではあえて触れない。
脂肪分については、一概に退けるべきでない。トランス脂肪酸(サラダ油など)など極力控えるべき脂肪があるのは確かだが、現代人には不足しがちなオメガ3系脂肪酸(亜麻仁油、荏胡麻油、青魚)の摂取はむしろ推奨される。

高血圧、高脂血症など、数字だけを見て「高いね。お薬を始めましょう」と条件反射的に投薬が始まるのが現代医学だけど、なぜ高いのか、その背景に思いを巡らせば、機械的に投薬することには躊躇があってしかるべきだ。
人間の体はバカじゃない。血圧をあげる必要があるから、高いのだ。それはたとえば、末梢に虚血があるから、心臓が頑張って血圧をあげているのかもしれない。
なぜ血中の中性脂肪やLDLが高いのか。その背景にはインスリン抵抗性があることが多い。そうだとすると、まず取り組むべきは食生活の改善であるべきだ。食習慣にメスを入れずに投薬だけ開始するのでは、治療として不適切だ。

バランスのよい食事、とはよく聞くフレーズだが、この定義は知らない。ただ、野菜にしても肉にしても、現代の食事は昔と比べて、そもそも食材に含まれている栄養分自体が減少傾向にあることは間違いない。
したがって、本人としては、普通にバランスのよい食事をしているつもりでも、必ずしも十分量の栄養が体に足りているとは限らない。
そこでサプリメントの出番である。食事で摂取できるのならそれに越したことはないが、栄養の不足しがちな現代人にとって心強い味方になるだろう。

栄養療法は、サプリを含めた栄養の摂取および食事改善によって病気を治癒させる、というのがその核心である。
以下にホッファーの経験した循環器系疾患の症例をひとつ供覧しよう。
以下、”Orthomolecular Medicine For Everyone”からの引用。

「M.B.は冠動脈閉塞のために2週間の入院が必要となった。一見回復したように見え、心臓病患者の健康プログラムに参加していたが、1年経っても非常に疲れやすいままだった。
平坦なところを歩いている分にはよかったが、階段を上がると息が切れた。それに、ストレスに対処するのが非常に難しく、これがために彼は職場で上級管理職として能力を発揮することができなくなった。私のところに診察に来る前に、彼はすでに食事を改善していた。
私は彼に砂糖抜きの食事を開始し、サプリとしてナイアシン、アスコルビン酸、ビタミンE、ピリドキシン、硫酸亜鉛を加えた。1カ月後、彼はほとんど正常に戻っていた。活気に満ち、不必要に緊張を感じることもなく、ストレスに対しても楽に対処できるようになった。」

ごく簡潔な症例報告だけど、ここには栄養療法のエッセンスがつまっている。
一般的な治療では充分に軽快しなかった症状が、食事の改善と適切なサプリの併用によって、見事に治癒したわけだ。
一般的な病院で治療を受けているものの、いまいち治りきらない、という方は、一度栄養療法を試すといいよ。
別に危険な薬を飲むわけではなく、飲むのはまぁ言ってみれば単なるビタミンだから、副作用もほとんどない。
試さないと損だと思いませんか。

手洗い

2018.7.29

もともと外科系に行こうという気はなかったんだけど、ポリクリを回っているうちに、その思いは確信に変わった。自分は絶対に外科じゃない、と。
その大きな理由の一つは、一言でいうと、手洗いの面倒くささなんだけど、何というか、その知り方が、実に苦かった。

とあるマイナー外科を回っているときのこと。四十才ぐらいの指導医が、
「手洗い、習ったことないの?」
「いえ、一度授業で習いましたが、ほとんど忘れてしまいまして」
「じゃ、俺の言うようにやって」
手を濡らし、洗浄液を手にたらして、念入りに洗い、泡を水で落とす。
「ああ!ダメダメ!
泡を落とすときに、しずくが指先じゃなく肘のほうに流れるようにしないと。もう一回やり直し。最初から」
また洗浄液を手に取って、洗い始める。
さっき一度洗っているのだから、と、一回目より簡単に済ませて、すぐに泡を落とそうとしたら、
「おい!何やってんだよ!最初から、っつってんじゃん!教えられたとおりにやれよ!」
もう一回洗浄液を手に取って、今度は念入りに洗う。
いい加減イライラしてきたせいもあって、手を激しく動かして洗ったせいで、うっかり手が水道の蛇口に触れてしまう。
「ああ!ダメだ!そんなところに手がついちゃ!雑菌まみれだぞ!はい、もう一回最初から」
指導医、わざとらしく大きなため息をついた。「犬のほうがまだ物覚えがいいくらいだぞ」
ため息をつきたいのは僕のほうも同じだった。指導医に気付かれないように小さなため息をついて、もう一回最初から手を洗い始めた。
何とか手洗いは無事に済んで、次にガウン着用ということになったが、
「ガウンの着方は知ってる?」
「授業ではやりましたが、ずいぶん前なので覚えていません」
「じゃ、言われるようにやって」
そでに手を通し、マスクの両端のヒモを手伝いの看護婦に渡す途中で、触れてはいけないところに触れてしまったらしく、また叱責の声が飛んできた。
「ああ!そこは不潔だよ!ったくもう、頼むよ、ほんと」と、さげすむ目でこちらを見て、
「俺、こいつを教える金、もらってねえよ」と傍らの看護婦に大げさに嘆いて見せる。
看護婦のぎこちない苦笑い。
僕は、どういう表情を作ったらいいのか、よくわからない。
「はい、もう一回からね」と、水道のほうをあごで示した。
「最初から、何を・・・」
「決まってんじゃん。手洗いだよ」
頭が熱くなった。
この指導医への怒りなのか、自分への情けなさなのか、何だかよくわからない感情で胸がつまった。
今すぐにも泣きたいような気持だったが、いけない。
心をからっぽにして、洗浄液を手に取って再び念入りに洗い始めた。

彼の言っていることは正しいと思う。
手洗いの最中に手が蛇口に当たってしまっては最初からやり直すべきだし、ガウンの着用の際にはどこを清潔に保つべきか、きちんと認識しておかないといけない。
でもこの先生、学生指導に向いている性格だろうか。
というか、もっと根本的に、人に接するときの、人への態度はどうなのか。学生相手にこの態度なら、患者相手にはどういう態度なんだろう。
もちろん、指導医として、学生を叱る必要があるときもあるだろう。
でもその叱責が、本人のためを思って言いたくないことをあえて言ってくれているのか、それとも、権力をかさにきて人をいびることが快感だから叱っているのか、その違いくらいはわかる。

僕が外科医志望ならどうなっていただろう。
まさかこの一事のために外科をあきらめるなんてことはないだろうけど、少なくともこんな指導医がいる医局は避けようと思ったと思う。
幸いにも外科に入ろうとは考えていなかったからよかったんだけど、、、
強い殺菌作用のある薬剤で入念な手洗いを繰り返した手は、皮がむけてガサガサになった。
まぁガサガサになったって、そんなのはすぐに回復するからいい。でも、外科に対して残った嫌な思い出、こっちのほうはなかなか消えへんのよ。

ミシュラン

2018.7.29

今日は、というか日付が変わったからきのうは、なんだけど、僕のクリニックの患者さんであり、かつ、僕の師匠でもある先生に晩御飯をごちそうして頂き、先生行きつけのバーにも連れていって頂いた。
1ヶ月前に当院来院の際にもその後食事に連れて行ってくれ、バーを回るという同じコースをたどったんだけど、またしてもごちそうになった。
先生は開業は高砂でしているんだけど、三十年ほど前には神戸で勤務医をしたから、神戸、特に元町にはすごく詳しくて、現在元町在住の僕よりもはるかに詳しい。
連れて行ってくれた店の大将に「震災前にはどこそこに何々という店があったけど、今はもうなさそうやね」「ええ、三年前にオーナー、閉店されました。ミシュランにも星のついた店でしたから、周囲も閉店には反対してましたけど、オーナーは、そんなもん関係ない、と」
「え、ミシュランの星ついてたん?それは知らんかった。ずいぶん格上げたなぁ」
「どっちかというと、オーナー、ミシュランに選ばれてもむしろ、不愉快そうでした。タイヤメーカーのくせに、うちの味なんか分かるわけない、偉そうに格付けすんな、と。あるとき、ふと、外人の二人組が店に来た。その時点でオーナー、ピンと来た。食後、名刺を渡されて、ここの店を紹介したいのですが、と言いに来た。名刺にはミシュランの名前。普通のオーナーなら、満面の笑みで「ぜひお願いします」ってなもんでしょう。でもオーナー、「外人に和食の味なんて分かるわけない」って思ってたから、ミシュランに掲載する写真の提供を求められても、拒否した。でも、ご存知ですか、僕は知らなかったんですけど、ミシュランへの掲載を拒否する権利ってないんですね。だから、店の名前は載ってしまう。写真は記者が勝手に撮った写真が載るっていう格好になりました」
若い頃、先生が「ここはうまい」と思って通っていた店が、後年ミシュランから評価を受けたわけだ。
こういうのって、商売っ気のあるオーナーにとったらこの上なくおいしい話だけど、本当の職人仕事をしたいオーナーにとっては、むしろ不愉快なのだという。
「オーナーはね、味を本当にわかったお客さんにお出ししたかったんです。ミシュランガイドに載ってるから、というのを見てから来る客は、料理を食べてるんじゃない。情報を食べているんです。予約が殺到して、本当に大事にしたい昔からのお客さんが気軽に店に入れなくなってしまう。何食わしても同じ味ボケの客の相手なんか、したないわ、ということを言われてました」

料理ではなく、情報を食べている。
でもこれって、みんな多かれ少なかれ、同じじゃないかな。
本当に味のわかる人って多分客全体の1割くらいで、8割の人は店の空気とか情報楽しみに来てて、味も「大ハズレじゃなければまぁいいよ」ぐらいの人、残り1割は何食わせても全く違いのわからない人、といったところだろう。
違いのわかる1割の客のために本当の仕事をしたいっていうオーナーの気持ちはわかるけど、客商売という性質上、その他9割のお客さんも大事にしないといけない。
うちに来てくれる患者さんもそんな感じじゃないかなとふと思った。僕の治療方針に理解のある人って1割ぐらいかもしれない。僕は別にそれで全然よくて、どんな患者でもウェルカムなんだけど笑。
でも僕は、そういう職人気質の頑固さとかこだわりって嫌いじゃなくて、むしろ僕もそういうこだわりを持ったほうがいいかもしれない。

緊張症

2018.7.28

「あがり症で、会社で皆の前で何か発表するときとか、声が上ずったり、自分の言いたいことを言えなかったり。
いえ、薬は頓服ではなく、毎日飲んでます。職場の同僚との何でもない雑談のときでも、不必要に緊張してしまうことがあって、変な奴だと思われたくないので。
メイラックスと抗うつ薬と降圧薬は手放せません。降圧薬はドキドキを抑えるために飲んでるんだけど、血圧は正常なので、適応外処方だといわれてますけど。
デパスがよく効くんですが、眠くなっていけないので、デパスは本当に緊張するときの最後の手段として飲むように言われています。

昔は人の前に進んで立つほうでした。中学生の時は生徒会の役員をやってて、会議の場で進行役をするのが得意でした。でもあるとき、そういう会議の場で、急に声が上ずってしゃべれなくなりました。
以来、緊張症は私の持病になりました。人の目を見て話すことができなくなりました。人とのコミュニケーションが苦手になりました。
大学生のときの発表でも教授や研究室の皆の前で話すことができなくて、苦労しました。それで初めて、心療内科に通い、デパスをもらいました。
デパスは素晴らしく効きました。皆の前で饒舌に話すことができて、緊張知らずだった小学生のときの本来の自分に戻れたようでした。
会社に入ってからもデパスに頼っていたのですが、眠気がひどくて。会社の発表の場で、自分の発表をこなせたのはいいものの、そのあとに寝てしまう。発表会って、自分の発表さえすれば終わり、じゃないんです。他人の発表もきちんときいてこその発表会なんです。
女性との交流も緊張してしまいます。あがってしまうと、言葉が出ない。相手にどう思われるかと思うと、恋愛にも踏み出せなくて」

緊張症には糖質制限が有効だ。
緊張というのは要するに、交感神経と副交感神経のアンバランスで、その原因は食事に起因することが多い。
砂糖の含まれた食品はもちろん、ご飯、パン、麺などの炭水化物をとると、体内でグルコースに分解され、血糖値を上げる。膵臓からインスリンが分泌されるが、今度は血糖値が下がりすぎ、反応性低血糖をきたす。すると、グルカゴン、副腎皮質ホルモンなど、交感神経を興奮させるホルモンが分泌される。そこでイライラしたり緊張したり、という精神症状が現れる。
解決策は簡単で、血糖値の乱高下を招くような食品をとらなければいい。
そのことを説明すると、ご本人、自分のなかで思い当たるふしがあったようで、
「それは実感として非常にわかります。昼ご飯を食べると、午後に社内で何かを発表しないといけないときにすごく緊張するのですが、昼ご飯を抜くと不思議と緊張しない、ということには気付いていました。だから、大事な発表の前にはお昼を食べないようにしています。
しかし、緊張の背景にはそういうメカニズムがあることは知りませんでした。なるほど、非常に参考になります」

仕組みを理解することで、方法に対してより意識的になれる。意識的になれば、方法はもっと洗練される。
たとえばこの人の場合、昼を抜くと緊張しないということは経験的に分かっていたわけだけど、より具体的には、糖質のinputが停止したことが奏功したのだということがわかると、野菜やたんぱく質は別に食べてもいいのだ、完全に断食する必要はないのだ、ということがわかる。
ただ、盲点はけっこうあるものだから、ご用心。
「炭水化物はダメだけど野菜はOK,たんぱく質OK」と思って、昼に外食でとんかつを注文するとどうなるか。
野菜にはブドウ糖果糖液糖たっぷりのドレッシング、とんかつは小麦粉やパン粉という炭水化物で覆われた豚肉に糖分たっぷりのソースがかかっていて、という具合に、意外に糖質をとってしまうものだから、気を付けよう。

患者の目の前に神様的なエラい人が突然現れて、
「職場の同僚や女性に対して、薬に頼ることなく、物おじせず堂々とふるまうことができるようになりたいか?しかしそのかわり、おぬし、一生甘いものを食べることができなくなるが、それでもよいか?」
と言われたら、こういう人たちはどのように答えるか。二つ返事でYES!と言うはずだ。
緊張症のせいでどれほど自分の人生が傷つけられてきたことか、彼らは身に染みて知っている。
糖質制限だけで症状が軽快するというのなら、喜んで我慢することだろう。
真の治療法は、デパスやメイラックスのなかにあるのではなく、もっと手近なところにあるものだよ。