2019.6.30
電子レンジの何がよくないのか。
マイクロ波照射によって自然界には存在しない物質が食品中に発生し、それを食べる危険性。もう一つには、電子レンジから漏れる電磁波(マイクロ波)の影響だ。
後者については、高圧電線の近くにいたり車(特にハイブリッド車)や新幹線に乗っても被曝するし、電子レンジ以外の電化製品(テレビ、携帯電話、ファンヒーター、IH調理器など)も強い電磁波を放つ。
簡単な電磁波測定器がネットで4千円くらいで買える。いいのなら3万円くらいするけど、安いのでもけっこう精度が高い。小さなお子さんがいる親御さんは、一度家庭内のあちこちの電磁波を測ってみるといい。あるいは小学生の子供には、理科の自由研究なんかにうってつけのテーマだろう。
稼働中の電子レンジのそばに電磁波測定器をかざしてみよう。「フタをきちんと閉めて使えば、電子レンジから電磁波が漏れることはない」というメーカー側の説明がウソだということが、すぐに確認できるだろう。
以下もう少し具体的に、電子レンジがなぜ、どのように悪いのか、掘り下げてみよう。
たとえば、こんな文献がある。
リタ・リー博士の論文から(ランセット1989.12.9)
「赤ちゃん用のミルクを電子レンジにかけると、ミルク中のトランスアミノ酸が合成のシス異性体に変換された。合成の異性体は、シス型アミノ酸であれトランス型脂肪酸であれ、生物学的な活性を持たない。
さらに電子レンジによって、アミノ酸のひとつであるLプロリンがD型の異性体に変換されたが、これには神経毒性と腎毒性があることが知られている。
多くの赤ちゃんが母乳ではなくニセのミルクを与えられていることは憂慮すべきことだが、今や電子レンジによって事態はますますひどいことになっている」
電子レンジがもとで起こった医療事故がある。
輸血の際、冷蔵保存した血液を、冷たいままで患者に入れることは当然できない。適温(30〜37度)に戻すことが必要だ。本来なら、恒温槽を使ったりお湯に浸けて温めるべきところ、あるナースが、いつもと違うやり方で血液を温めた。電子レンジを使ったのである。
手術自体は、ごく一般的な股関節置換術だった。しかし術中、この「チン」をした血液を輸血された患者ノーマ・レビットさんは、死亡した。この医療行為、輸血用血液を電子レンジで温めたことと患者の死亡の因果関係をめぐって、1991年に裁判が行われた。
「電子レンジで温めることは、他の方法で温めることと何ら違いはない」というのがメーカー側の言い分だが、この主張にはずいぶん無理がある。
物体にマイクロ波を照射することによる加熱は、他の加熱方法と一体何が違うのだろうか。
マイクロ波自体は自然界にも存在するものだ。たとえば太陽や月の光もマイクロ波を放っている。しかしこれらのマイクロ波は直流だが、電子レンジやレーダーによる人工的なマイクロ波は交流で、これは自然界に存在しない。
交流マイクロ波の照射を受けた物体は、その物体を構成する原子、分子、細胞が1秒間に10億〜1000億回の「揺さぶり」を受ける。水分子を含む物質には極性(プラスとマイナス)があって、マイクロ波照射によってそのプラスとマイナスが行ったり来たりして、激しい摩擦が生じるわけだ。
どんな原子、分子、細胞も、こんなに激しいエネルギーに耐えることはできない。家庭用の電子レンジは数百ワットだが、ミリワット単位のエネルギー照射でさえ物質の変性を起こす。
分子構造が引き裂かれ、分子が強制的に変形して、構造異性体を生じる。これはもともとあった分子とまったく異質なものだ。従来の加熱方法は、熱力学の法則に基づいた単なる熱の移動だから、加熱部分から徐々に温まっていくし、こんな妙な物質は生じない。
逆に、マイクロ波の照射は、物体をその内部から温めていく。電子レンジに入れた食べ物は熱くなっても、それを入れている容器はそんなに熱くならないでしょう?それは、マイクロ波が食品中の水分子に作用して摩擦熱が起こっているからだ。陶器の茶碗には水っ気がないから、温まらない(食品から容器に熱が移動して熱くなることは当然ある)。
マイクロ波を照射する影響は、摩擦による分子の破壊(熱効果)だけではなく、無熱効果というのもある。現在の技術では無熱効果を測定することはできないが、この効果も分子構造を歪ませ、質の変性をもたらす。
この無熱効果は、たとえば遺伝子組換技術の分野で実際に用いられている。マイクロ波によって細胞膜が弱体化する。細胞機能が破綻し、電気ポテンシャルが中性になる(生きた細胞は通常細胞膜の内側がマイナス、外側がプラスに帯電していて、この電位差こそが細胞の命そのもの)と、細胞はウィルスや細菌に容易に感染する。細胞の修復機能も抑制されているため、細胞は何とかこの状況を生き抜こうとして、好気呼吸から嫌気呼吸に切り替える。水や二酸化炭素を排出するのではなく、過酸化水素や一酸化炭素などの毒性物質を排出するようになる。
マイクロ波を照射された物質に上記のような変化が起こるが、同様の変化は、マイクロ波の照射を受けた我々人間の体内でも起こる。
以下は、ロシアの研究による。
・肉を電子レンジにかけると、dニトロソジエタノールアミン(発癌物質として有名)が生成した。
・牛乳とシリアルを電子レンジにかけると、食品中のいくつかのアミノ酸が発癌物質に変化した。
・冷凍したフルーツを解凍するときに電子レンジを使うと、グルコシドやガラクトシドが発癌物質に変化する。
・野菜(生野菜であれ調理済みの野菜であれ冷凍野菜であれ)をごく短時間電子レンジにかけるだけで、植物アルカロイドが発癌物質に変化した。
・電子レンジにかけた植物では、発癌作用のあるフリーラジカルが生成した(特に根野菜で顕著だった)。
・電子レンジによる分子構造の変化のため、調べた食品すべてにおいて、栄養価が60〜90%低下していた。また、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、必須ミネラル、脂溶性栄養分の生物学的利用能が低下していた。
つまり、食品を電子レンジにかけるということは、含まれる栄養が壊れるだけでなく、発癌物質など体に好ましくない成分が生じるということだ。
このことは、義務教育で子供たちに教えるべきだろう。
個人的には、昔のロシアみたいに、国策として電子レンジを廃止するのが一番早いと思う。それだけで、世間にあふれる病気の半分は自然に治るんじゃないかな。
でも、電子レンジが各家庭や外食産業に不可欠なくらいに浸透している現状もわかる。なくせないなら、せめて選べるようにすべきだろう。まず、電子レンジによる調理が体に悪いことを周知徹底する。その上で、使用するしないは個人の判断に任せるといい。
「体に悪いならできるだけ使わないでおこう」と思う人もいるだろうし、「いや、昼休憩のときに弁当を温めるのに欠かせないから」などと、使い続ける人もいるだろう。利便性と健康のトレードオフで、どちらを優先するかは個人の自由だ。
タバコの害は充分知られている。喫煙者は肺癌のリスクを承知の上で、タバコを楽しんでいるわけだ。好きにすればいい。電子レンジについても、同様のスタンスで考えるべきだ。
しかし危険性についての知識がないと、拒否しようとさえ思わない。
たとえば、働いているお母さんがいる。まだ乳離れしていない数ヶ月の子供のために、お母さんは朝、仕事に行く前に、毎日おっぱいを哺乳瓶に搾って冷蔵庫に保管し、お手伝いさんにことづけている。「お昼や夕方に、この母乳を電子レンジで温めて、この子に飲ませてやってくれ」と。
子を思う美しい母心だと思う。
しかし医者としては、このような母子を見て感傷に浸っているわけにはいかない。恐らくこの乳児は、後年小児癌を含め様々な病気にかかりやすくなるだろう。
電子レンジは無害、ということになっている。この前提に立てば、すばやく温めるために輸血用血液をチンした人を責めることはできないし、子供に温かいミルクを飲ませるためにチンする愛情も否定できない。
しかしこんな前提はとっくに崩壊している。愛ゆえの行動が、子供の人生を奪いかねないなんて、こんなデタラメは絶対にあってはいけないんだ。
参考
https://pdfs.semanticscholar.org/53a1/d37f97fb2115db9fbe449793fd6897235cc5.pdf
2019.6.28
パニック発作に悩む若年女性。本やネットの情報を参考にして、やれることは一通りやった。鉄剤も飲んだしプロテインも飲んだ。その先生がいいと勧めるビタミンも片っ端から飲んだ。でも良くならない。途方に暮れて、当院に来院した。
僕を頼って来てくれたのはうれしいが、僕にだって「答え」があるわけじゃない。
「うーん、困ったなぁ。何で治らへんのやろうなぁ」と一緒に悩みつつ、答えを模索していくしかない。「ナイアシンもビタミンCもダメかぁ」
他に彼女が試していない手段は、あるにはある。脂溶性ビタミンはE以外まったく飲んでいない。有機ゲルマニウムもアダプトゲンも試していない。
試してみる価値はあるのだが、彼女の持参した血液データを見て、ふと、思うところがあった。
「ひょっとして、電子レンジをよく使いませんか?」
「使います」
「どれくらいの頻度で?」
「毎日です。使わない日はほぼないですね」
「家で料理するのは、ガス?それともIH?」
「IHですけど」
ここらへんかな。引き当てたかもしれない。ハズレかもしれないが、いったん試してみる価値はある。
「ひとまず、2週間だけでいいので、電子レンジを使うのをやめてみませんか。
2週間だけでいいです。それで何も改善しなければ、今まで通り、電子レンジを普通に使って頂いてけっこうです。ただし、この2週間はちょっと本気を出して、徹底して避けてください。外食も電子レンジで調理した料理が出るかもしれないので控えましょう」
「わかりました。よくなるのであれば、何でもします」
相乗効果が期待できる場合を除いて、同時に複数の変化はつけたくないのだが、「今のこのパニック感を少しでもやわらげるサプリはないですか」とのことなので、D3とK2、Aを勧めた。
2週間後。見違えるように回復していた。
「今まで悩んでいた症状がウソのようになくなりました。パニックがなくなったのはもちろん、妙な倦怠感や肩こりもなくなりました。もうすっかり良くなったので、病院に来なくていいような気もしましたが、お礼の気持ちもあったので、来ました」と笑顔を見せた。
変数が2つある。電子レンジの使用をやめたことと、脂溶性ビタミンを始めたこと。
どちらが奏功したのかはわからない。でも、結果オーライ。
僕は研究者じゃなくて臨床医だから、患者の治癒こそがプライオリティだ。患者が治れば万々歳。原因の究明や考察はひとまず後でいい。
脂溶性ビタミン、特にビタミンD3の認知機能への影響については、以前このブログでも書いたことがあるから、ここでは触れない。そこで今回は、電子レンジのことについて書こう。
ヘモグロビン低値、白血球高値(ただしリンパ球低値)、コレステロール低値(特にHDL/LDL比の低下)を見て、どう考えるか。
若年女性でヘモグロビン低値なら貧血を疑うところ。しかしこの患者は自分なりに勉強して、すでにいろいろやっている。鉄もビタミンB群もとっているから、小球性、大球性、いずれの貧血も考えにくい(ビタミンA欠乏性貧血の可能性は残っている)。
ここで、普通の医学部教育では教わらないが、実臨床ではぜひ知っておきたい貧血がある。『電子レンジ誘発性貧血』である。
スイスの科学者ハンス・ヘルテルが1991年に行った以下のような実験がある。
被験者に以下のような食事を空腹時に食べさせる。
(1)生乳(2)従来の方法で加熱した牛乳(3)低温殺菌した牛乳(4)電子レンジで加熱した生乳(5)有機農場で採れた生野菜(6)従来の方法で加熱した野菜(7)いったん凍らせた後電子レンジで解凍した野菜(8)電子レンジで加熱した野菜
一つの食事を食べたら、2〜5日の間隔を置いて、次の食事をとらせるようにした。各食事の前後には採血を行った。
結果、電子レンジで加熱した食品(以下、チン食品とする)を摂ったときに被験者に見られたのは、上記の変化、ヘモグロビン低値、白血球高値(ただしリンパ球低値)、コレステロール低値(特にHDL/LDL比の低下)である。
同時に、被験者から採った血液を、発光バクテリアを使って評価した。発光バクテリアは、チン食品を摂取した被験者の血液に触れると、有意に強い発光を示した。この発光の強さは、食品に照射したマイクロ波の量と有意に相関していた。
こうした結果を踏まえて、ヘルテルは以下のように考察した。
「白血球数は、採血の時間帯によって多少日内変動しているものだが、チン食品を食べた後の増加は、それでは説明のつかないほど大きかった。
この白血球増多は体の生理に基づいたものであり、すでに他の文献でも示されている。発光バクテリアを使った研究は、それを裏付けただけのことだ」
以下、ヘルテル博士非常に興味深い考察が続くのだけど、長いので省略。
ただ、ちょっと触れておきたいのは、電子レンジは英語で”microwave oven”という。つまり本来、マイクロ波オーブン、とでも訳すべきものだ。あまりにもナマナマしいから、訳語として採用されなかったんやろうねぇ。実際、電子レンジは、マグネトロンを使って電磁場を起こし、マイクロ波を食品に照射することで分子同士の摩擦を引き起こし、加熱する仕組みだ。
ヘルテル博士は、マイクロ波を照射した食品を食べることによってだけでなく、生体に直接マイクロ波を照射することによっても、大きな悪影響があると指摘する。
これから、4Gから5Gの時代になって、町の中を行き交うマイクロ波の照射量が飛躍的に増大することになる。すると、どうなるか。
レーダーが開発されて以後、レーダー(マイクロ波)の人体に及ぼす影響は1950年代のロシアで精力的に研究された(この研究を踏まえ、健康への影響を重く見たロシアでは、長らく電子レンジの使用が禁止されていた)。
まずマイクロ波照射による最初の兆候は、低血圧および徐脈である。慢性的に照射を受けると、今度は交感神経が興奮し、高血圧になる。そして、頭痛、めまい、眼痛、不眠、イライラ、不安、胃痛、神経質、集中力低下、脱毛などの症状が現れる。具体的な病態としては、虫垂炎、白内障、生殖障害、癌の発生が増加する。慢性症状が続くと、副腎疲労、虚血性心疾患が起こる。
5G導入後には、当院に来る患者にも、こういう主訴が増える可能性を当然念頭に置いておくべきだろう。
何が一番問題かといって、電子レンジやマイクロ波が病気の原因になり得ることを、医学部でまったく教えていないことだ。教わってないんだから、鑑別に挙げようがない。医者は自分で論文にあたって学ぶしかない(医学部を出てからが、本当の勉強だ)。
しかし仮に病気の根っこの原因が電子レンジだったとしても、そういう患者が栄養療法を始めた場合、完治とはいかずとも多少改善する可能性はあると思う。たとえばビタミンCが抗酸化やデトックスの働きをして、根本的な原因にアプローチしてないものの、症状を抑えてくれるかもしれない。でもこれは、長期的には微妙なことだね。だって、この患者はなまじっか回復したばかりに、電子レンジが病気の原因とは疑いもせず、ずっと使い続けるだろうから。
文明の利器の目に見えない悪影響っていうのは、何とも困ったもんやね。
参考
https://pdfs.semanticscholar.org/53a1/d37f97fb2115db9fbe449793fd6897235cc5.pdf
2019.6.26
今日も浜学園で講演会をしてきました。
内容は前回とほぼ同じで、『栄養と知能』がテーマ。
平日の昼に行われるだけあって、聴きに集まったのはほとんどが生徒のお母さんだ。
『僕らの体は、食べたものからできている』
これが講演のメインテーマであり、結論でもある。
食べ物がいかに子供の知的・精神的成長に影響するか、多くの研究を示しつつ説明した。
子供の受験に際して、お母さんの役割はとても大きい。
「勉強し、受験するのは子供自身だから、私にできることは何もない」とお母さんが思っているとしたら、とんでもない間違いだ。
多くの家庭では、お母さんが毎日の料理を作っている。その料理を食べて、子供は体を作り、心を作っていく。つまり、子供の成長を下支えしているのはお母さんだ。
お母さんが食事にまったく無頓着で、添加物や農薬も気にせず、グズれば甘い菓子を食べさせて黙らせる、みたいなスタンスだと、子供はどうなるか。
逆にお母さんが、子供が口にするものに気を遣い、知的成長に好ましい栄養を意識して摂らせるよう心がければ、子供はどうなるか。
受験に成功する確率が高いのは、どちらの子供か。答えは明らかだろう。
子供は一人で受験に向かっているんじゃない。お母さんができることは多い。特にお母さんの作る食事の影響の大きさは計り知れないほど大きい。「食事が、人生における成功の可否に関わっている」といっても決して大袈裟ではないと思う。
貧相な食べ物で育った子供は貧相な人生を送るし、逆もまたしかりだ。
このことを、多くの例を交えて説明した。
子供の知的成長について、認知機能の向上が示されている栄養素もあれば、IQが低下することがわかっている物質もある。
後者について、その一つとしてフッ素をあげた。
フッ素への慢性的な曝露によって、子供のIQが低下することが示されている。
それだけではなく、不妊、関節炎、骨疾患、腎臓病、過敏症、癌、糖尿病、甲状腺疾患、循環器疾患との因果関係も指摘されている。
Health Effects
フッ素は、歯磨きのCMなんかでよく目にする言葉で、「フッ素配合」というのがむしろ宣伝文句になっている。歯質強化のためフッ素塗布をする歯医者も多い。
今のところ、日本の水道水はフッ素添加されていないが、外国では虫歯予防のためにフッ素が入れられているところもある。
フライパンなどの調理器具で、テフロン加工を謳っている商品があるけど、テフロン加工というのは要するにフッ素樹脂加工のことだ。テフロン加工のフライパンを長く使っていると、テフロンのコーティングが段々はがれてきて、コゲがこびりつきやすくなるでしょう?はがれたコーティングはどこに行ったのか?僕らの胃袋だ。
フッ素は、フライパンの空焚きなんかによって急性毒性が現れることもあるけど、多くの場合、体に徐々に蓄積して慢性的に毒性が現れる。テフロン加工のフライパンで料理した食事を一回二回食べたところで、毒性は生じない。でもその毒は、年単位で着実に体に溜まっていく。だからこそ症状が出たときには、原因として気付きにくい。これが、よりタチの悪いところだ。
フライパンは鉄製が無難だよ。
どの食材をとるべき、に気を遣ってはいても、まさか、その食材を料理する道具に毒性があろうとは思わない。そういうのでいうと、電子レンジも盲点だな。
現代社会は、思わぬところに毒が潜んでいる。知識を得て、自分の身は自分で守るしかない。こういう講演会に参加して積極的に知識を仕入れようとしているお母さんは、もうその時点で、百点満点のお母さんだと思います。
2019.6.24
よかれと思って摂るビタミンが、好ましくない影響を与えることがある。
たとえばビタミンB12、葉酸、ビタミンB6は、摂り方に気をつけよう。
B12をシアノコバラミンで、葉酸をfolic acid(メチルテトラヒドロ葉酸)で、B6をピリドキシンで摂っていませんか?
全然摂っていなくて欠乏症になるよりはマシだろうけど、せっかく摂るのなら、もっとベターな摂り方をしたい。
できれば、B12はメチルコバラミンで、葉酸はfolateで、B6はP5P(ピリドキサール5リン酸)で摂りたい。
これらのビタミンをどういう塩で摂るべきかということについては、ホッファーもソールも特に言及していない。
「水溶性ビタミンの過剰摂取は心配ないから、とにかく摂れ」という感じだ。
でも最近の研究で、下手な摂り方をしては血中ホモシステインが上昇し、むしろ各種疾患(癌、心血管疾患、脳卒中、うつ病、骨粗鬆症など)の罹患率が上昇することが示唆されている。
だから、ホッファーの著書を絶対的な金科玉条にしているようでは、ちょっと危ういんだな。
ホッファーが悪いんじゃないよ。彼は超一流の研究者であり、かつ、臨床家だった。その功績は不滅の輝きを放っている。
でも、学問は進歩する。栄養学も例外ではない。
ホッファーやポーリングら、偉大な先人が打ち立てたオーソモレキュラー療法を、そうした最新の知見に照らしてアップデートしていくことは、後進の責務だろう。
後進が先人の著書を頭に押しいただきあがめたてまつることは、彼ら自身、望んでいないだろう。
「時の試練に耐え得ない部分についてはきっちり批判し、乗り越えて行け。そしてもっと完成された体系を作れ」
泉下の彼らは、きっとそんなふうに思っているはずだ。
ホモシステインの値が高いことは、アルツハイマー病のリスク因子だとわかっている。
そもそも、アルツハイマー病とは何か?
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という動的平衡のなかで生きているのが僕ら人間だが、神経系もこの流れに沿っている。
つまり、記憶の形成に際して重要なシナプスは、絶えず、作っては壊し、作っては壊し、されている。
どうでもいい些細なことまで記憶してしまっては、脳の容量が追い付かない。だから、不要なシナプスはきちんと刈り込んで、デリートすることも必要なんだ。
しかし、このシナプスの「破壊と創造」の均衡が崩れ、破壊優位に進むことがある。これがアルツハイマー病だ。
シナプスがどんどん失われていくわけだけど、その原因は何か?
ざっと、三つある。1.炎症、2.栄養失調、3.毒素だ。
初期の認知症(たとえば長谷川やMMSEでほぼ満点、でも家族の印象としては「相当記憶力が落ちているな」みたいな患者)にビタミンCを出したら、それだけですっかり回復してしまったことがある。
それも一例二例じゃない。かなりの数の患者が見事に回復した。それも単なるシナールで^^;
なぜこんなことが起こったのだろうか。理屈を考えてみれば、極めて筋が通っている。
1.ビタミンCには抗炎症作用があり、かつ、2.ビタミンCは神経系に必須の栄養素であり(脳はビタミンC濃度が最も高い器官のひとつ)、かつ、3.ビタミンCには重金属などの解毒作用がある。
ビタミンCはアルツハイマー病の原因すべてに作用しているわけ。だからこそ、たったの3gのシナールが著効することもあり得るんだな。
こういう人は潜在的にビタミンC欠乏があったに違いない。そして、血中ホモシステイン濃度が高いはずだ。
一般の臨床現場ではホモシステイン濃度を測ることはまずないだろうけど、ホモシステインは炎症と栄養の指標となることがわかっている。
つまり、炎症があると上昇するし、栄養の不足があっても上昇する。
上記のシアノコバラミン、folic acid、ピリドキシンは、どれもれっきとしたビタミンであり、栄養だ。
しかしこれらの過剰服用は、ホモシステインの上昇を引き起こす可能性がある。
どういう機序によってか。メチオニンがホモシステインに変換され、それがまたメチオニンに戻ったり、あるいはシステインなどの他のアミノ酸に変換される代謝系がある。
この変換にはビタミンB12やB6、葉酸、ベタイン(アミノ酸)などが必要なんだけど、この変換に際してビタミンは活性型であることが望ましい。
不活性型では変換能率が悪くて、むしろ炎症の原因になり得る。
認知症に対して、アリセプトを処方されて「これでよし」としているようでは、その人の未来はあまり明るくない気がする。
それよりは、原因に目を向けて、食事や栄養の改善に取り組むことのほうが、本質に近い。
栄養に目を向けたまではいいものの、もっとベターなビタミンがありながら、「いまいちのビタミン」を使っているのなら、もったいないな。
2019.6.23
自分への厳しさは、他人への優しさと比例するのかもしれない。
動画サイトにあがっているマッスル北村と島田紳助のトークを見ていて、そう思った。
彼、こんなことを言っていた。
「昔から負けず嫌いだった。腕立てが千回できることを皆さんすごいっていうけど、別にそれ自体に意味があるのではなくて、とにかく自分の限界を超えたかった。
東大や医科歯科に受かったのも、肉体だけじゃなくて、精神的なことでも何かに挑戦したいって思ったから。
あしたのジョーを読んで、その生き様に憧れた。僕もこんなふうに、極限まで頑張って、真っ白い灰になりたい、って。それでボクシングを始めた。
でも、僕、人を殴れないの。殴ったら痛いだろうなって思って、もらったパンチの数を数えて、その分だけ殴り返す。それでも、もらった相手が潰れてしまう。
パンチ力があるせいで、パンチングマシンを壊してしまったこともある。
僕は、人を殴るためにボクシングを始めたんじゃない。ひとつの『道』として、ボクシングを始めた。
でも僕のこぶしは、文字通り、凶器だった。だから、サンドバックは殴れても、人間はどうしても殴れなかった」
番組を見ていて、紳助とマッスル北村の対比をおもしろく感じた。
しゃべり一つで成り上がったいたずら小僧のような紳助と、どこまでもストイックで自分に厳しいマッスル北村。
両者ともある種の天才だが、そのベクトルが真逆だ。
こんな両極端な二人が対談すればどんな化学反応が起きることやら、って感じで、おもしろく見ていた。
ボクシングを始めたものの、人を殴れないっていうエピソードに、この人の人間性がにじみ出ていると思う。
人を傷つけることはしたくない。ただ、自分をとにかく追い込みたい。
自分を忘れるくらい熱くなれる何かを、彼は常に探していた。そして東大在学中に出会ったのが、ボディビルだった。
これだ、と彼は思った。この競技では、人を殴らなくてもいい。ただ、自分に対する厳しさだけが求められる。筋肉は、頑張れば頑張った分だけ、答えてくれる。
ついに彼は、自分の『道』を見つけた。
トレーニングは常人離れしていた。とにかく高重量のダンベルにこだわった。あまりの過酷さに、腕や胸の筋肉を何度も断裂したが、治るとすぐにトレーニングを再開した。
食事は、家族と一緒にとる「普通の食事」に加えて、卵20~30個、牛乳2~3リットル、プロテイン粉末300gを毎日摂取した。
また、消化吸収のため、消化剤も大量に摂取した。さらに、鶏肉をミキサーにかけてペースト状にしたものを大量に摂取した。
その結果、ボディビルを始めてわずか10カ月で40kgの体重増加に成功した。1年後には96kgまで増量し、2年後にはボディビル関東学生選手権で優勝した。
その後も社会人大会、世界大会に出場し、見事な成績を残した。
個人的な話だが、ジムに通い始めてほぼ一年が経った。
マッスル北村が取り組んでいたのはボディビルだったけど、、僕がしているのは、とてもボディビルと呼べる代物ではなく、単なる筋トレだ。
ジムにいるのはせいぜい30分。全身を鍛えるようなトレーニングメニューで、そんなにハードではない。
食事もまったく普通で、プロテインも飲んでいない(いくつかサプリは飲んでるけどね)。
それでも、この一年、ほぼ毎日ジムに通い続けた。
その結果は?
体重が3kg増えた。それだけ。マッスル北村の40kgの体重増加というのがいかに図抜けているか、よくわかる。
3kg増えただけでも、明らかに体格が変わった。スーツやズボンのサイズが合わなくなった。周囲の僕を見る目が変わった。
筋トレがどんなふうに生活に影響を与えるか(いい意味で)、この一年で実感した。
マッスル北村のように、体重が40kgも増えるようなトレーニングをすれば、生活が変わるどころじゃない。人生が変わるだろう。
事実、数々の大会で優勝した彼は、テレビにも出演するようになり、男前のマスクもあいまって、大いに人気者になった。
しかし、彼の人生を終わらせることになったのも、やはり、ボディビルだった。
2000年8月3日、世界選手権に参加するべく脂肪を極限まで落とすために20kgの急な減量を行った結果、異常な低血糖状態となり、急性心不全を引き起こし死亡した。享年39歳。
死の数日前といわれる彼の動画を見たが、見事なバルクだった。
表皮の脂肪が薄く、筋肉のすじが浮き出て見える。パンプアップした筋肉の躍動感がすごかった。なるほど、これが世界一の筋肉かと思った。
しかし急激な減量による低血糖状態から、急性心不全を起こし死亡、というのは本当だろうか。
人間の体は、本来低血糖に強い。それは度重なる飢餓をくぐり抜けてきた進化のたまものだ。
飢餓状態に陥って糖が低下すれば、筋肉が分解され、得られるアミノ酸の代謝物からオキサロ酢酸やピルビン酸が作られ、糖新生によってグルコースが合成される。
あれだけの見事な筋肉なのだから、糖新生の材料には事欠かないはずで、それがなぜ、低血糖に陥るのか。
ボクサーには厳しい減量がつきものだが、減量中に心不全で死ぬボクサーが、果たしているのだろうか。
真相は分からない。
ただ、一般論として、ボディビルダーにはステロイド(副腎皮質ステロイドではなく、アナボリックステロイド。筋肉増強剤)を使う人は珍しくない。
「ステロイドだけは使わない」というスタイルの人でも、余分な水分を抜き筋肉のすじを際立たせるために利尿薬なんかを使う人もいる。
ステロイドには心不全の副作用がある。また、利尿薬による脱水から心不全を起こし、ステージ上で死亡したボディビルダーも実際にいる。
https://www.allmaxnutrition.com/post-articles/supplements/diuretics-in-bodybuilding-the-good-the-bad-the-tragic/
仮にマッスル北村が、ステロイドなり利尿薬なり何らかの薬物をやっていたとしても、僕は彼に対する敬意を失わない。
「常人離れした努力と少量のステロイドにより、世界を獲った」それで何も問題ない。
むしろ気持ち悪いのは、「急激な減量により異常な低血糖を来し、そのために心不全で死去した」というのが死の理由になっていることだ。
個人的には、そんなことはあり得ないと思う。科学がバカにされている気がするんだな。
それでも、それでもなお、マッスル北村ならそんなふうに死ぬかもしれない、という思いもある。
あまりにも強すぎる精神力が肉体の悲鳴を聞き入れず、そのまま死んでしまう、というような死に方。
誰よりストイックな彼なら、あり得るかもしれない。
亡くなった後、彼の体の大きさのため、棺におさめるのに大いに難渋したという。
毎日必死の努力で作り上げたその巨体も、火葬で一瞬にして灰になった。
しかし肉体は消滅したが、栄光は人々の記憶の中に残る。
すばらしい生き方やねぇ。
https://www.youtube.com/watch?v=CfEOZZqGqYc&list=PLn_lFJTVJHRmbU9UwOSCDHBrs2PhQCSQe&index=2&t=0s