院長ブログ

フレイ効果

2020.3.22

「頭の中で声が聞こえるんです。米軍か防衛省の関係者が僕を嫌がらせるために、レーダーを使って夜な夜な攻撃してくるんです。変な音を聞かせたり、僕宛てのメッセージを送ってきたり、ということもあります。本当ですよ。ある日、耐え難くなって、部屋の窓をいきなり開けたんです。そうすると、道路の向かいに止まっていた不審なバンが、僕に目撃されたことに気づいて、急発進で逃げて行きました」
こういう患者が来院したら、主訴を聞きながら医者が考えることは、だいたいこんなところである。
「思考吹入、か。主症状は幻聴だが、リアルな幻覚もある。意思疎通は保たれている。発症初期のようだから、エビリファイあたりで様子を見ようか」
そう、典型的な統合失調症の症状である。こういう患者の話をまともにとりあってはいけない。ことさら否定するでもなく、あまり強く肯定するでもない。どの抗精神病薬が適切か、淡々と見極めるのみである。

 

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井穴刺絡

2020.3.21

「この3連休、兵庫と大阪の行き来は自粛するように」という異例の呼びかけが出ている。
普段別に旅行好きでもないくせに、こういう自粛ムードのなかでこそ、あえて旅行するというね^^;
そういうわけで、「じも」に行ってきました^^

 

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今後のブログについて

2020.3.21

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慢性上咽頭炎2

2020.3.19

そもそも、慢性上咽頭炎という病名を提唱したのは日本人で、山崎春三(1895~1977)である。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka1947/67/12/67_12_1663/_article/-char/ja
この論文では、上咽頭の炎症によって以下のような症状が出現しているとする。
肩こり、首こり、後頭部しびれ、鼻咽頭上壁の異物感(患者は「のどが何か気持ち悪い」という)、後鼻漏、鼻閉(鼻のつまる感じだが、鼻水は少ない)、かすみ目、嗄声または鼻声、胃部不快感(胃痛というか「何か胃のあたりが気持ち悪い」という)、便不整(便秘と下痢)、うつ、取り越し苦労、易怒性、めまい、頭重感、開口障害、顎関節痛、しびれ(四肢)、耳閉塞感など。
患者が言いそうな「何となく調子悪い」の一通りが、だいたい網羅されているようだ。
山崎氏はこれらの疾患群を、鼻咽腔症候群と名付けた。「慢性上咽頭炎の局所症状」+「自律神経障害」といった感じである。

鼻咽頭症候群は、現代日本に山のようにいる。ただ、医者のほうにその疾患概念がないため、診断されずに見過ごされているだけである。
仮に鼻咽頭症候群の患者がうちに来院したとしたら、僕はどうするだろう?
肩こりですか。血流が悪いんですね。ビタミンEを飲みましょう。のどに違和感がある?貧血と言われたことはありますか?ない?じゃ、半夏厚朴湯で様子を見ましょう。胃が気持ち悪い?胃粘膜保護に亜鉛を飲みましょう。手足のしびれる感じ?うーん、糖尿はない?困ったな。筋神経症状ということで、マグネシウムやビタミンB群を試しましょうか。うつっぽいし、イライラする?普段日光には当たりますか?ビタミンDを飲みましょう。
オーソモレキュラー的にはこんな雰囲気でアプローチしてしまいそうだ(実際にはこんなにたくさんサプリを勧めないけど)。
山崎先生に言わせれば、「完全に的はずれ」ということになるだろう。本丸の鼻咽頭を放置して、遠回りにガチャガチャとかき乱しているようだ。

鼻咽腔症候群の症状の一覧を見ながら、山崎氏はふと、気付いた。「大人が訴える症状ばかりだ。子供の主訴としてはほとんどあり得ない」
確かに、肩こりやかすみ目をグチる”おっさん”みたいな子供はあまり見かけない。ここから、山崎氏はアデノイドとの関連を着想した。
幼児の上咽頭にはアデノイドがあるが、5歳くらいが大きさのピークで、その後退縮し、17、18歳頃には消退(瘢痕化)する。アデノイドがあることによって、これらの症状の発生が抑制されているのだろう。

山崎氏は鼻咽腔症候群の仮説を、多くの実験を通じて検証した。
たとえば、患者の上咽頭壁にアドレナリン(血管収縮薬)0.2mlを注入したところ、直後からヒステリー球(のどに何かがつまった感じ)などの鼻咽腔症候群が出現し、2週間にわたって持続した。
ヒステリー球の原因は、貧血、甲状腺疾患、胃腸障害など様々に言われているが、現在も定説はない。そういうなかで、すでに百年近く前に、のどの違和感を人工的に作ることに成功した研究があったとは、驚くべきことだと思う。
この研究は現代なら「人体実験だ」などと批判されて公に発表できないだろう。しかし、なにぶん1920年代である。こういう研究がけっこうできちゃった時代、ということである。
また、心停止したウサギの上咽頭壁の一側(左右どちらか)にアドレナリンを注入したところ、死後2時間までは諸臓器の半側性変化が確認された。
どういう意味か、わかりますか?
心臓が止まっているということは、循環、つまり血流が止まっている。その状態で咽頭に注入したアドレナリンが各器官に作用したということは、血行性にではなく神経伝達によって影響が生じたことを意味している。
堀田氏の提唱するBスポット療法は、塩化亜鉛をしみこませた綿球を細長い鉗子でつまんで鼻の奥にいれ、Bスポットをちょんちょんと擦過する。
山崎氏の実験からこの作用機序を推測すれば、塩化亜鉛の成分が血流によって全身に運ばれ各臓器で抗炎症作用を発揮したというよりも、Bスポット擦過による迷走神経刺激か、あるいは擦過による局所瀉血がうっ血改善に寄与した可能性が考えられる。

ちょうどHPVワクチンの後遺症による問題がマスコミで取り沙汰されていた頃のことである。どこの病院でも心因性だと言われ、「どこかに真の治療法を知る医師がいないものか」とドクターショッピングを繰り返すワクチン後遺症患者の存在を知り、堀田修医師は胸を痛めていた。

堀田医師は、HPVワクチンによる後遺症に悩む患者の症状(頭痛、めまい、全身倦怠感)が、上記の慢性上咽頭炎、慢性疲労症候群、線維筋痛症と似ていることに気付いた。
千人以上のIgA腎症患者にBスポット治療を行い、「頭痛(めまい、疲労感)が治った」という患者の声を無数に聞いていた堀田医師は、HPVワクチン後遺症にもBスポット治療が効くのではないかと直感した。

いわゆる”ニンニク注射”を受けたことがあるだろうか?
ニンニク注射は、本当にニンニクの水溶液を注入するわけではない。成分としてはビタミンB1(フルスルチアミン)だが、注射を受けると患者はなぜかニンニクのにおいを感じることからこう呼ばれている。血中に注入した成分のにおいを感じるこの現象は、嗅覚障害を検出するために使われている(アリナミンテスト)。
この例からわかるように、点滴で血中に直接入れた成分は、すばやく全身をめぐって、上咽頭に分泌される。成分に何らかのにおいがあった場合、嗅神経が感知するが、においの有無にかかわらず、血中成分は絶えず上咽頭の免疫系をろ過されているのである。
HPVワクチンに含まれるアジュバントが、この上咽頭トラップに引っかかる。その際、一部の人(血中の抗炎症物質の濃度が低いなど)では上咽頭の炎症が大脳辺縁系に波及し、その結果、様々な機能障害や自律神経障害が出現する。
堀田医師のこの仮説を立証するように、多くのHPVワクチン後遺症患者がBスポット治療によって軽快していった。
このすごさが分かるだろうか。
HPVワクチン後遺症という、一般の医療では成す術のない症状に対して、堀田医師は独自の仮説で挑み、見事に成果をあげた。すばらしい仕事だと思う。

僕は、このBスポット治療を自分のクリニックでも取り入れたいと思った。
何をやってもよくならない、という患者に効く可能性のある治療なら、何だって試してみたい。
ただし、Bスポット治療には唯一、欠点がある。それは「痛い」ことだ。特に上咽頭に炎症があって各種の症状が出現している人(つまり、Bスポット治療を一番やるべき人)では、最も強く痛みが出て、かつ、最も多く出血する。
耳鼻科医でもない僕が使い慣れない鉗子を使ってこんな処置をやったとしたら、患者は二度と僕のところに来なくなると思う^^;
何とか他のやり方がないものだろうか?
要するに、上咽頭に刺激を与えてやればいい。となれば、直接的な擦過でもなくとも、鼻うがいでいいのではないか?
また、塩化亜鉛は本来研究用にのみ使用が認められている試薬で、入手にはサインがいるなど、ちょっと手間がかかる。一般にサプリとして使用されている液体の硫酸亜鉛で代用できないか。
このあたりの疑問を、堀田修医師に直接メールして聞いてみたところ、先生からお返事を頂いた。硫酸亜鉛による鼻うがいでも一定の効果は期待できる、とのことだった。
慢性的な不調に悩む人は、一度液体亜鉛による鼻うがいを試してみるといいだろう。

参考
『道なき道の先を診る』(堀田修 著)

慢性上咽頭炎1

2020.3.18

サザンの曲にあるように、マンピーにあるのはGスポットだけど、Bスポットと聞いて何か分かりますか?

Gスポットというのは、発見者の名前(グレフェンベルクの頭文字G)に由来するれっきとした解剖学用語だ(エロワードではございません^^)。
一方Bスポットというのは、上記の本(1984年初版)の出版にあたって著者が考えた造語なんだな(鼻咽腔(Biinkuu)のBにちなむ)。だから、一般の医者もこの言葉を知らない。

患者に勧められたことをきっかけにこの本を読み始めたのだけど、衝撃を受けた。
ときどき、こういう名著に出くわす。”Orthomolecular medicine for everyone”もそうだし”Proof for the cancer-fungus connection”を読んだときもそうだった。
「できるだけ多くの人がこの事実を知るべきだ」という使命感のようなものを感じた。こういう衝動を催させる本は、多くはない。
もっとも、この本は英語ではなく日本語で書かれているから、僕が翻訳を頑張る必要はない。「いい本だから、買って読んでね!」でおしまい。
そうではあるが、僕の切り口から、この本がなぜ、どのようにすごいのかを紹介しよう。

僕はものごとを系統的に把握するのが好きなんだな。
たとえば英単語を覚えるにしても、一個一個覚えていくよりは、できるだけ語源で覚えたい。暗記の労力が節約できるのはもちろん、見通しがよくて、記憶の定着もいい。
同様に、病気の原因を考えるときにも、「なぜその病気になるのか(なぜその症状が現れるのか)」を、広く説明する理論に魅力を感じる。
一般の内科学では風邪の薬、インフルエンザの薬、結核の薬、破傷風の薬など、個別の対処法をウンヌンするが、オーソモレキュラーでは「感染症にはビタミンC!」と上流で一気に抑える。簡潔にして明瞭だ。
「病気は外側からのみならず、内側からも生じる」として、カビ(内因性のカビ(CWDs)も含めて)の存在を説く理論を以前のブログで紹介した。一見別々と思われる病気が、カビ毒という一本の糸でつながっている。この理屈も僕好みだな。
そう、「簡単な原理原則で、多くの事象を説明できる」これが、”いい法則”の条件だと思う。

そういう意味で上記著書『堀口申作のBスポット療法』はすばらしい法則を提示している。
それは、「一般に治癒困難とされている慢性的不調(頭痛、肩こり、めまい、倦怠感、関節リウマチなど)は、すべてBスポット(鼻腔ないし上咽頭)の炎症に起因しており、ここにBスポット療法(1%塩化亜鉛をしみこませた綿棒を擦り付ける処置)を行うことで治る」というものである。
堀口氏は30年以上にわたる臨床経験のなかで、無数の難治患者をこの治療法により救ってきた。症例数の膨大さが、この治療の有効性を何より雄弁に語っている。

堀口氏はすでに故人(1908~1997)である。
東京医科歯科大学耳鼻咽喉科の教授時代には、自身の開発したこの治療法を学会などでも積極的に発表したが、保険点数の低く、かつ侵襲的で患者に強い痛みをもたらすこの治療法は、医師からも患者からも評判が悪かった。教授を退官してしまえば、後継者に恵まれなかったこともあって、この治療法はすたれてしまった。ほとんど注目されることなく、不遇の晩年を送った。

確かに、一般受けしにくいだろうと思う。にわかには信じがたい主張だから。
「鼻の奥、のどの奥に、ちょっとした処置をするだけで万病が治るだって?バカも休み休み言え」という声が、医者だけでなく一般の人からも聞こえてきそうである。
しかし、近年ネットの口コミを中心に、Bスポット療法に興味を持つ人が急激に増えている。実際、上記著書は2018年に復刻されるまで絶版となっていて、一時はアマゾンで1万5千円以上に高騰していた。
結局のところ、患者は本物を求めている。多少痛みを伴う治療であっても、それによって真に回復するのであれば、患者はすすんでその治療を受けるものである。
Bスポット療法は、時の経過に耐えて、いまや”知る人ぞ知る治療法”として、ネット界隈で着実な広がりを見せている。

部分と全体、というのは一般に対義語とされている。
しかしこれらの概念を、単純な二項対立ととらえては本質を見誤る。むしろ、部分の中に全体があり、全体のなかに部分があるという、相補性を見出さなくてはいけない。
たとえば、マッサージ。
「足裏のここのツボは肝臓に、ここは目に効く」「耳のここを押すと腎臓に、ここは消化器に効く」などという表現は、「足裏(あるいは耳)という局所に、全身が照応している」ことを踏まえたものである。東洋医学の叡智は、大昔から部分と全身の相関を見抜いていた。
同様に、鼻咽腔は、局所でありながら全身に影響を及ぼす。そもそも解剖学的には、鼻咽腔は、吸い込んだ空気が一番最初に突き当たる”関所”である。
空気には微細なほこりやゴミ、病原菌などのよからぬものも含まれているから、その関所が重要な免疫機能を担っていることは、むしろ当然である。
このことは、嚥下した食塊から体に取り込むべき栄養素と有害な不要物を弁別する小腸に免疫機能(パイエル板)が集中していることと相似をなしているようだ。

ひとつの体内にありながら位置的に離れた臓器同士が、それぞれに影響を与え合う現象が知られている。
有名どころでは、「腸脳相関」である。腸と脳が自律神経や液性因子(ホルモンやサイトカイン)を介して密接に関連している。
医者なら「心腎相関」も知っている(国家試験に出るので^^;)。心疾患(特に動脈硬化、心筋梗塞)と腎疾患(特に慢性腎臓病)が互いに影響しながら悪循環に陥るという概念である。
同様に、上咽頭と大脳辺縁系の間に密接な関係があるとする仮説「上咽頭・大脳辺縁系相関(epipharynx-limbic system interaction)」が近年提唱されている。
上咽頭に処置(Bスポット療法)することで、めまい、けいれん、視力障害、睡眠障害など、むしろ大脳辺縁系に起因すると思われる症状が改善する機序が、この仮説によって説明できる。
長くなりそうなのでまた次回に。