院長ブログ

対局

2018.11.24

神戸大丸で、今日の2時かぁ。
時間あいてたら絶対見に行くんだけど、仕事なんだよなぁ。

ひふみんに限らず、棋士というのは僕にとって憧れの存在です。
実際の刀こそ握らないけど、相手玉の首をとること目指して、駒という剣で激しく斬り合う。
将棋とは、プライドをかけた知的格闘技であり、棋士は『騎士』に他ならない。子供が宮本武蔵に憧れるのと同じ感覚で、棋士をかっこいいと思う。
僕にとっては、下手なアイドルよりよほどアイドルだ。AKBがどうのこうのとか全然知らないし、近所に来るとなっても何も感じないけど、ひふみんが来るとなると、テンション上がるし、見れないことはすごく残念だ。
いや、想像なんだけど、多分、大したトークはしないと思う。どのスィーツが好きだとか、愚にもつかない話をすると思う笑
でも、それでも、聞きに行きたい。
もはや一線を引いた老兵の茶飲み話かもしれないが、名人経験者であり、数々の記録を打ち立てた将棋界のレジェンドなんだ。そのナマの声に触れる機会なんてめったにないことだからね。

しかし、考えてみれば、僕の仕事も棋士と通じるところがあるようにも思う。
患者の悩みにしっかり向かい合い、限られた時間のなかで、それに対する最善手をすばやく検討する。患者の病気をいかにして詰ませるか、そこが僕の勝負所だ。
棋士にとっては、他のどんなことよりも、対局が大事だという。
同様に、僕にとっての最優先事項は、僕のクリニックに来てくれる患者なんだ。

整形外科疾患

2018.11.22

足の痛みやしびれに悩んでいて長らく整形外科に通っている、という人は多い。
整形外科のお客さんはほとんどが高齢者だろう。
で、彼らがどういう治療を受けているかといえば、鎮痛薬の処方や注射ばかり。
治しているんじゃない。単に痛みを紛らわせているだけだ。
先生からは「ほら、このCT画像を見てごらん。L5近辺に脊柱管狭窄症があるだろう。それが原因で坐骨神経痛が起こってるんだ。薬でだましだましやっていくしかないね。それが嫌なら手術という手もあるけど」みたいなことを言われている。

「違います。椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症が原因で痛みが起こるのではありません。
そもそも神経は、圧迫に対して、非常にタフなんです。本当に強く絞扼すれば、麻痺が生じますが、痛みが生じることはありません。関節の老化、椎間板や軟骨の変性によって痛みが生じることはあり得ないんです」
確信のこもった言葉。
医者ではないが、自身の経営するサロンでこれまで疼痛を訴える無数のクライアントに施術を行い、症状を改善させてきた。
実績が、言葉に重みを与えている。
では、どうして痛みが生じるのでしょうか。
「慢性的な痛みは、筋筋膜性症候群(MPS)によるものです。神経の問題というよりは、筋肉の問題です。筋肉に痛み物質が蓄積し、強張っていることが原因です。
だから、筋肉のロックを解除し、血流を改善させてやれば、症状は軽快します」

この考え方に基づいた医療を行う整形外科医もいる。
たとえばこの先生。加茂淳先生という開業医の先生だ。
http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/
僕が医学部で学んだことと全然違うことが書かれいてる。
医学部で行われる内科や精神科の教育がいかにデタラメかということは、身を以て知っている。
しかし、整形外科も同じようなものだということは、僕とは畑違いの科ということもあって、全然知らなかった。

このグラフ、上記先生のページに載ってるんだけど、、
ヘルニアを治すためにせっかく手術しても、半年もすれば予後はほとんど変わらないっていうんだから、衝撃的だ。
しかし、手術して少しよくなる人もいるけど、これはなぜなのか。
「手術時の麻酔によって、筋肉の緊張が緩和されるから。また、手術を行ったこと自体による儀式的作用、一種のプラセボ効果によるものだろう」
という説もおもしろい。

ホッファーやソールも、整形外科的な疾患については、あまり詳しく書いてないんだよね。
ホッファーの論文に、カウフマンがナイアシンの大量投与を用いて多くの関節炎患者を救ったことは紹介されている。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1831040/
ソールも、自身の運営するホームページdoctor yourself.comで腰痛や坐骨神経痛に対するオーソモレキュラー的アプローチのことを書いているけど、痛みの原因については従来通りの説(神経の圧迫によって痛みが引き起こされる)に立っている。
http://www.doctoryourself.com/stenosis.html
記事中、基本的にはビタミンCを推しまくってるけど、あえて他のビタミンもとるなら、という感じで、B12、D、E、セレン、オメガ3系脂肪酸の摂取も勧めている。
抗酸化、抗炎症を意図したビタミンだから、筋肉にブラジキニンのような発痛物質が蓄積していて炎症を起こしている場合、当然これらのビタミンは効果を発揮するだろう。
やはり、整形外科的な疾患に対してもビタミンが有効ということだ。
これは、一部の病院にとっては、極めて不都合な真実だと思う。
整形外科のオペが病院の稼ぎ頭、っていう病院はたくさんあるからね。手術だけじゃなくて一生患者として通院してくれるわけで、病院にとってはまさに『固定資産』なんだ。こういうせっかくのお客さんが、ビタミンで治ってもらっちゃたまらない、というのが正直なところだろう。
整形外科疾患で長らく通院中という人は、ビタミンC、ナイアシンアミドあたりから始めてみるといい。整形外科かビタミンか、の二択ではなく、ひとまずは併用してみよう。

統合失調症

2018.11.21

統合失調症か、じゃ、どういうタイプなんだろう、分類しよう、妄想型か、破瓜型か、緊張型か、残遺型か、単純型か、どれだろうか。いや、そもそもこの人は本当に統合失調症だろうか、統合失調症ではなく統合失調症感情障害ではないだろうか。となると、この分類としては、統合失調症感情障害のうつ病型か混合型か、どちらかを見極めねばならない。いや、この類型に当てはまらない「その他の統合失調症感情障害」というのもあるぞ。いや、統合失調症感情障害ではなく、躁病あるいは双極性障害ではないか。うーむ、悩ましい、、、

という考察を大真面目にやっているのが精神科診療の現場なわけです。
仮にこれだけ詳しく分類したところで、治療は同じ。「ジプレキサ5mg」とかだったりする。
もうね、バカじゃないかと思う。理屈バカ。
精神科現場には、こういう、ほとんど意味のない分類や分析が無数にある。
僕ら、学生のときには、こういう分類を必死に頭に詰め込んで、試験に備えるわけです。
ブロイラーやシュナイダーなど、百年前のカビの生えたような理論を、いまだに真実と思い込んで、せっせと記憶に励む。精神疾患と栄養の関係についてはまったく教わることもなく。こうして、この21世紀にもバカが量産されていきます。
「この患者には、思考化声、妄想知覚、作為体験など、シュナイダーの一級症状があることから、統合失調症の症状として矛盾しません」
なんて語る精神科医のセリフを部外者の人が聞くと、高度な知識を備えた専門家、といった印象を受けるかもしれないけど、違います。
アホです。ただのアホですからね。
彼らは精神疾患を治せません。
薬で症状を抑え込んだだけ。くさいものにフタをしただけなんです。問題の根本は全然解決してないから、症状はやがてまた再発します。
でも彼ら、自分の無力を認めたくない。自分の行為を正当化する理屈がいる。だから、理論武装する。
現場の良心的な先生のなかには、投薬治療の限界にうすうす気付いている人もいるとは思う。でも、だからといって、他にどうしようもない。
もう自分の医療を信じて突っ走るしかない。そのためには、やはり理論がいる。
ドーパミン仮説とかセロトニン仮説とか、とっくに破綻してるんだけどね。

患者の母が語る。
「この子、高校生のときに発症して以後、何度も入退院を繰り返してきました。薬を増量すると、幻覚や妄想はなくなります。でも無気力になって、何をする気もなくなります。
仕事をすることはもちろん、本を読むこともできない。テレビを見ても、何をしてもおもしろくない。感情がなくなったみたいになります。
幻覚や妄想にとらわれているこの子を見るのもつらいけど、家で一日中ぼんやりしているこの子を見るのも、同じくらいつらいです。
本当はこんな子じゃないんです。もっとよく笑う、活動的な子なんです。読書好きで、勉強もよくできる子でした。それが、精神科に通うようになってから、こんなことになって。
一緒にいて、何だか怖いんです。そばにいるこの子が、我が子であって我が子でないような感じがして」

そう、抗精神病薬は『化学的拘束衣』だ。実際物理的に拘束するわけじゃないけれど、薬の作用が『心』をがっちり拘束する。
人間でありながら、人間ではないような状態になる。かつて政治犯に大量の抗精神病薬が投与され、『生きる屍』にされた。
抗精神病薬の長期投与によってそうなることは、とっくの昔にわかっている。
陰性症状などという都合のいい言葉をでっちあげ、まるでその無気力は統合失調症の症状であるかのように装っているが、とんでもない。薬の作用そのものだよ。

「できれば薬はやめたいんです。
でも薬をやめれば、また幻覚状態になって、おかしなことを言いだすかもしれません。先生、何とかならないでしょうか」

急にやめることはしない。
長く薬に頼ってきた人には、慎重に減薬する。
まず、ビタミンの摂取を開始してもらう。たとえば以下のようなものだ。
ナイアシン 1000mg(毎食後)
ビタミンC 2000㎎(毎食後)
ビタミンB群(毎食後)
亜鉛 50mg(朝食後)
ビタミンD 5000IU(朝食後)
マグネシウム 200㎎(朝、昼食後)
セレン 200μg(朝食後)
亜麻仁油 大さじ1杯(毎食後)
EPA、DHA、ALA (毎食後)

ナイアシンはもっと増やしてもいい。統合失調症患者では、ナイアシンによって本来起こるはずのホットフラッシュが出ない人も多い。
ビタミンCももっと増やしてもいい。ビタミンCは過剰摂取で下痢が起こるけど、下痢をする手前ぐらいの最大量まで行ってもいい。
B群だけではなく、必要に応じて、B6や葉酸を追加してもいい。
その他、食事指導として、糖質の摂取は控えめにし、乳製品、精白したパンの摂取も控えてもらう。
忠実に実行すれば、数日で改善を実感するはずだ。

1か月後、患者とその母が来院した。
前回、患者本人はほとんど話さず、母ばかりがしゃべったが、母と子の立場が逆転していた。
患者本人が笑顔混じりに語る。
「調子いいです。本が読めるようになりました。
だんだん意欲が出てきて、外を散歩したりできるようになりました。こんないい気分は、ここ数年ありませんでした」
改善の兆し。
これで少し、減薬できる。調子はますますよくなるだろう。
しかしあせらない。慎重な減薬が基本だ。

統合失調症が治る、というのは、風邪が治る、というのとはかなり意味が違う。
この人は、今、人生を取り戻しつつあるのだ。
危うく『生きる屍』として生きるかもしれなかったところ、新たな人生に歩みだそうとしている。
そういう人生に踏み出すことをサポートできたことが、僕は、医者として、たまらなくうれしい。
「医者が患者を治す、のではない。医者ができることは、あくまで患者の治癒をサポートすることだけだ。傲慢になってはいけないよ」とホッファー先生がいう。
その通りだと思う。だから、僕もそう思うことにしている。
でも正直、僕の本音としては、回復した患者が誇らしくて、僕の『作品』だって言っちゃいたいぐらいなんだな。

ホメオパシー

2018.11.20

先週、縁あってホメオパシーを実践している人と出会って、いろいろな話を聞いた。
それで、僕も何冊か関連書籍を買って、読んでいる。
実践しようとまでは思わないけど、こういう治療体系があるのかぁって知るだけでもおもしろい。

ホメオパシーというのは、同種療法のこと。
「ある病気の症状に対して、その症状を起こす物質を、ごく微量に薄めて投与すると、かえって症状が軽快する」というのが、おおよその説明だ。
ホメオパシーの創始者はドイツのハーネマンという人。
マラリアの特効薬キナを健常人に投与すると、発熱、発汗などマラリアとそっくりの症状が出現することに注目し、ホメオパシーの着想を得た。
悪い症状を抑えようとするのではなく、逆に排出するよう後押しする、というのがこの医学のキモで、西洋医学とは真逆のアプローチなんだ。
たとえば風邪をひいて咳、吐き気を伴う発熱患者に対して、どうするか。
一般的な医者なら、メジコンとかナウゼリン、あるいはPL顆粒とかトランサミンあたりで症状を抑えようとする(抗菌薬使うお医者さんはヤバい。シナール出す先生は良心的。)
漢方医なら麻黄附子細辛湯とか葛根湯かな。
ここでホメオパシー医なら、イペカックというレメディ(治療薬)を使う。
イペカックは南米原産のアカネ科の低木で、健常者が服用すると咳や吐き気を催させる作用があるんだけど、ごく微量に薄めて投与すれば、逆に患者の症状は軽快するという。

おもしろい発想だ。
考え方としては漢方に近いと思う。
葛根湯には麻黄が含まれている。麻黄には発汗作用があり、体の熱や腫れを発散させる。
つまり、発熱している人に対して発熱を促す生薬を投与しているわけで、ホメオパシーと相通じるものを感じる。

ホメオパシーには批判も多い。
たとえば、ある症状に対するレメディを作る際には、その症状を引き起こす成分を使うんだけど、成分そのままでは有毒なので、水でごく微量にまで薄める。
その薄め方が、もう、ハンパじゃなくて、10倍希釈、100倍希釈どころじゃない。
10の60乗とか、天文学的なまでの薄さまで薄める。アボガドロ定数を基準に見ると、もとの成分を構成する分子がひとつも残っていない可能性さえあり、その点についてはホメオパシー医も認めている。
「こんな薄いものが効くわけがない。ただのプラセボ効果だろう」という批判が後を絶たない。

本当に効くのですか。
「効く、としか言えないな。回復した患者を無数に見てきたし、私自身、体調が悪いときにはその不調を改善すレメディを摂取して、効果を実感しているから。
残念ながら、打率10割というわけではない。一回試してみたものの効果を実感できなかったということで、ホメオパシーを見限ってしまった患者もいる。
でも、ホメオパシーの有効性を示すエビデンスは無数にあるよ。
西洋医学に限界を感じて、ホメオパシーを使う患者はどんどん増えている。
ホメオパシーの理論は、ハーネマンが200年ほど前に創始して以後、根本的なところでは変わっていないんだけど、実践医の様々な知見が加わったり、新しい発想を導入する人もいて、次第に進歩している。
完成された医学というわけではなくて、現在進行形の医学でもあるんだ。
これは西洋医学はもちろん、漢方だってそうでしょ。
黄帝内経に見られるように、すでに二千年前に漢方医学のおおもとはほぼ完成していたとも言えるけど、明や元の時代にもいろいろな天才が出て、これまでの体系に新たな知見を加えてさらに完成度を高めてきたし、日本に輸入されて和漢として独自の進歩をした。
ホメオパシーも同じことだよ。
目の前の患者を何とか救えないものかと、実践医が様々な工夫をこらす。その工夫が有効で、かつ、普遍性が認められれば、ホメオパシーの治療法の1ページに新たに加えられることになる。
90年代にJan Scholtenというホメオパシー医が興味深い説を唱えた。
レメディのなかには硫黄や水銀など、元素そのものを使うものがあって、彼はそういう元素から作られたレメディの特徴を、周期表との関連においてまとめあげた。
そう、化学の授業で使う、あの周期表だよ。
また、彼によると、周期表は「人間の精神的な進化プロセス」を暗示した系統樹になっている。
周期表はおおよそ、7行と18列で表現されているが、彼によると、横の18列は、個人が通過していく人生のプロセス(行動や試練など)を、縦の7行は、人が誕生、成長、進化していく段階(ステージ)を暗示している。
縦の7行、すなわち人の進化段階はこのようになる。
第1階層<宇宙との未分化>
第2階層<肉体的存在の確立>
第3階層<自我の確立>
第4階層<社会性の確立>
第5階層<独自性の確立>
第6階層<優越性の確立>
第7階層<宇宙との融合>
一方、横の18列は、以下のような意味を持っている。
第1族<始まり>
第2族<迷い>
第3族<試験的行動>
第4族<公に実行>
第5族<準備段階での行き詰まり>
第6族<挑戦し証明する>
第7族<協力関係>
第8族<佳境に入る>
第9族<最後の仕上げ>
第10族<ゴールに達成>
第11族<維持と守り>
第12族<過剰さと衰退の兆候>
第13族<過去への執着>
第14族<空虚な形式>
第15族<放棄>
第16族<過去の想い出>
第17族<終焉>
第18族<休息>
7つの階層のそれぞれを、音楽でいう1オクターブと考え、18の横列をドレミの音階だと考えるとわかりやすい。
まず、人は第1階層に誕生し、18の横列が示す人生プロセスをクリアさせながら成長していき、それを終えると第2階層に進み、再び18の人生プロセスを歩んでいく。
しかし、その成長のプロセスは、順風満帆とは限らない。挫折したり失敗することもあるだろう。そういうとき、その位置に属する元素から作られたレメディが、役に立つ。
たとえば、君は今、第5階層「独自性の確立」にいて、かつ、第6族「挑戦し証明する」段階にいる。つまり、Mo(モリブデン)のところにいるわけだ。
君は今、自分の才能を発揮できないまま失敗するのではないかと不安になっていやしないか?そういう症状があるとすれば、まさに、Moのレメディが著効する、ということだ。
今後、第5階層を進んでいくなかで、たとえば固定観念に縛られて悲観的になったときにはSn(すず)を処方するし、イライラや支離滅裂な気分にはI(ヨウ素)を処方する。
そう、Scholtenの考え方によれば、周期表とは、まさに、人生の羅針盤であり、健康への指針でもあるわけだ。

第5階層の課題は、独自性の確立だ。ルールの順守と、それを乗り越える勇気。これを経ることなくして、創造性は発揮できない。
この階層を経ることで、君は影響力を獲得していくことだろう。ただしそれは、権力や地位によってではない。才能と独自性によって、だ。
権力を発揮するようになるのは、次の第6階層に到達してからのことだ。
この第5階層は、せいぜい太陽のおこぼれを受けて輝く月であって、社会的には格別の力を持たない。
順境、逆境、さまざまな苦楽を味わいながら、君は次々と人生のプロセスを経ていき、やがて第6階層に達するだろう。

第6階層は、成熟が深まり、ついに権力者として君臨する段階だ。責任を背負いながら、人に影響されるよりも影響を与えていく側の立場だ。
他者から抜きんでたことの代償に、一抹の孤独を感じることにもなるだろう。挑戦者の若さを失った代わりに、チャンピオンの誇りが精神的な支えとなるだろう。
しかし、築き上げた地位からいつまた転げ落ちるのではないかという恐怖もある。
第6階層の課題は、世俗の権威と神聖な権威の統合だ。
会社の社長たちを見てみるといい。出世競争を勝ち抜いて、会社の頂点に立った。
社員の生活を支えねばならない責任感の重さ。トップとしての孤独。
世俗の権力を行使できる快感と、同時に、企業として社会に貢献したい崇高な思い。
社長の心のなかでは、俗と聖がせめぎあっていて、その統合がこの階層での課題なんだ。
たとえば自己陶酔や落胆にはPt(白金)を、過剰な虚栄心や理想主義、絶望感にはAu(金)を処方することになる」

おもしろい。
とても科学的とは思えないけど、周期表が、それこそ人生の周期を表しているという発想には、斬新さを感じる。
ただ、目の前の患者に対して実践する医療としては、いまいち説得力に欠けるかな、とも思う。
まず栄養療法でやっていきたい、という思いもあるしね。
でも、ホメオパシーにせよ栄養療法にせよ、西洋医学を実践する人から目の敵にされているという点では同じなので、ホメオパシーを実践している人には、何とも言えないシンパシーを感じる。
世間から叩かれるものな。
ホメオパシーのウィキペディアの記述とかひどい。悪意のある人が編集してるんだろうな。
「分子のかけらも残っていないようなレメディなど、毒にも薬にもならない。効くはずがないんだ」と一般のお医者さんが言う。
毒にも薬にもならない。
仮にこれが本当だとしても、僕はこれで大いにけっこうだと思っている。
ねぇ、お医者さん、自分が処方してる薬がどれほど毒性があるかってこと、考えたことありますか?

後処理

2018.11.14

40代の女性。無気力を主訴に来院された。
元来快活な性格で、仕事にも熱心に取り組んでいたが、半年ほど前から気分がしずみがちになり、2,3か月前からは仕事に出るのもおっくうになった。
職場での人間関係も悪化し、休職、あるいは退職を考えていた。他院に通院しており、そこで降圧薬、コレステロール降下薬の処方を受けていた。
カウンセリングを行うと同時に、コレステロール降下薬の一時中止を指示した。あわせて、ビタミンC、コエンザイムQ10の服用を勧めた。
「薬を出してもらっているA内科の先生には、どう言えばいいでしょうか」
「現時点では、コレステロール降下薬はあくまで『容疑者』です。犯人と決まったわけではありません。
一か月だけ中止してみてください。それでうつが軽快しないようでしたら、飲むのを再開して頂いてけっこうです」
一か月後の来院時、症状は見事に消失していた。
スタチン誘発性のうつだったことが、明らかになった形だ。
コレステロールは細胞膜の構成材料であり、また、各種ホルモンの材料になると同時に、正常な脳機能の維持にも極めて重要な役割を担っている。
血中コレステロール濃度と脳内セロトニン濃度には相関があり、また、これらは不安症状と負の相関がある。
http://www.ijnpnd.com/article.asp?issn=2231-0738;year=2014;volume=4;issue=1;spage=69;epage=73;aulast=Thomas
さらに、コレステロール降下薬は血中コエンザイムQ10の低下を招き、ミトコンドリアの機能不全の原因となる。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3096178/
「とても体調がよくて、毎日元気に過ごせています。
実は、仕事はやめちゃいました。でも、今、新たに別の仕事を始めたんです。
一か月前にはもう何の仕事もせずに家にずっといたいって思ってたことを思うと、自分でも信じられないぐらいに元気です」と以前には見られなかった笑顔さえ浮かべて語る。
よかった。
これでもう、この人は大丈夫だろう。
通院する必要もない。食事摂取もできているから、サプリもあえて必要ないだろう。
それではお大事に、と言おうと思ったら、
「今日来たのは、別の理由があります。
A内科で見てもらっている先生が、納得いかない、と言っています。
『スタチンでうつ病が起こるなんて話は聞いたこともない。インターネットを調べたが、そんな記述は皆無だ。一体どういう根拠で、他院からの処方を一方的に中断するなどという暴挙に出たのか、ナカムラクリニックの先生に聞いてくるように』
と言われました。
A先生にどうお答えすればいいでしょうか」

ああ、そういうことか。
患者の精神症状が軽快したことは、治療者にとって本来喜ばしいことであるはずだが、A先生は俺が許せない。
まさか、自分の処方が患者の精神的不調の原因そのものだったなんて、断じて認められない。
それに、俺のやり方も気にくわない。
「本来、他院の処方を変更する際には、まずは文書で主治医に伺いを立て、許可をもらってから、行うのが筋だろう。
そういう踏むべきプロセスを、こいつは完全に無視して、一方的に事を進めやがった。無礼にも程がある。許せない」
といったところだろうか。

コレステロール降下薬が精神科的症状を引き起こすことは、文献を調べれば無数に出てくるのだが、A先生、一体何を検索したのだろうか。
いや、まともに検索なんてしていないんだ。
ポイントは、「コレステロール降下薬がうつ病を引き起こすかどうか」じゃない。
俺がA先生のメンツを潰してしまったこと。A先生が怒っているのはその点なのだ。

A先生宛てに、平身低頭、ひらに、ひらに謝る報告書ををしたためる。
「本来、先生に一度お伺い立ててから薬剤の中断をすべきところ、その点を失念しておりました。大変申し訳ないことをしました」
我ながら、バカバカしい。
こんな作文を書くことは、医療じゃない。
でも、医者の世界を世渡りするうえで、必要なケアなんだ。
この世からうつ病が一つ消えて、笑顔が一つ増えたんだ。それぐらいの後処理は仕事のうちだと割り切っている。

しかし、A先生ね。
俺に何か言いたいことがあるならば、俺に直接電話なり手紙なりをくれよ。
患者を伝書鳩代わりに使うな。