2020.3.2
「もともと健康で、何ら体に問題はありませんでした。
仕事もバリバリできるし、妻や子供との関係性も良好。ジョギングをして、食事にも気を遣って、毎日充実した生活を送っていました。
状況が変わったのは、会社の健康診断でコレステロールが高いことを指摘されたこと。医師から、コレステロール降下薬を処方されました。
飲み始めてしばらくは、何も異常は出ませんでした。ただ、半年ほど経った頃から、何ともいえない体のだるさを感じるようになりました。
もちろん薬が原因だなんて、思いもしません。体にいいと信じて飲んでいますから。
寝起きがだるくなり、毎日のジョギングに行くのも差し支えるようになってきました。
それどころか、体を動かすこと自体がおっくうになって、トイレに行くのも面倒だとさえ思うようになりました。
一日中ぼーっとして、仕事のパフォーマンスが低下したのはもちろん、休日だって何もしたくありません。体を思い切って動かすと、妙な立ちくらみもある。
薬を1年半ほど飲み続け、全身の倦怠感は病的なレベルに達しました。異常さは、自分の体感としても家族の目からも、明らかでした。
食事、生活習慣を徹底的に見直しました。そしてようやく、原因として突き止めたのが、コレステロール降下薬でした。
なぜこんなことになったんだろう、と思います。繰り返す言うようですが、本当に、体調は絶好調でした。
健康診断は何も問題のない優等生でした。ただ、コレステロールが高いという、その一点だけを除いて。
それで、医者の勧めるがままに、コレステロール降下薬を飲みました。
僕がしたのは、それだけなんです。それだけで、仕事も続けられないくらいの症状になりました。
何だかやるせない気持ちです。
薬の処方前に、医者から特に副作用の説明はありませんでした。あとで知ったのですが、グレープフルーツと一緒に摂取してはいけない、とか、いろいろ禁忌があるんですよね。
そういう説明はなかったです。ただ、「筋肉痛がでるかもしれません」とだけは聞いていましたが、薬のせいでこれほどひどい副作用が出るとは思ってもいませんでした。
薬はやめました。でも、もう薬をやめて3か月が経ちましたが、まだ倦怠感は治っていません。
何とかならないでしょうか?
治療法を模索していくなかで、ネットでオーソモレキュラー療法のことを知りました。
プロテインを飲み始めましたが、いまいち効果は実感していません。というか、これまで調子の悪い日と小康状態を繰り返すようなリズムだったのが、プロテインを始めてから、ずっと調子が悪いように感じているのですが、気のせいでしょうか?」
僕のブログを読んでくれている人で、今日、当院を受診された。
スタチン(カビ毒)に対する解毒法は、いずれブログで紹介するつもりでいたが、この患者のように「何を飲めばいいのか、どうすればいいのか、とにかく早く教えて欲しい」という人がいることを思い知らされた。
手順を踏んで、と思っていたが、予定を前倒しして、下記参考文献の著者James Yoseph氏の勧める食事法を紹介しよう。
ただ、まず最初に、上記患者の誤解を解いておきたい。
オーソモレキュラー療法とプロテインの服用を混同されているところがあるが、オーソモレキュラー栄養療法の創始者(主にはホッファーとポーリング)は、別にプロテインパウダーを勧めていない。
このことは拙訳『オーソモレキュラー医学入門』(A.ホッファー、A.ソウル共著)を読んでもらえればわかる。「高タンパク(肉、卵、乳製品、プロテインパウダーなども含め)が体によい」という旨の記述はどこにも見出すことができないだろう。
それもそのはずで、著者のソール先生自身、”ゆるやかな”ベジタリアンなんだ。ゆるやかな、というのは、「動物性食品を食べないと決めているわけではなく、食べたいときや食べる機会があるときに、良質の肉を少量食べるスタイル」ぐらいの意味である。
一方、ベジタリアンとは真逆のアプローチとして、動物性タンパク質の積極的摂取を勧める考え方に、アトキンス・ダイエットやパレオ・ダイエットがある。
これらの源流はいずれも、1930年代のウェストン・プライス博士の仕事に行きつく。
世界中の原住民を実地調査した結果、プライス博士は「精製した糖質、穀物、加工食品の摂取こそが現代病の元凶である」と考えた。ここから多くの治療家が示唆を得て、”食における原住民への回帰”が説かれるようになった。この流れは、現代日本の高タンパク・低糖質食ブームにも脈々とつながっている。
1972年にロバート・アトキンス医師が提唱したアトキンス・ダイエットは世界中で一大ブームを引き起こし、イギリスでは300万人以上が、アメリカでは11人に1人が、この食事法を試したと推定されている。
なぜ、こんなに流行するのか?
答えは簡単で、「効果をすぐに実感するから」である。
特にアメリカにおいて、肥満は国民病である。精製糖質の習慣的な過剰摂取によって肥満に陥っている人がアトキンスダイエットを行うと、みるみる体重が落ちる。スリムになるばかりでなく、頭の働きもクリアになるだろう。体験者は、こんなに素晴らしい食事法はない、と喜ぶ。
しかし、である。
しかし、何らかの改善したい不調があってその改善を目指して行う治療食が、通常の維持食としてふさわしいかというと、また別の話である。
『体脂肪を減らすための高タンパク食~その機序と危険性』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4258944/
「高タンパク食には、満腹感をもたらし、かつ、体脂肪が減少するというメリットがあって、減量法として最近ますます人気が出ている。
では、なぜ、高タンパク食によって体重が減少するのだろうか?その機序は?
それは高タンパク食によって、以下のような変化が起こるためである。
・満腹ホルモン(GIP, GLP-1)の分泌増加
・食欲増進ホルモン(グレリン)の分泌減少
・食事の熱作用の増加
・タンパク質誘発性の糖新生による血糖値の安定化
しかし、いいことばかりかというと、そうではない。高タンパク食に取り組む際には、注意しておくべきこともある。
一般的な西洋食と並行して高用量の分枝鎖アミノ酸を摂取すれば、代謝性疾患を発症する可能性がある。
また、高タンパク食は体を酸性にするため、腎臓への負荷も増大する。さらに、エネルギー需要量が低い状態(ろくに運動しない状態)で過剰にタンパク質を摂取しては、余剰分はグルコールかケトン体に変換され(糖新生の働き)、エネルギー代謝が正に傾く。これは、高タンパク食の目的が体重減少にあるのなら、好ましくないことである」
どの食事法も人によって合う合わないがあるし、目的によって、ある状況では適切でも、長期的に続けるには不適切、ということは普通にあり得る。
万人に共通して勧められるのは、とりあえず「精製糖質(砂糖菓子や小麦など)を控える」ことぐらいで、そこから先は個々人の状況に合わせてベストな方法を模索する、ということになるんじゃないかな。
上記患者について言えば、スタチンはカビ毒である。このカビ毒が筋肉にアポトーシスを起こして、筋炎が起きているはずである。
一方、プロテイン(のみならず、乳製品全般)は、カビ毒汚染のリスクが極めて高い加工食品である(パウダー製造過程の加熱によって真菌本体は死んでも、カビ毒は失活しない)。プロテインが症状の緩和に効かないところか悪化させた可能性は、説明がつくと考えている。
長文になってしまった。
肝心のJames Yoseph氏の勧める食事法は次回こそ^^;
参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph著)
2020.3.2
新型ウイルスに対する不安から、デマが広がりやすい状況になっている。
ネットやスマホを通じて情報がすばやく得られることはありがたいことだが、デマも広がりやすいことには気をつけたい。
きのう、こんな情報を見つけた。
「緑茶、紅茶、ウーロン茶のコロナウイルスに対する効果を調べたところ、緑茶に最も強い抗ウイルス活性が見られた」という記事である。
まずは、「緑茶を売りたい業者のステマではないか?」という目線を持ちたいところ。
しかし事実であれば、デマでも何でもない。予防的な意味で推奨できる(スーパーの棚から急にお茶っ葉が消える現象は勘弁して欲しいけど^^;)。
真偽を確認するため、論文をちゃんと読んでみたいところだが、中国語なので読めない^^;
そこで、英語論文を調べたところ、上記画像と同じものではないかもしれないが、SARS-コロナウイルスに対する緑茶成分の有効性を検証した論文が見つかったので、紹介しよう。
『テアフラビン-3,3′-ジガレート(TF3)によるSARS-コロナウイルス3C様プロテアーゼ活性の抑制』
https://www.researchgate.net/publication/7803904_Inhibition_of_SARS-CoV_3C-like_protease_activity_by_theaflavin-33_’-_digallate_TF3
「SARS-コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)の病因因子である。SARS-コロナウイルスが感染した宿主細胞において、ウイルス内コードされた3C様プロテアーゼ(3CL(Pro))がウイルス増殖のために必須であると考えられている。
本研究において、我々は3CL(Pro)に対する抑制効果について、ナチュラルプロダクトライブラリー所収の化合物720種類を検証した。
これらのうち、3CL(Pro)に対して抑制作用を示した化合物は二つあった。タンニン酸(IC(50) = 3μモル) と3-イソテアフラビン-3-ガレート(TF2B) (IC(50) = 7μモル)である。
これらは茶に含まれる天然ポリフェノールである。我々はさらに、いくつかの異なる種類の茶葉を用意し、3CL(Pro)の抑制効果を検証した。その茶葉は、緑茶、ウーロン茶、プーアル茶、紅茶である。
その結果、プーアル茶と紅茶は、緑茶やウーロン茶よりも、3CL(Pro)に対する抑制効果が強かった。
さらに、茶に含まれている他の成分の3CL(Pro)抑制効果を検証した。その結果、カフェイン、エピガロカテキン・ガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、テオフィリン(TP)、カテキン(C)、エピカテキン・ガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)には3CL(Pro)抑制効果は認められなかった。唯一、テアフラビン-3,3′-ジガレート(TF3)にだけ、3CL(Pro)抑制効果が確認された」
2005年の研究。SARSの流行(2003年)を受けて、その対策として書かれた論文だろう。SARSの原因ウイルスは、分類的にはコロナウイルスに属するから、上記の研究は現在流行している新型コロナウイルスにも有効である可能性は充分にある。
この研究では、上記画像とは違って、緑茶やウーロン茶よりも、プーアル茶と紅茶を推している^^;
ただ、あくまで3CL(Pro)抑制効果、という点にフォーカスした結論であることに注意しよう。SARS-コロナウイルスに対してどの茶葉が一番効くか、を直接(マウスレベルとかで)示したものではない。
コロナウイルスではなく、インフルエンザウイルスに対する緑茶の効果、という点では他にもこんな論文がヒットする。
『緑茶に含まれるカテキンのインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166354205001440
やはり、2005年の論文。
緑茶から抽出したEGCG、ECG、EGCのインフルエンザウイルス増殖抑制作用と殺ウイルス作用について検証している。結果、EGCGとECGにウイルス増殖抑制効果が見られた。その機序(MDCK細胞におけるRNA合成阻害がどうのこうの、とか)についても検証しているが、わからへんので省略しまーす^^
「緑茶が体にいい」なんてことはとっくの昔、千年前からわかっていることで、最近になって科学のメスが入り、「なぜいいのか」のメカニズムが科学の言葉で語られ始めた、というだけのことだ。
たとえばきのうのブログで言及した岡澤美江子先生の著書『天の配慮』のなかでも緑茶の健康効果について考察されている。
唾液のORP(酸化還元電位)を調べると、緑茶を飲む前では+40mVだったのが、緑茶を飲んだ後では-50から-30mVになった。つまり、唾液抗酸化力(還元力)が大幅に高まった、ということである。この効果は70度以下で沸かした緑茶で最も高く、高温で沸騰させると低下した(低下したといっても、還元力がないわけではない)。個人的に最も驚いたのは、市販のペットボトル入りの緑茶にも還元力がある商品があったこと(ただし、むしろ酸化させる商品のほうが多かったが)。いい商品を作っているメーカーもいるんだな。
総じて言えることは、水にこだわり、無農薬の茶葉から抽出した緑茶では、「確実に」抗酸化力が高まった、ということ。
唾液を使った研究というのは、採血でやる研究より、結果がスピーディーで勝負が早くて、いいよねぇ。
【まとめ】
新型コロナ対策にはコーヒー(カフェイン)を飲んでも、効かない^^同じ飲むなら、お茶(できれば無農薬のもの)を飲もう。緑茶がいいと言われているけど、プーアル茶でも紅茶でも一応の効果はあるんじゃないかな。
2020.3.1
ブログにアップする文章は、それなりのエネルギーを注いで書いている。そのエネルギーの分だけ、それぞれのブログに愛着がわく。だから基本的には、いったんブログにあげた文章は、そのまま残したいと思っている。
ただ、ブログを目にした周囲の親身な人たちが、すぐ僕に連絡をくれたりする。「あっちゃん、さすがにあのブログはまずいよ!」とか^^;
ありがたいことである。こういう助言こそ、得難いものである。
しかし、その助言に対する僕の反応はまちまちである。
「そうやなぁ。さすがにまずいか」と素直に助言をいれて、そのブログを非公開にすることもあれば、「いや、このままでいい。絶対下げない」と突っぱねることもある。「せめてこの箇所の記述は削れ」と迫られ、妥協して修正に応じることもあれば、そうではないときもある。
以下の文章は1年以上前にブログにアップしたものの、諸事情で非公開にしたものである。非公開にするまでの間、1週間ほどアップしていたため、昔から僕のブログをフォローしてくれている人は、読んだことがあるかもしれない。
時間の経過によって、非公開にする理由も動機も消滅したと思われるので、表題を変えて再掲することにする。
「十年近く前のことですけど、マンガやアニメの専門店で働いていたことがありました。
店内には本やDVDはもちろん、同人誌、コスプレ衣装なんかがずらりと並んでいて、先生みたいにアニメ趣味のない人なら、3分とその空気に耐えられないんじゃないかな笑
お客さんは当然というか、オタクみたいな人ばかり。
でもオタクの人って、いい人が多いですよ。繊細でおとなしくて、恥ずかしがり屋で。リアルの女性に堂々とアプローチなんて、とてもできない。拒絶されたら、傷ついてしまう。
でも、拒絶される心配のないアニメのなかのキャラクターになら、思い切って感情をぶつけられる。アニメにはまる人の心理って、そんなところだと思います。
でもみんながみんな、羊みたいにおとなしいかっていうと、そういうわけでもないです。
ある日仕事を終えて、家に帰る途中、背中に何となく視線を感じました。誰かに後をつけられているような気がする。ふっと振り返ると、ある若い男の姿が目につきました。私が立ち止まると、その人も立ち止まる。私が歩き出すと、その人も歩き出す。
気のせいかな、たまたま歩く方向が同じなのかな。
周囲の人気はどんどん少なくなっていく。当時一人暮らしをしていたマンションが、だんだん近くなってきた。それでも、その人、ずっと私の後ろをついてきている。
明らかにおかしいと思って、近所のコンビニに入りました。近く住んでいる妹に電話して、コンビニまで迎えに来てくれるよう頼みました。
すぐに来てくれて、いつのまにかその男の姿もなくなっていました。
数日後、私の家のすぐ近所で、一人暮らしの女性が男に乱暴される事件があったとニュースで見ました。被害女性が男の特徴を覚えていたおかげで犯人はすぐに逮捕されましたが、私、このニュース見て、はっとしました。
私の後をつけてきた男と同じ人かもしれない。警察に電話し、後をつけられたことを話しました。
直接話を聞きたいと、刑事さんが来て、詳しくお話しました。
その後、男の事情聴取から、私もその人のターゲットの一人だったということが分かりました。
私の働く店のお客さんでもあって、そこで私に目を付けたようなんです。被害者女性は、家まで後をつけられ、鍵をかける前に玄関に無理やり侵入、暴行されていました。
危なかった。
本当に危なかったんです。
危険を感じて妹に迎えに来てもらったおかげで助かったけど、後をつけられていることに気付かないで、まっすぐ自分の家に帰っていたら、と思うと、心底ぞっとしました。
そのあたりのてんまつを店長に話しました。すると、店長、
「あのさ、ちょっと変なこと言っていいかな。たまたま尾行されているのに気付いて、たまたまタイミングよく妹が迎えに来てくれて、たまたま犯人が暴行をあきらめてくれた、だなんて、本気で思ってる?君が助かったのはね、偶然じゃないんだよ」
「どういうことですか」
「君の身内、多分君のお父さんだと思うんだけど、いつも君のそばにいるんだよね」
父は私が25歳のときに癌で亡くなっています。
だから、店長がいうところの「父が私のそばにいる」というのは、物理的な意味ではありません。
「お父さん、どんな格好をしていますか」
「男性にしては長い髪で、スカジャン着てジーパンはいてて、おしゃれだね。笑顔の素敵な人だよ」
父の姿そのもので、店長、本当に見えてるんだなって思いました。
父への感謝とかなつかしさとか、何だか感情が胸に急にこみあげてきて、泣きそうになりました。
私は霊感とか全然ないから、そういうの分からないんだけど、いわゆる「見える人」に言わせると、必ず言われます。お父さんが君を守ってくれているよ、って。
先生、そういう霊的な話、大嫌いなんですよね笑
ごめんなさい、でも本当のことなんです」
いや、ちょっと待ってくれ。何も霊的な話が嫌いというわけじゃないよ。別にそういうものの存在は否定しない。
というかむしろ、怖い話とか好きだし、そういうものがあったほうが世の中おもしろいとさえ思う。
見えるものばかりが真実じゃないし、科学が万能じゃないことは当然のことだ。
ただ俺が許せないのは、その「見えなさ」につけ込んで人々の不安をあおり、それで金儲けしている連中のいることだ。
「先祖霊のたたりだ。供養してくれ、でないと成仏できないと言っている。つきましては、当寺では50万円から永代供養を承っておりまして。。。」
「あなたの腰痛の原因は霊障だ。腰に蛇が巻き付いている。除霊には、まず、この70万円の壺を買って頂き、、、」
アホちゃうかと。
こういうぼろい商売してる奴らがいるかと思うと、まじめに仕事する気なくすわ、ほんま。
「先生は、何かそういう、霊的な体験ってしたことないんですか」
うーん、どうかな。
あるにはあるよ。
でも別に、不思議だなぁ何だったんだろうなぁって思うぐらいで、「霊はやっぱり実在する!」とか全然思わないけどね。
勤務医時代のこと。出雲大社の近くにある病院に勤めてたんだけど、若い統合失調症の女性患者を担当した。妄想がかなり活発で、現実見当識は極めて乏しい。会話を試みようにも、ほとんど成り立たない。
そばにはその人のお母さんが付き添っている。お母さんが言う。
「うちの家系の女性は、代々霊媒師をしております。大社からつかわされる神の言葉をうけとり、それを必要とする人にお伝えする。それが我々の仕事です。
この子は元来非常に筋のいい子で、高野山なり恐山なり、霊山で修行すれば相当ものになると思うのですが、残念ながら病気のせいで」
「よくわからないんですけど、何かこう、霊的なものが見えたりもするんですか」
「はい、見えます」
「今、何か、見えてます?」
「娘に聞いてみましょう」
お母さん、ぶつぶつ独語している娘さんに問いかける。
娘さん、こちらを見て、ぼそっと、しかし非常に明瞭な声で、「エイコさん、見守ってますよ」
さすがに衝撃は隠せない。
どこでどうやって僕の母の名を知ったのか。
患者に尋ねるが、再び幻覚妄想の海に沈んでしまい、まともな答えは返ってこない。
ちなみにこの患者さん、甘いものが大好きで、毎日コーラを欠かさず飲んでた。
有能な霊媒師も、コーラの魅力には勝てないんだよねぇ笑
2020.3.1
今日、近くを通りかかった薬局の風景。
この薬局、数日前から、板藍根(ばんらんこん)という生薬をえらくプッシュしている。
医薬品ではないから効用は標榜できないものの、新型ウイルス対策として、暗にオススメしている雰囲気だ(「新型コロナウイルスに効く!」と言いたいが、そう言ってしまうと法律違反 ゚Д゚)。
僕はこの生薬のことを全然知らなかった。一般的な知名度もそれほど高くはないだろう(実際、「ばんらんこん」と入力して漢字変換を押すと「晩乱婚」と出てきた。何か急にエロいワードになった^^;)
この板藍根、ウイルスに効くとして、中国では有名な生薬である。
1988年に肝炎が流行したときや、2002年にSARSが流行したときには、この板藍根が薬局の店頭から一瞬にして消えたという。つまり、肝炎ウイルスに対してであれインフルエンザウイルスに対してであれ、とにかく「ウイルス」の働きを抑える生薬として中国では認識されているようだ。
分類学的には、アブラナ科のホソバタイセイ(Isatis indigotica)である。アブラナ科というだけあって、実際写真を見てみると、素人目にはアブラナそのもののような印象を受ける。
学名がindigoticaというだけあって、かつてはこの植物の根から抽出される青い成分(インディゴ)が藍染やジーパンの染料として用いられていた。考えてみれば確かに、板藍根というその名前自体に、かつて染料として使われていた名残がある。
さて、気になるのは、板藍根がウイルスに効くという噂に、本当に科学的根拠があるのか、ということである。
そこで論文を調べてみたところ、確かに、複数ヒットした。たとえばこのような論文。
『板藍根由来多糖類のインフルエンザウイルス感染に対するマウス防御力への効果』
https://www.semanticscholar.org/paper/Effects-of-Banlangen-polysaccharide-on-mice-to-Jun/fcd73cd9067ee98d5a91c5c5ac0d929b4589be0f
「インフルエンザウイルスに感染させたマウスに対して、実薬群ではマウスの腹腔内に板藍根由来エキスを注入し、一方対照群のマウスには腹腔内に生理食塩水を注入した。
両群での、生存率、血漿中のIgG濃度、脾臓のインターフェロンγ濃度を測定した。その結果、板藍根エキス投与群では、死亡率が有意に低下し、生存期間も有意に延長した」
うむ、あくまでネズミを使った研究ながら、一応の説得力はある。
他にはこんな研究。
「板藍根抽出物のインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性』
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0254627216300516
板藍根がインフルエンザに効くのはわかっているから、それではなぜ効くのか、その機序はどうなっているのか、を調べたのがこの論文。
板藍根から抽出される成分クレマスタニンB(CB)、エピゴイトリニン、フェニルプロパノイド類(PEP)、その他アルカロイド、有機酸があるが、何がどのように効いているのか。
作用機序としては、治療作用、予防作用、ウイルス接着抑制作用、殺ウイルス作用、の4つの可能性を想定した。
ややこしい話なので、途中を省略して結論部分に飛ぶと、これらの成分には、ウイルスの増殖抑制作用とウイルスの接着阻害作用によって抗ウイルス活性を発揮していることがわかった。
以前のブログで、「葛根湯は予防に著効するが、一回ウイルスに罹患してしまうと、やや効果が落ちる」といったことに言及したと思う。
漢方のプロに言わせると、板藍根は予防はもちろん、罹患したあとにもしっかり効いてくれるところが、この生薬の強みだという。
板藍根は上記の写真のように、普通に漢方薬局やネットで買える。お茶として普通に煮出して飲めばいい。あるいは飴として売っているから、のど飴感覚でなめるのもいいだろう。
世間ではマスクの品薄はもちろん、トイレットペーパーまで売り切れが続出している。
すでに多くの人が指摘しているように、ウイルス性疾患に対してマスクの予防効果はない。気道の保湿効果や咳エチケットとしての意味合いでマスクをするのなら、一概に否定しないけどね。
真剣にウイルスの予防を意識するのなら、多少なりエビデンスのあることを実行しよう。
多くの人が変にマスクを買いだめするものだから、当院も含めて、一般の医療機関はマスクが買えなくて困ってるんだよね^^;
2020.3.1
「妊婦が有機ゲルマニウムを飲んでも影響ないですか?」と聞かれた。
「もちろん大丈夫です。0歳や1歳の子供さんも安心して飲めるぐらいですから、何ら問題はありません」と即答した。
この言葉は嘘ではない。嘘ではないが、科学的に正しいかといえば、そうではない。
患者は「妊婦が飲んでも大丈夫か?」と聞いている。これはつまり、「胎児に悪影響はないのか?」ということである。
これに対して「0歳児、1歳児が飲んでも問題ない」という答えは、実質、問いに対する答えになっていない。
患者は穏やかな人だったからそれ以上追及してこなかったが、むしろ納得できないのは僕のほうである。
患者から宿題を頂いた格好で、診察後、すぐに文献を探してみた。
すると、Dr.Mieko Okazawaによる症例報告(1977.10.15)があった。妊娠中有機ゲルマニウムを服用していた妊婦8症例について、全員が”完全に健康な赤ちゃん”(原文ではPERFECTLY HEALTHY BABIESと大文字)を生んだ、という。
・症例1
第1子、第2子とも病弱であり、母親自身元来虚弱であった。第3子の妊娠初期に尿糖が強陽性(++)であった。妊娠二か月目より有機ゲルマニウムの服用を開始したところ、極めて健康な男児を出産した。
・症例8
妊娠前から、虚弱と自律神経失調症の改善のため、有機ゲルマニウムを服用していた。妊娠後期に重度の嘔吐と貧血が出現し、さらに血圧上昇も見られたため、有機ゲルマニウムの経口投与に加え、有機ゲルマニウムの静注も行った。結果、お産は非常に良好であった。
なぜ、有機ゲルマニウムを服用していた妊婦には周産期異常(早産、低出生体重児、早期胎盤剥離など)が見られず、皆安産なのか。
低出生体重児がますます増える傾向にある近年、この問題には一考の価値がある。単に母体と新生児の健康のためだけではなく、一般の人にとっても有益な示唆を得られる可能性がある。
妊娠中、母体(および胎児)にとって最も必要なのは酸素である。
好気呼吸を行う生命すべてにとって酸素が重要なのはもちろんだが、なんといっても、妊娠中は食事も酸素も「二人前」必要である。酸素の重要性は、普段に倍していると考えないといけない。
こういう状況で、母体内の環境が酸性に傾いていたら、どうなるか?
酸性環境下では赤血球のヘモグロビンの酸素運搬能力が著明に低下する、というのが、生理学の教えるところである。子宮内の胎児にとっては、一本の臍帯が、文字通り”命綱”であるが、ここに酸素がろくに運ばれてこないとなっては、生命の危機そのものである。
では、なぜ、体内環境が酸性化してしまうのか?
ひとつには、精神である。ストレスや不安は、血液の酸性化を招く(逆に、血液の酸性化が不安や不穏を招く)。「笑っている人は病気にならない」という言葉は、確かに真理を含んでいる。気持ちが穏やかで、前向きであることが大事だ。
もうひとつには、食生活である。ただでさえ、農薬や添加物など、体内に様々な毒物が蓄積する現代である。妊娠前にろくすっぽ食べ物に気を遣っていなかった妊婦は、ひどいつわりによって、日頃の不摂生の代償を払うことになる。妊娠してからでも決して遅くはないから、食べ物に配慮することだ。体を酸化させる食材(粗悪な肉や脂肪酸など)は控えることが好ましい。
このように考えていくと、「有機ゲルマニウムは、妊婦さんが飲んでも安心です」どころではない。
酸素の重要性が倍加している妊婦こそ、率先して有機ゲルマニウムを摂りたい。以前のブログでも紹介したので詳述しないが、有機ゲルマニウムは赤血球の代謝亢進を促す。古くて固い赤血球にご退場願い、新しく柔らかな赤血球を生み出す(一般の採血データは古いも新しいもなく、単なる赤血球の数しか見ていない)。新鮮な赤血球が各器官に酸素を供給することで、様々な不調が一掃される。
ところで、この興味深い症例報告を書いたDr.Mieko Okazawaなる人物は、どのような人なのだろうか。症例報告したのは1977年、今から43年前のことである。今も存命中の先生だろうか。
ネットの時代である。検索してみたところ、岡澤美江子医師は98歳の今も横浜・金沢区で開業医をされている現役医師のようだ。
著書も出されていて、『天の配慮: 命の源流を探る唾液イオン反応~自然摂理は永久の真理』という本がKindle版であったので、さっそく購入した。
岡澤先生は、敗戦の雰囲気が色濃くなってきた1944年に東邦大学医学部の生化学研究室に入り、唾液の研究をしていた。
この研究を通じて、先生はひとつの着想を得た。それは「唾液とは血液である」というものである。
食事をし、それが胃腸で吸収されて血流に乗り、血液が唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)をろ過されて唾液になる。
つまり、唾液の性質(酸性アルカリ性の状態も含め)に血液の状態がモロに反映されているのだから、わざわざ採血をせずとも、唾液を調べることで体内環境を把握できるのではないか?
こうした仮説のもとに研究を進め、ついに大友慶孝氏とともに、唾液の酸化還元確認計(ORP)を開発するに至った。先生はこの機械を臨床に使って、着実に成果を上げているという。
非常におもしろいアイデアだと思った。確かに、唾液は医学的情報の宝庫だろう。これを臨床に応用する手法がすでにあったことに、驚かされた。
広く普及すればいいと思うけど、既得権益に阻まれて、なかなか難しいだろうな。
岡澤先生と有機ゲルマニウムの出会いについても書かれていた。
先生は、有機ゲルマニウムの発見者浅井一彦先生と面識があり、浅井先生から直接有機ゲルマニウムのすばらしさを教わって、自身の臨床にも使うようになったという。
長寿の医者というのは、長寿であるというだけで、その言葉の信憑性が5割増し、というところがある^^
98歳の今も現役の臨床医であり続けているというのは、やはり、この先生のアプローチ(酸・アルカリへの意識、有機ゲルマニウムの活用)は”本物”だと思うんだな。