院長ブログ

コロナウイルス対策8

2020.3.2

新型ウイルスに対する不安から、デマが広がりやすい状況になっている。
ネットやスマホを通じて情報がすばやく得られることはありがたいことだが、デマも広がりやすいことには気をつけたい。
きのう、こんな情報を見つけた。

「緑茶、紅茶、ウーロン茶のコロナウイルスに対する効果を調べたところ、緑茶に最も強い抗ウイルス活性が見られた」という記事である。
まずは、「緑茶を売りたい業者のステマではないか?」という目線を持ちたいところ。
しかし事実であれば、デマでも何でもない。予防的な意味で推奨できる(スーパーの棚から急にお茶っ葉が消える現象は勘弁して欲しいけど^^;)。
真偽を確認するため、論文をちゃんと読んでみたいところだが、中国語なので読めない^^;
そこで、英語論文を調べたところ、上記画像と同じものではないかもしれないが、SARS-コロナウイルスに対する緑茶成分の有効性を検証した論文が見つかったので、紹介しよう。
『テアフラビン-3,3′-ジガレート(TF3)によるSARS-コロナウイルス3C様プロテアーゼ活性の抑制』
https://www.researchgate.net/publication/7803904_Inhibition_of_SARS-CoV_3C-like_protease_activity_by_theaflavin-33_’-_digallate_TF3
「SARS-コロナウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)の病因因子である。SARS-コロナウイルスが感染した宿主細胞において、ウイルス内コードされた3C様プロテアーゼ(3CL(Pro))がウイルス増殖のために必須であると考えられている。
本研究において、我々は3CL(Pro)に対する抑制効果について、ナチュラルプロダクトライブラリー所収の化合物720種類を検証した。
これらのうち、3CL(Pro)に対して抑制作用を示した化合物は二つあった。タンニン酸(IC(50) = 3μモル) と3-イソテアフラビン-3-ガレート(TF2B) (IC(50) = 7μモル)である。
これらは茶に含まれる天然ポリフェノールである。我々はさらに、いくつかの異なる種類の茶葉を用意し、3CL(Pro)の抑制効果を検証した。その茶葉は、緑茶、ウーロン茶、プーアル茶、紅茶である。
その結果、プーアル茶と紅茶は、緑茶やウーロン茶よりも、3CL(Pro)に対する抑制効果が強かった。
さらに、茶に含まれている他の成分の3CL(Pro)抑制効果を検証した。その結果、カフェイン、エピガロカテキン・ガレート(EGCG)、エピカテキン(EC)、テオフィリン(TP)、カテキン(C)、エピカテキン・ガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)には3CL(Pro)抑制効果は認められなかった。唯一、テアフラビン-3,3′-ジガレート(TF3)にだけ、3CL(Pro)抑制効果が確認された」

2005年の研究。SARSの流行(2003年)を受けて、その対策として書かれた論文だろう。SARSの原因ウイルスは、分類的にはコロナウイルスに属するから、上記の研究は現在流行している新型コロナウイルスにも有効である可能性は充分にある。
この研究では、上記画像とは違って、緑茶やウーロン茶よりも、プーアル茶と紅茶を推している^^;
ただ、あくまで3CL(Pro)抑制効果、という点にフォーカスした結論であることに注意しよう。SARS-コロナウイルスに対してどの茶葉が一番効くか、を直接(マウスレベルとかで)示したものではない。

コロナウイルスではなく、インフルエンザウイルスに対する緑茶の効果、という点では他にもこんな論文がヒットする。
『緑茶に含まれるカテキンのインフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果』
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0166354205001440
やはり、2005年の論文。
緑茶から抽出したEGCG、ECG、EGCのインフルエンザウイルス増殖抑制作用と殺ウイルス作用について検証している。結果、EGCGとECGにウイルス増殖抑制効果が見られた。その機序(MDCK細胞におけるRNA合成阻害がどうのこうの、とか)についても検証しているが、わからへんので省略しまーす^^

「緑茶が体にいい」なんてことはとっくの昔、千年前からわかっていることで、最近になって科学のメスが入り、「なぜいいのか」のメカニズムが科学の言葉で語られ始めた、というだけのことだ。
たとえばきのうのブログで言及した岡澤美江子先生の著書『天の配慮』のなかでも緑茶の健康効果について考察されている。
唾液のORP(酸化還元電位)を調べると、緑茶を飲む前では+40mVだったのが、緑茶を飲んだ後では-50から-30mVになった。つまり、唾液抗酸化力(還元力)が大幅に高まった、ということである。この効果は70度以下で沸かした緑茶で最も高く、高温で沸騰させると低下した(低下したといっても、還元力がないわけではない)。個人的に最も驚いたのは、市販のペットボトル入りの緑茶にも還元力がある商品があったこと(ただし、むしろ酸化させる商品のほうが多かったが)。いい商品を作っているメーカーもいるんだな。
総じて言えることは、水にこだわり、無農薬の茶葉から抽出した緑茶では、「確実に」抗酸化力が高まった、ということ。
唾液を使った研究というのは、採血でやる研究より、結果がスピーディーで勝負が早くて、いいよねぇ。

【まとめ】
新型コロナ対策にはコーヒー(カフェイン)を飲んでも、効かない^^同じ飲むなら、お茶(できれば無農薬のもの)を飲もう。緑茶がいいと言われているけど、プーアル茶でも紅茶でも一応の効果はあるんじゃないかな。