院長ブログ

栄養療法と成績

2019.8.28

近所にある塾で『栄養と知能』についての講演会を行ったことをきっかけに、何人かの保護者が当院に相談に来られた。
「栄養状態の改善で成績が伸びるのであれば、ぜひともアドバイスが欲しい」というのが、来られたお母さん方に共通する希望だった。
まずは話を聞く。
どのような食事をしているか。お菓子やジュースを過食していないか。
勉強に取り組む姿勢はどうか。お母さんがプレッシャーをかけすぎていないか。
話を聞いているなかで、それぞれの課題が見えてくる。
ある子供の例を供覧しよう(詳細は変えてある)。

10歳男児。
幼少期からADHDと指摘されていた。いわゆる「場の空気を読む」ということができず、クラスの中でいつも浮いた存在だった。
友達付き合いも苦手で、学校に行くのが苦痛だった。
運動も苦手だった。幼稚園でラジオ体操をしたとき、動きのぎこちなさを担任から指摘されていた。
集中力が持たず、授業中にじっとしていることができず奇声をあげる。教師から「家での育て方に問題があるのではないか」と言われたことも一再ならずあった。
母にとっては初めての子供だったが、何かとこだわりが強く、育てにくさを感じていた。
しかし、かわいい我が息子である。空気の読めなさや落ち着きのなさも愛すべき特質でこそあれ、矯正して治すべきもの、とは思っていなかった。
ただ、その性格ゆえに本人が学校の友達からバカにされ教師から白眼視されているとあっては、気の毒だ。何とかしてやりたい。
ネットを使って様々な情報収集に努めた。
「発達障害児は協調運動障害を併発していることが多い」、との記述を見付けスポーツや作業療法をさせた。
「サプリがいい」、と知ってビタミンや鉄のサプリを飲ませたりした。
どれも効果はない。あいかわらず授業中に独り言が出てしまうし、集中力は続かない。
そんなとき、子供が通う塾で行われた僕の講演を聞き、助言がもらえればと2019年3月当院に来院した。
食生活について問診したところ、お菓子をよく食べ、牛乳を毎日飲み、ご飯よりもパンを好むという。
食へのこだわりが強いようなら無理矢理に、とは言わないが、精製糖質、乳製品、小麦製品の摂取は極力控えるよう指導した。
さらに、有機ゲルマニウム、タラの肝油、フォスファチジルセリン、ビタミンD/Kのサプリを勧めた。

一か月後。
甘いものをできるだけ摂らないようにするなど、食事に気を遣っているという。
机に向かう時間が明らかに長くなった。毎月行われる学力テストで偏差値が初めて50を超えたと喜んでいる(それまではずっと40台だった)。

一か月後。
学校が楽しくなった。授業中に何かを衝動的に言ってしまう、ということがなくなって、友人との付き合いもうまく行くようになった。
これまでは学校から帰ると、学校であったイヤなことを母にこぼしていたが、そういうことが少なくなった。
「いい変化はいろいろあるのですが、何より、我慢、ということができるようになったことが大きいと思います」と母。
食事改善とビタミン摂取を開始してからの心身の変化は、母よりも誰よりも、本人が一番強く感じていた。
4泊5日の自然学校があったが、ビタミンを持って行くことを忘れなかった。
5日間始終他人と過ごすことはいつもの自分なら苦痛で仕方なかったはずだが、サプリのおかげで乗り切れた、と本人は感じていた。

一か月後。
体が軽い。同時に、気持ちも軽い。
「私が口うるさく勉強勉強って言わなくても、自分から机に向かいます。こんな子だったかしら、って思います。
勉強しながら、何かぶつぶつ独り言をいうこともなくなりました。この子らしさがなくなって、ある意味寂しいような」と母、笑いながらいう。
成績も順調に伸びている。このとき初めて、これまでの学力テストの成績推移を見せてくれた。
確かに、着実に上がっている。去年は偏差値40台ばかりだったのが、偏差値50台が当たり前になった。特に算数と理科の成績の伸びが目覚ましかった。
成績に応じたクラス分けもH1クラスからSクラスにアップした。
(クラス分けはV、S、H1、H2とあって、Vは偏差値60以上で灘や甲陽を狙うレベル。Sクラスは偏差値50~60で白陵や六甲を狙えるレベル)

一か月後。
自主的に勉強している。
「頭が良く回ります。記憶力がよくなったと思います。甘いのは食べたいけど、我慢してます。
前はチョコレート食べてたところ、おかきだけにしとこう、みたいな。お母さんも僕と一緒に我慢してくれてる」と本人の弁。
初めて来院したときに比べると、はっきり顔つきが凛々しくなった、というのが僕の印象。
当初は、何となくポカンとした顔つきをしていたのが、今は引き締まっている。
甘いものを控えてスリムになったというのもあるだろうが、それだけではない。
目つきや表情からして違う。知性というのは、顔に出るんだな。

成績が伸びたことは喜ばしいことだ。
しかし学校や塾の成績というのは、長期的な目線で見れば大して意味はないと思う。
一番大きいのは、本人の内面的変化だ。
授業中に奇声をあげてしまう。教師ににらまれ、クラスメートからは失笑された。「恥ずかしい」という思いはある。でも、止められない。
それが栄養改善に取り組むことで、はっきり心身に変化が現れた。
我慢、ということができるようになった。落ち着いて授業を聞けるようになった。衝動的にものを言うことが減り、友人関係も順調になった。
彼の中に初めて、自尊心と呼び得る感情が芽生えた。
もはや母に「勉強しなさい」と言われる必要はない。自分から積極的に目的意識を持って勉強するようになった。

成績が伸びたことは単なるオマケであって、その根本にある本人の姿勢の変化。これこそが核心だと思う。
本人は「将来は医者になりたい」という。このまま勉強を続ければ、きっとなれるだろう。
「医者っていうのはね、製薬会社の手先になって殺人医療に従事する仕事だよ」とはもちろん言わなかった^^;
目標を持って頑張ることこそが大事で、現実に失望するのはもっと後でいい。

天疱瘡とビタミンD

2019.8.27

天疱瘡という病気がある。
皮膚や粘膜にびらんを生じる病気で、自分の細胞の接着分子に対して抗体を作る自己免疫疾患だと言われている。
具体的には、こんな皮膚症状が生じる。

難病指定されてて日本全国で患者は6000人ほどと言われているけど、おそらく現場の皮膚科医としてはそんなにレアな疾患だというイメージはないと思う。
個人的にはポリクリで皮膚科を回ったときに見たことがあるのはもちろん、皮膚科が専門ではない僕でもときどき臨床で見るくらいだから、実数はもっと多いのではないか。

自己免疫疾患だから、治療はステロイドが基本。
症状の重症度と体重に応じたステロイドを投与するが、それで改善しなければ、ステロイドパルス療法として大量に投与する。
しかしステロイドは副作用の多い薬だ。
天疱瘡の症状は改善したものの、ステロイドの副作用で胃潰瘍になったりうつ病になるかもしれない。
感染症にかかりやすくなるし、長期に服用すれば骨粗鬆症にもなるだろう。
気になる症状がおさまったものの別の症状が現れては、一体治療なのか何なのか、よくわからない。
だから、副作用を抑えるための薬を投与しよう。
胃潰瘍の予防にPPI。骨粗鬆症の予防にビスフォスフォネート。
しかし、胃酸分泌を無理に抑えるとどうなるか。タンパク質の消化能力やミネラルイオンの吸収が低下する。腸内のpHが上がって悪玉菌優位の腸内細菌叢になる。
ビスフォスフォネートによって、むしろ骨折が増える。顎骨壊死が起こるかもしれない。
副作用を抑える薬がさらに別の副作用を起こして、もはや何がそもそもの病気で何が副作用なのか、わけがわからなくなる。西洋医学の対症療法によくある話だ。

天疱瘡に対してはステロイドを投与する、というのは、ガイドラインにしっかり書かれている。
しかしガイドラインには記載がないものの、天疱瘡にてきめんに効く治療法がある。ビタミンDの投与だ。
最近新たに開発された治療法、というわけではない。それどころか、すでに1930年代に著効することが知られていた。

医学というのは日進月歩で、年々進化していると皆さん思っているでしょう?
ある意味ではそうで、天疱瘡患者の血中に見られる抗デスモグレイン抗体がどうのこうの、みたいな科学的知見はどんどん増えている。
しかし、「誤った前提から出発する命題は、全て偽である」というのが論理学の教えるところだ。
現代西洋医学は、栄養の重要性を無視している。製薬会社の利益にならないビタミンなど、存在自体が完全に黙殺されている。
「抗デスモグレイン抗体がどうのこうの」的知識がいくら増えたところで、治療法はハナからステロイドありき、なんだ。
患者の利益にならない知見がどれだけ集積したところで、何の役にも立たない。

『天疱瘡はビタミンDによってコントロールできる』(1939年3月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519153
要約
1932年Ludyは高用量のビオステロール(ビタミンD)と紫外線療法によって明らかに症状が改善した天疱瘡の症例を6例報告した。
彼の結果を参考にしてビオステロールの高用量治療を行った症例につき、報告する。

Ludyの報告は医療現場を大いに刺激したようで、その後あちこちで追試が行われ、ビタミンDの有効性が裏付けられた。
たとえば以下のような報告。
『皮膚科におけるビタミンD療法』(1941年1月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519698
『高用量ビオステロールによる天疱瘡の治療』(1939年7月)
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/519242

1940年代の医者にとって「天疱瘡にはビタミンD」というのはもはや常識だった。
今の医者はそんなことをまったく知らない。患者の側から「天疱瘡にビタミンDが効くって聞いたんですけど」なんて言おうものなら、怪訝な顔をされるだろう。
時代が進むにつれて、医療が進歩するだって?とんでもない!
知識は、退歩する。医者のレベルは、低下する。
「昔はよかった」なんて懐古的になってるわけじゃないけど、こと医療に関しては、ビタミンに目を向けていた1930年代40年代のほうがはるかに患者にやさしい医療だった、ということは言えると思う。

偽医者

2019.8.25

製薬会社が主催する薬の説明会なんかに参加して、資料と一緒に弁当をもらって、弁当つまみながらMRの話を聞いたりする。
医者なら誰しも経験していることだ。そういう勉強会は、年に一回二回、なんていうレベルじゃない。科によって頻度は多少違うだろうけど、ほぼ毎週のように行われたりする。
弁当は食ったら胃袋に消える。資料は説明会が終わればすぐに捨てる。
でも、手元に残るものがある。
資料と一緒に渡されるボールペンだ。

紙カルテを使っていた頃ならともかく、電子カルテの時代に、手書きでものを書く機会は確実に減っている。つまり、ボールペンはなかなか消耗しない。
しかし製薬会社主催の勉強会に参加するたびに、資料は捨ててもボールペンは捨てないものだから、1本ずつ着実に増えていく。
勤務医の机の中をこっそりのぞいてみるといい。他の何があるか知らないが、少なくとも、大量のボールペンが見つかることは間違いない。
医者は、研修医の2年間だけで、一生使いきれないほどのボールペンを入手することになる。

掃いて捨てるほどある、そんなボールペンが、なんとメルカリで高値で取り引きされているというのだから、信じられない。
「製薬会社 ボールペン」で検索してみたら、本当だった。

なぜなのか?
値段がつくということは、それだけの需要があるということだろう。
一体どこの誰が、こんなものを欲しがるのか?
ポイントは、製薬会社のロゴ入り、というところにある。普通の百均で売ってるようなボールペンではダメで、製薬会社のオリジナル製品であるところに意味がある。

医者ではないものの医者のフリをしたい、という人が一定数存在するんだな。
本当は妻子持ちなのに、マッチングアプリなんかで女の子を捕まえて遊びたい。自分のプロフィール欄に「医師」と名乗る。もちろん経歴詐称であり、偽医者ということになる。
実際に女の子に会ったときにいろいろ突っ込まれても矛盾が出ないように、自分の中でしっかり設定は作り込んである。「35歳、外科医。某病院の消化器外科に勤務」みたいな。ふとしたときに使う筆記具が、製薬会社が薬の宣伝にばらまくボールペン。ペン回しなんかしながら「MRがペコペコしてきてね、うっとうしいんだよ」なんてグチをこぼしてみせる。
さりげない小道具として、効果的に使おうというわけだ。

断言するけど、本物の医者なら、自分を医者っぽく見せるために製薬会社のボールペンを使おうとか、思いもしない。
ニセモノだからこそ浮かぶ発想に違いないんだけど、僕はこの発想をおもしろいと思った。

僕は全然医者っぽく見えない。顔が妙に焼けてて体も鍛えてる感じで、初対面の人はドカチンだと思うだろう^^;どんなに医者っぽく見えなくても、一応本物の医者だから、身分は医師免許が保証してるわけだし、あえて医者っぽくふるまおうなんて、そういう発想自体がないのね。
医者じゃない人が医者っぽくふるまおうとなったときに、どういう努力をして(多少の医学知識や薬の名前を覚えたり)どういう工夫をするのか、すごく興味深い。

うろ覚えだけど、昔『いいとも』で「誰が本物の医者か当てましょう」みたいな企画をやってた。
スタジオに数名の偽医者がいて、そのうち本物は1人だけ。みんな姿はすりガラスで隠してて見えない。質問すれば返事は返してくれる。声も変えてある。
偽医者の一人としてタモリも参加してたんだけど、僕は完全にダマされた。「この人が本物だろう」と思った人が、タモリだった。
タモリはああいうのやらせたら、ものすごくうまいな。

「本物であること」と、「本物っぽいこと」はまったく違う。
前者は本物ゆえの自信のせいか、本物であることをひけらかさないんだけど、どこかに本物ゆえの怠慢があって、かえってニセモノっぽく見えたりする。
逆に、ニセモノは、本物になるための努力をしてて、かえって本物っぽかったりする。

警察官に憧れていて、でも警察官採用試験にどうしても受からなくて、でも警察官への憧れ捨てきれず、自分で制服とか作ってニセモノの警察官としてふるまって、結局それが本物の警察にバレて逮捕された人の話を読んだことがある。
こういう話って妙に惹かれる。
ニューハーフのほうが普通の女よりも女らしい、みたいなことを聞いたりもする。
自分がなれないものになろうとして、いろいろ工夫したり頑張ったりする。一線を越えようとする努力。
「ないものねだり」が人生の本質なんよねぇ。

ローヤルゼリーと生殖

2019.8.24

ローヤルゼリーが熱傷による瘢痕に効いた、ということを以前ブログに書いた。
瘢痕の部分に塗布することで著明に改善した、と書いたんだけど、実は塗るだけではなく、経口でも摂取していた。
有効成分が経皮的に吸収されて瘢痕に直接的にアプローチするだけでなく、食べて消化管から吸収されることで、内側から効果があるのではないかと期待していた。

実際、美肌にも効果があった。
あくまで個人的な感覚だけど、肌の張りが増した。日焼けしても、色むらなくきれいに焼けて、日焼け後のダメージが少ない。
これは予想していたことではあったが、やはりうれしかった。

以前のブログで、ローヤルゼリーによって「皮膚の潤い、経皮的水分喪失、皮膚の弾性、皮膚の厚み、抗酸化力(アスコルビン酸、尿酸、グルタチオン)」といった評価項目が改善したという論文を紹介した。
また、「熱傷箇所にローヤルゼリーを塗布することで、デフェンシン1が角化細胞からのMMP9分泌を促進し、創傷治癒に効果がある」という論文も紹介した。
つまり、ローヤルゼリーは経皮的にも効くし経口摂取でも効くのは、論文が実証済みということだ。
経口摂取によって、デフェンシン1が全身の角化細胞に働きかけて、全身の皮膚に好ましい効果を発揮するのだと思う。
美容のためにローヤルゼリーを習慣的に飲んでいる人は、こういう事実を、自分の肌で、知っていることだろう。

たとえば、「貧血の人が鉄剤を飲んでヘモグロビン値が改善した」「壊血病の人がビタミンCを飲んで血中アスコルビン値が改善した」とか、けっこうなことだ。
ただあえて難をいうなら、こういう治療って、やや直接的に過ぎるのね。
「鉄が不足してる→鉄を入れる→治る」「ビタミンCが不足してる→ビタミンCを入れる→治る」
そりゃそうだよなっていう話なんだけど、これが最上の治療かというと、そうではないと思う。
一番の理想は、食養生という言葉があるように、食べ物によって治すことだと思うんだ。
レバーや肉っ気を多めに摂ることで貧血が治る、柑橘類を意識的に摂って壊血病が治る。
遠回りのようでいて、実はこういうのが一番着実な治り方じゃないかな。

何が言いたいのかというと、ローヤルゼリーを摂ると血中アスコルビン酸濃度やグルタチオン濃度が上がるんだけど、これは「予防医学かくあるべし」という見事な例証になっていると思う。
食品中に含まれている栄養素がどのように代謝されていくのか、その代謝プロセスを図にしたカスケードがあるでしょう。
何らかの栄養素を補うのであれば、そのカスケードの上流に位置するものであればあるほど、体への負担が少なく、じっくり着実に治してくれる。
これが基本原則だ。
即効性はないよ。だから、現に何らかの症状を示している人に対しては、メガビタミン療法は強い味方になる。
でも日々の健康維持という意味合いなら、結局食養生が一番だ。

「グルタチオンは抗酸化作用があって体にいいというけど、グルタチオンの構成要素であるシステインは糖尿病を引き起こす可能性があるらしんですけど、どう思いますか?」
患者からの質問。
へー、知らなかった。僕にも知らないことはたくさんある。こういう場合は、原則に戻ろう。
グルタチオンのサプリがいいのか悪いのか、僕も知らない。論文を検索すればエビデンスがいろいろあるだろうけど。
ただ、ある栄養素のサプリを摂って「直接増やす」アプローチよりは、間接的ながら「(何か知らんけど)結果的には増えてた」みたいなアプローチが無難であることが多い。
こういうとき、結局、食品に帰着するんだな。
「ローヤルゼリー食べてればいいんじゃない?」と助言する。
血中グルタチオンも上がって、美肌になって、女性としてはうれしいことこの上ないはずだ。値段がちょっとお高いけどね^^;

「その成分を直接補うよりは、カスケードのより上流のものを」というのは、「精製(refine)した物質よりは、より素材に近い粗野(crude)なものを」と言い換えてもいい。
ケルセチンのサプリが売ってる。玉ねぎの粉を自分でミキサーにかけて食ってたらいいんじゃないの?
DHEAのサプリが売ってる。山芋とか自然薯をすりおろして食べればいいんじゃないの?
とかね、ほとんどのサプリは食品での代替が可能なんだけど、これは先祖返りみたいだ。
「食品で摂るのが困難だから、毎日手軽に摂るために」ということがサプリの存在意義だから、「食品に帰れ」という主張はサプリの否定みたいになっちゃうな。
でも否定してるわけじゃないんだよ。サプリは便利な道具だから、どんどん利用すればいい。
ただ、手段と目的がいつのまにか混同されて、食べ物で簡単に摂れるものまで「サプリで摂らないと!」みたいになってる状況は、本末転倒だと言いたいだけなんだ。

食品にはサプリにはないbonanza(思わぬタナボタ)があるものだよ。
ローヤルゼリーを飲むようになってから、それを如実に実感した。
飲み始めてどれくらい経ったときかな、やたらとね、朝に息子が元気になった。
起床後トイレに行ったときに、固くなったモノが邪魔でおしっこがしにくい、なんていう経験は二十代以来絶えてなかったことだ^^;
おかしい。なぜだ。なぜ急に朝立ちするようになったのか。
原因はローヤルゼリーしか考えられない。

ローヤルゼリーというのは、女王蜂(あるいは女王蜂になる予定の幼虫)だけに許された食べものだ。
働き蜂が食べるのは花粉やハチミツで、女王蜂はローヤルゼリーしか食べない。この食べ物の違いによって、女王蜂はまったく別の生物のようになる。
体の大きさは2~3倍、寿命は30~40倍にもなって、毎日約1500個の卵を産み続ける。働き蜂は卵を産めない。
蜂の社会で生殖能力を持つのはローヤルゼリーを食べる女王蜂だけだ。
どうですか。こういう記述を読んでいると、ローヤルゼリーは、いかにも「生殖の象徴」という感じがしませんか^^;

実際、ローヤルゼリーが生殖の不調に効くという研究は多い。
たとえばこんな論文。
『高齢の高血圧マウスにローヤルゼリーを投与すると陰部動脈が弛緩して勃起機能が回復する』
https://www.fasebj.org/doi/abs/10.1096/fasebj.25.1_supplement.641.26
マウスだけではなく、ヒトでの研究もある。
『男性不妊に対するローヤルゼリーの効果』
https://www.iasj.net/iasj?func=article&aId=47761
男性不妊には様々な原因があり、従って様々な治療アプローチがあるものである。
精液の分析は、男性側の生殖能力を判断するために用いられるが、妊娠が成立したというそのこと自体が、精子の能力が改善した証拠である。
男性の生殖能力は、食事や栄養の影響を受けるが、先行する研究には男性不妊に対するローヤルゼリーの治療効果を検証したものは存在しない。
83人の不妊男性に協力してもらい、このうち22人にはローヤルゼリーを1日100㎎、21人には50mg、20人には25mg、20人にはハチミツを投与した。
治療から三か月後、精子の活動性、テストステロン濃度、黄体化ホルモン濃度、低運動性精子、週当たりの性交回数が、ローヤルゼリー投与群では有意に増加した。
ただし、精子数やFSH濃度には有意な上昇は見られなかった。この治療は安全で、副作用は見られなかった。
結論として、ローヤルゼリーは安全で、不妊治療に効果的だと言える。

最近、不妊に悩むカップルが増えていると聞く。そういう人にとって、この研究は朗報ではないか。
僕のように特にパートナーがいない人にとっては、ムダに性機能が高まっても煩悩が高まるだけで、それこそムダなんだけどね^^;

筋トレ2

2019.8.23

ジムに置いてあるテレビに、全盛期のシュワルツネッガーを扱ったドキュメンタリーフィルム『パンピング・アイアン』がエンドレスに流れてて、トレーニングの合間にちょっと見たりする。
シュワルツネッガーといえばハリウッド俳優のイメージだけど、まず彼は何よりも、ボディービルダーだった。ミスター・オリンピア(ボディービルの世界最高峰の大会)で6連覇と無敵の強さを誇り、その経歴を引っさげて映画界に進出した。
ドイツ語なまりの妙な英語で、役者としての演技は大根なんだけど^^;、何よりもその肉体に圧倒的な説得力があって一躍映画界のスターになった。

映像を見ながら、彼のバルクのすごさに息を飲む。
どれだけの運動量をどんなふうにこなせばあんな体になれるのか。明確な理論と方法と、そして何より、血のにじむ努力があったに違いない。
僕にとって筋トレはちょっとした趣味であって、食事とか能率とかまったく考えないでやっている。
しかし本気を出して取り組めば、少しでもあんな体に近づけるだろうか?

僕は凝り性だから、もし本格的にボディービルをやるとなれば、徹底的に能率を考える。
本気で能率を考えるのであれば、ステロイドにさえ手を出すかもしれない。
こういう文脈でいう「ステロイド」は、副腎皮質ホルモンではなく、タンパク同化ホルモン(アナボリックステロイド)のことだ。
たとえば、アーノルド・シュワルツネッガーの写真。
全身これ筋肉!という体でしょう?

一方、下はボディービルのある国内大会(ミスター東京)の上位入賞者。

皆さんすごい体だけど、なんというか、シュワルツネッガーの体を一回見てしまうと、ずいぶん見劣りすると思いませんか。
この人たちが、努力の点でシュワルツネッガーにまったく及ばないかというと、全然そんなことない。
ボディービルの東京大会は、競技人口の多さから、一地方大会とは言い難いほどの激戦区で、上位入賞者は実質日本のトップレベルだといって差し支えない。
それなのに、シュワルツネッガーの体には遠く及ばない。
この違いは何なのか。
答えははっきりしている。ステロイドの使用の有無だ。
シュワルツネッガーはステロイドの使用を公言している。一方、この上位入賞者らはおそらくナチュラルだろう。

どんなに食事制限して高重量にこだわったトレーニングをしても、壁に突き当たって伸び悩む。努力だけでは、どうやったって超えられない壁がある。
しかしステロイドは、その壁をやすやすと超えさせてくれる。ナチュラルを貫くのがバカバカしいほど、ものの見事にすばらしい肉体にしてくれる。
しかしその代償は、安くはない。こんな論文がある。
『アスリートにおけるアナボリックステロイドの副作用』
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0378427405001700
ステロイドは筋肥大、身体能力の向上をもたらすが、それと引き換えに様々な副作用がある。男性では不妊、女性化乳房、女性や子供では男性化が見られる。
その他の副作用としては、内臓障害、高血圧、動脈硬化、血栓、黄疸、肝臓癌、腱損傷、精神障害などがある。

陸上競技は、スポーツ医学やトレーニング法の進歩によって、世界記録がどんどん更新されていくものだ。
しかし、オリンピック女子100メートル、200メートルに関しては絶対的な例外になっている。ソウルオリンピックでジョイナーが世界記録を打ち立てて以後、30年以上経っても誰もこの記録を超えられない。
超えられないどころか、「もうちょっとで世界記録更新できたのに、惜しいな」みたいに肉薄する選手さえいない。
ジョイナー、女性にはありえない体格してたもんなぁ。

ビキニ着て髪の毛長いけど、体だけ見れば男でしょ^^;
トレーニングで作れる体じゃない。
彼女も若くして死んだ。不滅の記録の代償に、健康を犠牲にしたわけだな。

ボディービルダーの不健康さを示す研究は多いんだけど、ボディービルが体に悪いのではない。多くの研究は、ステロイドによる悪影響を指摘している。
ステロイドを使うというのは、悪魔と契約を交わすことだ。「お前に鋼の肉体を与えてやろう。しかしお前の健康寿命をもらう。それでもいいのだな?」
シュワちゃんみたいにスターになってさらに州知事にまでなって今も長生きしてる、となれば割に合う契約かもしれないけど、シュワちゃんは例外と考えるべきで、統計が示す事実はそうではない。

ボディービルダーが不健康な理由として、ステロイド以外に、サプリメントの悪影響を示す論文があった。
BCAA(分枝鎖アミノ酸)のサプリがALSの原因ではないか、という論文。
「強さは必ずしも善ならず〜ボディービル用サプリがALSの原因か」
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3049458/
結局、急がば回れで、僕みたいに能率無視で、筋トレ用のサプリとかプロテインとか飲まずに普通にコツコツ鍛えてるのが、案外一番リスクがないんじゃないかな。