院長ブログ

パニック障害と酸塩基平衡

2020.1.30

「体内の酸性化は万病のもと」という言葉は、パニック障害にも当てはまるようだ。
まずは、『パニック~その原因と治療』(“Panic: Origins, Insight, and Treatment” Leonard J.Scmidt著)の一節を紹介しよう。
「パニック発作は、ホルモンバランスの変化によって起こる。パニック発作が起こると、ホルモンによって心臓の調律リズムが影響を受けやすくなり、不愉快な動悸を生じる。
この調律リズムを落ち着ける簡単な方法がある。それは、重曹(炭酸水素ナトリウム、ベーキングソーダ)を使うことである。
小さじ4分の1ほどの重曹を水に混ぜて飲む。それだけである。
体のpHバランスが整い、洞房結節(心筋に電気信号を送っている)に対するホルモンの影響を打ち消すことができる。さらに、重曹によって、胃が神経節(十二指腸の裏側にあって、交感神経、副交感神経の切り替えに働く)を圧迫する力をゆるめ、結果、心臓の洞房結節に対してもリズムをゆるめる信号を送ることになる」(Larrian Gillespie博士)

パニック発作の原因は不明とされている。
ただ、疫学を見てみると、女性の発症率が男性よりも2倍以上高い(パニック障害に限らず、不安障害は全般的に女性の頻度が高い)。また、平均20〜30代の若年で発症するというデータがある。

若い女性に好発するということは、女性ホルモンが関与しているのでははないか、というのは当然の類推だとして、さらに、「ホルモンバランスの乱れの背景には酸塩基平衡の異常があり、その是正に重曹が有効だとはないか」というのが上記の文章のエッセンスだ。

パニック障害には酸塩基バランスの異常が影響しているというのは、今や多くの学者が指摘している。たとえばこんな論文。
『パニック障害における酸塩基平衡調節障害と化学感受性のメカニズム』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4471296/
パニック障害は、再発性のパニック発作を特徴とする複雑な不安障害であり、その発症機序はいまだに十分にはわかっていないが、本疾患に罹患する患者において、死亡率や自殺企図(および既遂)のリスクが有意に高いことが知られている。
しかし、近年、脳機能イメージング(neuroimaging)やパニック発作誘発テストを使った研究により、パニック現象の病因についての洞察が深まり、その発症の背景にある神経的機序が明らかになりつつある。
蓄積しているエビデンスによると、パニック発作の誘因として、アシドーシスの関与が示されている。パニック発作誘発テストにおいて、CO2の吸引や乳酸ナトリウムの注射といった酸塩基平衡を乱すような要因によって、パニック発作が誘発されることが明らかになった。
従って、血中pHがパニックに関連する恐怖、自律神経、呼吸反応に影響する化学感受性のメカニズムの解明こそが、パニック障害の病態生理の解明に直結している。
本稿において、我々は酸塩基のアンバランスや化学感受性のメカニズムがパニック障害に影響を与えていることを示す研究を供覧し、これらの発見が将来に持つ意味を議論していく」

ごく控えめにいっても、革命的な意味を持った論文、だと思う。
この論文がどうすごいのか、わかりますか?
精神科をやっていれば、”不安”を主訴に来院する患者は後を絶たない。会社のストレスとか、家族間の問題があるのなら、傾聴し相手の悩みに寄り添う精神療法が有効なときもあるだろう。でもほとんどの場合は、そうではない。患者は、対象のない、漠然とした、ぼんやりとした不安に苦しんでいる。こういう患者には、これまで抗不安薬を出すぐらいしか方法がなかった。
抗不安薬は十中八九ベンゾジアゼピン系で、これは事実上の”覚醒剤”だ。依存性と耐性があって、患者はこれなしで次第に生活できなくなる。もう薬をやめることはできない、つまり、延々精神科に通い続けるしかないのだから、精神科にとっては、正直、”固定資産”で、こういう患者がクリニック経営を支えている。こんな具合に、精神科医にとっては”蜜”だが、患者当人にとっては地獄である。
しかし、上記論文の内容「パニック障害は酸塩基平衡の乱れが原因であり、そのバランスを是正することで治癒可能である」という知識が一般化すればどうなるか?
不安やパニックを訴える患者に対しては、抗不安薬を処方するのではなく、まず、重曹の飲用を勧める。これだけで多くの患者が救われ、精神科に通う必要がなくなるだろう。新たなベンゾジアゼピン依存患者が生じなくなることは、精神科経営にとっては痛手かもしれない。しかし日本の精神科医療は、今よりはるかにすばらしいものになるはずだ。
そう、パニックに対する重曹の有効性は広く知られるようになれば、精神科の治療現場は一変するだろう。
上記の論文にはそれだけのインパクトがあると思う。

万病が酸性化した体液のせい起こるのなら、理屈上、体液をアルカリ性にするアプローチで万病が治ることになる。
しかし考えてみると、僕がこれまでブログで提唱してきた治療法の多くは、結果的にアルカリにするアプローチでもあったようなんだ。
たとえば、以前のブログで、ベンゾジアゼピンの離脱に液体のマグネシウムやケイ素をお勧めしたことがあるけど、ああいうのも要するに、体液をアルカリ化するアプローチなんだよね。
ビワの種(アミグダリン)が癌に効く、という以前のブログも同じ意味合いで、アミグダリンは体液をアルカリにしてくれるから、癌体質(酸性)を是正してくれるわけだ。

しかし、一般の医者はもちろん、患者当人だって、まさか、そこらへんの掃除に使うような重曹飲んで万病が治るなんて、信じてくれないだろうなぁ^^;