ナカムラクリニック

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2019年

特別科学学級

2019.11.29

“世界最年少”9歳で大学卒業! 天才児の野望…将来は「人工臓器の開発を目指す」
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/191125/dom1911250001-n1.html

日本には飛び級がないから、こんな少年は現れようがない。
この少年のようにIQが高いとか、写真記憶ができるとか、天賦の才を持っている人は日本にもいるはずなんだよね。
なぜ、日本にはこういう天才を拾い上げるシステムがないのか?

実はかつて大日本帝国下の日本には、天才だけが入学を許されるエリート育成機関が存在した。その名は、特別科学学級。
すでに敗戦の雰囲気が漂う1944年、「科学に関し高度の天分を有する学徒に対し特別なる科学教育を施し我国科学技術の飛躍的向上を図らん」として、東京、広島、金沢、京都に設置された。
全国の児童を対象に知能検査を行い、高IQの児童を選別し、次に学力テストを行って、成績の優秀な者だけが入学を許された。1945年1月から授業が開始された。
授業内容がふるっている。
当時「敵性語」だった英語の授業が、英語で行われていた。今となっては珍しくも何ともないが、70年以上前にはあり得ない斬新なスタイルだった。
理科系科目(数学、物理、化学)の力の入れようがすさまじく、今で言う中学1年時で関数・対数、中学3年時には微分方程式までマスターさせる。それも当時帝国大学の一流の教授陣が直々に子供たちの指導にあたった。物理の授業では湯川秀樹が教壇に立つこともあった。
理系のスーパーエリートを育てることに主眼があったが、文系科目もおろそかにしない。漢籍、歴史、国語の授業もあった。当時禁書とされた津田左右吉の『古事記及び日本書紀の新研究』を教材に使うなど、軍国主義イデオロギーにとらわれない教育が行われていた。
敗戦後、日本はGHQの支配下に置かれた。GHQの目的は、日本を骨抜きにすることである。政治、経済、教育など、あらゆるシステムに介入し、二度とアメリカに楯突かないようにする改革が行われた。そんななかで、日本の未来のエリートを生み出すことが目的の特別科学学級の存在が許されるわけもない。1947年3月に廃止となった。
特別科学学級の存続期間はわずか2年2ヶ月である。しかしこの学校の卒業生が、結果的に敗戦後の高度経済成長を牽引する人材として、理工系をはじめ各界で活躍することになった。

「炎上を怖がっちゃいけない。電源を抜いたら消えてしまう世界です」――筒井康隆85歳が語る「表現の自由」
https://news.yahoo.co.jp/feature/1508
知能検査でIQ187を叩き出した大阪の天才少年筒井康隆は、特別科学学級への入学を許されそこで学んだものの、理系の道には進まず、作家となった。
同様に伊丹十三も特別科学学級出身ではあるが、映画監督になった。
理系のスーパーエリート養成機関の出身者が、作家や映画監督という、どちらかというと文系畑で才能を開花させているのがおもしろい。
しかし考えてみれば、小説も映画も、芸術や感性の世界のようでいて、実はバリバリのロジックな世界だと言えなくもないな。作家は言葉というデジタルな記号で物語を展開し、映画監督はセリフと絵の順列組合せで物語を展開する。
ジミー大西とか絵を描かせたらすごい人でも、作家や映画監督はできないと思う^^;
やっぱりそういう意味で、小説も映画もロジックなんよね。

日本もいい加減、アメリカ様の顔色を伺うのをやめて、かつての特別科学学級を復活させたらどうだろう。これまでどれほど多くの天才が、民主的な教育に埋もれ潰されてきたことか。
天賦の才というのは、歴然と存在する。凡才を100万人育てても、1人の天才の輝きにはかなわない。理系学問(あるいは文系や映画もそうかもしれない)を切り開くのは、そういうズバ抜けた才能なんだ。
灘を出て医者になって小金持ちになって悠々自適、みたいな人生も、それはそれでいいのかもしれない。でも教育次第ではそういう人も、医者どころかノーベル賞級の偉大な科学者になれたかもしれない。将来を嘱望された天才少年も、適切な導きがなければ飛躍しない。
医者という仕事は、開花しなかったそういう才能の掃き溜めのようだ。単なる学校秀才のレベルにこじんまり収まって、医者に落ち着いている。それで、日々やっていることは製薬会社のパシリ。もったいない話だね。もっとすばらしい未来があり得たのに。
天才のための英才教育機関っていうのは、絶対あったほうがおもしろいと思うんだよなぁ。

降圧薬

2019.11.28

一般の人が「こうあつやく」と聞くと、頭の中で何となく、「高圧薬」という漢字変換が行われて、むしろ血圧が上がりそうな薬をイメージするようだ。正しくは「降圧薬」ね。
もっとも、このイメージはそれほど間違っているわけではなくて、2年以上降圧薬を服用している人では薬の血圧降下作用がほとんどなくなっているという研究もある。
人間の体は、バカではない。必要があるから、血圧を上げているんだ。そういう背景を無視して薬で無理やり血圧を下げても、薬の作用に負けずに2年がかりできちんと血圧を上げる、ということだ。人間の適応能力はすばらしいな。
ちなみに血圧を上げる薬は、高圧薬ではなく昇圧薬で、イノバンとかボスミンとか、救急でよく使われます。

一口に血圧を下げるといっても、様々な機序があって、各製薬会社から様々な薬が販売されている。これは裏を返せば、血圧を上げることが生存にいかに大切であるかを示している。仮に昇圧メカニズムのひとつが破綻しても、複数の機序を用意していれば、生存の可能性が高まることは想像に難くない。

現在、降圧薬の売れ筋はARB(アンギオテンシン2受容体拮抗薬)だが、かつてはカルシウムチャネル拮抗薬が主流だった。今でももちろん処方されているが、単剤よりはARBとの合剤(たとえばミカムロ)として、処方されていることが多い印象だ。
しかしカルシウムチャネル拮抗薬には、うさんくさい話がつきまとっている。

『降圧薬治療にまつわる心筋梗塞のリスク』
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/389492
この論文によると、カルシウムチャネル拮抗薬服用者では、心筋梗塞の発症率が増加したという。心筋梗塞の再発予防に降圧薬を処方されるのはよくあることだけど、カルシウムチャネル拮抗薬ではむしろ逆効果だということだ。

『駆出率の低下した心不全患者におけるカルシウムチャネル拮抗薬』
https://www.uptodate.com/contents/calcium-channel-blockers-in-heart-failure-with-reduced-ejection-fraction
駆出率の低下した心不全患者がカルシウムチャネル拮抗薬を服用しても、心機能、予後、どちらの意味でもメリットがないから、飲んではいけない、という論文。

こんな具合に、カルシウムチャネル拮抗薬の薬としての有効性を疑問視する論文は多い。一方、「いや、そんなことはない。よく効く優秀な薬だ」と擁護する論文もある。
どちらが正しいのだろうか。
そもそも、薬の有効性という極めて科学的な話なのに、なぜ意見が割れるのか。

これは単純な話で、カルシウムチャネル拮抗薬を支持する医者や研究者には、製薬会社からきっちりお金がいってたんだ。
「仮にも真理を追求する学者が、お金で事実を曲げるわけがない」と思いますか?
このあたりを検証した論文がある。

『カルシウムチャネル拮抗薬をめぐる利益相反』
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJM199801083380206
【背景】
医者と製薬業者の間の金銭的関係は、問題視されるものである。利益相反を生む可能性があるからだ。医学教育や医学研究に対する製薬会社の金銭的サポートが、医師や研究者の意見・行動にどの程度影響を与えるかは、知られていない。カルシウムチャネル拮抗薬の安全性に関する最近の議論は、利益相反の影響を検証する機会となった。
【方法】
1995年3月から1996年9月までに出版された医学文献のなかで、カルシウムチャネル拮抗薬の安全性の議論を検証する記事を検索した。記事をレビューし、カルシウムチャネル拮抗薬の使用に対して、支持的、中立的、批判的、に分類した。
それらの記事の著者らに、カルシウムチャネル拮抗薬の製造業者や競合他社製品(βブロッカー、アンギオテンシン返還酵素阻害薬、利尿薬、ニトロ系薬)の製造業者と金銭のやりとりがあったかどうかを尋ねた。製薬会社とそうした金銭のやりとりがあるとき、カルシウムチャネル拮抗薬の安全性に関する著者らの立場がどのような影響を受けるかを、我々は検証した。
【結果】
カルシウムチャネル拮抗薬を支持する著者は、中立的な著者や批判的な著者よりも、カルシウムチャネル拮抗薬の製造業者と金銭のやりとりがある可能性が有意に高かった。(支持:96%、中立:60%、批判:37%)
支持的な著者は、中立な著者や批判的な著者よりも、製品に関わらずどのような製薬業者とも金銭のやり取りをしている可能性が有意に高かった。(支持:100%、中立:67%、批判:43%)
【結論】
我々の結果は、著者がカルシウムチャネル拮抗薬の安全性についてどのような立場をとるかと、製薬業者との金銭のやりとりとの間に強い相関があることを示している。
医師は、利益相反を防ぐ有効な方法を考える必要がある。製薬会社の商品を検証する記事を書く医師や研究者は、製薬会社との関係性を完全にオープンにすべきだと我々は考えている。

医者と製薬会社の癒着なんて、医者なら誰でも知っている。
薬の宣伝のために講演したり論文を書いたりする人はさすがに少ないが、製薬会社から弁当やボールペンをもらったことのない医者はいない。ただ、統計的有意差という、申し開きも弁明もできない明瞭な形で癒着ぶりが明らかになったという点に、上記論文の意味がある。
こんなのは当然カルシウムチャネル拮抗薬に限ったことじゃなく、あらゆる薬のマーケティングで行われていることで、最終的に割を食うのは、薬を口にする患者に他ならない。
21世紀も延々こんな茶番が続くのかな。

血管内皮前駆細胞

2019.11.27

血管はどのように作られるのか。
成人の場合、当然すでに血管があって、その血管の内皮細胞が遊走・増殖して血管新生(angiogenesis)が起きる、というのが定説だった。
ところが、1997年理研の朝原が成人末梢血中に血管内皮前駆細胞(EPC)を発見したことで、胎生期にのみ認められるとされていた血管発生(vasculogenesis)が成人にも見られることが明らかになった。
それ以来二十余年が過ぎ、EPCにまつわる研究が世界中で行われ、様々な知見が蓄積した。
たとえば、、、

↓アルツハイマー病患者ではEPCが少ない。

↓脳卒中を発症したとしても、EPCの高い群と低い群で分けると、予後(脳卒中重症度評価スコア)が有意に違う。

↓高齢になるにつれ、あそこの立ちが悪くなるものだけど、勃起不全の重症度とEPCには負の相関(EDがひどいほど、EPCが低い)が見られた。

頭痛持ちの人では、EPCが低いこともわかっている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22815557

発症に血流が関与している病態のほとんどすべてに、EPCが関与しているかもしれない。
ということは、、、血中のEPC濃度は、健康状態の指標として非常に優れたマーカーとなるのではないか?
EPCを増加させるような生活習慣は好ましいし、逆に減少させる習慣は避けるべき、ということができるのではないか?
このように考えた研究者が、タバコとEPCの関係を調べたところ、やはり、予想通りだった。

禁煙期間が長くなるほど、EPCが増えていく。逆に、喫煙を再開すると、元の木阿弥、EPCがまた減少する。

こんな具合に、EPCを増やす習慣、減らす習慣を調べた結果は、以下のようにまとめられる。
【EPCを増やす習慣】
運動、ポジティブな感情、ファスティング、適切な体重、良質な睡眠、適切な栄養、非喫煙、高地在住
【EPCを減らす習慣】
炎症、酸化ストレス、質の悪い睡眠、栄養欠乏、喫煙、抗生剤

食事としては、具体的には、
【EPCを増やす食事】
低脂肪・低炭水化物、食物繊維、睡眠3時間前に食事を口にしない、コーヒー(オーガニック)はOK
【EPCを減らす食事】
精製小麦、糖質過多(特に白砂糖)、人工甘味料、植物油(リノール酸過多)、乳製品、加工肉

さらに、EPCを増やす栄養素としては、ビタミンC、マグネシウム、アルファリポ酸、ビタミンDなど、たくさんある。
たとえばビタミンDとEPCの関係性。

Aは健康な被験者の血液。Bは糖尿病患者。Cは同じ糖尿病患者がビタミンDを服用した後。
糖尿病患者ではEPCが減少しているが、ビタミンDの服用によってEPCが増加していることがわかる。
『ビタミンDの血管内皮前駆細胞の機能に対する影響』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5435351/

科学の進歩がおもしろいのは、物事のメカニズムを説明する言葉が増えるところだと思う。
たとえば、ビタミンCがなぜ体にいいのか。
抗酸化作用、免疫増強作用、コラーゲン産生促進作用といった言葉で説明されているが、研究により「EPC産生増加作用」という機序がさらにひとつ、付け加わったことになる。
逆に、「EPC産生増加作用」という切り口でみれば、ビタミンC、ビタミンD、マグネシウムは同様の働きをしている、というのもおもしろい。

臨床で患者を見ていて、つくづく不思議なのは、患者の治り方が一通りではないことだ。
体の不調がファスティングでよくなる人もいれば、サプリメントの摂取でよくなる人もいる。
ぜんそく患者がビタミンCで治ることもあれば、ビタミンDがよく効く人もいる。
なかなかよくならない摂食障害の患者を見ていたことがあるけど、あるときその人に彼氏ができて、症状があっさり治ってしまったことがある。正直言って、僕は医者として何もしてないと思う。
これらの話は全部、EPCの産生増加、という機序で説明がつく。いろいろな治り方の背景に、共通する血液マーカーの改善があるわけだ。

ここまでならおもしろい。医学の進歩ってすごい、と思える。
ただ、現代医学の行き過ぎなところは、この流れを逆用するところなんだ。
つまり、病態に対して、「体外で増殖したEPCクローンを再び体内に戻し血中EPC濃度を高めてやれば、病態が改善するのではないか」というアプローチをする。
こうなると、急にうさんくさい感じがする。原因と結果を無視して結果を無理やりとってつければ、原因が改善するとでも?研究者って、頭いいのかバカなのか、わからない。
炎症にステロイド、の発想と同根で、西洋医学というのは結局対症療法に陥ってしまう。

参考:「オーソモレキュラー医学の最新動向」(2019年11月10日の柳澤厚生氏の講演より)

ニセ医学情報

2019.11.26

僕の言っていることは、一般的ではないことが多いと思う。
普通の病院の普通の医者が言っていることとは、ちょっと違うことを言っている。
どの病気に対してどのビタミンが効くだとか、ワクチンは打つな、とか、そういうことは普通の医者は言わない。
世間一般の医者のほうが「正統」で、僕のほうが「異端」だということになるだろう。僕の主張の多くは、医学部で一般的に教わらないことだから。
ただ僕としては、デタラメを主張しているつもりはない。論文や参考文献など、それ相応の根拠に基づいて言っている。
しかし下記の記事によれば、僕が発信している情報は、「ニセ医療」情報ということになるのだろう。

『「ニセ医療」情報の拡散防止、プラットフォーマー各社の対策進む ツイッター、note、はてなも』
https://www.j-cast.com/2019/11/24373301.html?p=all

どういうニュースか、ざっくり説明すると、、、
各プラットフォーム(ツイッター、note、はてななど)が、科学的根拠の乏しい情報の温床になってはいけない、ということで、情報統制を始めますよ、という話。
たとえば「ワクチンには自閉症を引き起こすリスクがある」という主張など、デタラメの最たるもの。人々を不安に陥れるような情報発信は、厳に取り締まらなければならない。
かわりに、子宮頸癌ワクチンを推進する村中璃子医師や、癌の代替療法による被害に警鐘を鳴らし標準治療を推進する大須賀覚医師のような、良質な医療情報を発信する専門家の投稿は積極的に拡散を支援しましょう、というのが今後のプラットフォームの流れとなる。
すでにフェイスブックでは、内海聡医師のアカウント(フォロワー数14万人以上)が停止されるなど、言論統制は仮定の話ではなくなっている。

困った。僕にも一応、表現の自由があって、自分の主義・信条を表明する権利はあるはずだとは思うんだけど、、、
僕のブログは、彼らの基準に照らし合わせれば、「有害情報の満員電車やぁ~!」「根拠のないデタラメの宝石箱やぁ~!」(←彦摩呂風)という感じだろう。
むしろ、そういう記事しかないと思う。「抗癌剤治療のすばらしさについて」とか「ワクチンで救われた!ありがとう!」みたいな「正統」派の話は、僕には書けない(し、僕が書かずともネット上にあふれている)。
グーグルのアルゴリズムが僕のブログを「有害サイト」として認定し検索上位に上がってこないようにする、ということも将来起こり得るだろうか。

欲しい情報に自由にアクセスできる、というのが、ネットのもたらした革命的な恩恵だった。
しかし情報へのフリーアクセスは、一部の人たちにとっては、極めて不都合でもあった。
「庶民は何も考えなくていい。お上の言われるままに、ワクチン打ってればいいし、癌の標準治療を受けてればいい」と考える人たちがいる。
彼らにとっては、人々は管理のしやすいsheeple(羊のように従順な人々)であることが好ましく、妙な情報に接して自分の頭で考えるようになっては厄介だ。
特に、反ワクチンの動き、抗癌剤の有効性に対する疑問など、現代医療への不信感の増大は、もはや彼らに看過できないレベルにまで達した。
そこで彼ら、いよいよ本気で情報の取り締まりに乗り出した、ということだろう。

今のところ、僕はフェイスブックを使った情報発信はしていない。
それは、僕の文章は長文になりがちでフェイスブック向きじゃないから、ということもあるし、「イイね!」の応酬とか、投稿にコメントをくれた人への対応とか、そういうもろもろがめんどくさい、というのもある。読者と双方向のやりとりではなく、一方通行の情報発信で行こうと決めたんだ(でもそのうちフェイスブックに投稿し始めたりして^^;)
だから自分のブログに、淡々と、書きたいことを書いている。
莫大な量の情報量が行き交うネット空間である。僕がここに一文を投じても、大河の一滴で、何ほどの影響力もない。アクセスカウンターとかもつけてないから、どれほどの人が見てくれているのか、わからない。
文を書き終えた後、虚無感にとらわれることがある。「一体自分の言いたいことは、皆に伝わっているのだろうか」と。
「どうせ誰にも伝わってないって」「アホばっかりやぞ」「もうやめとけ、長い文書いて、恥ずかしいのぉ」
自己嫌悪に近いような感情にとらわれても、それでも「今日もブログを書こう」と思う原動力になっているのは、くさい言葉だけど、信じる力だと思う。
そう、僕は信じている。「僕の発信する情報によって、救われる人は必ずいるはずだ」「僕のメッセージは、届く人には届くに違いない」と。

アメリカの大統領がワクチンに対して危惧を表明してもなお、「ワクチンの危険性」について書くことは「ニセ」医学情報と認定されてしまうし、HPVワクチン報道の裁判で村中璃子氏は池田修一教授に敗れた今も、ワクチンの推進をやめない。
ウソも百回言えば真実になる、とすればこんなに怖い世の中ってないと思う。

ビタミンB1

2019.11.25

60歳女性Aが早朝に腹痛を訴えて近医救急外来を受診。対応した当直医は、冷や汗を流す患者の痛がり方が尋常ではないと思った。
CTを撮ったところ、腹腔内に明らかな異常所見があった。Aに詳しく聞くと、盲腸の手術歴があることがわかった。
これを聞いた当直医は、腑に落ちた。虫垂炎の術後、小腸と卵管が癒着し、イレウスを起こし、そこから穿孔、反発性腹膜炎、という流れだな。
すぐに消化器外科に照会し、即日入院となった。BがAの主治医として、オペ(回盲部切除術、腹腔ドレナージ術)を行った。

Bは腕のいい外科医で、手術は無事に成功に終わった。しかし不幸だったのは、Bにビタミンに関する知識がまったく欠けていたことである。
もっとも、これは一人Bの責任とばかりは言い切れないだろう。現在の医学部においてビタミンの教育に割かれる授業時間など、ほとんどないに等しいのだから。
Aは手術後完全絶食で、高カロリー輸液の点滴が継続された。ビタミン剤の混入投与は行われなかった。
数日して嘔気・嘔吐が見られるようになり、便秘がちとなった。Bは上部内視鏡検査を実施したが、どこにも異常がなかった。
さらに数日後、病棟のナースがAの意識が消失していることに気付いた。すぐさま救命措置(人工呼吸器の装着、心臓マッサージ)が行われたが蘇生することなく、そのまま死亡した。

死因は脚気衝心、つまり、極度のビタミンB1欠乏に起因する急性心不全である。つまり、主治医Bのビタミンに関する無知が引き起こした悲劇だった。こういう医療ミスは病院においては日常茶飯事である。
テキトーな理由をつけて「この死亡はやむをえないことでした。私の力が及ばず申し訳ありません」とBが無念そうな表情をして謝れば、遺族は素人である。何も言い返せない。
しかしこの遺族は、どうしも納得できなかった。なぜ俺の妻は死んだんだ、なんで私のお母さんが死ななきゃいけなかったの。無念の遺族は、Aの入院から手術、手術から術後の経緯を、徹底的に調べあげた。
そしてついに、高カロリー輸液にビタミン剤を混入投与しなかったBの過失を発見し、損害賠償請求をするに至った(大阪地裁堺支部平成12年2月25日判決)。

現在の医学部教育は、製薬会社に完全に首根っこを押さえられている。
ビタミンで病気を治す栄養療法など、言語道断。薬が売れなくなってしまう治療法は極めて不都合である。
そんな治療法が医学部で教えられることがないよう、医師会や医学界に手をまわしている。
しかし現場で働く医者は、上記のように、栄養に関する無知が悲劇を招いたとしても「教育が悪いんです。医学部でビタミンのことを教えてもらわなかったので」と言い訳することはできない。
インターネットの普及によって、医学的知識がもはや医者の専有物ではなくなったし、西洋医学がいかにデタラメかということも広く知れわたるようになった。当の医者のなかにも、投薬一辺倒の医療に疑問を感じる人が出始めている。
医学部で教えてくれないのだから、医者はビタミンのことを自分で勉強するしかない。でないと本当に患者から見放されてしまうと思う。
(お医者さんの皆さん、「ビタミンについて自学自習したい」ということであれば、拙訳『オーソモレキュラー医学入門』の出番ですぞ!)

ビタミンB1についての知識は、精製糖質や精白した炭水化物が多食される現代において、ますます重要になっている。
隠れ脚気は相当数いるはずで、こういう人は要するに、甘いものをやめれば回復するはずだけど、B1を補給すればさらに回復が早いだろう。
僕は大学時代、山岳部に所属していた。そこである先輩から、こんな話を聞いた。
「ある男が山で遭難した。食糧の持ち合わせはなかったが、ただ、氷砂糖が一袋だけあった。空腹を氷砂糖で紛らわして救助を待っていたが、五日後に発見されたときには失明して半死半生の状態だった」
本当の話か、都市伝説か、わからない。
脚気で失明するというのは考えにくいから。ただ、話としてはおもしろいと思う。精製糖質の摂取は、その代謝プロセスでむしろビタミンやミネラルを奪う。つまり、マイナス栄養ということだ。
なまじっか氷砂糖をなめるよりは、何も食べずにじっと耐えてるほうがマシだった。

せっかく才能のある選手なのだから、誰かこの人に栄養の重要性を教えて、しっかり食事を管理してあげたほうがいい。
お菓子を多食する選手で、大成した人なんていないよ。