2020.1.15
今日の昼食は、浅井ゲルマニウム研究所の中村宜司さんと同社営業マンの人とご一緒にさせていただいた。
食事の折、「最近、独自配合したキノコ茶(霊芝、サルノコシカケ、カバノアナタケ、ヤマブシタケ、朝鮮人参を細かく砕いたものをお茶パックに詰めたもの)を患者に勧めているところ、評判がいい」ことについて話した。
すると中村さんが、「そこに有機ゲルマニウムを併せてお勧めすると、ますます効果的かもしれません。たとえば、こんな論文があります」
『ヒメマツタケ(Agaricus blazei)熱水抽出物の、有機ゲルマニウム化合物Ge132と組み合わせたときの抗腫瘍効果』
https://www.researchgate.net/publication/281257804_Antitumor_Effect_of_a_Hot_Water_Extract_of_Agaricus_blazei_Himematsutake_Combined_with_an_Organogermanium_Compound_Ge-132
要約
ヒメマツタケ(Agaricus blazei)の子実体から得た抽出物の抗腫瘍効果を、二重移植腫瘍システム(double-grafted tumor system)で検証したところ、ヒメマツタケ抽出物は右側の原発腫瘍の成長を有意に抑制したが、左側の転移腫瘍に対しては効果を示さなかった。ヒメマツタケ抽出物を腫瘍内に注入することによる腫瘍転移抑制効果は、0.05% Ge132(ポリトランス-[(2-カルボキシエチル) ゲルマセスキオキサン])を含むエサを経口で自由摂食で与えたときに増強した。活性化マクロファージによって免疫抑制性酸性タンパク(IAP)が産生されることが発見された。ヒメマツタケ抽出物を皮下注射するとすぐに、血中IAP濃度が一時的に増加した。ヒメマツタケ抽出物とGe132を組み合わせて使うと、CD4陽性ヘルパーT細胞が体内で増加した。
「霊芝やサルノコシカケにも抗癌作用があることが知られていますが、この研究に見られるように、ヒメマツタケにも抗癌作用があります。一方、有機ゲルマニウムにも抗癌作用があります。
これらのキノコによる抗癌作用は、作用機序としては似通っています。つまり、併用しても相加作用が望めるだけですが、作用機序がまったく違う有機ゲルマニウムを併用することで、抗癌作用が相乗的に増加した可能性があります」
なるほど、おもしろい指摘だ。「違うものが協調すれば、効果が相乗的に高まる」ということか。
類似の作用機序のリガンドを併せて使っても効果は相加的(足し算)だが、違う作用機序でありながら同じ作用をもたらすリガンドを併用すれば効果が相乗的(掛け算)になる。
上記に引用した研究では、ヒメマツタケと有機ゲルマニウムの併用により抗腫瘍効果が増強することが示されたわけだけど、僕の配合したキノコ茶を有機ゲルマニウムと併用しても、抗腫瘍効果が増強する可能性はあると思う。
以前のブログに、慢性疲労症候群に有機ゲルマニウムが効く、という論文を挙げた。
http://orthomolecular.org/library/jom/1988/pdf/1988-v03n01-p029.pdf
この論文中、有機ゲルマニウムを飲んでも効かない難治症例に対して、コエンザイムQ10やDMG(ジメチルグリシン)を併せて投与することで、ほぼ全患者が改善したという。
このメカニズムは、一体どのようなものだろうか。それぞれ分子構造がまったく違うのだから、当然作用機序も違うだろう。しかし、疲労改善という共通の目的に対して、3剤は協調的に働いたようなんだ。
「有機ゲルマニウムの投与量に対して、コエンザイムQ10、DMGをどの程度の割合で使ったのか、残念ながら論文中に記載がありません。この3剤の最も有効な投与量割合を決めるためにマウス実験をするとなれば、けっこう大変です。2剤ならともかく、3剤というのはちょっと。。このあたりの数字がクリアになれば、当社としても新商品が作れそうですが」
「違うものが調和することで、単なる相加作用だけではなく、相乗的な作用が生じる」という現象は、案外あちこちにあると思うんだな。
「悟空だけでも、ピッコロだけでも、ラディッツには勝てなかったけど、二人が協力して戦うことでラディッツを倒すことができた、みたいな感じですかね」
「すいません、その比喩はちょっとわかりません」
ジェネレーションギャップは仕方ない^^;
僕も、下の世代の人が何かのたとえで『ワンピース』をネタに使っても、全然反応できません^^;
2020.1.15
先月のこと。
朝、クリニックに行くと、スタッフから「今NHKから電話がありました」
言われた瞬間、頭がフル回転した。
NHKから電話?どういうこと?受信料の取り立て?いや、家にテレビがないんだから、払う義務はないだろう。しかしスマホを持っているだけで払わないといけないって話だっけ?だとする未払いだけど、クリニックに督促の電話があるかな?
不吉な予感が駆け巡る。まったく、心にやましいところのある悪人は、ささいなことにも始終このようにビクついているものである。「で、NHKが何やて?」
「コウザの依頼をしたいそうです。詳しいことは、後で院長に直接メールでお伝えする、とのことでした」
コウザというのは、講座だろう。僕は落語家ではないから高座ではないだろうし、どこそこに受信料を振り込めという口座の話でもないだろう。
青天の霹靂とはこのことである。どうせロクでもない電話だろうという予感は、まったく裏切られることになった。天下のNHKが、僕に講座を依頼するとは!
驚きとともに、ちょっとしたニヒルな思いも込み上げる。
よくわからないけど、NHKで講座を担当する先生というのは、何というか、もっと「ちゃんとした人」でないといけないのでは?笑
つまり、恐らくはオーソモレキュラー栄養療法の入門的な講座をして欲しい、ということだろうけど、オーソモレキュラー療法というのは、決してスタンダードな医療スタイルではない。というか、一般的な医療の側からは「ビタミンで病気が治ってたまるか!」とむしろ毛嫌いされている(保険医療が崩壊しそうな今、もうそんなこと言ってる場合じゃないだろうにね)。何事に関しても”正統”を好むNHKである。”異端”の僕に講座を依頼するなんて、本当に気は確かなのか?
数時間後、NHK文化センターの担当者氏から送られてきたメールには、時候の挨拶、自己紹介とともに、僕に講座を依頼したいと思った経緯が丁寧に綴られていた。まったくの正気だった。
たまたまブログで健康情報を検索していたところ、僕のブログがヒットし、読んでみると「あまりに面白く、またおひとつおひとつの記事が大変興味深く、その後一週間ほどで過去までさかのぼってすべての記事を読ませて頂きました。ちょうど多忙でストレスを感じていた頃だったのですが、記事を拝読してさっそくナイアシンアミドやロディオラを購入し服用を始めたところ、寝起きがよくなり、集中力も高まって、自分の変化に本当に驚きました」
ふむ、分かる人には、ちゃんと分かるのだね。栄養素のすばらしさが。そして、僕のブログのおもしろさが^^
「浜学園で講演をされたことがあるとのことですが、弊社でも一度お話を伺えれば、と考えています。
ただ、子供を持った親御様向けの講座では対象者が限られてしまうことと、弊社にお越し頂いている受講生は50~80代の女性が多く健康・美容、教養・文化的なことに対する知的好奇心の高い方々でいらっしゃること、また、先生が『オーソモレキュラー医学入門』の翻訳本をご出版されたタイミングでありますので、ぜひオーソモレキュラー医学の何たるかについて入門的な内容の1日講座をお願いできれば、と思っております。講座企画書をお送りさせて頂きます。
謝礼等条件面で厳しいところがあり、大変恐縮ではございますが、ご検討だけでもして頂けましたら大変幸いです」
いや、謝礼とかゼニカネの話じゃない。ノーギャラでもやらせてもらう。僕に声をかけてくれて、こんなに名誉なことはない。
最近のNHKはすごく柔軟だね。朝の帯番組で芸人(華丸・大吉)が司会してるとか、ひと昔前には考えられなかった。「私たちNHKには出れなかったの」っておすぎとピーコが言ってたけど、昔はオカマが出ることさえNGだった。ところが最近のNHKはお笑い番組があったりドラマがあったり、いい感じに”民放化”しているような雰囲気があって、これはすばらしいことだと思う。
NHK文化センターの担当者氏が、オーソモレキュラー栄養療法という”異端”を取り上げてくれたことは、こういうNHKの柔軟化と無縁ではないと思う。
さて、そういうわけで、NHK文化センターで1日講座を担当することになりました!
日時:令和2年4月19日(日曜日)13:00~14:30
場所:NHK文化センター青山教室(東京都港区青山1-1-1新青山ビル西館4階)
受講料は会員4004円、一般4697円、定員は50人前後。
予約は、青山教室にて、窓口、電話、ホームページにて受付。
WEB先行受付開始:2月14日(金)9:30~(NHK文化センター青山教室のHPよりお申込み※クレジット支払いのみ)
一般受付開始:2月19日(水)9:30~(都内の新聞朝刊各紙に折込し電話・窓口にて受付開始)
内容は、ごく初歩的な話(どのビタミンにはどういう働きがあって、どうのこうの)をしようと思っています。
東京にお住まいの方はぜひご参加くださいm(_ _)m
2020.1.14
五井野正(ごいのただし)氏は、自身の開発したゴイノプロシージャー(Goino Procedure; GOP)によってロシアのエリツィン大統領の心臓病を治癒させた。
そのことでエリツィン氏から絶大な信頼を勝ち得、「北方四島は五井野氏になら返す」とさえ言わしめた。以後、ロシアでは国賓級の待遇を受けるようになった。
また、画家としての技量もすばらしく、エルミタージュ美術館で個展が開かれたこともある。
18歳のときに磁力で飛ぶUFOの設計図を書き、20代で書いた『一念三千論』によりあらゆる宗教の根本を明らかにした。
科学者であり、芸術家であり、社会活動家。それが五井野博士なんだな。
何だかおもしろそうな人でしょ。
でも僕も含め、ほとんどの人は彼の名前を聞いたことさえないと思う。
その理由は、某宗教団体のトップとひと悶着あって、暗殺未遂もあって、日本にいられなくなったこと。しかしこれがきっかけで海外に活動の軸足を移すことになり、結果的にはこれがよかった。世界の多くの要人が彼のことを知るようになった。プーチンの来日したときに鳩山夫妻と引き合わせるなど、政界の裏フィクサーとしての顔を持つまでになった。
五井野氏の誕生会には、世界中からVIP(政治家や元宇宙飛行士など)が駆けつける。そんな人々からの裏話で、宇宙人が地球でどのような活動をしているかも知っていた。
影響力を持つようになると、皇帝ディビッド・ロックフェラーが放っておかない。呼び出しがあったが、なんと、その誘いをあっさり蹴ってしまった。実に、権力に媚びず、自由を愛する人なんだな。竜王に「せかいのはんぶんをおまえにやろう」と言われて、皆さん、断れますか^^
懐柔策にも強硬策にもどんな口封じにも乗らない五井野氏は、当局にとって極めて不都合な存在だった。何度も殺人未遂にあった。一度などはポロニウムの毒針で刺されて半身不随となった。しかしGOPで奇跡的に回復した。しかし2017年死去。享年67歳。
五井野氏の人柄や業績については『天才五井野正博士だけが知っているこの世の重大な事実』(ヒカルランド出版)を読むと、おおよそのところがわかるだろう。
五井野氏と某宗教団体のいざこざとか政治的な顔については、特に興味をひかれない。こういうゴシップはどうでもいいんだ。ただ僕は医者だから、彼が開発したというGOPには興味がある。
GOPが著効する疾患は、「万病」だという。「万病に効く」などというと、いかにもうさんくさいが、本当なのだから仕方ない。
世界各国の医療機関で、難病(癌、糖尿病、心臓病、高脂血症、エイズなど)に対する有効性が示されている。GOPはデンマークでは医薬品登録されているし、ロシア、中国、アメリカで特許取得されている。チェルノブイリ原発の被爆者にも有効性が確認されているから、福島第一原発事故で被害を受けた人にもきっと助けになるだろう。
http://www.goino-tadashi.com/Symposium/sym01.html
では具体的に、GOPとはどんな薬なのか?
雰囲気としては、漢方に近い。マンネンタケ(黒霊芝)、カワラタケ(サルノコシカケ科)、竹節人参(栃葉人参)を細かく刻んだものを6gずつ混ぜ合わせ、800㏄の水で1~2時間ほど煮出す。それを飲む。それだけ。
https://cookpad.com/recipe/2924743
それだけのことで、万病に効く”エリクサー”が作れるのか!よし、僕も作ってみよう!
しかしすぐに気づくのは、黒霊芝、竹節人参がものすごくレアだということ。ほとんど市場に流通していないし、あってもかなり値が張る。竹節人参は苗木が安く売っているから、家に庭がある人は地植えして育てることができるだろう。しかしマンション住まいの僕には無理だ。さいわい、代用品として赤霊芝(栽培可能で比較的安価。それでもちょっと高いけど)、朝鮮人参(あるいは田七人参)でもオッケーだというので、そちらを購入した。
しかし代用品で作っているということで、本家のGOPよりも少し効果が劣る気がする。何かついでに薬効をプラスするような生薬を足せないか。
マンネンタケもカワラタケも、いわば”キノコ”である。そこで効果に定評のある他のキノコとして、カバノアナタケとヤマブシタケを入れてみてはどうか、と思いついた。
つまり、赤霊芝、サルノコシカケ、カバノアナタケ、ヤマブシタケ、朝鮮人参の5種類の生薬をミキサーで砕いて、等量ずつ混ぜ合わせ、お茶パックに詰める。
ぐつぐつ煮出して飲んでみたところ、味はちょっと苦い。おいしいものではないけど、飲めないくらいまずいかっていうと全然そんなことない。
効果に関しては、飲んですぐにどう、ということはない。さいわい健康体で特に不調はないものだから、何ら効果を感じないのかもしれない。
そもそも、GOPの有効性が確認されているのは、癌、糖尿病、心臓病などの慢性疾患なんだ。慢性疾患に効くということは、長く飲み続けてこそ、効いてくるということだ。
二か月ほど飲み続けて感じたのは、目が疲れにくくなったこと。電子カルテなので仕事中はパソコンの画面を見つめっぱなしだし、ブログを書くにもiPadの画面をずっと見ているから、目はブルーライトによるダメージを受けまくっていると思う。そういう疲れが、この”キノコ茶”を飲みだしてから明らかに楽になった。今のところ僕が感じた変化はそれぐらいかな。
二か月ほど前から僕の患者にもGOPを勧め始めた。そのフィードバックが、ぼちぼち出始めた。
「一番ひどいときは何もする気が起きなかったのが、散歩とか読書しようかなって思えるようになってきた」
抑うつ症状によく効くようだ。でもこれはある意味当然で、こういうキノコのちゃんぽんを飲まずとも、単にヤマブシタケを飲むだけでもうつ病や不安に効くことが分かっているんだけどね^^;
https://www.jstage.jst.go.jp/article/biomedres/31/4/31_4_231/_article/-char/ja/
「毎年この時期必ず風邪をひくはずが、今のところなぜかひいていません。暖冬のせいかな」
「言い忘れてましたけど、軽いアトピーなんです。こう、肘の内側がたまにかゆくなって。でもそういうかゆさが、ぴったり治まっている気がします」
「頭痛がなくなってる。あと、肩こりが相当楽になってる。特に何もしていない。このキノコのお茶飲み始めた以外は何も」
劇的改善!っていう感じじゃないんだよね。「ああ、そういえば。あんなに気になってた症状がいつの間にか治ってる」みたいに治っていく。そういう効き方をします。
ところで五井野氏は、実は日本の学歴としては高卒。特に大学で医学や薬学を勉強した、という人ではない。しかしなぜ、そんな人が、GOPという”万病の薬”を開発することができたのか?
彼は「宇宙人に教えてもらった」と言っている。
ツッコミを入れればいいのか、笑えばいいのか、反応に困るでしょう^^;でも、彼はギャグではなく、大真面目に言っている。
まぁ僕としては、患者の治癒がこそプライオリティだから、宇宙人のレシピだろうが何だろうが、とにかく効けばいいんだけどね。
2020.1.13
アミノ酸の樽理論(barrel theory of amino acids)、というのがある。
百聞は一見にしかず。この図を見ていただくと早いだろう。
アミノ酸はざっと20種類(体内で合成できない必須アミノ酸は9種類)知られているが、最も少ない摂取量の必須アミノ酸が、他のアミノ酸の利用効率を規定している、という考え方のことだ。
たとえば上の図でいうと、リシンやスレオニンの摂取量が低いため、他のアミノ酸、イソロイシンやバリンをいくら摂ったところで、利用されずに排出されてしまう。
たとえば、異性を選ぶとする。顔、スタイル、性格、知性、年収など、いろいろなチェックポイントがあるだろう。
樽理論にもとづいて異性を選ぶとすると、「あの人、頭がよくてルックスも素敵なんだけど、酒癖が悪くて」とか「かわいくてスタイルがよくても、頭の悪い女はダメなんだ」という具合に、「結局その人の、最も魅力に欠ける属性が、その人に対する最終評価」ということになる。
学校の定期テストでは、英語、数学、理科、社会など、いろいろな科目の試験を受けるけど、樽理論による評価だと、「苦手の数学が40点、他の教科は満点」の生徒の評価は40点、ということになる。
ずいぶん無駄が多いシステムのような気がしませんか?本当に生物は、アミノ酸の利用に際して、樽理論を使っているのかな?そもそもこの理論の初出は?文献で確かめられた事実なのか?
このあたりを調べてみた。
最初に言いだしたのは、農業学者のカール・シュプレンゲル(1840)である。彼は「生物の成長は利用可能な資源の総量によって規定されるのではなく、最も不足した資源(制限因子)によって規定される」と考えた。この理屈が「農業だけではなくて広く一般に成り立つのではないか」と考えたのがリービッヒで、『リービッヒの最少法則』として広く知られるようになった。
「鎖の強さは、結局一番弱い輪っかの強度でしかない」というふうに表現されることもある。
この性質、チームプレーをするスポーツでも成り立ちそうな気がする。一人だけ下手なプレーヤーがいれば、相手チームはその弱点を徹底して突くだろう。「その選手の下手さが、そのチームの強さ」なわけだ。
人間の栄養素にもこの最少法則が成り立つのではないか、と考えたのは、ウィリアム・ローズ(1931)である。ベジタリアンが必須アミノ酸を適切に補うために、様々な野菜から各種のタンパク質を補うことを彼は勧めた。
各種のアミノ酸を単離して、それが健全な成育のために「必須」か「非必須」かを検証していく。現在、必須アミノ酸といわれているものは、一応そういう研究の裏付けがあるものなんだけど、世界を見渡せば、そういう理屈に合わない現象は無数に観察されている。
たとえば、パプアニューギニアの原住民の食生活。彼らが食べているのは、基本的にタロイモとかヤムイモなどのデンプン質だけである。動物性タンパク質はほとんど摂取していない。それなのに、若者たちは筋骨隆々とした体をしている。なぜだ?理屈に合わない。なぜ彼らは健康を保つことができるのか。このあたりの研究はヒプスレーとクレメンツ(1950)に始まる。
一番不可解なのは、彼らがアミノ酸をどこから得ているのか、ということだ。
そもそもアミノ酸とは何か。
ざっくり説明すると、この図にN(窒素)が含まれているでしょう?これが炭水化物や脂肪にはない、アミノ酸(タンパク質)の特徴なんだ。
動物性タンパク質を食べていない人は、このNの供給を絶たれている状態。インがないのだから、アウトも存在しないに違いない。ところがパプアニューギニア原住民の糞便と尿に含まれる窒素量を調べてみると、窒素がしっかり排出されている。
この事実を説明する仮説としては、以下の二つが提唱されている。
・腸内細菌による窒素固定
・尿素の再利用
前者に関して、パプアニューギニア原住民の便を調べたところ、窒素固定する菌種が確かに見つかった。空気中には窒素が大量にある。これからNを吸収できれば、確かに能率的だ。
後者に関しても、やはり腸内細菌が関わっている。腸内細菌のなかにはウレアーゼ(尿素分解酵素)を持つものがいて、これによって、腸内に排出された尿素がアンモニアに分解され、このアンモニアが再びアミノ酸に変換される。つまり、排出されたゴミ(尿素)が、腸内細菌による処理(ウレアーゼ)によりよみがえり、再びアミノ酸として再利用されているわけだ。
このあたりは今も精力的に研究が行われている分野で、たとえばこんな論文がある。
『ヒト腸内細菌叢における窒素固定とnifH多様性』
https://www.nature.com/articles/srep31942
要約
「ヒトの腸内で窒素固定が起こっているという仮説があるが、腸内細菌に本当にこんなことができるかどうかはまだわかっていない。そこで我々は、ヒト糞便中の腸内細菌における窒素固定活性とニトロゲナーゼ還元酵素(nifH)遺伝子の多様性を調べた。なお被験者は、パプアニューギニア人と日本人であり、窒素摂取量は少ない者から多い者まで、様々である。
15N2取り込みアッセイ法により、個々人の窒素摂取量とは無関係に、すべての便標本中に15Nが有意に増加していた。これはアセチレン還元アッセイ法でも確認できた。固定された窒素は、ヒトでの標準的な窒素必要量の0.01%に相当していた(しかし実際のin vivo(生体の腸内)ではこの割合よりもっと高いものと思われる)。
nifH遺伝子をクローニングしてメタゲノム解析したところ、二つのクラスターに分類された。ひとつは、ほぼクレブシエラ属と同じシークエンスからなるものであり、もうひとつはクロストリジウム属のシークエンスに似たものである。これらの結果は、他のヒト集団を対象とした糞便メタゲノムのデータベース解析と一致するものである。
要するに、ヒトの腸内細菌叢には窒素固定を行う潜在能力があり、これはクレブシエラ属とクロストリジウム属が行っている可能性がある。しかし、こうした窒素固定活性が宿主の窒素バランスに貢献しているとするエビデンスは得られなかった。」
世の中には、「不食」を実践する人がいる。つまり、食べずに生きている人が、本当にいる。
VIDEO
ほとんど「びっくり人間」のレベルだから、皆さんが彼らを真に受けて、実践しちゃいけないよ(せえへんか^^;)。
ヒラ・ラタン・マネク氏の不食は、NASAの研究員が確認しているから、エビデンスとしては固い。
不食が可能である背景に、腸内細菌が関与しているのは間違いないと思う。
不食はさすがに極端だから一般的なムーブメントにはならないだろうけど、動物愛護の精神から肉食を極力控える、という思想には、個人的には共感できる。
「健康の維持には肉食は必須。特にビタミンB12は動物性食品以外から摂取することはできない」みたいなのが、一般の栄養学の教えるところである。つまり、この教えに従えば、僕らは動物を殺すことなしに生きることはできない、ということになる。
そうなのかもしれない。人間が原罪を背負って生きていくというのは、そういうことなのかもしれない。
しかし、そうじゃないことを示す反例もたくさんある。
僕の中にもまだ答えはない。
2020.1.12
【結論】どんな病気も、結局キャベツ食っときゃ治るんじゃね?、という話をします。
いろいろな食事法や栄養素の研究をしている人にとっては、身もふたもないような話です^^;
パスカルは「人間とは、考える葦である」と言ったが、医学的には「人間とは、一本のチューブである」。
口に始まり、お尻に終わる一本のチューブに、様々な物質を送り込む。噛み砕き、嚥下し、消化し、排泄する。そういう作業を70年80年ほどの間、毎日繰り返し、やがて機能が低下して、死ぬ。純粋に機能の観点だけから見れば、人生とは、このチューブの運用作業なんだ。
健康のためには、このチューブを大事にしないといけない。変なものを通過させて、負担をかけてはいけない。具合が良くないときには、適切なメンテナンスをしてやることだ。
そのメンテナンス法について、ソールがそのヒントを書いているので、紹介しよう。
『消化器症状について』
http://www.doctoryourself.com/colitis.html?fbclid=IwAR0Z7teqIwgoiJzUxQmjhjSV0DzmjX-CVY5SzyHQu8UO3-5nwcyTEcO_h-s
「消化管の長さは優に20フィートを超える。小腸を取り出し、切り開いて面積を考えれば、バスケットコートの半分ほどの広さになる。都心にあればちょっとした地価のつく不動産になるだろう^^
消化管の病気というのは、大腸炎、潰瘍、胃けいれん、過敏性腸症候群、クローン病など、山ほどあるが、結局、すべて「同じ問題が別の場所に現れている」だけのことだ。
その問題とは何か?これは二つある。
全身性毒血症(要するに、体の汚染)と、栄養不良。この二つである。
一方は「良からぬものを摂りすぎている」ということであり、もう一方は「摂るべきものが足りていない」ということである。
消化器系の病気の人は、胃腸に負担をかける習慣をやめないといけない。タバコ、アルコール、肉の食べ過ぎ、添加物、ストレス。まずはこういう負担をできるだけ取り除いてやることだ。もちろん、上等なワインを適量楽しむことや、天然の肉を適量摂る分にはかまわない。
胃腸にダメージを与えるようなこういう習慣をやめないままでは、どんなに有効な治療法に取り組んだところで、回復の望みは薄いだろう。
なぜ酒やタバコがダメなのか、わざわざ説明、要りますか?早い話、どちらも消化器系の癌の発生率に明らかに関与しているのだ。
医者のなかには、患者の生活習慣の改善を指導しない人もいる。「酒とタバコ?適量楽しむ分にはけっこうですよ」「肉?いくら食べてもかまいません」「添加物?そんなに神経質になる必要はありません」
これでは患者は治らない。植物ベースの食事に移行し、加工食品をやめる患者の努力は、必ず報われるものだ。
植物ベースの食事には大きなメリットがある。かさ(容量)が豊富で、ビタミンCやカロテンが豊富であることだ。
ベジタリアン食は安価だし、しかも体形もスリムになる。食器洗いも楽だろう。「食物繊維が多すぎるのではないか」と心配する向きには、ジューサーを勧めたい。
消化管の表面は上皮組織で覆われている。上皮組織を構成するのは、”皮膚”細胞である。つまり、”皮膚”は体表だけではなくて、体の内側の表面も覆っているのだ。
要は、チューブである。外側は防水加工のちょっと固めのゴムで、内側は柔らかめのゴムという違いはあるが、いずれも上皮細胞である。そして、上皮細胞の構造をしっかり保つためには、ビタミンAとCが必須である。果物や野菜が必要な理由はまさにここにあって、こうした生鮮食品にはこれらのビタミンが豊富なのだ。
さらに、ベジタリアン食はかさばる(体積が大きい)もので、このおかげで便が柔らかくなり、便通がよくなる。排便するときに力まなくてもいいおかげで、腸に不要なストレスがかからない。
度重なるストレスで腸が過敏になっている人は、一時的にでもいいから、生野菜をジューサーで砕いて、飲むといい。吸収能力が落ちている腸にはとても消化しやすいし、味も思いのほかおいしいことに驚くだろう。こういう野菜ジュースを飲んでいれば、カロテンを豊富に摂取できるから、あえてサプリメントのビタミンAをとる必要はない。
数年前に断食を勧めるハリー・ベンジャミン博士の著書を読んだ。彼の提唱する健康法は時の経過の試練に耐えている。つまり、”本物”ということだ。胃腸症状のある人は、断食するという、ただそれだけのことで、ずいぶん楽になる。消化のために働き通しの胃腸に”休息”を与えることで、腸の上皮細胞の修復が促される。腸上皮のターンオーバーは3~5日とされている。つまり、それだけの期間断食すれば、腸壁はすっかり修復される、ということだ。
下水道の修繕をするとなれば、まず、水の流れを止め、そして修繕作業を行い、再び水を流すものでしょ?体も同じこと。短期間の断食が体にいいのは、実に筋が通っている。
水だけを飲む断食で、うまくいく人もいるが、このやり方だと、だるくなったり頭痛がする人もいる。そういう人には、野菜ジュース断食を勧めたい。野菜によってビタミンCとA、ナトリウムやカリウムなどの電解質ミネラルを摂取できるし、微量ながら炭水化物も含まれているので血糖値も安定するので、ずいぶん楽にできるだろう。しかも効果は水断食と比べても遜色ない。
野菜ジュースは一体、どれほど効果があるのだろうか。ガーネット・チェニー博士の報告を紹介しよう。100人の胃潰瘍患者に、1クォート(0.946リットル)の生キャベツジュースを毎日飲むように指導した。
効果は劇的だった。胃痛がなくなり、レントゲン所見でも回復スピードが明らかに早いことが確認された。食事は他に何も変えてないし、薬物治療も行っていない。ただ、生キャベツジュースを加えただけだ。
患者の81%は、1週間以内に症状が消失した。患者の3分の2以上は、たったの4日で効果を実感した。なお、一般的な病院で行われる標準治療により回復に要する期間は、平均1か月以上である。(Cheney, G: “Vitamin U Therapy of Peptic Ulcer,” California Medicine, vol. 77, number 4, October, 1952)
「なぜこんなに効くのだろうか。何らかの成分が効いているに違いない。しかし、その成分をさす言葉はまだ存在しない」そこでチェニー博士は、仮にその成分を、ビタミンU(Ulcer:潰瘍のU)と呼んだ。
今日、キャベツ科(アブラナ科)の植物(スプラウト、カリフラワー、ケール、ブロッコリなど)には抗癌作用があることが認められている。
チェニー博士のこの生キャベツジュースの症例報告は、70年近く前に行われたものである。70年前に効いたのだから、今効かないと考える理由はない。わざわざ病院に行って、胃潰瘍の診断を受けて処方箋もらって、薬を飲んで1か月間効果が出るのを待って、とする必要、ありますか?生キャベツジュース飲んどけばいいやんか!
直腸から原因不明の出血に悩んでいた人がいる。食事の改善を思い立ち、断食と同時にベジタリアン食に変えて、キャベツジュースを始めたところ、あっさり治ってしまった。主治医がその回復ぶりに驚いて、一体何をしたのか、と尋ねた。キャベツジュースのことを話したところ、彼は言下に答えた。「キャベツで治るなんて、そんなことはあり得ません」
医学は一体、70年前よりも進歩しているのかな?