2020.1.20
犬を飼っている人なら、散歩中に愛犬が土を食べるのを見て、驚いた経験があるだろう。
他にも、一緒に飼ってる猫のトイレの砂を食べたり、庭にある小さな砂利を食べたり、という犬もいる。
いきなり狂ったのではない。
動物は、人間のように言葉を使って思考しないけれども、決してバカではない。内なる本能の声を聞くことができて、彼らはその声に従って、土や砂を食べている。
自分の体内にミネラルが不足していることを、適切に察知しているのだ。
人間で同じことが起これば、異食症(pica)という診断がつく。
診断がつくからには「病的」だと思われるかもしれないが、人間も動物である。本能の声が、土を求めているのである。
妊婦が壁土を食べる、という話はあちこちで聞くし、実際ある患者は僕に「妊娠中やたらと土が食べたくて、何かおかしくなったんじゃないかと思った」と打ち明けてくれた。
土に限らず、髪、チョーク、線香、マッチ棒などに食欲を感じる人もいるし、氷を食べたくなる若年女性は全然珍しくない(特に氷食症という)。
土はミネラルのカタマリだということを、僕らの本能はきちんと察している。
ただ「土を食べる」という行為が、僕らの身につけた常識とあまりにも乖離していることから、多くの人はこの本能の声を聞こうとしない。
しかし世界は広いもので、土を食べる行為が文化として確立している国もある。
ケニアのスーパーマーケットでは、オドワという妊婦や若年女性が食べるための石が、当たり前に販売されている。
オドワ売りの男がいう。
「妊婦によく売れるよ。うちのかみさんは6人の子供を産んだけど、オドワを食べて養生したから妊娠中も健康そのものだった。スイーツやチョコレートなんかの甘いものを食べてる妊婦はダメだね。体がヤワになっちまう」
ベトナムには土を網で焼いて客に出す習慣のある地域があるし、ハイチには「テーレ」という土入りのビスケットがある。日本でもアイヌの人々がユリ根と一緒に土を煮て食べていた。
そう、土を食べることは本来病的症状でもなんでもなく、僕らの内なる声だったんだ。
土を食べたい衝動を感じたとしても、現代において、その衝動を実行することはなかなか難しいだろう。本能の声にきちんと従おう、と思い立ったとしても、農薬やら除草剤やらわけのわからないものが浸透している可能性がある日本の土を食べることは、別のリスクを抱えると思う。
そういう人には、シラジットを勧めたい。
シラジットはアダプトゲン特性が確認されているハーブのひとつである。(「アダプトゲンとは何か?」については以前のブログで書いたので繰り返さないけど、簡単にいうと「抗ストレス作用のあるハーブ」のこと)。
シラジットは、アーユルヴェーダ医学で長年使われてきた歴史があって、安全性については折り紙つき。実はシラジットは、平たくいうと「発酵した落ち葉」なんだ。
葉っぱが土の上に落ちる。様々な微生物がそれを分解し、砂や土が混じり合い、土が肥沃になっていく。その、葉っぱとも土とも微生物ともつかない、天然の腐植土と植物性有機物の混合物。これがシラジットの本態だ。
主成分はフルボ酸(fulvic acid)で、フルボ酸のサプリもあるが、同じ飲むのならシラジットのサプリを勧めたい。
ミネラルが不足しがちな妊婦や若年女性にオススメなのはもちろんだが、アルツハイマー病に対する効果も認められているから、認知能力の低下しはじめた高齢者も服用するといい。
シラジットの有効性を検証した研究は数多いが、たとえばこういう論文。
『シラジット~癌に対する万能の腐植物』
https://www.researchgate.net/publication/288142673_Shilajit_A_humic_matter_panacea_for_cancer
「癌は心血管系疾患に次いで主要な死因である。癌の主要な病因としては、炎症、遺伝子変異、毒素、フリーラジカル、重金属、糖分、ウィルス、放射線などがあって、これらによって癌の発症と進行が促進される。
シラジットは黒っぽい茶色の植物性ミネラルで、世界中の多くの山岳地域で産出し生薬として用いられている。
シラジットはその成分として60~80%のフルボ酸とフミン酸(humic acid)を含む腐植物である。シラジットの生物活性は、主にこれら二つの酸の化合物によるものである。本レビューでは、シラジットおよびフミン酸化合物の癌に対する予防作用および治療特性に焦点を当てた。
シラジットおよびフミン酸化合物には、抗炎症作用、抗酸化作用、抗変異作用、抗毒素作用、抗ウィルス作用、重金属キレート作用、抗腫瘍作用、アポトーシス作用、紫外線防御作用がある。
これらの特性によって、シラジットは癌の治療および予防に効果を発揮する。さらに、シラジットには副作用の報告がなく、栄養補充に用いることもできるし、加齢に伴う諸問題に対する若返りの生薬として用いることも可能である」
癌の発生機序となる要因のすべてに対して抑制的に働いている、というのはすばらしいと思いませんか?しかも副作用もないというのだから、使わない理由が見つからない。
若年女性の貧血に対して、どうしたものかなと長らく考えてきた。
単純に鉄剤を処方するのは、別に間違っていないとは思う。でも、鉄剤はフリーラジカルの発生源でもある。体の酸化が促進され、各種疾患にかかりやすくなる。
理想的には、ケニアのスーパーマーケットで売られているように、僕も石(オドワ)を売りたい。でもそんなことをすれば、狂った医者だと思われるに決まっている^^;
だから、次善策としてシラジットを勧めるようになった。文献的なエビデンスとしてはあまりないんだけど、臨床的な印象としては、よく効いていると思う。
鉄欠乏貧血の女性というのは、実は欠乏しているのは鉄だけではなくて、他のいろいろなミネラルが不足している。そういう女性に一番効くのは、オドワのような「ちゃんとした石」を食べることだけど、「落ち葉と土の混じったもの」であるシラジットでも充分効く。
でも、シラジットが何かということについては、患者が引いちゃうからあまり言いたくないんだけどね^^;
2020.1.19
あるとき、患者から「発酵食品が必ずしもよくない、場合によってはむしろ有害だって聞いて、納豆は食べないようになりました。もともとそんなに好きでもなかったから、仮に一生食べられなくなったとしても、別に構わないですけどね」
へー、それはどこで聞かれましたか?
尋ねると、ソースを教えてくれた。その本を取り寄せて、読んでみた。
『「おなかのカビ」が病気の原因だった ~日本人の腸はカビだらけ』(内山葉子著)
著者の主張を簡単にまとめると、慢性的な不調(便秘、下痢、腹痛、皮膚トラブル、頭痛、関節痛、抑うつ、生理前の不調、倦怠感、食後の眠気、甘いもの欲求など)は、すべて「おなかのカビ」つまり、腸の状態が悪化していることに起因している。その原因は三つあって、抗生剤の乱用、発酵食品の摂りすぎ、日本の気候と住居、である。
いい本だと思った。素直に、「なるほど」とうなずける本だった。
患者は納豆をすっかりやめてしまったというが、別に著者は発酵食品を全否定しているわけではない。人によっては「おなかのカビ」の増殖を促進してしまう、と指摘しているだけだ。適量(あるいは少量)摂取する分には、特に問題はないだろう。
小麦や牛乳をやめ、カビの生じやすいトウモロコシ、麦、ナッツ類は控えめにすること。
逆に、カビの抑制に有効なものとして、ローズマリー、オリーブリーフ、リンゴ酢、梅干し、重曹、活性炭などが挙げてあって、参考になった。
「おなかのカビ」という表現は医学的にはまったく不正確で、研修医が頭の固い指導医の前でこんな言葉を使えば「もう一回医学部1年からやり直してこい」と言われてもおかしくない^^;しかし、感覚的にはとてもわかりやすくて、一般ウケする表現だと思う。
いわゆる「カビ」は、カテゴリーとしては真菌のことだ。真菌には、酵母やキノコも含まれる。
「真菌と細菌、どちらも「菌」なんだから同じようなもんだろう」、と思われるかもしれないけど、分類的にはまったくの別物だ。
最大の違いは、核膜の有無。細菌は原始的で、遺伝情報を乗せた染色体DNAが細胞内にむき出しで存在するのに対して、真菌には染色体を包む核膜がある。この点で、真菌は人間と同じ真核生物だ。
だからこそ、抗生剤が問題になる。
抗生剤といえば、普通、「抗細菌剤」のことである。つまり、抗生剤の服用によって腸内細菌を含む全身の細菌叢が大ダメージを受けるが、真菌はまったくの無傷、ということになる。
様々な菌種が協調したり拮抗したりしているのが僕らの腸である。そこで、抗生剤によって腸内細菌が死に絶えると、抗生剤の効かない真菌の天下、という状況になる。
有名なのはCandida albicansである。これは本来、日和見菌(特に善玉でも悪玉でもなく、状況次第でどちらにもなり得る菌種)で、消化管、体表、女性の膣粘膜に普通に生息しているが、抗生剤の投与などによりバランスが崩れると、一気に増殖して、病原性を持つ。
一般の人が、カンジダ菌と聞いて思い浮かぶのは性感染症のほうの膣カンジダだろう。
しかしカンジダが存在するのは膣に限らず、おなかのなかにも肌にもいるし、そもそもカンジダ菌自体が病原菌であるというよりは、カンジダ菌に病原性を持たせてしまう習慣(乱れた食事、抗生剤の使用など)こそ、本当の問題なんだ。
もっと言えば、カンジダは食文化と切っても切り離せないものだ。
Candida etchellsiiやCandida versatilisなどは味噌や醤油の発酵に関係しているし、Candida stellataはワインの醸造に関係している。
日本酒はCandidaではなくて、Aspergillus(アスペルギルス)属のコウジカビの発酵を利用したものだが、両者とも真菌だ。
有名な造り酒屋の一人娘が、男と恋仲になり、結婚することになった。しかし娘の父は、その男の職業を知るやいなや、結婚に断固として反対した。なぜだと思いますか?
その男の仕事が納豆屋だったから、というのが答えです。
実話かフィクションかは知らない。ただ、話としてはおもしろい。
そう、納豆菌は酵母菌の大敵で、酵母の菌種のなかに混入すると、製品が全部だめになってしまうどころか、酒蔵自体、もうアウトかもしれない。
だから、どこの酒蔵も納豆に対しては大変な神経を使う。愛する娘の結婚となれば、父としてはうれしいが、納豆屋のせがれとの結婚となれば、酒屋家業が傾きかねない。父が反対するのはもっともなことだったのだ。
酒蔵見学に際しては、納豆を食べて行かない、というのが絶対のマナーだ。
1979年と古いけど、こういう研究がある。
『納豆菌(Bacillus natto)と大便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)がカンジダ(Candida albicans)の成長に及ぼす拮抗作用』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/119897
「納豆菌と大便連鎖球菌にカンジダの成長を抑制する作用があるかどうかを調べた。納豆菌(Bacillus natto系)を長期間培養した濾液にカンジダ(C. albicans RIMD 0301020)の保存株を植え付けたところ、カンジダの生存能力が完全に失われた。一方、臨床現場で採取した別種のカンジダ(C. albicans RIMD 0301011)ではそうした現象は起こらなかった。
静置ではなく、循環液の流れのなかで納豆菌と混合培養すると、どちらのカンジダも成長が抑制された。
バッチで培養すると、納豆菌はカンジダの成長を抑制しなかった。多剤耐性の大便連鎖球菌BIO-4Rもカンジダ(C. albicans RIMD 0301011)の成長を抑制したが、循環液の流れのなかで培養すると納豆菌と共存した。
これらの発見は、ヒトの腸管内において納豆菌は大便連鎖球菌BIO-4Rと協調して、カンジダの成長を抑制している可能性を示唆するものである」
納豆菌は100度で煮沸しても死なず、真空においても死なず、胃酸によっても死なず腸まで届く。
むちゃくちゃにタフな細菌だから、味方につければこれほ心強い細菌はいないよ。
しかし酒屋の杜氏としては敵視せざるを得ないから、納豆は一生口にしないって決めてる杜氏さんも多いという。
日本酒も納豆も同じ日本の食文化だけど、こんなにも「水と油」なんだねぇ。
2020.1.18
人間の様々な身体機能は20代がピークで、その後次第に衰えていく。
30代40代のうちは、まだその衰えを自覚していないかもしれない。しかし検査をすれば、老いの兆候がはっきり現れる。
たとえば、聴力。
老人性難聴、という言葉があるくらいだから、聴力低下は老人になってから、と思われるかもしれない。
しかしモスキート音(17 Khz程度の可聴域ぎりぎりの超高音)は、10代の若者には聞こえるが、20代30代の若者には聞こえない(このことを利用して、コンビニの前でたむろする10代の不良を撃退するために、こっそりモスキート音を照射するコンビニがある。害虫を追っ払ってるみたいだね^^)。
つまり加齢性難聴は、すでに20代あたりから進行が始まっているのだ。
この特性を利用して、耳年齢を判定するアプリがあるし、こういう動画を見ても耳年齢を大まかに知ることができるだろう。
VIDEO
僕は15 kHzでギブアップ。なーんも聞こえません!老いを認めざるを得ない^^;
加齢に伴って次第に可聴域が低下して、会話や生活音(1~8 kHz程度)まで聞こえなくなると、ようやく「耳が遠くなったな」と症状として実感するようになる
加齢によって次第に高音域の聞き取り能力から低下していく傾向は、人間だけではなく、他の動物とも共通している。マウスでも5~6か月齢あたり(人間の20~30歳相当)から高音域の聴力が低下し始め、次第に低い音域も聞こえなくなっていく。人間と共通しているおかげで、マウスを使って加齢性難聴の発症メカニズムや予防法の研究をすることができる。
たとえばこういう論文。
『C57BL/6J系マウスの加齢性難聴はBak依存性のミトコンドリアのアポトーシス(細胞自死)を経由して起こっている』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19901338
「加齢性難聴は、哺乳類の老化に広く見られる現象であり、老化集団に最もよく見受けられる感覚障害である。ありふれた病態でありながら、その分子的な発症機序は不明であり、従って治療法も存在しない。
しかし、C57BL/6J系マウス(マウス実験で使われる超定番のマウス)のミトコンドリアにあるアポトーシス促進遺伝子Bakを除去すると、蝸牛にあるらせん神経節と有毛細胞の加齢性アポトーシス(細胞自死)が減少し、加齢性難聴が起こらなかった。
蝸牛細胞にあるBak遺伝子は酸化ストレスによって発現が促進されるが、Bak遺伝子が存在しないことにより細胞のアポトーシスが起こらない。さらに、ミトコンドリアを標的としたカタラーゼ導入遺伝子は、蝸牛のBak遺伝子の発現を抑制し、蝸牛の細胞死を減少させ、加齢性難聴を防いだ。
ミトコンドリアの抗酸化のために、経口でアルファリポ酸、コエンザイムQ10を経口投与によっても、Bak遺伝子の発現を抑制し、加齢性難聴を予防することができた。
つまり、加齢性難聴の発症機序には、酸化ストレスに対する応答としてBak依存性ミトコンドリアアポトーシスが関与していることが示された」
要するに、
加齢性難聴には酸化ストレスが関係しているから、酸化を防ぐことで加齢性難聴を予防したり進行を遅らせることができる、ということだ。
研究で使われたのは、アルファリポ酸とコエンザイムQ10のサプリだけど、他の抗酸化サプリ(たとえばNAC、ビタミンCとかEとか)でも同じような効果があるんじゃないかな。
乳酸菌の摂取によって加齢性難聴の発症を遅らせることができたという研究もある。
『熱処理乳酸菌(Lactococcus lactis H61)の摂取によって、C57BL/6J系マウスの加齢性難聴の発症を遅らせることができる』
https://www.nature.com/articles/srep23556
「加熱により死菌となった乳酸菌(Lactococcus lactis subsp. cremoris H61:strain H61)をマウス(C57BL/6J系)に投与して、その摂取による効果を調べた。
strain H61を0.05%含む食事を6か月間与えられた9か月齢のメスのマウスは、対照群のマウスよりも、聴性脳幹反応において有意に低い閾値を保っていた。
(聴性脳幹反応というのは、音刺激によって生じる脳波を調べる検査で、本人の意思と無関係に生じる。だから、本当は耳が聞こえるのに病気を装って障害者認定を受けようとするのは不可能だ。でもサムラゴーチさんみたいに、聞こえるのに障害者手帳を持っている人もいたり^^;)
これはつまり、加齢に伴って起こる蝸牛の神経細胞や有毛細胞の消失が、strain H61の摂取によって抑制されたということである。糞便を使った腸内細菌解析によると、strain H61の摂取によって乳酸桿菌が増加しており、この数と聴力に正の相関が見られた。さらに、血中脂肪酸濃度は聴力と負の相関を示していた。
まとめると、6か月間のstrain H61(死菌)の摂取により、腸内細菌叢が変化し、脂肪酸などの血中の代謝レベルが変化したことによって、加齢性難聴の発生が遅れたものと考えられる」
腸内細菌にはビタミン産生能のある菌が多いから、腸相のいい人は、おなかのなかにサプリメント製造工場があるようなものだ。わざわざサプリを摂取せずとも、菌のほうで勝手にビタミンを作ってくれるんだから、こんなにありがたい話はない。
たとえば、この研究で使われたLactococcus lactis やLactococcus brevisはビタミンK、GABA、共役リノール酸を作るし、Bifidobacterium(ビフィズス菌)はビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、ニコチン酸、ビオチンなどを作ることが知られている。
最近の耳鼻科学会では、腸脳相関ならぬ「腸・内耳相関」がよく演題に上がっている。
やっぱり、腸が大事、ということだな。
2020.1.16
せっかく健康のために飲んでいるEAAやプロテインなのに、体に悪い添加物を摂っているとなっては、もったいない。
アスパルテームやアセスルファムカリウムがなぜ体によくないのかについては、以前のブログに書いたから、ここでは繰り返さない、
では、スクラロースやステビアについてはどうなのか。
『スクラロースは経口グルコース負荷に対する糖反応およびホルモン反応に影響する』
https://care.diabetesjournals.org/content/36/9/2530
「スクラロースなどの非栄養性甘味料(NNS)は、動物実験において代謝に影響を与えることが報告されている。しかしこれが人間でも同様であるのかについては明らかではない。そこで我々は、スクラロースの投与が、経口グルコース負荷の代謝反応にどのように影響するかを調べた。
血中のグルコース、インスリン、Cペプチドの動態を調べることにより、β細胞の機能、インスリン感受性、インスリンクリアランスを評価した。
結果、スクラロースの投与によって、血中グルコース濃度のピーク値が上昇し、インスリンのAUC(area under the curve)が20%増加し、インスリン分泌速度のピーク値が22%増加し、インスリンクリアランスが7%減少し、インスリン感受性が23%減少した。グルカゴン様ペプチド1、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド、グルカゴンのAUC、β細胞感受性に関しては、有意差がなかった。
結論
スクラロースの摂取によって、グルコース摂取時の血糖値およびインスリン動態が大幅に乱れる」
スクラロースよ、お前もか。
やはり甘味料というのは、ロクでもないのばかりだね。甘い話にはウラがあるもので、甘い味にもウラがあるんだな。
どうせステビアも有害なんだろうなと思いながら調べていると、、、なんと、体に悪いどころか、むしろ薬効があって、糖尿病、高血圧、肝炎、胃腸炎に対する効能が示されているという。
そもそも、ステビアは植物の名前(キク科ステビア属)で、原産地のパラグアイでは神聖なハーブとして崇拝の対象だった。甘味料である前に、まず、ハーブなんだな。
ステビアを抽出して(ステビオシド)初めて商品化したのは、意外にも日本で、当初は醤油の甘み付けなどに利用されていた。
砂糖の300倍の甘みがありながら、しかも体に何かとありがたい効果があるなんて!こんな都合のいい”甘い話”があっていいのだろうか^^
でも、実際多くの論文が、ステビアのハーブとしての優秀性を示している。
たとえばこういうの。
『ステビオシドの低血糖作用の機序』
https://www.thieme-connect.com/products/ejournals/html/10.1055/s-2005-837775
「果糖を食べさせまくって糖尿病にしたラットを使って、ステビオシドがグルコースとインスリンの代謝にどのように影響するかを調べた。
ステビオシド(0.5mg/kg)の投与によって、血糖値が低下した(ピークは投与から90分後)。ステビオシドを1日2回投与すると、用量依存性の血統低下作用が見られた。
正常ラットにグルコース負荷テストをするとき、ステビオシドを投与するとグルコース上昇が抑制された。
ステビオシドの投与を15日続けると、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)とPEPCK mRNAが、用量依存性に減少した。
また、ステビオシドは糖尿病ラットのインスリン抵抗性を改善した。
結論として、ステビオシドは、インスリン分泌の促進と、インスリン利用効率を改善することにより、血糖値を安定化することができる。後者の作用は、ステビオシドが肝臓に作用することでPEPCK遺伝子の発現が減少し、糖新生のペースが遅くなることが背景にある」
甘いもの中毒で、「とにかく何でもいいから甘みが欲しい」という人は、ステビアならオッケーかもしれない。「かもしれない」というのは、個人的には話がうますぎて、にわかに信じがたいから^^;
健康のために積極的にステビアを摂る、というのはちょっと違うと思うけど、たとえばある商品の原材料を見て、甘味料としてステビアしか入っていないのであれば、アスパルテームやスクラロースより安心、ということは言えるだろう。
プロテインやEAAを飲んで糖尿病が悪化した、という人は、プロテインが悪いというよりも、それに含まれる添加物が悪影響を与えたということだろう。添加物にも気を遣いましょう。
2020.1.16
少子高齢化が、ゆっくりと、しかし着実に、進行している。「このままでは国力が衰退していく。この国の未来は明るくない」と多くの学者が警告している。
個人的には、この警告には同意しかねる。経済的に衰退することが、そのままイコール「暗い未来」だとは言えないと思う。
ただ、年度末の確定申告の時期であり、自分が納める税金の額を意識する時期でもある。「こんなに引かれるのか!」と思う。これが、「少数の若者が多くの高齢者を支える」ということの意味なんだな。
重税国家。
引かれる税金の重さから、国家の焦燥感がひしひしと伝わってくるような気がする。未来に備えるために、お役人も必死なんだろうな。
ちゃんと納税するから、天下り官僚の退職金とかにはあてず、ちゃんとした用途に使ってね^^
そもそも、なぜ、少子化が進んでいるのか。
いろいろな原因が言われている。女性の社会進出、価値観の変化などを挙げる人もいれば、シャンプー、歯磨き粉、化粧品、ワクチンなどに含まれる不妊成分や内分泌撹乱物質(環境ホルモン)の影響を挙げる人もいる。
「少子化ではなく、少母化である」という記事があった。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/01/post-92140.php
この記事を短く要約すると、「結婚した女性が産む子供の数は、この30年でそれほど減っていない。減っているのは、結婚する女性の数である。つまり、結婚さえすれば、女性は子供をちゃんと(30年前と同じように)産んでいる。問題は、少子化というよりは、母になる人が減っている”少母化”である。従って、女性の未婚化を抑えることが、少子化への有効な対策である」
では、なぜ、結婚しない(できない)のだろうか。
選択肢が多すぎるせいじゃないかな。
インターネットのなかった昔、世界はずいぶん狭かった。就職した女性は、会社の男性社員と結ばれるのがお決まりだったし、見合いで結婚する人も多かった。女性たちは分不相応を心得ていて、変に高望みすることがなかった。
一方、今はマッチングアプリで恋愛を探す時代である。無数の選択肢の中から、好みの男性を選ぶことになる。
一見、多くの選択肢があることは、好ましいことのように思えるが、単純にそうとばかりは言い切れない。
『選択肢の数をパラメーターとする関数としての購買行動』
http://avnimshah.com/wp-content/uploads/2013/04/Shah-A.M.-Wolford-G.-2007.pdf
この論文に、こんな研究が紹介されている。
「多過ぎる選択肢は、生産性にとってかえって逆効果である。このことを示すエビデンスが近年多く報告されている。P&G社は、商品の種類を減らすことで、主力商品の売り上げが10%増加することに気付いた (Goldstein, 2001)。
Iyengar and Lepper (2000) は、被験者に少数の選択肢(6個)のなかからものを買う場合と、多数(24個とか30個とか)の選択肢のなかからものを買う場合の、被験者心理を研究した。被験者は多くの選択肢のなかからものを選ぶことを好ましいと思ったが、購買数が多く、かつ、自分の選択への満足度が高かったのは少数の選択肢から購入したときだった」
なかなか興味深い人間心理だと思いませんか。
希望としては、多くの中から選びたいと思う。その方が、質の高いものを入手できる可能性が高まるわけだから。でも、多くの選択肢を比較考量することは、大変な作業で、実はけっこうめんどくさい。食べログとかの評価サイトがはやるわけだよね。選択肢が無数にあっては、もはや自分で考えることもできないから、他人の評価を目安にするんだな。
まさに、マッチングアプリを使う男女の心理の研究もある。
『パートナー探し〜オンラインでのパートナー探しにおける選好』
https://www.researchgate.net/profile/Alison_Lenton/publication/3230508_Shopping_for_a_Mate_Expected_versus_Experienced_Preferences_in_Online_Mate_Choice/links/0c96052249e6fe4acc000000/Shopping-for-a-Mate-Expected-versus-Experienced-Preferences-in-Online-Mate-Choice.pdf?origin=publication_detail
「現代のテクノロジーの進歩によって、衣食住あらゆる分野で、選択肢の数が増加している。それは配偶者探しにおいてもそうである。しかし、選択肢は多ければ多いほどよいものだろうか。
オンラインでのパートナー選びに際して、選択肢が増えると選好にどのような影響が生じるかを検証するため、実験を行った。
被験者は、事前の予想として、少ない選択肢の中から選ぶよりも多くの選択肢からパートナーを選ぶときのほうが、楽しく、満足度が高く、後悔も少ないはず、と考えていた。しかし実際には、理想的とされる選択肢数から選択しても満足度は向上せず、むしろ、少数の選択肢を提示されたときよりも記憶の混乱を来たしていた。
被験者は事前に「選択肢の数が増えると、コスト(比較考量のためのエネルギーや時間)がかかる」ことを予想しており、この点では正しかったが、どの程度の選択肢数でこのコスト増加が起こるのかについて、予想が甘かった。「いっぱいの中から選びたい」と欲張るけど、頭の良さがついていかないのだね^^;
このような乖離が起こるのは、人間の認知フレームワークによるものだ。このフレームは人間が進化の過程で得てきたもので、頭でわかっていてもこの傾向を是正するのは難しい。こうした知見は、マッチングアプリの設計に生かすことができるだろう」
多くの中から選びたい、というのが人間の本能で、マッチングアプリの出現は、その欲求を見事に叶えてくれた。しかし皮肉にもその結果、僕らは「選べなくなってしまった」。
30年前はそうではなかった。選択の自由なく、親の言うがままに見合いでさっさと結婚して、さっさと子供産んで、明るい家庭を築く。
どっちがよかったんだろう。
選択の自由は、結局僕らを幸せにしてくれたのかな?