ナカムラクリニック

阪神・JR元町駅から徒歩5分の内科クリニックです

2019年

風邪

2019.12.23

冬至が過ぎた。つまり、夜の最も長い日は終わり、これからどんどん日が長くなっていく。しかし寒さのピークはまだまだこれからだ。
このズレには、毎年妙な感じがする。日照時間の長短と気温の寒暖が、そのまま直結しているわけではなく、タイムラグでピークがくる、このズレ。
もちろん、科学的な理由は充分理解できる。
太陽から受けるエネルギーによって温度が変化していて、そのエネルギーが最大になるのが夏至、最小になるのが冬至。しかしそのエネルギーの多寡の影響が出るのに、1か月ほどかかるから、というのがズレの生じる理由だ。夏至のあとに大暑がきて、冬至のあとに大寒がくる。実に、筋が通っている。
でも感覚としては、なかなか腑に落ちない。だって、今日から毎日、日照時間がどんどん長くなっていくのに、温度のほうはどんどん下がっていくんだよ?太陽というエネルギーの象徴が、空に君臨する時間がどんどん長くなるのに、その影響力の指標である温度がどんどん下がっていく。何か奇妙な感じがするじゃない。

現象のピークとその影響力のピークのズレ、というのは、あちこちにあるような気がしている。
たとえば、母が死んだ。僕のすぐそばで。事態がよく飲み込めなかった。いや、僕は一応医者だから、心停止、呼吸停止、瞳孔の散大という死の三兆を満たしたことがわかった。その場にいた僕は、父よりも姉よりも冷静で、すぐに主治医を呼ぶように指示した。しかし、理解と納得は違う。
僕をおなかの中で育て、生まれてからは抱っこしたりご飯を作ってくれたりした人が、もうこの世にはいないのだということを受け入れること。これは、死の三兆を確認することとは違う。
ちゃんと悲しんで、涙を流して、そして受け入れて、また立ち上がる。時間差があるのは当然だろう。

精神科というのは、こういう時間差を経て訪れる衝撃を、うまく処理することができなかった人を診る科だともいえる。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)はその最たるものだろう。ショッキングな体験をうまく消化することができず、延々尾を引いている。
うつ病は過去にとらわれ、不安神経症は未来にとらわれている。共通するのは「今、ここ」を生きることができていない、ということだ。
こうした病態に対して、禅やマインドフルネスによってアプローチする方法がある。呼吸に意識を向けることで、他でもない、「今、ここ」を感じる。普段当たり前にしている呼吸を数えているうちに、過去や未来への執着がいつのまにか消えている。
おもしろい治療法だと思うけど、当院ではやっていません^^;

そう、寒さのピークはこれからで、風邪やインフルエンザのシーズンもこれからだ。受験生は絶対に風邪をひきたくない時期だし、受験生を抱える家族もそうだろう。
個人的には「インフルエンザワクチンを打っておこう」というスタンスは推奨しない。こういうときこそ、栄養療法ですぞ。
『風邪に対するセルフケア~三つの免疫相互作用群(身体的バリア、先天免疫、適応免疫)におけるビタミンD、C、亜鉛、エキナセアの重要な役割』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5949172/
「通常の健康な免疫防御系を維持できれば、風邪の発症率、症状の重篤さ、持続期間を軽減することができる。身体的バリアと生得免疫、適応免疫が風邪エピソードに関わっている。ビタミンC、D、亜鉛、エキナセアには、これらの免疫系バリアに対する有効性のエビデンスがある。このレビューは82の研究について、免疫群におけるこれらの栄養素の役割を考察した。ビタミンCについて、毎日サプリ(1日1~2g)をとると風邪の罹病期間が短縮(成人で8%、小児で14%)し、重症度も軽減することが示されている。
亜鉛について、サプリによって風邪の罹病期間を33%短縮できる可能性がある。すでに風邪を引いた場合、発症から24時間以内に亜鉛を服用するとよい。
ビタミンDに関して、サプリによって風邪全般に効果があった。ビタミンD欠乏の患者で普段全然Dを摂取していない人では、一番著明な効果があった。エキナセアについて、エキナセア抽出物(1日2400㎎)を4か月以上にわたって服用している人では予防・治療効果があった。結論として、亜鉛、ビタミンD、C、エキナセアは有効性を示すエビデンスがあるため、予防および治療のためにこれらを服用するとよい」

レビューだからエビデンスレベルは高い。
ちなみに、エキナセアはなじみのない人もいるかもしれない。

北米インディアンがハーブとして重宝していたことで有名だ。サプリとして誰でも買えるから、興味のある人は試してみるといい。
花としてもきれいだからガーデニングでも人気の植物で、ホームセンターなんかでも苗木が売られている。
僕の母は花の好きな人で、実家の庭にもエキナセアが植えてあった。エキナセアの医学的な実用性についてはまったく知らず、単純にきれいだから育てていたようだ。もともと雑草みたいにタフな植物だから、誰も庭を世話しない今でも、季節になると花が咲く。
植えた人がもうこの世にいないのに、その人が愛でていた花が毎年咲くというのは、何か不思議な感じがする。
こういうパターンのタイムラグもあるんよねぇ。

長野県

2019.12.23

統計によると、男性の平均寿命が最も長いのは長野県(79.84歳)、逆に最も短いのは青森県(76.27歳)である(平成17年厚労省調査)。
奇しくも、トップと最下位がいずれも”リンゴ県”となった。
リンゴの消費量は両県ともに高いから、「リンゴが赤くなると医者が青くなる」「1日1個のリンゴで医者要らず」という格言は必ずしも真ではないようだ。

人生の一時期を長野県で過ごしていたから、長野のことはまんざら知らないでもない。
この統計を見て直感的に思った。温泉のおかげじゃないの?
松本市に住んでいたけど、市内だけでもあちこちに源泉かけ流しの天然温泉があった。それが確か、300円くらいで入れたと思う。すぐ近所にあったから、毎日のように通っていた。今思えば、ずいぶんぜいたくなことだったなぁ。
寒い冬には温泉がものすごくありがたかった。市も温泉の健康への効用を意識しているようで、高齢者に対しては格安で利用できるチケットを配布していた。
そういう経験からすると、長野県民の健康を下支えし長寿をもたらしているのは、温泉のおかげのような気がする。

しかし、青森のほうから反論の声が聞こえる。
「温泉が名物ということでは、青森も引けを取らない。酸ヶ湯温泉、浅虫温泉、古牧温泉など、名湯が無数にある。特に酸ヶ湯温泉には末期癌で医者から見放された患者が県外からも数多く訪れる。もちろん、地元の人も温泉を楽しんでいる。温泉の恩恵に浴しているという点では、長野も青森も違いはない」
酸ヶ湯温泉は僕も行ったことがあるけど、本当に気持ちよかったな。
なるほど、どちらの県民も温泉の効用を享受しているのであれば、そこが原因ではなさそうだ。厳密には、県民1人あたり週に何回温泉に行くかを数字で出さないとちゃんとした比較にはならないんだけど、まぁ温泉については引き分けとしよう。

ある研究者は、長野県の長寿の原因として、寒暖差を挙げている。
「長野市、松本市、いずれも盆地で、一日の気温変動が激しい。ミトコンドリアは寒冷刺激によって活性化することが知られているが、冬の寒さはもちろん、あたたかい季節の急な温度低下など、皮膚への適度な寒冷刺激が好ましい効果を生み出しているのではないか。また、一日の激しい寒暖差のもとで育った野菜は、一定温度の室内栽培よりもフィトケミカルの含有量がはるかに多い。つまり、長野県民は他県民よりも抗酸化作用の強い野菜を食べているおかげで、寿命が長いのではないか」
これは同じことが青森にも言えると思う。青森は本州最北端の寒冷地であり、寒冷刺激としては充分。それに一次産業が盛んな農業県でもあるから、この点も長野と同じ。
でも、一方は長寿、一方は短命。だから分析の説得力は乏しいね。

長野県の標高を指摘する声もある。
「長野県はアルプスのすきまの盆地に細々と人間が暮らしているようなところで、市街地でもだいたい標高300メートルくらいの高度である。つまり、気圧が低い。すると肺胞内の酸素分圧も低くなり、血中酸素濃度も低下する。すると、細胞への酸素供給量も低下することになる。この状況に対して、ミトコンドリアは少ない酸素で効率的にエネルギーを産生せざるを得ない状況に追い込まれ、結果、活性が上がる。つまり、長野県民のミトコンドリア活性は他県(標高の低い土地に住む県民)よりも高いはずで、これが長寿の核心ではないか」
なるほど、説得力を感じる。理屈としてはマラソン選手の高地トレーニングと同じことだ。
しかし、あえて反論しようと思えば、できなくもない。
「沖縄県を見よ。沖縄は土地の成り立ちから言って、島自体、サンゴの巨大なカタマリのようなもので、つまり、ほとんど海抜ゼロメートル。長野県の標高300メートルとは比較にならない。しかしかつて男性の長寿日本一は沖縄県だった。さらに言うと、たとえば昭和40年の長野県男性の平均寿命は9位(68.45歳)と、ぱっとしない。高地トレーニングの効果は疑問だね」

結論:長野県の長寿日本一の理由は、よくわかりません笑

ただ、以下の論文によると「高地に住んでいる人ほど癌になりにくい」ということは言えそうなんだ。
『高地と癌死亡率』
https://www.liebertpub.com/doi/full/10.1089/ham.2017.0061
要約
「高地に住む人は、慢性的に低酸素にさらされている。この永続的な低酸素状態にもかかわらず、高地在住者ではすべての癌の死亡率が低下している。
高地で低酸素に適応しようとする生理的プロセスが、癌死亡率を減少させる駆動力になっている可能性がある。本レビューでは、疫学研究および動物実験を要約し、低地在住者と高地在住者、低酸素状態と普通の酸素状態の違いが、癌発生率と癌死亡率にそれぞれどのような影響を与えるのかを比較した。
高地での癌死亡率減少に寄与しているのは、酸素に無関係な機序によるものか酸素依存性の機序によるものかを考察した。低酸素によって誘導される因子だけでなく、活性酸素種とその除去は、特にポイントであり、高地での癌死亡率の低下に関連している可能性がある。さらに、腫瘍発生(つまり、免疫系による腫瘍の監視)への影響も考察した。
高地でなぜ癌死亡率が低下するのか、また、高地への転地や低酸素状態にする治療アプローチによって癌を抑制できるのか、動物実験や臨床研究ではいまだ説明できていない。しかし少なくとも、高地に住むことによって複数の適応メカニズム(酸素独立性も酸素依存性も)が活性化することがわかっている。このメカニズムには共通の経路もあれば、互いに拮抗するような経路もあって、そのせいで、高地に住むことによる腫瘍抑制のメカニズムを特定することが困難になっている」

要約を読んでも、いまいち煮え切らない感じで、これは要するに、研究者も答えが出てないんだ。現象として「高地に住んでいる人には癌が少ない」ということは言える。ただ、そのメカニズムがよくわからない。
本来、低酸素は体にとって好ましくない。しかし「何らか」の適応をすることで、低酸素血症を起こすどころか、癌にかかりにくくなるというオマケまでついてくる。しかしこの「何らか」が何なのか、それはわかりません、という論文。
こんな単純なこともわからないんだから、医学はまだまだ発展途上なんだな。

バイオフィルム3

2019.12.22

ペータ・コーエン博士の発見について紹介した。
博士の説をおおざっぱにまとめると、

ワクチン接種など→体内に重金属流入→腸内でバイオフィルム形成→慢性感染症→各種神経疾患

という流れで、自閉症を始め様々な病気の背景にバイオフィルムがある、というのが主張の骨子。
一見すると、バイオフィルムを形成する細菌がたいへんな悪役のように見えるけど、必ずしもそうではないと思う。ワクチン接種などで体内に不必要に水銀を入れる愚行であったり、重金属を体内に取り込む生活習慣(食生活など)こそが根本的な原因だろう。
体内に重金属が入ってくることは、体にとって一大事である。それが心臓や脳の細胞に直接取り込まれたら、致死的な事態にもなりかねない。宿主に死なれることは、寄生している細菌たちにとっても困るんだ。そこで細菌たちは、それらの重金属をバイオフィルムの構成材料として取り込む。こうすることで重金属の拡散を少しでもとどめようとする。慢性的な感染症として自閉症や統合失調症になってしまうかもしれないが、宿主に急死されるよりはマシである。こういうふうに考えれば、バイオフィルムの形成は、むしろ細菌の慈悲深い献身だとさえ解釈できる。

だから、根本は、そもそも重金属を取り込まない生活習慣を意識することである。
バイオフィルムが形成され、不幸にも何らかの症状が出たら、コーエン博士が提唱するバイオフィルム溶解プログラムに取り組めばいい。
ナットウキナーゼやルンブロキナーゼ(個人的には、ここにさらにセラペプターゼをたすともっと効くと感じている)でバイオフィルムのセメント(フィブリン塊)を溶かし、さらに、コーエン博士オススメの”抗菌ブレンド”を追加する。
秘伝として独占すれば一儲けできただろうに、ブレンドの手の内をすべて明かしてくれるのだから、まったく博士には頭が下がる。
ざっと再掲しよう。
「ベルベリン(黄檗や黄蓮に含まれる成分)、アルテミシニン(よもぎに含まれる成分)、柑橘類種子抽出物、黒クルミの外皮、よもぎ、エキナセア、ゴールデンシール(ヒドラスチスの成分)、ゲンチアナ(リンドウ)、ティーツリーオイル、カラクサケマン、ガルバナムオイル、オレガノオイル、ニーム」
さらに、”吸収剤”として、
「キトサン、柑橘類ペクチン、特製の重炭酸塩、有機ゲルマニウム、クロレラ」

これら、挙げられている個々の成分は、生理学的にはそれぞれの作用機序があるだろう。
ベルベリンは漢方薬(オウバク、オウレン)の成分として古代中国の時代から用いられてきたし、よもぎは日本で民間療法として、エキナセアは北米インディアンが、ティーツリーはオーストラリアのアボリジニーが、伝統的に使ってきた。どの成分一つとっても、単純に、「体にいい」と言われているものである。
しかしこうした成分の共通項として、腸内でバイオフィルムの溶解を促進する作用があるというのは、切り口としておもしろい。
古来から使われてきた様々なハーブに加えて、最近の科学者の努力が生み出した成分(美原博士のルンブロキナーゼ、須見博士のナットウキナーゼ、浅井博士の有機ゲルマニウムなど)をも合わせて、つまり、古今の人類の知恵の集大成で以て、バイオフィルムとの総力戦に立ち向かっているようだ。

個人的には、EDTAといえば何となく点滴のイメージがあるが、サプリメントとしても利用できるから、興味のある人は検索してみるといい。

医者にとってのきつい記憶は、自分を頼ってきてくれたのに、治せなかった患者のことである。
ある強迫性障害の男性が来院した。持てる限りの知恵をしぼって、様々なビタミンやミネラルを試した。症状はほとんど軽快せず、数回来院した後、失望して来なくなった。
オーソモレキュラー栄養療法は、万能ではない。メガビタミンをいれても、糖質制限をしても、高タンパク食をしても、効かない人には効かない。「打率10割。どんな患者でも治します」なんて栄養療法実践医は、いないんじゃないかな。
強迫性障害の背景に腸内でのバイオフィルム形成があって、そのせいでどんな栄養素をいれても効かなかったのではないか?まず行うべきは、バイオフィルムを意識した治療プログラムではなかったか?
去って行った患者は僕の心に苦みを残していくが、「次同じような主訴の患者が来たときには、今度こそ」の教訓もくれる。
結局、苦い経験を次に生かしていくしかないんだよね。

バイオフィルム2

2019.12.22

質問:バイオフィルムの分解によって子供たちの体内から有害金属が出てきたのはなぜでしょうか?

コーエン:こう考えてみてください。これらの有害ミネラルは皆カチオンで、正の電荷を帯びています。EDTAがこれらをキレートできたのは、これが理由です。水銀、銅、その他の重金属も正に帯電しています。なぜ細菌はカルシウムやマグネシウムを好んでバイオフィルムに利用するのでしょうか。使おうと思えば、正に帯電している金属なら何でも使えるはずなのに。この点こそが、私の長らく取り組んできたバイオフィルムに関する仕事の最もおもしろいところです。バイオフィルムの基質を分解し、細菌がフリーになると、有機酸の血中濃度が高くなる(ある子供では400にまで達しました)ばかりではありません。金属を腸に排出し始めるのです。

質問:ということは、金属も細菌も腸にいたということですか?

コーエン:その通り。去年5月にシカゴで行われた自閉症学会で、ある研究者が脳組織中のプロトン(陽子)を解析した結果をプレゼンしました。彼は自閉症児の脳に水銀があることを証明しようとしましたが、見つけられませんでした。しかし彼は、重金属曝露の結果として、ミクログリア(微小膠細胞;中枢神経系の免疫系で主に働くグリア細胞の一種)が活性化する証拠を発見しました。では、どこにこの重金属があるのでしょうか。それは、細菌とともにバイオフィルムのなかにあり、しかもそれは腸のなかにある、と私は主張しているのです。
逆に、バイオフィルムが一般的なミネラルとともに、重金属でできていないとすれば、なぜ突然、便のなかに大量の金属が検出されたのでしょうか?

質問:先生の治療法は具体的にどんな感じでしょうか?また、どんな手順で進めていくかも教えてください。

コーエン:まずはナットウキナーゼやルンブロキナーゼあたりの酵素から始めます。もっと強くフィブリン溶解効果を得るために、他の粘膜溶解酵素を併用することもあります。
ウスマン先生はレンサ球菌のバイオフィルムを分解するためにはナットウキナーゼが特に効くと感じておられます。レンサ球菌はバイオフィルムによって子供の健康に悪影響を与えていることが非常に多い印象を私は持っています。というのも、レンサ球菌の滴定を行うと、その値が高いことが頻繁にあるのです。
そして、こういう子供たちでは(もちろん大人でも、ですが)、レンサ球菌が神経症状の原因になっています。強迫性障害の傾向がしばしば見受けられ、ときにはほとんど精神病として出現することもあります。明らかな症状を伴った急性発症、という形で出現することはありません。

質問:何をどれくらい摂取するよう勧めますか?

コーエン:注意しておいて欲しいのは、こうした患者はごくごく子供だということです。なかにはほんの3、4歳という子供もいます。だから私は、カプセルの半量分を、1日2回服用するように勧めています。これは、ナットウキナーゼなら50mgカプセル1錠、ルンブロキナーゼなら20mgカプセル1錠です。
最初はこれらの酵素をEDTAと一緒に摂り、それから30分後に、”抗菌ブレンド”を投与します。
この抗菌ブレンドには、ベルベリン(黄檗や黄蓮に含まれる成分)、アルテミシニン(よもぎに含まれる成分)、柑橘類種子抽出物、黒クルミの外皮、よもぎ、エキナセア、ゴールデンシール(ヒドラスチスの成分)、ゲンチアナ(リンドウ)、ティーツリーオイル、カラクサケマン、ガルバナムオイル、オレガノオイル、ニームが含まれています。さらに、必要に応じて、バンコマイシン、ジフルカン、ゲンタマイシンなどの抗生剤も使います。毎日違うものを使います。それから1時間後、はがれたバイオフィルムや死菌などの残骸を掃除します。そこで使うのが、”吸収剤”です。具体的には、キトサン、柑橘類ペクチン、特製の重炭酸塩、有機ゲルマニウム、クロレラなどです。”緩衝剤”として徐放型ビタミンCなども使います。体内で細菌が破壊されると体液が酸性に傾くので、その影響を緩和するためです。ミネラル濃度を測り、必要があれば補わないといけません。経過を追うために、採血、尿検査、便検査を2か月ごとに行います。

質問:酵素、EDTA、抗菌ブレンド、吸収剤、緩衝剤を使うわけですね。効果のほどはどうでしょう?

コーエン:すばらしく効きます。バイオフィルムに対するアプローチこそが、ミッシング・リンクでした。
ある自閉症の少年がいました。彼の腸内はバイオフィルムまみれでしたが、いまやすっかり回復しています。当初は銅の血中濃度が極めて高く、毛髪の銅濃度は、銅そのもの、と言いたいくらいでした。回復後、毛髪の銅濃度はごく微量でした。この少年は毛髪に銅を排出することで回復したのではありません。ぶ厚いバイオフィルムを溶かしたことで銅が飛び散り、何か月もかけて便中に排泄されたのです。この男の子の場合は銅でしたが、水銀の排出に取り組んでいる子もいます。

質問:お話を聞いていると、このアプローチは慢性感染症がからんでいるどのような慢性症状にも効くような気がします。

コーエン:おっしゃる通りです。SLE、ライム病、多発性硬化症、その他、どのようなタイプの自己免疫疾患であれ、バイオフィルムによる慢性感染こそが、その背景にあると私は考えています。
注目すべきことは、なぜ免疫系が機能せずにこうした状態が持続しているのか、ということであり、また、どのようにして本来異物として認識されるはずの細菌が生き延びているのか、ということです。免疫系が機能不全に陥っているのか、あるいは、細菌が自身を変形させて免疫系の攻撃を回避しているのか、このどちらかです。答えは明らかでしょう。これがバイオフィルムの本質です。今日医学が取り組んでいる最大の問題のひとつであり、すでに解決法は見つかったものと考えています。

次回に続く。

バイオフィルム1

2019.12.22

アメリカではかつて自閉症は数万人に1人という極めてまれな疾患だったが、今や数十人に1人、つまり、学校の1クラスに一人二人いても珍しくないくらいの頻度の疾患になった。
子供は国の未来そのものである。その子供たちに、何か大変なことが起こっている。これはほとんど国家的な危機である。
トランプ大統領も当然危機意識を持っている。彼にはわかっている。「ワクチンが原因だ」と。

「健康な子供が医者の所に行く→ワクチンを打つ→気分が悪くなる→ガラリと変わる。自閉症のできあがり。こんな事例の何と多いこと!」


「自閉症患者の増加が天井知らずだ。なぜオバマ政権はこの医療が作った自閉症に対して何もしなかったのか。失うものは何もないだろうに」

さて、ワクチンが原因だとしても、治療はどうすればいいのか?また、ワクチンが自閉症を引き起こす機序は?
そのヒントになる記事がある。ここに引用しよう。長い引用になるので、複数回に分けて紹介します。

『フィブリン溶解酵素でバイオフィルムを溶解する自閉症治療』
https://www.clinicaleducation.org/resources/reviews/dissolve-biofilms-with-fibrinolytic-enzymes-autism-support/
~自閉症スペクトラム障害における慢性感染症に対する新たなアプローチ~
ペータ・コーエン博士は小児自閉症の専門家で、栄養療法的なアプローチを研究している。

質問:先生は慢性的な細菌感染症やバイオフィルムに対して、極めて有効な治療戦略を考案されました。その治療戦略にはナットウキナーゼやルンブロキナーゼなどのフィブリン溶解酵素も含まれているといいます。

コーエン:数えきれないほどの子供の尿と便を分析し、治療効果を検証しました。ナットウキナーゼやルンブロキナーゼでおもしろいのは、そもそも「バイオフィルム感染とは何なのか」という本質が浮かび上がってきたことです。バイオフィルム、血小板凝集、フィブリノゲン、フィブリンについて、MEDLINEで検索してごらんなさい。すぐわかるでしょう。まず、細菌が複数集まってバイオフィルムを形成します。それから、自身の周囲のこの防御ネットを急速に増大させます。これは重合体基質で、糊のようにべたべたしています。内側にフィブリンを含んでいて、そのフィブリンのおかげで無傷な構造を保っています。細菌はフィブリノゲンを集めてフィブリンを作り、基質の一部に利用しているのです。この時点で、細菌のカタマリたちはフィブリンのガードで身を固めているため、自身の外膜を脱ぐことができます。細菌自身の外膜には抗原として認識されるタンパク質があって、免疫系のミサイルの標的になるからです。しかし、今や、彼らは守られています。宿主の免疫系の攻撃をかいくぐり隠れて生きる術を見事に作り出したのです。

質問:なぜ細菌たちは自分たちをそのように守るのでしょう?また、そういう細菌が私たちの健康にどのような影響を与えますか?

コーエン:確かに、この細菌たちは、急性期の活性化した感染に比べれば、代謝は低いといえます。しかし彼らはこの基質の防壁を作ることによって、まだ生きているし、発酵し、代謝しています。そして産生された毒物が血流に漏出します。産生したバイオフィルムのために、彼らは感染に対抗する因子や免疫系からの攻撃を逃れることができます。さらにいうと、このバイオフィルムは医者にとっても厄介で、便培養をしても、便中に感染を示す証拠が出てきません。有機酸検査や短鎖脂肪酸、患児の分泌する代謝物から、患児たちがこうした細菌に感染していることが分かりますが、便培養をしても、菌体そのものを見つけることはできませんでした。

質問:バイオフィルムを溶解すれば、菌体が出てきましたか?

コーエン:ええ、もちろん!しかしそれだけではありません。誰もが予期しなかったおもしろいものを見つけました。バイオフィルムが何からできているかを思い出してください。バイオフィルムの基質は立体の織物で、いわば水平の糸と垂直の糸から成ります。バイオフィルムはカルシウム、マグネシウム、鉄を捕まえて、その基質を作る材料にします。ミネラルがこのバイオフィルムに強度を与えているわけです。たとえば壁を作るときのことを考えてみてください。レンガだけで事足りますか?セメントも要りますよね?バイオフィルムも同様です。ミネラルのレンガとフィブリンのセメントで強固な壁ができているのです。
さて、この壁を壊すには、まずフィブリンを溶かすためにフィブリン分解酵素を使います。さらに、ミネラルを排出するために、EDTAを使います。ここからが問題です。この溶解したバイオフィルムから、何が見つかったと思いますか?
大量の有害金属です。なぜでしょうか?これに対する答えは、何か非常に大きいものを示唆していると思います。自閉症だけでなく、ライム病、多発性硬化症、SLE、さらには癌の治療に対するヒントもここにあると思います。

次回に続く。