院長ブログ

右と左

2020.3.6

以下のリンク先動画は、先月韓国で行われた『四大陸フィギュアスケート選手権2020』に出場した羽生結弦の演技である。

ノーミスの演技で、世界最高得点を叩き出した。
フィギュアスケートという競技で成し得る美の究極形、と言っても過言ではない。

さて、今回のテーマは「羽生結弦のすごさ」ではなく、「右と左」である。
羽生選手がジャンプするときの、回転の方向に注目してみよう。左回転していることに気付くだろう。
そう、フィギュアスケートという競技は、総じて「左回転のスポーツ」である。
それぞれのジャンプ(アクセルもルッツもフリップも)は左回転で跳んでいるし、パフォーマンス自体が、リンクを左に回りながら進行する(陸上競技のトラックも左回りに走る)。
ただ、これはルールで決まっているわけではない。実際、右回転のジャンプで世界的な成績を残す選手も数多くいる。しかし多くの選手(特に日本ではほぼ全員)が左回転の演技をしている。

なぜ左回転が多いのか?
ふと、「反重力が関係しているのではないか?」と思った。
反重力については、以前のブログで紹介した。
早坂秀雄氏は「垂直方向に右回転しながら落下する物体では、上向きの力が加わる」ことを発見した。
これは現代物理学(ニュートン物理学もアインシュタイン物理学も含めて)の常識を根底から揺さぶる仕事であったが、当局から黙殺された。従って当然、今の学校教育でも早坂氏の業績が紹介されることはない。
しかし当局が反重力の存在を認めようが認めまいが、「あるものは、ある」のである。
それは、フィギュアスケートのように回転が関係する競技はもちろんだが、そもそも、万物は粒子から成り、粒子がスピン(回転運動)しているのだから、恐らく地球上に存在するすべての物質に、反重力が影響しているはずである。

フィギュアスケートの選手の場合、右回転のジャンプをすると、反重力による上向きの力が加わり、その分、滞空時間が長くなるから、右回転のほうが有利なように思える。
しかし、現状、左回転の選手のほうが多い。つまり、反重力では説明できないわけだ。
単純に、以下のような理由によるのかもしれない。
・指導者の都合・・・将来有望な子供が右回転ジャンプが得意だった場合でも、左回転に矯正する。左回転の選手が多いから、右回転の選手が彼らと衝突してケガをしても困る。アイスリンクの広さは、有限なのだ。
・軸足・・・多くの人は右利き(右手利き、右足利き)である。左足で踏み込み、左回転し、右足で着氷する動きのほうが自然。

指導者から矯正されようとしたが左回転にどうしてもなじめず、そのまま右回転のスタイルで貫き通して、結果、世界的な選手になった人も少なくない。
こういう選手は反重力をうまく使っているんじゃないかな。

こういうことを考えたきっかけは、岡澤美江子先生の『天の配慮』を読んだことがきっかけである。同著に、このような記述がある。
「自然は右回転が基本である。
人間の体のなかは、すべて右回りである。体のなかにすっぽり収まっている、全長10メートルにも及ぶ胃腸は右巻きである。
地球の自転は、地軸の北方向を正として右回りである。水のたまった桶の底に穴をあけ、水の落ちる様子を観察すれば、右回りの渦を作って流れていく。
ツル植物のほとんど(ツヅラフジ、アケビ、ヤマフジ、アサガオなど)は右回りのつるを巻く。これは生育場所(北半球、南半球)を問わない。種(DNA)に固有の性質である。
植物ばかりではなく、カタツムリの甲羅、サザエの貝殻なども右巻きの造形を示す。
自然界の「右回り好み」は流体にも見られる。
川を見よ。一見まっすぐに流れているように見えても、実は微妙に右回転しながら流れている。だから、自然と右側に蛇行していく。
この回転により水が適度に撹拌を受けることで、たとえば真夏でも水温が極端に上がることがない。水生生物の生存に好ましい環境を提供することになる。
我々の体内、血流だってそうである。血液は右回りのらせんを描きながら体内をめぐっている。果てはDNAの二重らせんさえ、右巻きである」

『天の配慮』の共著者大友慶孝先生は、これら「右と左」が歯科に及ぼす影響を考察した。
つまり、たとえば歯医者でインプラント(顎骨に埋め込む人工歯)固定術を受けるとき、そのインプラントは右回りの回転軸で埋め込まれる。
これは受け手側(患者側)にとっては、左回りの伝播となる回転軸であり、体にとって生理的ではない。体内の負荷を引き起こし、結果、体液のORP(酸化還元電位)が酸化側に傾くことになり、慢性疾患の背景となる。
このように、体内に「右と左」の齟齬を組み込まれた患者では、北半球に位置する日本列島において、高気圧(右回り気流)のときは体調に問題は出ないが、低気圧(左回り気流。台風、突風、竜巻など)は負担となり、体調不良を訴えることになる。

この指摘は実に新鮮だと思った。
僕の患者にも、天気の具合が体調にモロに影響する人が確かにいる。症状の出方は、頭痛、めまい、持病の関節痛の悪化など、人それぞれだが、皆共通して、低気圧のときの不調を訴える。なかには「今日は体調が悪いから、天気がこれから崩れるはず」と、体調から天気の変化を予想できる人さえいる。しかもその予想が、気象予報士よりはるかに精度が高かったりする^^;
インプラントを受けているわけではなくても、もともと「右と左」に起因する不調が背景にあって、それが低気圧によって表面化する、ということかもしれない。

動植物の「右と左」は、案外簡単に撹乱する。
たとえば、ツル植物は巻き付く対象物によってツルの右巻き左巻きが変化する。木々などの自然物に巻き付くときは右巻き、金属やナイロン紐には左巻きになることが多い。
胎児に無害とされるエコーであるが、中国で行われた人体実験によれば、胎児期のエコー曝露の時間が長いほど、出生後に左利きになる可能性が高くなることがわかっている。
「右と左」のキラリティを混乱させる何らかの因子があるのだろう。

「右と左」の齟齬が病気の原因になり得るのならば、逆に、この齟齬を是正するアプローチによって、症状が緩和するかもしれない。
岡澤先生も著書のなかで、「右回りのらせん回転動作によって、還元力が高まる可能性」を追求したいと書かれていた。
確かにおもしろいテーマだよね。

参考
・ここでいう右巻きは、いわゆるZ巻きのこと。このあたりはウィキペディアの「右巻き、左巻き」が詳しい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%B3%E5%B7%BB%E3%81%8D%E3%80%81%E5%B7%A6%E5%B7%BB%E3%81%8D

AはZ巻き(左下から右上に向かうよう)、BはS巻き(右下から左上に向かうよう)。
・『天の配慮』(岡澤美江子、大友慶孝共著)