院長ブログ

MSG

2018.8.3

池田菊苗が昆布から旨味成分のグルタミン酸ナトリウムを発見したのが1908年で、その翌年には友人の鈴木三郎助と会社「味の素」を設立したから、味の素には実に、百年以上の歴史がある。
味気ない食材も味の素を入れるだけで見事においしくなるものだから、飲食店はこぞってこの「魔法の粉」を買い求めた。1933年には日本国内での味の素の年間消費量は500万kg以上に達した。
軍は兵士に供給する缶詰などの配給食にも味の素を使った。
ある日本兵が米軍の捕虜になり、所持品を取り上げられた。そのなかに缶詰を見つけ、食べてみた米兵、あまりのうまさに驚いた。「俺たち米軍の配給食のまずいことといったら、たとえようもないほどだが、日本の兵隊はこんなにうまいものを食べているのか」
日本の配給食のうまさは本国に帰った米兵によって口伝えで広まり、戦後、米軍が本格的に「うまみ」について研究するきっかけとなった。

うまいだけならいいのだが、何事もタダでは手に入らないものである。MSG(グルタミン酸ナトリウム)がうまみと引き換えに奪っていくのは、健康である。つまり、MSGには毒性がある。このことはずいぶん前からわかっていた。
食材がおいしくなるということは、味覚を刺激するわけだが、それだけでは済まない。MSGは脳神経をも刺激する。急性の症状としては、紅潮、頭痛、けいれん、頭皮の突っ張る感じなどがある。また、痛みの閾値を下げる作用があるため、慢性疼痛、慢性頭痛、線維筋痛症の人では、症状が増悪する。
過剰なMSGは脳内に蓄積し、NMDA受容体に作用する。結果、細胞内にカルシウムが流入し、神経細胞にダメージを与え、細胞死を引き起こす。このMSGの興奮毒性が、脳卒中、自閉症、ALS、アルツハイマー病などを引き起こす。

体に悪いことは分かっている。
なぜ、どのように悪いのか、そのメカニズムもかなりの程度、詳細に分かっている。
でも、MSGの使用は国に堂々と認められていて、味の素はどこのスーパーでも売っている。
できれば性善説で行きたい。「国が認めているんだ。別に体に悪いものじゃないからだろう」、そういうふうに単純に行けたら、どれほどいいことかと思う。
でも現実はそうじゃない。食品会社の利権とか、外食産業の都合とか、僕らの健康よりも優先された価値観があって、それを基準にして、世の中は動いている。
テレビなどマスコミがオススメするものを素直に受け取っていては、健康は守れない。僕らは自分の健康を守るには、知識で武装しないといけないんだ。
めんどくさいことだけど、仕方ないよね。

MSGは僕らの日常生活に余りにも深く浸透しているものだから、これを完全に避けるのは難しい。
自分で野菜や肉を買って、それを料理するという自炊生活を続けている限り、MSGを摂取することはないだろうが、付き合い上、食べたくもない外食を食べないといけないこともあるものだ。
そういうときにどうすればいいか。
栄養療法的には、ちゃんと防御方法があります。
MSGがNMDA受容体に結合するとカルシウムチャネルが開いて、細胞内にカルシウムが流入するわけだが、このチャネルを閉じる方法がある。亜鉛とマグネシウムだ。
これらのミネラルには神経の興奮を抑制する作用があって、いわばMSGの毒消しとして作用する。その他、タウリンやビタミンB6も毒性の緩和に役立つ。
逆に控えるべきサプリは、カルシウムとグリシンである。
グルテン(小麦、大麦、ライ麦、大豆、乳製品などに含まれる)は体内でグルタミン酸に変換される。グルテン不耐症の人は、グルタミン酸不耐症だとも言える。粗悪なパンや大豆の過食はこうして炎症を引き起こすから、控えるのが賢明だ。
アスパラギン酸(アスパルテームの原料)もカルシウムチャネルに作用して神経を興奮させるという、MSGと同じ機序で体に悪さをする。人工甘味料の入ったガムとかフリスクの類は、極力避けるのがいい。

認知症とマグネシウム不足の関係は、エビデンスとして相当固い。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2092675)
両者の間に、MSGの摂取量も絡んでるんじゃないかと思うんだけど、そういうことをはっきり示した文献は見つからなかった。
でも毎日の健康習慣として、マグネシウムのサプリは摂ってて損はないと思うよ。
摂るなら、特にクエン酸マグネシウムがいい。マグミットは病院処方で保険が効くけど、酸化マグネシウムで緩下作用が強いし、けったいな添加物もいっぱい入ってるから、オススメはしない。

参考:”Excitotoxins~ the taste that kills” (Russel Blaylock著)