2019.5.29
以前、有機ゲルマニウムの有効性について当ブログで紹介した。
そのブログのなかである論文を引用したところ、なんと、その論文の著者ご自身から僕にファックスで連絡があった。
「浅井ゲルマニウム研究所の中村宜司と申します。
ゲルマニウムをブログに取り上げていただき、また、拙著の論文も引用紹介いただき、光栄に思います。
もしよければ、貴院に一度お伺いして、情報交換できれば、と思うのですがいかがでしょうか」
まさか論文の著者その人から連絡があろうとは夢にも思わない。
世界ってこんなに狭かったっけ?笑
世界で初めて石炭からゲルマニウムを抽出し、高純度に精製することに成功した浅井一彦氏は、ゲルマニウムの人体への治療効果に注目し、生涯をゲルマニウムの研究に捧げた。
浅井ゲルマニウム研究所はその浅井氏の意思を受け継ぐ組織であり、そこでは現在も有機ゲルマニウムの有効性の機序を解明しようと、日夜研究が行われている。
中村さんはその組織の取締役である。同時に、現役の研究者でもある。
世界一有機ゲルマニウムに詳しい人、と言っても過言ではない。
そんな人から直接お話を伺える機会なんて、普通はあり得ないことだ。
二つ返事でオファーを受けた。
中村さんの話
「ネットをざっと見ましても、有機ゲルマニウムに関する情報はずいぶん錯綜しているように思われます。毀誉褒貶が相半ば、という感じです。
一番の原因は、かつて悪質な業者が無機ゲルマニウムを偽って有機ゲルマニウムとして販売し、死者が出たことにあります。
無機ゲルマニウムは長期大量投与で致死的な腎不全を起こしますが、有機ゲルマニウムにはそのような毒性はありません。
様々な試験(単回投与、反復投与、抗原性、生殖毒性、遺伝毒性、皮膚毒性など)で毒性のないことが示され、安全性は極めて高いことが証明されています。
現在、有機ゲルマニウムを製造販売するメーカーは国内に4社あります。どれがいい、悪い、とはあえて申しません。
ただ、多くのメーカーは二酸化ゲルマニウム(毒性あり)をハロゲン化するプロセスを経て有機ゲルマニウム(毒性なし)を製造しています。
一方、当社は多結晶ゲルマニウムを直接精製し、そこから有機ゲルマニウムを得ますので、毒性の生じる余地がありません。
二酸化ゲルマニウム経由とはいえ、純度100%であれば、まぁ問題はないのですが、当社は浅井の開発した方法にこだわっています。
その分製造にお金がかかる点がネックで、消費者の財布に負担をかけてしまうのですが、それでも、本物を提供したいと思っています。
当社は相当な資金を費やして、私を含め研究者が有機ゲルマニウムの研究に取り組み、論文を生み出していますが、他社にはそういう研究施設を備えたところはありません。
他社は、二酸化ゲルマニウム経由のプロセスで製造費を安く抑え、かつ、Ge-132を名乗っています(これはもともとは浅井ゲルマニウム研究所での開発番号です)。
独自の研究がないどころか、当社のパンフレットをそのまま利用している他社さえあります。
誤解のないように申し添えますが、「他社製品は有害だ」、と言っているわけではありません。
有機ゲルマニウムによって、病気に苦しむ人が一人でも多く救われれば、というのが浅井の願いでした。
このようにゲルマニウムを扱う業者が複数あり、患者、業者ともに共存共栄の関係になれれば、これはむしろ浅井の望むところかもしれません。
しかし、こういう他社と市場で競合していくことは、実に骨の折れることです。
現在の製薬企業のスタイルは、一病一薬が基本です。つまり、ひとつの病気、たとえば高血圧に対して、血圧を下げる薬を作ろう、というように。
しかし浅井の生み出した有機ゲルマニウムは、そうした医薬品のカテゴリーに収まるものではありません。
免疫賦活作用、抗酸化作用、抗炎症作用など様々な効果があって、有効性を示唆するデータは無数にあります。
しかし厚労省から薬としての認可を受けるには、「万病に効く薬」として申請するわけにはいきません。
そこで、別会社が有機ゲルマニウムの分子構造に若干の修飾を加えたプロパゲルマニウム(医薬品名はセロシオン)という慢性肝炎の治療薬として申請し、厚労省の認可を得ています。
ただ、その製造販売権を持っているのは当社ではありません。
そして当社は、有機ゲルマニウムを医薬品としてではなく、食品(および化粧品)として扱っています。
このあたりの事情は入り組んでいるため、ここで詳述することは控えます。
有機ゲルマニウムの作用については非常に多岐にわたるのですが、何をお話ししましょうか。
有機ゲルマニウムを飲み始めると、まず、わかりやすい変化として、便の色が変わります。
便秘の人は固くて、黒みがかった茶色の便の人が多いですが、黄色い軟便になります。尿の黄色味も増します。
なぜこのような変化が起こるのか。
有機ゲルマニウムによってマクロファージやクッパー細胞が活性化し、老化した赤血球が網内系で除去されます。
赤血球の内容物であるヘモグロビンが分解されてヘムになり、これがビリルビン、ウロビリノーゲンへと代謝されます。
ウロビリノーゲンは酸化されるとオレンジ色に着色されてウロビリンになって、便中に排出されます。
つまり、古い赤血球の破壊亢進に伴って、ビリルビンやウロビリンが増加していることが、便の色が変わることの原因であるわけです。
「赤血球が破壊される?体に悪いんじゃないか」と思われるかもしれません。
しかし有機ゲルマニウムを継続的に摂取している人の血液データを見ても、ヘモグロビンやヘマトクリットの低下は見られない。
つまり、単なる破壊というよりは、代謝の亢進であって、新しい赤血球が次々と産生されているわけです。
赤血球の寿命は120日とされていますが、「長生きならいい」というものではありません。老化した赤血球は連銭形成を起こしやすく、肥大化し、末梢の微小血管を通りにくくなっています。
古い赤血球には体内から退場してもらい、新しい後進が生まれ育つことが必要なのですが、有機ゲルマニウムの仕事はまさに、赤血球の「破壊と創造」です。
浅井は著書に「ゲルマニウムが酸素の代わりをすることで、体内の酸素が豊富になり、様々な効能をもたらすのではないか」と書いています。
これは現在の目から見て不正確な表現です。ゲルマニウムに酸素運搬能はありません。
しかし、ゲルマニウムが赤血球の代謝を亢進し、酸素供給能が高まるわけですから、結論的に浅井の予見は当たっていたと言えます」
2019.5.28
そもそも、コレステロールの値が高いと何が悪いのか。
一般的には「動脈硬化の原因になるから」というのが理由になっている。
だから高いコレステロール値を見れば、医者は薬を処方して、躍起になって下げようとする。
もはや現代においてコレステロールは、それ自体、追放されるべき悪者、治療されるべき病気なのだ。
しかし、重大な事実が見落とされている。
コレステロールが原因で動脈硬化が起こったことは、有史以来、ひとつの例もないし、今後もあり得ない。
なるほど、コレステロールが高いことは動脈硬化(およびその延長にある心筋梗塞や脳梗塞)の発症に関連するリスク因子ではある。
しかしそれだけのことだ。
それだけのことであるはずが、いつの間にか相関関係と因果関係が混同されてしまった。
いまや、あたかもコレステロールにすべての非がある、といった状況に至った。
まったくナンセンスな事態である。コレステロールのせいで動脈硬化になる、というのは、消防士がいるから火事が起こる、といっているようなものだ。
確かに、ある種の血中脂質増加と動脈硬化(および心筋梗塞)の発症率増加との間には弱い相関があるが、だからといって、その血中脂質が問題の張本人というわけではない。
体内で脂質がどのように働いているかを考えてみるといい。
皮膚で太陽照射を受けてビタミンDに変換されるなど、コレステロールはれっきとした抗炎症物質なんだ。
コレステロールは不当な批判を浴びている。では何が真の原因なのか。
現代人が好んで過食する砂糖や精製小麦。これこそが問題の根本だ。
これらの糖質は体内で炎症を引き起こす。体はその炎症を何とか鎮静化しようとして、コレステロールの血中濃度を上げる。
しかし、絶えざる糖質の流入に対して、コレステロールの増産で対処できなくなったとき、古いコレステロールが動脈に沈着しはじめる。これが動脈硬化の始まりだ。
勘違いしてはいけない。コレステロールは何も悪くない。炎症を鎮めようとしてわざわざ出張ってきたのだ。
火消しにやってきた消防士が、放火の犯人だとして批判されている。こんなデタラメな話はないだろう。
しかしこんなデタラメに基づいて、大真面目に「治療」が行われるのが現代医療だ。
根本的なところで考え方を誤っているのだから、患者にメリットのあろうはずがない。
俗に善玉コレステロール(HDL)、悪玉コレステロール(LDL)などというが、善玉、悪玉という別種のコレステロールが存在するわけではない。
コレステロールはコレステロールで、一種類しかないが、血中の移動様式が異なるだけだ。
軽自動車に乗っていようが高級外車に乗っていようが、あなたはあなたでしょう?それと同じことだ。
HDL(高密度リポタンパク)はコレステロールの回収屋で、体内の各組織にあるコレステロールを肝臓へと運ぶ。
HDLの血中濃度が高いのは好ましいことで、動脈硬化の発症を防いでくれる。
LDL(低密度リポタンパク)は逆に、肝臓から全身にコレステロールを輸送する運び屋だ。
これは「悪玉コレステロール」と言われているが、LDLが本当に「悪玉」、つまり体に害をなすのは、LDLが酸化したときだ。
HDLをクリーンな電気自動車だとすると、酸化LDLは散々排ガスをまき散らす燃費の悪いディーゼル車のようなものだ。
血中脂質を調べることは、動脈硬化の進展具合を見るのに役に立つ。
ただ、総コレステロール(HDLとLDLの合計)は計っても意味がない。
100台車を持つのは悪いことか?それ自体では何とも言えない。
100台全部が能率的なクリーンな車なのか、錆びついたおんぼろの車なのかで、全然話が違ってくるだろう。
HDLの数値が高いことは好ましいことだ。この数字は、高ければ高いほどいい。
逆に、LDLが高いときには、さらに精査して、リポタンパク(a)を調べるといい。
LDLの酸化の度合いを知ることができる。
このリポタンパク(a)濃度が30mg/dl以上になると、動脈硬化を背景とする合併症(心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症)の発症率が激増する。
おもしろいことに、高脂肪食を食べた後には、この濃度が低下することがわかっている。
動脈硬化は血管にアブラがつまっているんじゃない、ということが、この一事からでもわかるだろう。
コレステロールの値をまったく無視するのも、それはそれで問題だ。
LDLが非常に高い原因は、体が大量のコレステロールを産生する必要に迫られているか、コレステロールの利用効率が落ちているか、あるいはその両方だ。
これには何らかの対応が必要だが、薬を飲んで万事解決、とはならない。
スタチン製剤は肝臓のコレステロール産生を止めるが、これは火が燃え盛っているのに消防士を帰らせるようなもので、何の根本的解決にもなっていない。
人為的に下げるのではなく、自然に下がるようにする。
これが正解だ。
そのためには、コレステロール上昇の背景(インスリン抵抗性、炎症、酸化ストレスなど)に取り組むことだ。
過剰な精製糖質の摂取を控え、ビタミンK2、D3といった脂溶性ビタミンや、ビタミンC、ナイアシンなどの水溶性ビタミンを意識的に摂ることで、症状改善の助けになるだろう。
参考
Vitamin K2 and the Calcium Paradox(Kate Bleue著)
2019.5.27
力士同士が立ち合いで正面からぶつかったとき、双方が受ける衝撃は軽く1トンを超えるという。
いかに当たり負けしない体を作るか、衝撃に耐える強靭な体を作るか。力士は常にこの課題と向き合っている。
食べることも稽古のひとつだった、と元力士が語っている。
そう、体を大きくするための秘訣は、力士の食事にある。
力士の食事と健康についての研究がある。1976年と古い研究だが、今読んでもおもしろい。
https://www.researchgate.net/publication/22180569_Some_factors_related_to_obesity_in_the_Japanese_Sumo_Wrestler
力士の食事は、朝夕の1日2回。ちゃんこ鍋というポークシチュー様の鍋を主食とし、一日の総カロリーはおよそ5500kカロリーである。
そのカロリーの内訳は、780グラムの炭水化物、100グラムの脂質、365グラムのタンパク質である。
なお、平均的な日本人は1日に3回食事し、平均摂取カロリーは2279kカロリーである。また、その内訳は、炭水化物359グラム、脂質50.1グラム、タンパク質82.9グラムである。
よって、平均的日本人と比べた場合、力士の総カロリーおよび炭水化物の摂取量は2倍以上、脂質は2倍弱、タンパク質は4.5倍ということになる。
力士の食事は、総カロリーの57%を炭水化物が占め、脂質の割合は16%と低い。
さらにこの研究では、番付が下位(幕下以下)と上位(十両、幕内以上)の力士で、体格や食事量の違いを見ている。
下位力士では、上位力士と比べて、体重が同じであったとしても、有意に脂肪が多く、かつ、筋肉が少ない傾向にあった。
また、下位力士はちゃんこ鍋を1日平均5120kカロリー摂取するが、その内訳は炭水化物が1000グラム、タンパク質が165グラム、脂質については、わずか50グラムだった。
つまり、下位力士の食事は80%近くを炭水化物が占め、脂質はたったの9%しか摂取していなかった。
この研究は示唆的で、多くのことを語っている。
「いかに太らないか」を考えて食事している人が多いこの現代社会で、力士は例外的に、いかに太るか、いかに体を大きくするかを考えて食事している。
そしてその力士の食事は、上記の研究が示すように、高炭水化物・低脂質食である。
ただし、炭水化物が多ければ多いほどいいのかというとそうではなく、実力上位の力士の食事は下位力士よりも炭水化物が少なく、脂質が多かった。
やせたい人にとって、この研究は非常に参考になるだろう。
つまり、やせるためには、力士の食事スタイルの逆(低炭水化物・高脂質食)をいけばいいわけだ。
さらにこの研究では、力士の血液データや慢性疾患罹患率も調査している。
力士の血中の中性脂肪、リン脂質、尿酸、総タンパクは、健康男性と比べて、いずれも有意に高かった。
また、力士の糖尿病、痛風、高血圧の発生率は健康男性と比べて、それぞれ5.2%、6.3%、8.3%高かった。
体重は、皮下脂肪厚、収縮期血圧、総コレステロール、尿酸と有意に相関していた。
体重、尿酸を独立した変数として重回帰分析で処理したところ、肥満、高脂血症、高尿酸血症は、主に高カロリー(炭水化物主体)の食事が原因だと考えられる。
力士は体を作るために、高炭水化物・低脂質食をとっている。
この食事スタイルは、現役の力士生活が続く限り、変わることはないだろう。
しかしこれは力士の体に大きな負担を強いるもので、その結果が、上記のように、各種疾患の増加に反映されている。
ここにも健康へのヒントがある。
高炭水化物・低脂肪食が、糖尿病、痛風、高血圧のリスク因子になっているのだから、逆を心がけるといい。
近年、糖質制限という言葉は、医療関係者だけではなく、一般の人にもずいぶん浸透してきたが、すでに1976年の研究でその有効性が示唆されていたということだ。
ただし、やりすぎはご用心。
「糖質が諸悪の根源だったのか!」とばかりに、一切の糖質を断つなど、ストイックにやりすぎる人がいる。
それはそれで、また別の弊害があることが指摘されているので、何事もほどほどにね。
参考
“Good Calories Bad Calories” (Gary Taubes著)
2019.5.26
「高校は大阪の有名な進学校だった。
当たり前みたいに東大を受験したよ。模試でA判定も出ていたし、きっと受かるだろうと思って。
ところが落ちちゃってさ。
みじめだったな。俺より成績が悪くて合否の微妙だった同級生たちが受かってるのを見ると、何とも言えない気持ちになったよ。
素直に浪人しようとは思えなかった。
妙に自信家でプライドだけは高かったから、東大に合格した同級生たちを一年遅れで追いかけるのは、何か違うんじゃないかって思った。
それで、相撲部屋に入門した。
え、意味がわからない?飛躍しすぎだって?
俺もそう思う笑
どうかしてたんだな。
ただ、当時から体格はよかったし、腕っぷしには自信があった。
受験に失敗したショックでへこんでいる、かといって、普通に勉強する気にもなれない、しかし怠惰に流される自分を許せる性格でもない。自分をストイックに追い込みたい気持ちもある。
当時の自分なりに考えた末、行き着いた結論が、相撲部屋だった。
芝田山部屋に入門を許され、力士としての生活が始まった。
最初は下っ端も下っ端。洗濯、掃除、チャンコ作り、先輩の雑用ばかりで、ろくに稽古もさせてもらえない。
一時期マスコミでさかんに言われた、妙な”かわいがり”みたいなのはうちの部屋ではなかった。
師匠がすでに一回そういうので訴えられて懲りていたってところもあると思う。不条理な暴力を振るわれたことはない。でも、筋の通った暴力はある。本当に厳しかった」
四股名を与えられ、初土俵は平成20年1月。
2ヶ月前(平成31年3月)に引退するまで、通算成績は、214勝185敗56休。
最高位は、幕下11枚目。
「2ヶ月前に断髪式をした。
10年間の相撲人生を思うと、自然と気持ちがこみ上げてきて、涙をこらえるのに必死だった。
悔いはある。
もっと戦い続けたかった。
稽古中に左目を傷めた。網膜剥離だと医者に言われた。「眼球の形が変わってる。相撲を続ける?とんでもない」と。
右手首には慢性的な骨折があって、毎日酷使するせいでちっとも治癒しない。膝も傷めてる。
10年間の戦いで、体は満身創痍だった。
網膜剥離で、もはや戦い続けることができないとわかったとき、正直、少しホッとしたところがある。「これで、戦いの日々から降りられる」と。こんな病気にならない限りは体の続く限りずっと戦い続けて、それで取り返しのつかないほどのダメージを負っていたかもしれない。
相撲界は完全に「しきたりの世界」で、いい意味でも悪い意味でもすごく保守的なんだ。
番付は下から、序ノ口、序二段、三段目、幕下、十両、幕内、と上がっていくんだけど、どこの番付かで、自分ができることできないことが明確に決まっている。
部屋によって違いはあるけど、たとえば、序ノ口にいるあいだは服は着物しか着れなくて羽織はダメだとか、幕下以下は白い足袋を履けないし、大銀杏を結えないとか。
相撲取りにとって、十両になれるかどうかが、とてつもなく大きな分水嶺だ。
なにしろ、幕下以下の力士は無給なんだ。でも十両になればいきなり、月に100万円とかの給料が出る。個室が与えられて、付き人がついて、部屋の雑務から解放される。十両になってようやく、一人前の関取として認められる、といった具合だ。
無給なのにどうやって生活していたか?タニマチからちょっとした援助があるから、そのお世話になったりね。
そう、俺の場合は幕下で引退したから、付き人がつくとか、十両の生活は経験したことがない。でも逆に、付き人を経験したことはもちろんある。高安関の付き人をしていたよ。
高安関はすごく豪快な人で、同時に繊細さも持ち合わせた人。
ギャンブルが大好きで延々やってるんだけど(競馬、競輪、競艇とかの公営ギャンブルだよ^^;)、賭け方を見てれば、その人の性格ってだいたいわかる。基本、堅実な賭け方なんだけど、ここぞというときにはドドンと張る。それで大きく当てて、ン十万円とか勝ってたりするからすごい。
相撲って勝負の世界でさ、勝った負けた、切った張った、死ぬか生きるかの世界なわけ。そういう世界で戦い続ける人っていうのは、ギャンブルも含め、勝負事の好きな人は多いと思う。勝負の決まる一刹那の、ドーパミンやアドレナリンがほとばしるあの感覚。あれが病みつきなわけよ^^
貴闘力関とか面識ないけど、ギャンブルで身を持ち崩す破滅型の気持ちは、俺にもちょっとわかる気がする。
引退後、付き合っていた彼女と結婚した。地方の巡業先で縁あって知り合った人。
この前、彼女の実家に初めてご挨拶に伺ったんだけど、緊張してしまってね。緊張しすぎて、なんと、アゴがはずれてしまった^^;
比喩じゃないよ。本当に、アゴが外れて、ご両親がおもてなしに出してくれた果物も、噛めないものだから、食べられなかった。
なんていうかな、慣れていないタイプの緊張でね。戦う緊張感にはもちろん慣れている。10年そういう世界にいたわけだから。彼女が誰か妙な男に襲われそうにでもなったら、身を呈してでも彼女を守る。そういうことはできるんだけど、力がモノをいわない緊張感、とでもいうのかな、ああいうのは全く免疫がなくて、ずいぶん醜態を見せてしまったよ。
先月から就職して、医療機器メーカーの営業をしている。
現役時代、体重は140kgあった。食べることも稽古だ、ってことで、もう、あり得ないくらいの量を食べていた。でも今は、ずいぶん痩せたよ。妻が作る普通の量の食事で、充分満足だ」
東大落ちて、10年力士をして、今また第2の人生を歩み始めた。
レールに乗るような生き方ではなく、この人は確かに、地に足つけて、自分の人生を歩いている。

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元力士に殴られる図^^
2019.5.25
弾性線維性仮性黄色腫(PXE)という、舌を噛みそうな病気がある。
観自在菩薩弾性線維性仮性黄色腫行深般若波羅蜜多時
みたいに、念仏の間に紛れ込んでても案外違和感ないっていう^^;
常染色体劣性遺伝の、ン十万人に1人のまれな難病。
PXEの患者は、比較的若年で顔を含め体の皮膚にひどいシワができる。
早老症に分類されていないけど、実態としては早老症そのものだと思う。
皮膚の弾性線維にカルシウム沈着が起こり、そのせいで肌の張りが失われ、太いシワができる。
弾性線維の石灰化は正常な人の加齢性変化と同じものだが、ただ、その変化が若年者に急速に起こる点が、この病気の特徴だ。
健康な人をいくら調べても、健康の正体はつかめないが、病気の研究によって、逆に、正常とは何か、ということが浮き彫りになるものである。
PXEも同様で、この病気の本態を探る研究者の努力によって、加齢(特にシワ形成)のメカニズムの一端が明らかになった。
PXE患者の皮膚には非活性型MGPが大量にあることがわかったのである。
MGPはビタミンK2によって活性化され、カルシウムをあるべき場所(骨)に運搬、格納するのが仕事だ。
ところが、ビタミンK2が不足するとどうなるか。
MGPおよびカルシウムが組織にそのまま放置されることになる。
これが動脈で起これば動脈硬化が進行する。末梢に何とか血液を送り込もうと、体は血圧を上げるが、それで追いつかなければ、末梢に虚血が起こる。
虚血が目で起これば網膜障害から視野欠損を生じるし、脳で起これば脳梗塞、心臓で起これば狭心症、内臓で起これば臓器壊疽、下腿で起これば間欠性跛行を生じる。
実際これらは皆、PXEの合併症として知られている。
PXEは日本では300人ほどしか確認されていないため、まだ十分に研究が進んでいないが、若年で発症した患者が高齢になるにつれ、骨粗鬆症を併発すると僕は踏んでいる。
ビタミンK2の不足によりMGPがカルシウムを骨に運ぶことができない、という機序を考えれば当然予想されることだ。
もっと言うと、この病気の人は、薄毛になる可能性が高いはずだ。
そもそも、薄毛とは何か?
頭皮の慢性炎症によりカルシウム沈着が促進され、頭皮の血流不全、栄養不全が起こり、結果、毛髪の成長が阻害された状態のことだ。
炎症の原因は、糖代謝異常、内分泌異常、老化など複数あって、このあたりは遺伝に基づく個体差や生活習慣の違いによって様々だろう。
ただ、打つ手はある。
(1)慢性炎症を鎮火し、(2)カルシウムを適切にポンプアウトし、(3)頭皮の血流を回復して栄養を呼び込んでやることだ。
この文脈で言えば、(2)の手段として、ビタミンk2を摂取することである。また、カルシウムと拮抗するマグネシウムの摂取も助けになるだろう。
ただし、この推論には、決定的な弱点がある。
この写真を見せられたら、僕は反論の言葉が出ない。

ビタミンk2をはじめ脂溶性ビタミンの積極的摂取を勧めるプライス先生自身が、見事なズルハゲだっていう^^;
最近、あちこちでいろいろな先生がビタミンDの重要性について啓蒙していることもあって、ビタミンDのサプリを摂る人が多くなってきた。
5000IU程度ならビタミンDのサプリ単独摂取で問題ないだろうけど、それ以上の高用量を飲むのであれば、ビタミンK2を併用しないと危険だ。
なぜか?
ビタミンDは、細胞内でのMGP産生を増加させることで、作用を発揮する。
ビタミンDを大量に摂取すれば、それだけ大量のMGP産生が促進されるわけだが、それを活性型MGPに変換するビタミンK2がなくては、細胞内に大量の非活性型MGPが蓄積してしまう。
おまけに、ビタミンDのもう一つの作用として、腸管からのカルシウム吸収増加がある。増加させたはいいものの、運び屋MGPが不在では、行き場がない。
結果、カルシウムは骨にきちんと収納されるのではなく、軟組織(動脈内壁、皮膚など)に非活性型MGPもろとも沈着することになる。
つまり、よかれと思って大量摂取したビタミンDのせいで、かえって動脈硬化、シワなど、ありがたくない症状に見舞われてしまう。
生兵法は大怪我のもと、ということだね。
脂溶性ビタミンの高用量単独投与が危険だと言われるのには、確かに理由がある(特にビタミンAはすっかり悪評が根付いてしまった感がある)。
しかし機序さえ理解してしまえば、不必要に恐れることはない。
ビタミンK2、D3、Aをバランスよく摂取することで、メリットだけを最大限に享受することができる。