ナカムラクリニック

阪神・JR元町駅から徒歩5分の内科クリニックです

2019年

貧血とビタミンA

2019.6.3

鉄剤の投与によって精神疾患を含む様々な症状が見事に改善、という記事を読む。
改善した患者のことを、フェイスブックに投稿したり一般向けの書籍で紹介するのは、悪いことではないと思う(もちろん、個人が特定されるような書き方をしちゃダメだけど)。
そうした情報によって、救われる人もきっといるはずだから。
それに、同じ医者としてわかるんだけど、「自分が治した患者は、自分の最高傑作」ぐらいの誇らしい気持ちになって、いろんなところに自慢したくなるんだよね^^

でもこういう先生方も、打率10割、どんな患者もばっちり治せる、というわけではない。
というのは、以前、こういう先生方の治療方針を参考にして、僕も自分の患者に試してみたことがあるが、全員がきれいに治ったわけではなかったから。
その先生のもとに新幹線でわざわざ通院したものの改善せず、僕のクリニックに来た患者もいる。

名医でも力及ばす、治せなかった患者、治らなかった患者がいるはずなんだ。
もちろん、僕にだっている。
というか、医者なら誰だってこういう苦い経験をしている。
でもその苦さをバネにして、医者は成長していく。臨床経験を積んだり知識をいろいろ吸収しながら、ふとしたときに、失敗した患者のことを思い出す。
「今ならもっとうまく治療してあげられるのに。もう一回チャンスが欲しい」とか思う。
こういうふうに思えるのは医者として成長している証だろう。
しかし、来てくれなくなった患者が再び来院することは、通常あり得ない。

SNSに投稿するなら、失敗例をシェアするほうが本当は教訓的なんだろうな。
成功例は、それ自体で閉じている。「はいそうですか」とお説を拝聴するしかない。
でも、失敗例は開いている。多くの医療関係者の意見を募るなどすれば、未来の可能性がずいぶん広がるだろう。
治せなかった患者こそ、最高の教科書に違いない。
でもその教科書の味は苦い。公表するどころか、誰の目にも触れないところに隠しておきたいのが人情なんだな。

こういうことを思うのは、僕自身、患者に鉄剤を使って、失敗したことがあるから。
もちろん、うまくいったこともあるが、鉄剤に反応しない症例も確かにある。この違いは何なのか。
失敗症例は誰しも隠す。そこらへんのSNSに都合よく落ちていない。自分の失敗から考察し、文献を渉猟し、学んでいくしかない。

自分なりに勉強していくなかで一つ思ったのは、貧血の治療をいう先生方のなかに、ビタミンAに言及する先生がいないことだ。
ビタミンAは過剰摂取の害が言われすぎて、その有効性(および必須性)が軽視されているようだ。
最初期に発見されアルファベットの一番最初の文字を与えられたビタミンでありながら、大きな盲点になっているのではないか。

『ビタミンA欠乏性貧血~疫学と病因』
https://www.nature.com/articles/1601320
ビタミンA欠乏によって貧血が起こることは認められているが、「ビタミンA欠乏性貧血」とはっきり言えるほどの明確な臨床的特徴なり定義なりがあるわけではない。
ビタミンA欠乏が貧血に関与する機序には複数ある。ビタミンAは、赤血球の前駆細胞の成長と分化を促進する。
また、感染に対する免疫力を高める。これによって、感染に起因する貧血を減らすことができる。さらに、各組織に貯蔵されている鉄の可動性を高めるのもビタミンAの働きである。
疫学調査では、貧血の頻度が高い地域ほど、ビタミンA欠乏が多いということが示されており、また、ビタミンAの改善によって、貧血が減少することも示されている。

すでに19世紀には、夜盲と貧血の関係が指摘されていた(Nozeran, 1865; Parinaud, 1881; Saltini, 1881; Lecoeuvre, 1896)。
こういう患者に対して、当時の医者はタラの肝油(ビタミンAおよびDの豊富な供給源)を処方して、患者の治療にあたっていたものである(Thompson, 1855; Greene, 1877; McArdle, 1896)。
20世紀初期になると、動物実験およびヒトの研究によって、ビタミンA欠乏によって、赤血球産生および鉄代謝に異常が起こることが示された。
ビタミンAの欠乏したラットでは、骨髄のゼラチン質の変性が起こっており(Findlay & Mackenzie, 1922) 、骨髄での造血細胞が減少していた (Wolbach & Howe, 1925)。
ビタミンA欠乏の小児の死後解剖で、肝臓および脾臓に血鉄症(ヘモジデローシス)が確認された(Blackfan & Wolbach, 1933)。
つまり、貧血とは、鉄の不足ではなく、ビタミンA不足に起因する鉄の利用障害ということが示唆された。

1920年代には、感染症への罹患率と小児の死亡率の間には、ビタミンA欠乏が関与していることが指摘され(Bloch, 1924)、事実、ビタミンAの投与により小児の死亡率が低下した(Blegvad, 1924)。
1924年、Widmarkが以下のように指摘している。「眼球乾燥症は、ビタミンAが欠乏した人にはるかに多い。ビタミンA欠乏によって、感染症への抵抗力が落ちていることが原因だ」
1920年から1940年まで、小児の死亡率を下げるために少なくとも30の臨床治験が行われ、ビタミンAの「抗感染症ビタミン」としての有効性の評価はゆるぎないものとなった。
この間、ビタミンAによるヘモグロビン濃度の改善や貧血の減少が示された(Berglund et al, 1929; Abbott et al, 1939)。

これ、すべて戦前の話なんだよね。
僕らの祖父母世代の医者のほうが、貧血の背景にはビタミンAがあることをしっかり認識していたっていう。
タラの肝油を処方された百年前の患者のほうが、現代の患者より不幸だったと誰が言えようか。
プライス博士の主要な仕事も皆、1930年代になされたものだ。脂溶性ビタミンの研究は戦前がピークだったんじゃないかな。
時代が進むにつれて、知識も進歩していくと僕らは思っている。
でもそうじゃない。
知識は、退歩する。
実際、貧血治療でビタミンA投与を考える医者を、少なくとも僕は知らない。

「貧血とは、鉄の不足ではなく、ビタミンA不足に起因する鉄の利用障害である」。
これは非常に興味深い指摘で、追及する価値がある。
鉄剤を投与してそれで万事オッケー、心身ともに回復したという患者は、本当に単純に鉄不足だったということだろう。
しかし、そういう簡単な患者ばかりじゃない。
ビタミンA不足のせいで鉄を使えない患者に鉄剤を投与しては、ヘモジデローシスに拍車をかける。余剰な鉄は活性酸素をまき散らし、生体に様々な悪影響を与える。
フェリチンの上昇が回復の目安?とんでもない。こういう人にとっては、炎症の目安以外の何物でもない。
治療になっていない。はっきりいうと、加害行為だ。
僕は、失敗した患者に、それをやっていたわけだ。
よかれと思ってした治療が、むしろ患者に不利益を与えたかと思うと、なんともやりきれない。
「もう一回チャンスを」と思う。でもそういう患者は、二度と来ない。
苦い経験を教訓にして、次の患者で同じ失敗をしないように、生かしていくしかないんだよなぁ。

ビタミンK2、骨、筋肉

2019.6.2

骨を強くするにはどうすればいいか。
カルシウムを摂る?
そう、かつてはそう言われていた。カルシウムは骨に欠かせないミネラルだから、積極的に摂取して骨を強くしましょう、と。
しかし、カルシウムの摂取量が多い地域(フィンランドやスウェーデン)では骨粗鬆症の発症率が高いという疫学研究が出たことで、『カルシウム善玉説』が崩れ始めた。
学者の間で激しい議論が交わされた。「なるほど、カルシウムの単独摂取では骨にむしろ悪影響が出るかもしれない。しかしビタミンDとの併用で、健康効果が高まるのではないか」
カルシウムの摂取量だけではなく、ビタミンDサプリの使用の有無も含めた疫学研究が行われた。結果は衝撃的だった。
骨粗鬆症予防のためにカルシウムのサプリを摂っている女性では、そうでない女性に比べて、動脈硬化が進行しているリスクが高く、また、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高かった。ビタミンD摂取の有無はこの相関と無関係だった。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21505219
骨のためによかれと思って摂取したカルシウムのせいで、心筋梗塞や脳卒中になってしまっては困る。
なぜこんなことになったのか。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進する。しかし血中のカルシウム濃度が上がったところで、それが肝心の骨に届いてくれなかったら、意味がない。それどころか、カルシウムが動脈や皮膚などの軟組織に沈着しては、無益どころか有害だ。
血中に増加したカルシウムを、いかに骨に届けるか。そのカギこそ、ビタミンK2だ。
カルシウムとビタミンD3だけでは逆効果だったが、そこにビタミンK2が加わることで、骨密度が上昇する。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3154347/
D3とK2は車の両輪だ。併せて摂るようにしよう。

他に骨を強くする方法は?
当然、運動も効果的だ。体を動かすことによる機械的刺激が、骨を強くする。
逆の場合を考えてみるといい。
老人が寝たきりになると、骨量の減少が急速に進むことはよく知られている。これは若い人でも同じだ。
宇宙飛行士を対象にした研究がある。宇宙に滞在する1ヶ月あたり平均1〜2%の骨量の減少があり、特に下半身(腰椎、脚)での減少が著しかった。逆に、血中のカルシウム濃度が増加していた。これは腎結石のリスク因子でもある。
https://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2001/ast01oct_1

ストロンチウムのサプリメントもいい。
ストロンチウムと聞けば、放射性物質をイメージする人が多いだろう。確かに、ストロンチウム89や90は放射性物質だが、クエン酸ストロンチウム(サプリとして普通に売っている)やラネル酸ストロンチウム(骨粗鬆症治療薬)は放射性物質ではない。
周期表を見ればわかるように、ストロンチウムはマグネシウムやカルシウムと同じ第2族元素だ。
同族元素は性質が似ているもので、ストロンチウムも、マグネシウムやカルシウム同様、骨に取り込まれ、その強度を保つ役割を果たしている。
骨形成(類骨形成)の促進、骨吸収の抑制(破骨細胞の成熟遅延)といった作用が示されている。

何か新しいサプリメントを患者に勧めるとき、僕自身が自分で試してみることにしている。
ビタミンK2とストロンチウムのサプリを飲み始めたのが同じ時期だったせいで、どっちの効果かはわからないんだけど、筋トレの効果が高まった実感があった。
僕はこの一年ほど、ほぼ毎日ジムで筋トレをしている。
2ヶ月ほど前にビタミンK2とストロンチウムのサプリを飲みだして以後、明らかに筋肉のつきかたが向上した。パンプアップしたときの筋肉の張りが大きくなった。
rep数も上がった。以前は10回で限界だったのが、あっさり12回できるようになったりして、自分でも驚いた。
「なぜだろう。なぜこんなに筋力が上がったのか。最近始めたこととしては、ビタミンK2とストロンチウムしか考えられない」
そこで、これらの栄養素に筋力増強作用があるか、論文検索してみた。
ビンゴ!
予想通りだった。ビタミンK2、ストロンチウム、どちらにも筋力増強作用がある。
『ビタミンK2は牛の骨格筋の細胞の増殖および移動を促進する』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5884547/
『卵巣切除ラットの筋肉および椎骨に対するラネル酸ストロンチウムの効果』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29242963
どちらも人を相手にしたものではないけど、非常に示唆的な研究で、人で成り立つ可能性は十分あるだろう。
骨粗鬆症の人がビタミンK2を飲み始めると骨折の発生率が下がることがわかっている。これはビタミンK2による骨密度の強化によるものだと研究者は考えているけど、別の機序として、ビタミンK2によって筋力がついて、結果、転倒リスクが軽減すると同時に骨折も減った、という可能性もあるんじゃないかな。
骨粗鬆症とサルコペニア(筋減少症)はしばしば合併することが知られている。骨の減少と筋肉の減少に相関があるということは、興味深い。理学療法士は、筋トレは「骨トレ」でもあるということを、経験的に感じていると思う。
そもそも、発生を考えれば、骨、筋肉、関節は皆、中胚葉由来。要するに、共通のご先祖様を持つ親戚同士なんだ。骨にいいものは筋肉にもいい、筋肉にいいものは関節にもいい、というのは発生学的に筋の通った類推だと思いませんか?

有機ゲルマニウムと脳障害

2019.6.1

ある薬剤の効果を評価するときには、ダブルブラインドの無作為化比較試験(RCT)をやって、有意差が出せれば一番いい。
エビデンスレベルが高いことが何よりの強みで、薬剤を売り出す際にも、大きなセールスポイントになるだろう。
しかしこの試験の欠点は、手間(金、時間など)がかかることだ。
製薬会社がバックにいれば、豊富な資金力によって、そうした問題はクリアできるだろう。
しかし、たとえばサプリを売り込みたい中小企業にとって、わざわざRCTを行うのはかなり大変なことだ。
in vitro(試験管)での研究や動物相手の研究は比較的簡単にできても、人間相手の研究は何かと倫理的な配慮が必要だし、制約も多い。
そういう面もあって、実は有機ゲルマニウムを使ったRCTはそれほど多くは行われていない。

癌、膠原病、関節痛、高血圧、うつ病など、有機ゲルマニウムの有効性が示唆されている疾病や症状は、多くが症例報告に基づくものだ。
症例報告というのは、無意味では決してないけど、エビデンスレベルとしては一段格下に見られちゃうんだな。
しかし有機ゲルマニウムで癌のRCTをやろうと思ったら、大変なことだ。まず、患者を集め、同意をとらないといけない。
「有機ゲルマニウムは癌に有効だと言われています。参加者の半数に有機ゲルマニウムを、もう半数にはプラセボ(ニセモノの薬)を投与して、有効性を確認させてください」
皆さんが癌患者だったとして、こんな誘いに乗りますか?
「私がそれに参加したとして、自分がちゃんと有機ゲルマニウムを飲ませてもらえるのか、プラセボを飲まされるのか、わからないってことですよね?
私、癌なんですよ。癌が日に日に大きくなったり転移したり、徐々に死に近づいていく病気です。
本物を飲んでいたならまだしも、ニセモノを飲んでて悪化して手遅れになりました、となれば、その責任はどうとってくれるんですか?」
こんなふうに言われたら、患者に強く参加を強いることなんてできない。
患者は実験動物じゃない。尊厳を持った人間だ。だからこそ、RCTを行うことには、困難が伴う。

それでも、有機ゲルマニウムに関して、こんな研究報告がある。
(背景)
横浜市立大学名誉教授の梅沢先生は「のうけん療育会」を主催し、そこの会員(脳障害児)に、ドーマン訓練法による治療を行っていた。
これはパターニング、マスキング、でんぐり返りなどを主体とし、そこに視覚、聴覚、触覚などの知覚面での刺激訓練から構成されている。
たまたま浅井ゲルマニウムGe-132の存在を知り、ある小児に投与したところ、難治性の脳障害が劇的に回復したのを見て、先生は感服した。
「ドーマン訓練法は末梢的後遺症状にのみ捕らわれていて、障害の根源である脳にはほとんど目を向けていない。そのせいでほとんど効果のない障害児も多い。
しかし、Ge-132はその生理的な作用により、脳細胞に直接作用しているようだ。これは多くの患者の希望になるに違いない」
先生はそう確信し、RCTの実施を思い立った。
しかし、同意をとるのは困難だった。
「のうけん療育会」の会員は、もともとドーマン訓練法に回復への希望を持って入会してきた子供たちなので、Ge-132の有効性を確認するために、一時的にドーマン訓練法を中止してもらうわけにはいかなかった。
半数に実薬を、半数にプラセボを、ということは、さらにできなかった。ドーマン訓練法、Ge-132投与を併用せざるを得ず、しかも患児の両親の承諾を得なければならなかった。
こんな具合に、臨床で厳密なRCTを行うことはとても難しいことだ。
(研究対象)
本会会員1歳から10歳までの脳障害児95人
(研究方法)
脳障害児とひとくちにいっても、その障害の程度および部位によって、その呈する症状は様々であり、しかもその症状がまったく同じ患者は一人としていない。
そこで、症状を以下の4群に大別した。
中枢性運動機能障害(Cp)、てんかん症候群(Ep)、知恵遅れ群(MR)、自閉症群(Aut)
(Ge-132の投与方法)
顆粒およびカプセルの内服。
投与量は児の年齢、体重、症状によって一様ではないが、おおよそ体重1kgあたり20から30mgを1日三回に分けて、食前または食間に服用。
(評価方法)
一般状態への影響として、食欲、睡眠、便通、寝起を、精神機能への影響として、意欲(積極性、自己主張)、集中力、記憶力および表情を取り上げた。
その影響の有無の判定は、両親の観察・判断に基づいて行った。大いに改善(++;3~4点)、改善(+;1~2点)、変化なし(±)、悪化(-)とした。
また、ドーマン・デラカトの成長プロフィールにより、頭脳年齢/暦年齢=成長率を評価した。
この値が1以上ならば普通児あるいは優良児であり、1以下の場合は脳障害児あるいは脳神経発育不良児である。
(結果)
研究対象95例中、Ge-132投与および訓練期間が12カ月未満のものを除いた67症例(その内訳は、Cp群28例、Ep群11例、MR群14例、Aut群14例)を評価した。
Ge投与によって、2,3の症例を除いたすべての例において、一般状態および精神機能面での向上が認められた。特にMRおよびAut群でこの傾向が著しかった。
(考察)
まず、Ge-132の投与により、患児らの健康増進効果が示された。ほとんどの症例において、食欲、睡眠、便通および寝起で改善が認められた。
その査証として、ほとんどの児がGe-132服用以後風邪をひかなくなったり、ひいたとしても発熱が低く、罹患期間が短くかつ元気であるといった点など、母親が等しく認めている。
次に、記憶力の増強、表情の豊かさ、意欲、集中力の増強といった精神機能面での向上が認められた。なかでも意欲の高揚は感覚、運動といった脳神経機能面の発達に大きな影響を与える。
具体的な症例を供覧しよう。
第1例
(M.T)男児。診断はCp、推定原因は1400gの未熟児。ドーマン訓練法を施行すると同時にGe-132を1年間、総量324gを服用した。
初診時(暦齢86カ月)の成長率は60%で終診時(98カ月)のそれは85%。Ge服用後は精神機能の発達がめざましく、集中力が高まり、算数の勉強やピアノの練習などそれぞれ1時間くらい続けてやるようになった。
たまたま一時Geの服用を中止したところ、その途端に算数やピアノをなまけるようになった。あわててGeの服用を再開すると、また熱心に取り組むようになった。
第2例
(T.K)男児。診断はMR、推定原因は不明。Ge服用量は二年間で525g。初診時の暦齢は93カ月、成長率値81%、終診時の暦齢は117カ月、成長率は87%。母親によると、Ge服用により表情、気力が全く変わったという。
第3例
(A.M)女児。診断はMR、推定原因は仮死。初診時(67カ月)の成長率値は53%、終診時(103カ月)の成長率値は92%。Ge服用量は306gである。
Ge服用後の精神面の進歩発達は顕著で、何でも一人でやるようになった。しかしGe服用を中止すると、体の調子が悪く気力も衰えるが、再び服用すると途端に回復した。
第4例
(S.T)男児。診断はCp(アテトーゼ)、推定原因は母児血液型不適合。Ge服用量は2年間で72g。Ge服用後、風邪をひきにくくなり、熟睡するようになった。また、睡眠時間が短くても済むようになった。
便秘がなくなり、食欲が極めて良好となった。アテトーゼが軽減し、手の機能が改善した。しかしGe服用を忘れるとアテトーゼが増強した。なおアテトーゼの軽減はこれまで一度も見られなかったことである。
書字が正確になり、漢字などの細かい字も書けるようになった。長年ドーマン訓練法をやってきてもこうした変化は見られなかったことである。
また食事もほとんど自分ひとりでできるようになった。足の運びも大幅に改善した。
言語、構音がよくなり、発音が聞き取りやすくなった。かなり長い文章を話せるようになり、学校でも進んで発言するようになった。
理解力、記憶力がよくなり、記憶力のよさは周囲も驚くほどである。学校での成績は体育を除いて優秀で、クラス委員に選ばれるようにさえなった。

すばらしい報告だと思う。
一応、世の中的には、エビデンスレベルとして、RCT>症例報告、ということになっている。
しかし、大手製薬会社の降圧薬の有効性が不正に改ざんされていたことがニュースになったように、RCTで有効と認められたからといって、それが間違いないかといったら、全然そんなことない。むしろ、n数は少なくても、上記のような報告のほうがはるかに信頼できるんじゃないかな。
上記報告は、母親が観察した子供の変化に基づいている。こんなのは正式な論文としては、ほとんど相手にされない可能性がある。「客観性として、まったく科学の体をなしていない」と。しかし、母親ほど子供の変化に敏感な存在はいないというのも、また事実だろう。

自閉症、知的障害などは、一般には回復困難とされている。しかし上記の報告は、有機ゲルマニウムの服用によって、劇的に回復したことを示している。
患者を子供に持つ親御さんにとって、回復への希望がないよりもあるほうが絶対にいい。
一般の製薬会社の薬と違って別段の副作用もないのだから、有機ゲルマニウムを試してみないのは損だと思う。

ちなみに、特に脳障害のない普通児が飲んでも知的発育に好ましい効果がある。
・ぜんそくにいいから、ということで有機ゲルマニウムを飲み始めた14歳男子。思いがけず、急に数学の成績がよくなった。あまりにも急激によくなったせいで、教師からカンニングを疑われた。
・健康にいいらしい、ということで有機ゲルマニウムを飲み始めた中年男性。囲碁が趣味だったが、手が深く読めるようになった。まったく期待していない効果だった。
こういう例が浅井一彦著『ゲルマニウムと私』に出てくる。
生徒に有機ゲルマニウムの服用を勧め、多くの生徒を大学合格に導いた井藤正勝さんという河合塾の講師もいる。
成績が伸び悩んでる受験生が飲んでも、おまじない以上の効果が期待できるはずだ。

有機ゲルマニウムと慢性疲労

2019.5.31

俗にキス病(kissing disease)という病気がある。
「うちの上司だよ。酔っ払うと誰彼かまわず、チューしまくるんだ」
いや、それは単なるキス魔であって、キス病ではありません^^;

たとえば大学生になって初めて異性とお付き合いを始める。若い二人だから、自然な流れとして、キスなんかもするようになる。それも唇が触れ合うだけの軽いのではなくて、舌の接触を伴うような「濃ゆーい」のをするようになったり。
医学的にはこれはなかなかの事態だ。
唾液中にはアミラーゼなどの消化酵素やリゾチーム、ラクトフェリンなど抗菌作用のある有機物もあれば、口腔内細菌、ウィルスなども含まれている。
いいもの悪いもののごちゃ混ぜになった唾液が、口腔粘膜の濃厚接触を通じて、双方の体内に流れ込むわけだ。
しかしほとんどの場合、何も問題は起こらない。
健康な性欲を備えた健康な若い男女は、健康な免疫をも備えているものだから、多少の異物が体内に侵入しても病気にはならない。
しかし、「初めてのチュー」の後、明らかに体調を崩す人がいる。最初は風邪かな、と思う。ところが1週間経っても熱が下がらない。ひどい倦怠感があって、のどやリンパ節がずいぶん腫れている。素人目にも明らかにおかしい。そこで病院に行く。
テキトーな医者(ほとんどの医者がこれ)に当たれば、「風邪ですね」で終わり。PL顆粒あたりを出してお茶をにごす。
ヤブ医者ならご愁傷さま。抗生剤が出て、ムダに腸内細菌が損なわれる。治療どころか、今後ますます病気にかかりやすくなるだろう。
しかし、有能な医者に当たればどうなるか。細かく問診して、患者が最近初めて異性と付き合い始めたことを突き止める。そして、伝染性単核球症と正しい診断を下す。

そう、「初めてのチュー後の長引く発熱」を見れば、EBV(エプシュタイン・バール・ウィルス)感染による伝染性単核球症を疑う。
9割の人は思春期までにEBVに不顕性感染して、抗体を持っている。
しかし幸か不幸か、感染せずに思春期を迎えた人は、せっかくできた恋人との甘いキスで、苦い思いを味わうことになるかもしれない。
つらい大人の洗礼だが、普通は自然軽快する。ただの風邪と誤診されようが名医が伝染性単核球症と正しく診断しようが、治療法は特にない。妙な薬を飲まず、安静にしていることが一番の治療だ。
しかし、なかには症状が重症化する人がいる。慢性疲労症候群やうつ病になって、延々取れない疲れに悩まされることになるのはまだマシなほうで、肺炎や肝脾腫、さらには多臓器不全や悪性腫瘍によって死亡するケースさえあるという。
初めてのチューが原因で死ぬなんて、すごい話だな。

一般的には打つ手なしとされているEBV感染症だが、有機ゲルマニウムによって治癒する可能性がある。
『慢性エプシュタイン・バール・ウィルス症候群(CEBVS)における有機ゲルマニウムの使用』
http://orthomolecular.org/library/jom/1988/pdf/1988-v03n01-p029.pdf

CEBVSの症状で苦しむアメリカ人は数百万人にのぼると見られる。本症は疲労が主な症状であり、EBVだけが唯一の原因だと確証されていないこともあって、慢性疲労症候群と呼ばれていることも多い。
CEBVS患者に対して有機ゲルマニウム(Ge-132)が効いたという初めての報告は1987年である。1日500mgを舌下に複数回投与すると、疲労およびうつが改善したという。
その後の研究で、Ge-132に対する反応は、大きな個人差があることがわかった。患者の半数近くは、1日使用量を1gまで増やしても、慢性疲労がほとんど軽快しなかった。しかし、半数の患者では確かに改善した。ただし、改善するのに必要なGe-132の量は、やはり個人差が大きかった。はっきりとした改善を自覚するためには1日1000mgの摂取を必要とする患者もいた。Ge-132を服用したCEBV患者の少なくとも20%が、劇的な改善を維持していた。
CEBVSに罹患し1年半症状に苦しむ医師がいたが、彼はGe-132によって劇的に改善し、いまや彼自身がこのサプリメントの熱烈なファンになって、疲労やうつに苛まれる患者にこれを勧めている。
1日300mgのGe-132によりCEBVS患者の約25%が著明に改善した、と報告する医師もいる。
CEBVS患者に対して栄養療法を行う医師が、Ge-132を治療に取り入れたところ、これによって著明に改善した患者もいたが、反応に乏しい患者もいた。1日150から300mgのGe-132によって、大半の患者ではCEBVSの症状が軽快したが、改善するまでにさらに高用量(多いと1日1gも)が必要な患者もいた。患者のうち25%はノン・レスポンダー、つまり、Ge-132をどれだけ投与しても何の効果も示さなかった。
Ge-132は他の栄養素と相乗的に働くのではないか、一部の患者でまったく効果がなかったのはGe-132が協調して作用するべき他の栄養素が不足していたためではないか。この推測にもとづいて、様々なサプリメントと組合わせて投与して、その効果を検討した。
その結果、Ge-132をコエンザイムQ10、DMG(ジメチルグリシン)と組合わせて投与することで、ほとんど全ての患者で改善することがわかった。改善するには非常に高用量のGe-132を必要とした患者も、コエンザイムQ10とDMGを併用するともっと少ないGe-132で有効性が見られた。
Ge-132はどのように作用を発揮しているのか。動物実験では、Ge-132の投与によって、インターフェロンの産生が高まることが明らかになっている。これが患者の免疫系に好ましい影響を与えていると考えられる。

何をやっても疲れがとれない、というのはうつ病患者にありがちな主訴だ。
背景に、EBV感染があるかもしれない。さらにその背景には、栄養バランスの偏りによる免疫系の弱体化があるかもしれない。
そういう人は、まずは有機ゲルマニウムを試してみて、それでダメならその他の栄養素(コエンザイムQ10、DMGなど)を追加するのも手だろう。

有機ゲルマニウム2

2019.5.30

「有機ゲルマニウムの作用の一つとして、抗酸化作用が言われますが、実は有機ゲルマニウムそれ自身にはin vitroで抗酸化作用はありません。
抗酸化物質の誘導作用がある、というのが正確な表現です。
有機ゲルマニウムの摂取によって、体内でビリルビンやウロビリノーゲンが増加しますが、抗酸化作用はこれらの物質によるものです。
ビリルビンはビリベルジンが酵素的に還元されて生成されますが、この還元にはATP (エネルギー)が使われています。わざわざそれだけの手間をかけているのは、抗酸化力を高めるためだと考えられています。
実際、ビリルビンの抗酸化作用は強力で、フリーラジカルの消去能でいえば、αトコフェロール(ビタミンE)やβカロテン(ビタミンA)をはるかに上回るほどです。
実験動物で四塩化炭素を経口投与すると活性酸素が発生して肝障害が起こりますが、有機ゲルマニウムを投与すると肝数値(AST、ALT)の上昇が抑えられることを確認しました。

同様に、免疫の活性化、抗炎症作用、解毒作用についても、有機ゲルマニウムが直接の作用を及ぼしているわけではありません。
免疫については、有機ゲルマニウムは白血球のトール様レセプター(TLR)の抗原認識を高める作用があって、結果、インターフェロン産生が高まり、抗癌作用などが発揮されます。
抗炎症作用については複数の機序があるのですが、まず、有機ゲルマニウムの摂取によって赤血球の代謝亢進が促され、ヘムが増加します。ヘムは肝臓で分解されるときにCO(一酸化炭素)を放出します。そのCOに強い抗炎症作用があります。
また、有機ゲルマニウムを摂取すると、抗炎症作用のあるプロトポルフィリンが増加します。
これは動物ではヘムになる一歩手前の前駆体です。プロトポルフィリンの環状構造の真ん中に鉄が挿入されると、ヘムになります。植物では、中央に鉄ではなくマグネシウムが挿入されてクロロフィルになります。つまり、ポルフィリンは動物にとっても植物にとっても重要な分子ですが、その産生が増加するわけです。
先ほど触れましたプロパゲルマニウムは慢性肝炎の治療薬ですが、COによる肝血流の増大とプロトポルフィリンによる抗炎症作用が薬効の本態だと考えられます。
動物実験でも、肉芽腫の抑制、胸腺重量減少の抑制、体重増加の抑制、抗リウマチ作用など、炎症由来の症状への効果を確認しています。
アミロイドーシスや白内障といった老化に伴う病態に対しても、アミロイド沈着の抑制や白内障の進行抑制作用が示されています。
さらに、骨代謝調節作用があって、過剰な骨吸収の抑制と骨芽細胞の分化促進作用があります。つまり、骨粗鬆症に対しても効果があると考えられます。

なぜ、こんなにも多様な作用があるのでしょうか。
それは、有機ゲルマニウムが、体の不調和を整える司令塔としての役割を果たしているからだと思われます。司令塔とはいっても、有機ゲルマニウム自体があちこちにしゃしゃり出るのではありません。カナメとなるメディエーターに働きかけ、様々な作用を誘導します。
有機ゲルマニウムは、ワンマンスタイルのスタープレイヤーなのではなく、ちょっと引いたところから全体を俯瞰している監督のようなイメージでしょうか。要所要所で各選手を鼓舞し、いいところを引き出し、活躍させる、といった感じです。
有機ゲルマニウムの毒性の低さ、つまり、安全性の高さは、ここに理由があるのではないかと考えています。
自らは抗酸化性も持たず、反応性にも乏しいが、有用物質を誘導することで、生体本来の健康維持機能を引き出しています。優れた教師や監督は、自らでしゃばらず、「ただ示唆し、導く」ものですが、有機ゲルマニウムのふるまいは、まさにそれに近いと感じます。

今、我々が研究しているのは、有機ゲルマニウムの鎮痛作用です。
特に、ATPを介した痛み刺激に対して、有機ゲルマニウムが著効するメカニズムについて、研究しています。
ATPというのは、ご存知のように、生体内でエネルギー通貨の役割をしますが、通常は細胞内に存在します。しかし細胞が壊れると、血中に漏出します。
実はATPは炎症源であり、発痛物質でもあります。細胞が壊れるという現象は、体にとって異常事態なわけですから、ATPにこうした催炎症性の性質があることは、生理にかなったことだと言えます。
この炎症が生体に様々は反応を引き起こします。
たとえば炎症を察知した白血球が現場に向かって組織の修復を行ったり、炎症により神経細胞が痛みを感じたり。そして有機ゲルマニウムには、鎮痛作用があります。痛みの伝達経路に作用して、痛みを緩和します。
経口摂取でも作用を発揮しますが、興味深いことに、経皮的にも効果があります。しかもこの作用は即効性です。虫歯の痛みに塗布してもいいでしょうし、湿布としてやけどなどの患部に貼付することも可能だと思われます。
ただ当社としては、そうした医薬品としての応用よりは、化粧品に配合するなど、誰でも使える形での普及を考えています。
実際、当社の有機ゲルマニウム入りの化粧品は、多くの女性からご好評を頂いています」

有機ゲルマニウムは、もはや、僕の臨床には欠かせない存在になっている。
単剤で使うことはあまりないが、他のビタミンとの併用で非常に大きな効果を上げている。
多様な症状に作用し、しかもナイアシンによるホットフラッシュのような副作用がなく、使いやすい。このあたりが、ビタミンCによく似ていると思う。
あえていえば、値段がちょっとお高いのが難かな^^;でもそれだけの価値は十分にあると思う。

すでに臨床で効果を実感していたが、改めて有機ゲルマニウムのプロフェッショナル(それも生半可に詳しい程度ではなく、世界一詳しい現役研究者)に直接話を聞いて、理解が深まった。
中村さんから頂いたパンフレットによると、有機ゲルマニウムを脳障害児95人に投与した研究があって、先天的なもので決して治らないと思われている症状(IQ低値、自閉症など)に対しても著効したという。
子供でも安心して使えるぐらいだから、大人が日常の健康維持に使う分にも、何ら問題ないだろう。
興味のある方は一度試してみてください。