2019.12.3
笑いとは何か、ということについて、ベルクソンやら桂枝雀やら、いろいろな人が分析している。
様々な笑いを分析して、共通する要素を抽出して、笑いを生み出す法則を見出したとしても、それで無敵のお笑い芸人になれるかというと、そんなことないと思う。
「笑いとは、緊張と緩和である」と枝雀がいう。これは極意かもしれない。でもこれを知ったところで、別にギャグセンスが備わるわけではない。こういう法則を知らなくても、おもしろい芸人はおもしろい。
笑いとは何かについて一番真剣に考えているのは、笑いを生み出す芸人よりは、お笑い番組を作る放送作家かもしれない。
高須光聖のTEDを見て、なるほど、と思った。
「笑いとは、共感と意外性である」というのがこの人の答え。
モノマネを見れば、確かに笑う。みなさんの同級生にもいたでしょう、モノマネのうまい人。級友や先生のモノマネをして、みんなを笑わせる。なぜおもしろいんだろう。不思議だ。
「それは彼のモノマネのなかに、共感する要素があるから。しかし似すぎているモノマネは、あんまりおもしろくない。似すぎたら、もはや、その人だから」
コージー富田のモノマネなんか見てると、確かにそう思う。うまいだけでは、別に笑えない。意外性の部分で笑っていると思う。
『エアトレイン佐藤卓夫の電車ものまね』
この動画を見て、笑うというより感心してしまった。
うますぎる芸は、強い共感を呼ぶ。でも意外性が消えてしまって、それで笑いも消えてしまうのかな。
別の動画で、この人、大阪の御堂筋線を完コピしてるんだけど、こっちは声出して笑った。車内アナウンス広告までマネしてて「そこまでマネるの?」っていう意外性があったからかもしれない。中川家礼二も爆笑してた。
純粋に技術だけでいえば、この人は礼二を超えている。礼二は車掌モノマネだけだから。
でも笑わせるのがうまいのは礼二のほうで、そこはさすが芸人だなと思う。
『高齢者のうつ病、認知、睡眠に対する笑い療法の効果』
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1447-0594.2010.00680.x
【目的】
高齢者のうつ病、認知機能、生活の質(QOL)、睡眠に対する笑い療法の効果を調べること。
【方法】
2007年7月から9月にかけて、65歳以上の109人の被験者を二つのグループに分けた。
48人は笑い療法群に、61人は対照群とした。
笑い療法群では、一か月に4回以上笑い療法を受けた。二群について、笑い療法の前後で、老年期うつ病評価尺度(GDS)、ミニ・メンタル・ステート検査(MMSE)、 Short‐Form健康調査‐36 (SF‐36)、 不眠症重篤度指数 (ISI)、ピッツバーグ睡眠の質指数(PSQI)を使ってどのように変化するかを比較した。
【結果】
ベースラインにおいて、二群の間に有意差はなかった。笑い療法の前には、笑い療法群、対照群でそれぞれ、GDSスコアは、7.98 ± 3.58 、 8.08 ± 3.96、MMSEのスコアは 23.81 ± 3.90、 22.74 ± 4.00、SF36のスコアは、54.77 ± 17.63 、52.54 ± 21.31、ISIのスコアは、8.00 ± 6.29 、8.36 ± 6.38、PSQIのスコアは 6.98 ± 3.41、 7.38 ± 3.70だったが、笑い療法実施後には、それぞれ、GDSスコアは 6.94 ± 3.19 (P = 0.027) 、8.43 ± 3.44 (P = 0.422)、MMSEスコアは24.63 ± 3.53 (P = 0.168) 、23.70 ± 3.85 (P = 0.068)、SF‐36のスコアは、52.24 ± 17.63 (P = 0.347)、50.32 ± 19.66 (P = 0.392)、ISIのスコアは 7.58 ± 5.38 (P = 0.327) 、9.31 ± 6.35 (P = 0.019)、PSQIのスコアは6.04 ± 2.35 (P = 0.019)、 7.30 ± 3.74 (P = 0.847) だった。
【結論】
笑い療法は、高齢者のうつ病、不眠症、睡眠の質改善に有効であり、安上がりで、しかもすぐ使える方法である。
健康を保つためには、栄養とか食事改善はもちろん大事だけど、一番安上がりで一番有効な健康法は、笑うという、ただそれだけのことだったりする。
高齢になるにつれ、人間は笑わなくなるというから、無理にでも笑うようにするといい。笑えないことばかりある世の中かもしれないけれど。
しかし、赤ちゃんの笑顔というのは不思議だ。あの笑いは、共感でも意外性でもないと思う。
生きて、ただこの世界にいるという、それだけで幸せが満ちあふれて、笑っている。
成長するにつれて、そういう笑顔は忘れちゃうんだよなぁ。
2019.12.3
アメリカのドラマ『セックス アンド ザ シティ』の一場面。
DHEAのサプリを愛用するサマンサが、友人と一緒にアブダビに旅行に行った。
入国のとき、カバンのなかをチェックされて、管理官にDHEAのサプリを見咎められた。「申し訳ありませんが、お薬の持ち込みはちょっと、、」

DHEAは彼女にとって更年期障害を抑え、かつ、若さを保つ秘密兵器なのだから、ここで取り上げられてはかなわない。「ただのヤムイモから抽出した天然のサプリよ。薬っていう大げさなものじゃないわ」と頑張った。

しかし抵抗むなしく、没収となった。
上記のエピソードのなかに、DHEAという栄養素の何たるかが、ほとんど説明されている。
DHEA(dehydroepiandrosterone;デヒドロエピアンドロステロン)はコレステロールから産生されるホルモンの一種で、ここから男性ホルモンや女性ホルモンが作られる。つまり、性ホルモンを作るための前駆体だ。
以下のカスケードを供覧あれ。

左下の紫のところに、DHEAがあって、これが様々な酵素で代謝され、男性ホルモンや女性ホルモンになる。
コレステロールを出発点とした重要な中間代謝物だとわかるだろう。
セリフにあるように、DHEAのサプリはヤムイモを原料にして作られているから、大きな副作用もない。男女とも、加齢によってホルモン分泌が低下している人にとって、心強い味方になる。
サマンサはこのサプリに大いにハマっていて、朝食後の内服はもちろん、外用でDHEA入りのクリームまで使っている。
「私は今52歳だけど、あなたが50歳になる頃には、私は35歳くらいに見えるはずよ」と友人にも勧めたりする。
“若さの泉”たるサプリを没収された彼女。宿泊先のホテルのプールで、筋肉質のイケてる男たちを見た。不思議なことに、何も感じない。いつもの彼女なら、ムラムラと性的な欲求がうずくはずなのに。
性欲は男性ホルモン(テストステロン)のなせるわざである。DHEAの供給が断たれた彼女は、急速に”枯れて”しまったのだった。
DHEAの性欲への影響については、このような論文がある。
『閉経後女性の性欲に対するデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の急性効果』
https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/152460902753645290
【背景】
デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の分泌は加齢に伴い低下することから、それを補充することで性機能を高めることができるかもしれない。
【方法】
DHEAの有効性を検証するため、性交可能な閉経後女性16人を被験者として、無作為化クロスオーバー二重盲検を行った。
被験者に実薬(DHEA 300 mg)あるいはプラセボを経口で飲ませ、その60分後にエロビデオを見せた。実験の前後で、血中DHEA硫酸塩(DHEAS)、主観的な生理的性反応、感情反応の変化を計測した。
【結果】
DHEASの血中濃度はDHEAを投与した女性16人全員で2~5倍増加していた。エロビデオを見たことで性欲がどうなったかについての主観的評価は、精神面、身体面の両方において、DHEA投与群が有意にスコアが高かった。さらに、DHEA投与群ではエロビデオを見ているときの幸福感が高かった。膣脈拍振幅(VPA)および膣血流量(VBV)が有意に増加していた。
【結論】
閉経後女性において、DHEAの投与によって性欲スコアが精神面、身体面の両方で有意に増加した。
上記のドラマではユーモラスに描かれていたけど、一般に女性の性欲低下は、本人にとって深刻かつ切実な悩みである。
パートナーが非常に盛んな男性で、しかし女性側がその要求に応じられない、となっては、大げさではなく「夫婦の危機」である。実際、性生活の不一致というのは、”婚姻を継続しがたい重大な事由”として裁判でも認められる。
オーソモレキュラー学会でDHEAについての講演を聞いたことがきっかけで、僕も自分の患者にDHEAをときどき勧めていた。
久しぶりにDHEAをネットで注文しようと思ったら、なんと、販売中止になっている。
去年11月に、厚労省から以下のようなお達しが出たためだ。
https://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000180687
「厚生労働省において、脳機能の向上等を標ぼうして海外で販売されている医薬品やサプリメント等の食品について調査した結果、医療用医薬品に使用されている成分を含んでいることを標ぼうしているものが多数認められました。薬物依存等に関する研究を行っている団体の専門家の意見や厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会における議論を踏まえて検討した結果、別添の成分は、医師の処方せん又は指示によらない個人の自己使用によって健康被害や乱用につながるおそれが高いと考えられます。
そのため、平成 31 年1月1日から、別添の成分を含む、海外で販売されている医薬品や食品等については、海外からの入国者が国内滞在中の自己の治療のために携帯して輸入する場合を除いて、数量に関わらず、あらかじめ薬監証明の交付を受けない限り、一般の個人による輸入は認めないこととするので、御了知願います。」
どういうことかわかりますか?
要するに、
「サプリというか、ほぼ薬だから、もう売り買いするなよ」ということだ。
DHEAはこの規約に引っかかって、もう扱えなくなってしまった。
まぁ仕方ないよね。実際、副作用なしによく効くから、なんというか、「下手な薬よりも薬」だと思う。
でもそういうことを言い出せば、たいていのサプリは一般の薬よりも優秀だけど^^;
DHEAが扱えないのは残念なことだけど、性欲を高める方法は他にもいろいろある。
たとえば、アダプトゲン(ロディオラ、アシュワガンダなど)については以前の院長ブログで書いたけど、他にもヨヒンベ、ダミアナ、ムイラプアマ、サルサパリラなど、優れたハーブがたくさんある。
最近は女性用バイアグラなんていうのもあるけど、そういうのよりはまず、副作用の少ないハーブから試すべきだろう。