ナカムラクリニック

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2019年11月

オスの生理1

2019.11.24

『生理をオープンに――大丸梅田店「生理バッジ」に批判も』という記事を読んだ。
なるほど、女性の月々のものが変にタブー視されているところは確かにあって、言われてみれば妙な話である。「体の自然なこと、それこそ生理現象なのだから、もっとオープンにできないか」そういう主張はわからなくもない。
しかしネット上では軽く炎上の様相を呈している。しかもこの「生理バッジ」を批判しているのは、当の女性のようだ。
大丸梅田店は僕もよく利用する。せっかくなので、この炎上の「出火元」に実際に行ってみた。

このマンガを見ると、大丸自身、批判は想定内のようで、ある種の炎上商法かもしれない。
しかしフロアスタッフの胸元を見たけど、僕の見た限り、誰も「生理中」のバッジはつけてなかったね^^

男と女は、同じ生き物のようでいて相当違うところがある。体も違えば、心も違うだろう。しかし少なくとも体の違いについては、解剖学、生理学などの学問がかなり解き明かしているところもある。
分かり合えないのが男女の常ではあるが、学問的知見が多少なりとも男女の摩擦解消に役立つのなら、知っておいて損はない。

個人的には、女性がわかっていないなと思うことのひとつとして、男性の”賢者タイム”を挙げたい。
仲睦まじくベッドの上でいたした後、まだ余韻の残る女が、男の股間を見て「まだ大きいね。もう一回、する?」なんて言いながら手を伸ばしてこようものなら、「おい、やめろ」と男がその手を冷たく払いのけたりする。
「さっきまであんなに激しく求めてくれたのに、、、」女は、男の打って変わった素っ気なさに拍子抜けする。

ありがちなすれ違いである。女性は、男性のこの豹変を理解しておいたほうがいい。
男性はオーガズムの後、性欲が急速に低下するもので、この状態は「賢者タイム」と呼ばれる。
この言葉はもちろんスラングで、医学的には不応期(male fractory period)という。
しかし個人的には、この正式な用語よりも「賢者タイム」のほうが実態をよく反映していて、しかもユーモアがあって、好きだな。
果てた後に、本来の理性的な自分が戻ってきて、それまでお世話になった風俗嬢に
「こんなはしたない仕事して」なんて急に説教を始める男もいたりする。

一体、この現象は何なのか?
理性をかなぐり捨てて感覚の世界に惑溺したかと思えば、夢から覚めたようにいつもの自分に戻る、この現象は?
男のこの矛盾を、科学はどのように説明しているのだろうか?

こんな研究がある。
若い男性被験者にいくつかの女性の写真を見せ、その魅力度を評価してもらう。その際、事前に女性の膣の匂いとよく似た化学物質(copulins)を嗅がせると、すべての女性の顔に対する評価が有意に上昇した。
https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1474704916643328
どういうことか、わかりますか?
普段は理性的な男性、つまり、女性の美醜を冷静に判断する男性が、copulins を嗅ぐことで、ある意味、”吹っ飛んだ”。豹変したことで、女性の魅力の差異がかすんだ。
いうなれば、この研究は、賢者タイムの逆の現象、”やる気スイッチ”の存在を示している。

女性の膣から分泌されるこのフェロモンcopulinsは、sがついて複数形になっているが、これはcopulinsが5種類の揮発性脂肪酸の混合物だからだ。
copulinsの分泌は卵胞期に増加し、黄体期に減少する。copulinsに曝露した男性は、テストステロンの分泌が亢進し、女性の顔の美醜に対する分別が低下し、さらに協調性が低下する。つまり、やる気スイッチが”オン”になるわけだ。
これは人間のみならず、哺乳類全般に見られる現象のようだ。哺乳類の繁殖において、オスのほうがメスよりもコストが低く、かつ、メリットが大きいことは、多くの理論が示しているところである(異形配偶子理論、性淘汰理論、親の投資理論)。つまり、オスにとっては、排卵する女性を見抜き、それに応じて行動を変化させることが、自身の繁殖機会を最大化する上でメリットがある、ということだ。

閉経後の女性では、膣からのイソ酪酸の分泌が減少することが知られている。繁殖期を終えたメスにとっては、繁殖よりは個体の存続が優先事項である。オスの繁殖行動を惹起するフェロモンが出て自分にアプローチされることはむしろ不都合だから、これは理屈にかなったことだ。

しかし、上記研究で使われた「女性の膣に似た匂いの物質」って一体何なんだ^^;
男性を引きつける女性用フェロモンとして商品化されているようだけど、本当に効果があるのなら、世の男性は警戒すべきだね^^;

レビューに「吐物のような匂い」とあるから、香水としてはイマイチのようだ^^;

難しい理屈をこねなくても、「電気消して布団に入ってしまえば、女の顔なんてどれも同じものよ」という男性は昔から一定数いるもので、そういう心理を、科学が後から追いかけてるだけなんだよね。

ソールのメール

2019.11.22

栄養療法を実践している人なら、アンドリュー・W・ソールを知らない人はいない。
彼の運営するウェブサイト『ドクターユアセルフ』www.DoctorYourself.com は1日に4万人以上が訪れる。
30年以上にわたる臨床経験のみならず、3つの大学で教鞭をとり著書を数多く著わすなど、栄養療法の普及にも尽力してきた(14冊の著書のうち4冊は、栄養療法の巨匠エイブラム・ホッファーとの共著である)。
“Psychology Today”誌が彼を「自然療法のパイオニア7人」のうちの一人に選んだこともある。
しかし彼は、決して「過去の人」ではない。
現在も臨床をこなし、”The Vitamin Cure”シリーズを定期的に刊行し、講演に世界中を回るなど、いまだ精力的に活動を続ける「生きる伝説」である。

そう、僕が翻訳した本”Orthomolecular Medicine For Everyone”の原著者は、実に、そういう人である。
翻訳させてもらったつながりで、彼と何度かメールのやり取りをしたり、一度実際に会うこともあったが、彼から見れば、僕は一人の東洋人の医者に過ぎない。
だから何、ということはない。
僕と彼では、これまで成し遂げてきた仕事の質、量ともに、スケールが違いすぎる。ただ、ビッグネームの彼を前にして、自分はいまだ何者でもない、単なるnobodyに過ぎないことを、改めて思い出しただけのことだ。

翻訳本が出版されたとき、僕から進んで献本を送付した人が3人いるが、彼はそのうちの一人だった。
原著者に対する敬意と感謝の印として、彼に献本するのは当然のマナーだと思った。
ただ、僕にとって翻訳本の出版はとても大きなことだとしても、彼にとっては多数の著作のうちのひとつに過ぎない。すでに中国語など、英語圏以外の言葉に訳された著作もあると聞く。今さら僕が献本を送ったところで、彼から特に反応はないものと思っていた。
ところが、3日前に届いた彼から以下のようなメールが届いた。

Dear Atsushi,

Thank you very much for the very fine hardcover of ORTHOMOLECULAR MEDICINE FOR EVERYONE, which I recently received in the mail with great joy. I am very grateful to you for taking the time and applying your skills to make this important translation to benefit all Japanese readers.

I today have posted a notice at my Facebook page https://www.facebook.com/themegavitaminman/ to help alert people to the availability of your translation.

If I can in any way assist is facilitating future translations of other orthomolecular titles, please let me know.

With best wishes,

Andrew

このメールに、彼の心の熱量を感じた。「今さら日本で自分の本が出たところで、うれしくも何ともないだろう」という僕の予想は、見事に裏切られた。彼が喜んでいることが伝わってきて、僕はそれがうれしかった。
ファーストネームで名乗り、呼びかけてくれるところにも親愛の情を感じたし、なんと、「他のオーソモレキュラー本の翻訳に興味があるなら、知らせて欲しい」という言葉まである。お世辞ではない、僕への本物の信頼を感じた。

そもそも、僕は本当に、どこの馬の骨とも知れないnobodyだった。原著を読み、「翻訳せねばならない」と一方的な使命感に駆られ、いきなり彼のメールアドレスにメールを送った。「翻訳させて欲しい」と。
無視されても不思議じゃない。しかし柳澤厚生先生を仲介に立てて、いったん話を聞いてくれた。冷やかしでもいたずらでもなく、本気であることが伝わり、翻訳を任されることになった。
翻訳本を送ったところで、日本語を解さない彼には、もちろん読めない。しかし手元に現物が届いたことで「自分の声が、日本の読者にも届くのだ」という実感を持ったのだと思う。そして、ようやく、僕のことを信用してくれたのだと思う。

ただ、「翻訳したいオーソモレキュラー本があれば言って欲しい」というオファーについては、残念ながら、今の僕には応じられない。
僕が勤務医のままだったら、このオファーに飛びついただろう。そして再び、翻訳作業に没頭したに違いない。
翻訳は片手間にはできない。やるからには、自分の持てるすべてのエネルギーと時間を捧げる、ぐらいの気力がないと完成できない。でも開業した今の自分には、それは難しいんだ。
体はひとつしかないから一度にひとつのことしかできないし、時間も1日24時間しかない。この当たり前の事実が、何とももどかしい。

ドラッグ3

2019.11.22

グリナという健康食品がある。睡眠をサポートするグリシンという成分が含まれていて、不眠症のなかにはこれがよく効く人がいる。
ただこの商品の欠点は、値段が高いこと。でも実をいうと、主成分のグリシンに飲みやすさのために香料を加えただけの商品だから、お徳用のグリシンパウダーで同じ効果が得られちゃうんだな。

グリシンというのはアミノ酸の一種で、しかもアミノ酸の中で最もシンプルな構造をしている。
口に含むと、甘みとうまみがある。食品としては、ホタテ、エビ、カニ、イカなどに多く含まれる。甘エビの、砂糖とは違う独特の甘さ。ホタテの身を噛み締めたときに感じるうまみ。こうした味は、グリシンによるものだ。
生体内では、多様な働きをする。
コラーゲンやグルタチオンの合成に使われるているから、美肌や抗酸化のお助けになる。クレアチンの合成に関与しているところはボディービルダー向けだと言えるが、プリン体の合成にも関与しているから、過剰摂取は痛風の原因になるかもしれない。

睡眠に影響する理由は、グリシンが、神経伝達物質そのものだからだ。GABA(γアミノ酪酸)と並ぶ抑制性神経伝達物質で、ニューロンの活動電位を抑制する。
以下の論文に、詳しいメカニズムが書かれている。
『グリシンの睡眠促進効果および体温低下効果は、視交叉上核のNMDA受容体により媒介されている』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4397399/
「睡眠の質を改善する治療選択肢としてグリシンを使用することが、安全性の高い新たなアプローチとして注目されている。その有効性については臨床的エビデンスがあるものの、その作用機序についてはほとんどわかっていない。本研究において、我々はグリシンの作用部位および睡眠促進の機序をラットを用いて調べた。
急性睡眠障害に際して、グリシンを経口投与すると、ノンレム睡眠が誘導され、深部体温の低下とともにノンレム睡眠潜時が短縮した。グリシンの経口投与および脳室内への注射によって、足底の表皮血流(CBF)が用量依存性に増加し、その結果体熱が発散された。グリシン受容体のアンタゴニストであるストリキニーネによってではなく、NメチルDアスパラギン酸(NMDA)受容体のアンタゴニストAP5とCGP78608によって事前に処置すると、脳内へのグリシン注射で引き起こされるはずの表面血流の増加が抑制された。
グリシン注射後、視床下部核(内側視索前野(MPO)や視交叉上核(SCN)も含む)におけるc-Fosの発現が誘導されることが観察された。SCNにグリシンを注入すると、CBFが用量依存性に増加したが、MPOや脳室下帯にグリシンを注入しても効果が見られなかった。SCNにDセリンを注入してもCBFが増加したが、この効果はL701324の存在下ではブロックされた。SCNを焼灼すると、グリシンの睡眠促進および体温低下効果は完全になくなった。
これらの結果は、外因性グリシンが周辺血管の拡張によってSCNにあるNMDA受容体を活性化させることで、睡眠が促進されることを示している」

ややこしい文章だね。訳した僕にも意味がよくわかりません^^;
ポイントとしては、グリシンが体温に作用している、ということだ。
眠りにつくとき、手足や体表の温度が上がることが知られている。これはなぜか?
代謝が高まっているのではない。むしろ、下がっている(そもそも眠りとは、代謝を下げて体を休めることだ)。血液を中枢メインに供給するのではなく、手足などの末梢に優先的に流すことで、体熱を発散しようとしている。
寝るときには頭寒足熱がいい、といわれる理由はここにある。睡眠時の深部体温の低下は、脳内の温度(脳温)の低下でもあるわけだ。

さらに、タウリンも睡眠にいい。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3630960/
タウリンはGABA受容体に作用して、神経系の発火を抑制する。
ハエにカフェイン(0.01%)を与えると活動量が25%増加し睡眠が16%減少したが、タウリンの投与(0.1%〜1.5%)により活動量が28%〜86%減少した。0.75%のタウリンによって、睡眠が50%増加した。

その他、イノシトール、テアニン、フォスファチジルセリンにも有効性を示すエビデンスがある。
こんな具合に、ベンゾの離脱症状に対していろいろな栄養素(ビタミンC、ナイアシン、マグネシウム、ケイ素、グリシン、タウリン、、、)を使う。
こういう治療は、お世辞にもスマートとは言えない。「下手な鉄砲数打ちゃ当たる」式の方法では、仮に効いたとしても何が効いたかわからない。そういう意味で、理想としては、使う栄養素は2、3種類以下に抑えたい。
でも症状に苦しむ患者は、「スマートじゃなくてもいい。何が効いたかわからなくてもいい。とにかく、今すぐにでも、楽になりたいんだ」という気持ちでいる。僕としても、その気持ちに応えてあげたいと思って、いろいろお勧めすることになる。
一般の病院で量産されるベンゾ依存症患者を、こんなふうに何とか立ち直らせていくのが僕の仕事です^^;

ドラッグ2

2019.11.22


これを見てわかるように、ベンゾジアゼピン系はかなり危険なドラッグである。
どこの病院でも普通に処方されているが、一度ハマってしまうとなかなかやめられない。医者はこの薬を初めて患者に処方するときは、そのリスクをきちんと説明するべきだ(もっとも、起こり得る副作用を知れば、ほとんどの患者がベンゾの服用を拒否するだろうけど)。

ベンゾの種類(抗不安薬か睡眠薬か、長時間作用型か短時間作用型か)、量、服用の頻度によって、体への影響は異なるが、だいたい2週間ほどの連用で依存性が形成される。短時間作用型ほど依存性が強い。
依存性だけでなく耐性も形成されるから、最初はよく効いてもだんだん効かなくなる。同じ効果を得るには量を増やすことになって、ますますハマっていく。
「やばい。私、この薬なしでは生きていけなくなってる」
患者がそう気付いて、意を決して薬を一気に断とうものなら、恐ろしい副作用に襲われることになる。
寝れなくなるのは当然として、イライラしたかと思えば不安や緊張を感じたり、ときにはパニック発作が出るなど、心は平静を保てない。物事に集中することができず、記憶力も低下して、仕事なんてとてもできない。
ぐちゃぐちゃになるのは精神面だけではなくて、体も大変なことになる。
冷や汗が吹き出て、動悸と頭痛に悩まされ、体のあちこちの筋肉が痛くなる。吐き気がして食事がとれず、げっそりと痩せる。

安易にベンゾを処方する精神科医もひどいが、肩こりにデパスを処方する整形外科の先生とかもいる。デパスにハマった後、薬をやめようとする患者がどれほどの地獄を見ることか。ベンゾの安易な処方は、ほとんど犯罪的じゃないかな。

ベンゾの処方について、諸外国では処方期間に上限があるなど、危険性が認識されているが、日本は基本的に野放し。十年以上飲み続けている人なんかもざらにいる。
副作用が不快で、何とかこの薬をやめようとして、当院に来られる患者もいる。
こういう治療経験を通じて、ベンゾのやめにくさは僕にも身にしみてわかっている。
食生活の改善指導は当然として、文献を参考にいろんなサプリやハーブを使ったり、あの手この手でベンゾの離脱症状にアプローチした。効果のあるものもあれば、ないものもあった。
そういう試行錯誤を経て、方法論としてある程度形になってきた。

たとえばベンゾをやめたい患者には、まずマグネシウムを勧めたい。こんな論文がある。
『薬物乱用および薬物依存におけるマグネシウム』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507260/
「物質の常用癖はひとつの精神障害だと考えられている。マグネシウムはアヘン製剤や精神刺激薬(コカイン、アンフェタミン、ニコチンなど)への依存強度を軽減する。また、マグネシウムは動物実験において、モルヒネ、コカイン、その他依存性物質への依存を減少させるのみならず、コカインの自己投与を減少させ、コカインやアンフェタミン摂取の再発率を減少させることが示されている。ヘロイン依存症者、アルコール依存症者、その他薬物依存症者では、血中および細胞内のマグネシウム濃度が健常被験者と比較して低下している。
マグネシウムが強度の依存性物質の使用を減少させる機序のひとつは、マグネシウムが報酬系を適度に刺激することによると我々は考えている。しかし、マグネシウムの作用機序は他にもいくつかあって、脳内のシナプス前終末でのドーパミンやグルタミン酸の減少、NOシンターゼ(一酸化窒素合成酵素)活性の減少、GABA作動性神経の賦活化、シナプス後NMDA受容体活性の減少、カルシウムイオンあるいはカルシウムチャンネルへの作用により放出される神経伝達物質の減少といった機序が考えられる。
離脱症状の出現後にマグネシウムイオンを投与すると、離脱による臨床症状の程度が軽減する。ストレスによって依存性物質への依存が発生しやすくなるし、ヘロイン依存症者においては、ストレスによりドラッグフリータイム(クスリをキメていない時間)が減少し、再摂取率が増加することが示されている。
ストレスはカテコラミン(ドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンなど)放出を増加させ、体外へのマグネシウム喪失を促進する。こうして体内のマグネシウム濃度が減少することが、依存性薬物を再び使ってしまう一つの重要な原因である。」

マグネシウムがいいといっても、摂り方が重要だ。マグミット(酸化マグネシウム)を飲んでも吸収がイマイチで、「下痢するだけ」ということにもなりかねない。
個人的には、吸収性のいい液体のマグネシウムを勧めている。


ただし、これ、ビックリするぐらいまずいです^^;
塩化マグネシウムだから、意味合いとしては要するに、にがりと近い。
マグネシウムはケイ素と協調して働くから、同時にケイ素水も勧める。

さらに、グリシンがよく効く人もいる。これについては次回に書こう。

ドラッグ

2019.11.21

ツイッターにこんな投稿があった。

同じような感想を持った人は、案外多いのではないか。
10年以上前から薬物をやっていたというが、それにしてはきれいすぎる。もっと美貌が衰えていてもよさそうなものだが、薬物中毒者にありがちなやつれた様子は見受けられない。それどころか、ドラマやCMへの出演など仕事は絶好調だった。

一方、先だって逮捕された田代容疑者の容貌。

薬物に身を落とした人物として、通常我々が抱くイメージに近いと思う。
沢尻と田代、どちらも薬物にハマりながら、一方は美しいままで、一方はやつれている。
この違いは、使用していた薬物の違いによるものだろう。

横軸に有害性、縦軸に依存性をとって、各種の薬物を位置づけたグラフである。

沢尻氏はMDMA(エクスタシー)の所持・使用容疑で逮捕されたが、取り調べに対し「大麻、LSD、コカインもやった」と供述している。
グラフを見ればわかるように、コカインを除いて、いずれの薬物も有害性、依存性とも高くない。むしろ、一般に使用が許されているアルコールやタバコのほうが体に悪い(有害性、依存性とも高い)。
田代氏が使用していたのは覚醒剤(アンフェタミン)で、LSDやエクスタシーよりも危険なドラッグだとわかる。

興味深いのは、このグラフに分類されているドラッグのほとんどが、かつては医薬品として普通に用いられていた(あるいは現在も用いられている)ことだ。
有害性、依存性とも最悪のドラッグ、ヘロインは、「依存性のない奇跡の薬」としてドイツで売り出され、販売から三十年間、自由に入手可能だった。
バルビツール酸系薬物は芥川龍之介が自殺のときに服用したことで有名。ベンゾジアゼピンの登場以後、処方されることは少なくなったが、今でも手術の麻酔として使われている。

そもそも、医薬品とドラッグの明確な線引きなんて存在しない。それは恣意的なものだ。
「かつては医薬品だったが今は禁止薬物」というパターンが多いが、逆もあり得る。
たとえば、沢尻氏の一件で注目されているMDMAだが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療薬として治験が進行中だし、他にも自閉症患者の社交不安、癌患者の抑うつに対する治験も行われている。
数年のうちにMDMAが、違法なドラッグから大真面目な医薬品に、いわば「昇進」する可能性は、相当高いと思う。
これがどういうことか、わかりますか。
その使用が法律に抵触し逮捕されるようなドラッグも、状況(法律、製薬会社のマーケティング、社会の空気など)の変化次第で、犯罪でも何でもなくなる、ということだ。

沢尻氏が出演しすでに撮影した大河ドラマを、代役を立てて撮り直さないといけない、ということだけど、ナンセンスな話だね。
それよりも、医者として思うのは、上記のグラフに載っていない最強の合法ドラッグ「砂糖」を何とかして欲しい。
そう、薬理的に見れば砂糖はドラッグそのものだ。こんな論文がある。
『砂糖依存のエビデンス〜砂糖の間欠的過剰摂取の神経化学的影響』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17617461
その物質の「摂取量の増加」、やめると「離脱症状」が出て、さらに「渇望と再燃」がある。砂糖はものの見事に、この依存の三大兆候を満たしている。
砂糖の摂取によって、コカインやヘロインをやっているときに活性化するのと同じ部位(側坐核)が活性化する。砂糖は、有害性、依存性ともにヘロイン並みの危険ドラッグだ。
マスコミには、沢尻逮捕とかどうでもいいニュースではなく、こういう砂糖の危険性を伝えて欲しいんだけどね。