ナカムラクリニック

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2019年9月29日

14属元素(Ge Sn Pb)

2019.9.29

周期表ではケイ素の下に、ゲルマニウムがある。
ゲルマニウムについては以前のブログで何度も紹介したが、これも健康のためにオススメしたい元素だ。
化学的にケイ素とゲルマニウムがくっついたシリコン-ゲルマニウム合金は、IC(集積回路)に使われるなど、工学的に重要だ。
ゲルマニウムについても、RDIは確立していない。しかし、以下にあげる論文のように、ある種の骨の疾患にかかる人では、ゲルマニウムの血中濃度が低いことがわかっている。

『カシン・ベック病患者におけるセレン、ホウ素、ゲルマニウムについて』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11204461
カシン・ベック病(KBD)に罹患した幼児の毛髪、KBD頻発地域に住む健常児の毛髪、非KBD頻発地域に住む健常児の毛髪を採取し、そこに含まれるセレン、ホウ素、ゲルマニウムの濃度を測定した。
KBD 罹患児の毛髪中では、セレン、ホウ素、ゲルマニウムの平均濃度が低かった。
KBD頻発地域に住む健常児の毛髪では、セレン濃度は正常だったが、ホウ素とゲルマニウムが、KBDのない地域の健常児の毛髪よりも低かった。
毛髪中のホウ素、ゲルマニウムの濃度は、セレンのサプリを摂取しても影響しなかった。KBD発症の病因として、ホウ素とゲルマニウムの不足が関連している可能性がある。

マウスの食事にホウ素を入れるか入れないかで、骨の強度が全然違ってくる、という研究もある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27908411
骨の健康には、ホウ素やゲルマニウムも意識して摂るといいだろう。

ゲルマニウムの下の元素はスズ(tin)だ。
スズは、個人的には何となく有害ミネラルのイメージだったが、意外にも、これもやはり生体にとって必要なトレースミネラルだという。
https://www.healthknot.com/tin.html
副腎の働きをサポートしていることが知られていて、スズが不足すると副腎機能が低下し、結果、心機能が低下する。その他にも、喘息などの呼吸困難、疲労、うつ病との関連が指摘されている。
なんと、スズのサプリメントまで売られている。これには驚いたな。
https://phpure.com/angstrom-minerals-tin-100ppm-8-fl-oz

スズの下は、重金属として悪名高い鉛だ。
周期表を見てもらえばわかるように、鉛の近隣には水銀とかタリウムとか、いかにも毒っぽい金属がずらりと並んでいる。
鉛の毒性で有名なのは、知的障害だろう。鉛の曝露量が多いほど、IQが低いことがわかっている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1367853/

鉛はヘモグロビン合成を阻害する。赤血球の産生が停滞し、貧血の原因になる。
一般に、血流と神経はワンセットだ。この点は、水道管と電線が家の基本的インフラであるのと似ている。
血の巡りが悪いと、神経系も不調になるし、逆もまたしかりだ。
鉛の影響で知能が低下する背景には、鉛の血液毒性によるものだと考えても間違いではないだろう。

逆に、有機ゲルマニウムによって知的障害が改善することを以前のブログで紹介した。
これは、ひとつには、有機ゲルマニウムの造血促進作用による。古い赤血球を壊して、新しい赤血球を生み出す代謝プロセスが促進され、血流がよくなる。
もうひとつは、同族元素の競合による作用。ゲルマニウムは鉛と同じ14属元素である。ゲルマニウムの摂取によって、鉛が追い出されることになる。同様の作用はケイ素にもあり得るだろう。

14属元素(C Si)

2019.9.29


化学の授業で、周期表を見たことがあるだろう。
14属元素に注目すると、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、と続く。
同族元素は最外殻電子の数が同じで、化学的性質が似通っている、と学校で習う。

炭素は有機化学の花形で、水素や酸素とともに、生命を構成する中心的な元素だ。
一方、そのすぐ下にあるケイ素は、有機化学での扱いは軽い。
どちらかというと、鉱物や無機物を構成することが多い元素で、無機化学の登場キャラ、といった感じだ。
「炭素を生命の元素だとすると、ケイ素は死の元素だ」という人もいる。
どちらも手の数が同じ(最外殻電子の数が4個)なのに、一方は生命を司り、他方は死を司るという、真逆のイメージで語られている。

SFものの小説や映画では、炭素の代わりにケイ素からなる『ケイ素生物』がしばしば登場する。
しかしこういう生物は化学的にあり得ないと言われている。
炭素は手が4本あって、単結合だけではなくて二重結合とか三重結合とか、わりと自由に結合できるが、ケイ素は基本的には単結合しかとれない。
さらに炭素がグラファイト(黒鉛)、ダイヤモンドのような平面構造だけでなく、フラーレンのような球状構造までとるのに対し、ケイ素はせいぜいダイヤモンド構造をとるくらい。
炭水化物、脂質はもちろん、アミノ酸を作ることができるのも、炭素のある種の「身軽さ」のおかげで、そういう炭素に比べて、ケイ素はいかにも柔軟性がなさすぎるんだ。

ケイ素は地殻に含まれる分子のなかで、酸素に次いで2番目に多い元素である。つまり、地球は「酸素の星」であると同時に、「ケイ素の星」といっても過言ではない。
しかしこんなに豊富にある元素でありながら、生命を構成する要素としてはマイナーな印象だ。
せめて炭素のようにメインを張る元素でなくとも、鉄が赤血球に利用されるように、マグネシウムが葉緑体のクロロフィルに利用されているように、ケイ素が生体にもっと利用されてもいいところだが、ケイ素といえば何、とイメージが浮かぶ人はあまりいないだろう。

RDI(アメリカの栄養摂取基準)も定められていないケイ素だが、しかし、生体にとって必須の微小ミネラルだ。
それは、組織を分析してみればわかる。骨、腱、動脈、肝臓、腎臓など、ケイ素を含む臓器は数多い。体は、必要があるからこそ、ケイ素を取り込んでいる。

「君がいなくなって初めて、君が僕にとって大切な人なんだと気付いた」
何かのドラマにありそうなセリフだが^^;、一般にある物質が必要であるかどうかは、それを抜いてみてどうなるかを観察してみればいい。
不要なものなら、何ら問題は起こらないだろう。しかし必要なものであるなら、異常が現れる。
ケイ素欠乏食を与える研究では、頭蓋骨、四肢の骨の変形、関節形成不全、軟骨量、コラーゲン量の減少、大腿骨、脊椎のミネラルバランスの破綻といった症状が確認されている。
逆に、過剰に摂取させればどうなるか。現在のところ、水溶性ケイ素の過剰摂取による毒性の報告はない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17435951
「摂るメリットしかない栄養素」といっても過言ではないだろう。
特に骨への影響は大きい。骨粗鬆症予防には、カルシウムではなくケイ素(とマグネシウム)の摂取を心がけるべきだ。