ナカムラクリニック

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2019年9月

ケイ素とマグネシウム

2019.9.30

生体内のミネラルは、大まかには二種類ある。
マクロミネラルとマイクロミネラルだ。
前者は体内に比較的大量に存在する。例としては、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウムなどがある。
後者は少量存在する。その重要性が「マイクロ」というわけではない。それどころか、欠乏すれば様々な不調を引き起こす。
例としては、鉄、亜鉛、セレン、銅、ケイ素などがある。

ミネラルの相互作用として、マグネシウムとカルシウムの関係がよく知られている。
たとえば筋肉において、カルシウムは収縮を、マグネシウムは弛緩を引き起こす。
収縮と弛緩。
真逆の作用を引き起こすという意味で、両者は拮抗関係にあるといえる。
しかし筋肉を動かす際には、収縮しっぱなし、あるいは弛緩しっぱなし、ではダメで、どちらも必要な作用である。
そういう意味では、「拮抗」というよりは「共同」というほうが適切かもしれない。

カルシウムは電源オンのボタンだとすると、マグネシウムはオフのボタンだ。
マグネシウムが欠乏すると、体は電源をオフにできなくなる。つまり、電源オンのままで、延々休まらない。
「夜、なかなか寝付けません。やっと寝れても、途中で何度か目が覚めます」
「寝てるときにこむらがえりがよく起こります」
「頭にモヤがかかっているようです。集中力とか記憶力が落ちました」
電源の落とし方がわからなくなっているんだ。
こういう患者を見れば、まずマグネシウム欠乏を疑う。

休めなくなると、体はどうなるか?
たとえば、体内の毒物をうまくデトックスできなくなる。
(ちなみに「デトックス」などという医学用語はない。「そんな不正確な表現を使うな」とオーベンに怒られる言葉だ。でも便利な言葉だから、僕は使うけどね)
蓄積した疲労物質がウォッシュアウトされず、朝起きた直後から体が疲れている、といったことが起こる。

カルシウムがエネルギー(ATP)を消費するミネラルだとすると、マグネシウムはエネルギーを作り出すミネラルだ。
ミトコンドリアがエネルギーを産生するにあたって、マグネシウムはそのプロセスで不可欠な栄養素のひとつだ。
つまり、マグネシウム欠乏は、エネルギー欠乏を引き起こす。
他にも、骨や歯の形成、血糖調整、インスリン感受性、アルコール代謝にも関わっている。

体内のマグネシウムが十分か不足しているかは、採血ではわからない。
なぜか?
マグネシウムの体内分布を考えればいい。骨に50%、筋肉に25%、残りが軟部組織に存在する。血中に存在するのはたったの1%だけ。
不足すればすぐに骨や筋肉から供給されるから、血中のマグネシウムを測定しても臨床的意義はあまりない。
逆に、マグネシウムの生体利用率が低下している場合、血中マグネシウムは正常なのに、骨や筋肉にマグネシウムがうまく取り込まれない可能性もある。
マグネシウムは、筋肉に入ってこそ、細胞の中に入ってこそ、弛緩作用が発揮される。

「症状からみてマグネシウム欠乏だと思い、マグネシウムのサプリを飲み始めました。でも正直、いまいち効果を実感していません」という人がいる。
こういう人は、恐らくマグネシウムの生体利用率が低下している。せっかく摂ったマグネシウムが、単に血管のなかを流れているだけで、細胞の中に入っていない。
どうすればいいか。
どうすれば、マグネシウムの生体利用率を高め、マグネシウムにしっかり仕事をさせることができるのか。

ケイ素、がポイントである。
ケイ素には、ミネラルの利用効率を高める作用がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7688524
論文中、「ケイ素を経口投与したマウスでは、血中マグネシウム濃度が低下、カルシウム濃度が上昇した。一方、組織中のカルシウム濃度が低下し、マグネシウム濃度が上昇した」とある。
どういうことかわかりますか?
組織のなかにしっかりマグネシウムを送り込むことができた、ということだ。
同時に、組織からカルシウムの沈着を抜くことができた、ということだ。たとえば動脈からカルシウムが抜けるということは、動脈硬化の改善そのものだ。
さらに、ケイ素はアルミをキレートする作用があるし、ケイ素自身、骨に入って骨質を強化する作用もある。

マグネシウム代謝には、セレンも重要という指摘がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8054261
なぜか流産してしまう女性が対象の研究。4か月間経口でマグネシウム(1日600㎎)を摂ってもらったが、赤血球中のマグネシウム濃度(RBC-Mg)が全然正常化しない。
なぜだろう、ということで、赤血球中のグルタチオン・ペルオキシダーゼ活性(RBC-GSH-Px)を調べたところ、対照群と比べ有意に低かった。
そこでセレン(セレノメチオニン200μg)とマグネシウムを2か月間同時に投与すると、全参加者でRBC-MgとRBC-GSH-Pxが正常化した。
これらの参加者は8か月以内に全員妊娠し、正常な赤ちゃんを産んだ。

メガビタミン療法はあり得ても、メガミネラル療法はあり得ない。
鉄や亜鉛などは、過剰摂取の害が報告されているから、漫然と長期摂取してはいけない。
しかしマグネシウムやケイ素に関しては、その点はほとんど心配ない。
マグネシウムを摂りすぎてもせいぜい下痢をするぐらいで、この副作用はむしろ便秘の人にとってはありがたい主作用だ。
Hofferの本を読んでいると、マグネシウムには多くのページが割かれているが、ケイ素については言及さえしていない。
そういうこともあって、僕も含めHofferで栄養療法を学んだ人は、ケイ素の重要性を見落としていると思う。
自戒の意味も込めて、ケイ素の重要性は声を大にして言いたいんだな。

14属元素(Ge Sn Pb)

2019.9.29

周期表ではケイ素の下に、ゲルマニウムがある。
ゲルマニウムについては以前のブログで何度も紹介したが、これも健康のためにオススメしたい元素だ。
化学的にケイ素とゲルマニウムがくっついたシリコン-ゲルマニウム合金は、IC(集積回路)に使われるなど、工学的に重要だ。
ゲルマニウムについても、RDIは確立していない。しかし、以下にあげる論文のように、ある種の骨の疾患にかかる人では、ゲルマニウムの血中濃度が低いことがわかっている。

『カシン・ベック病患者におけるセレン、ホウ素、ゲルマニウムについて』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11204461
カシン・ベック病(KBD)に罹患した幼児の毛髪、KBD頻発地域に住む健常児の毛髪、非KBD頻発地域に住む健常児の毛髪を採取し、そこに含まれるセレン、ホウ素、ゲルマニウムの濃度を測定した。
KBD 罹患児の毛髪中では、セレン、ホウ素、ゲルマニウムの平均濃度が低かった。
KBD頻発地域に住む健常児の毛髪では、セレン濃度は正常だったが、ホウ素とゲルマニウムが、KBDのない地域の健常児の毛髪よりも低かった。
毛髪中のホウ素、ゲルマニウムの濃度は、セレンのサプリを摂取しても影響しなかった。KBD発症の病因として、ホウ素とゲルマニウムの不足が関連している可能性がある。

マウスの食事にホウ素を入れるか入れないかで、骨の強度が全然違ってくる、という研究もある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27908411
骨の健康には、ホウ素やゲルマニウムも意識して摂るといいだろう。

ゲルマニウムの下の元素はスズ(tin)だ。
スズは、個人的には何となく有害ミネラルのイメージだったが、意外にも、これもやはり生体にとって必要なトレースミネラルだという。
https://www.healthknot.com/tin.html
副腎の働きをサポートしていることが知られていて、スズが不足すると副腎機能が低下し、結果、心機能が低下する。その他にも、喘息などの呼吸困難、疲労、うつ病との関連が指摘されている。
なんと、スズのサプリメントまで売られている。これには驚いたな。
https://phpure.com/angstrom-minerals-tin-100ppm-8-fl-oz

スズの下は、重金属として悪名高い鉛だ。
周期表を見てもらえばわかるように、鉛の近隣には水銀とかタリウムとか、いかにも毒っぽい金属がずらりと並んでいる。
鉛の毒性で有名なのは、知的障害だろう。鉛の曝露量が多いほど、IQが低いことがわかっている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1367853/

鉛はヘモグロビン合成を阻害する。赤血球の産生が停滞し、貧血の原因になる。
一般に、血流と神経はワンセットだ。この点は、水道管と電線が家の基本的インフラであるのと似ている。
血の巡りが悪いと、神経系も不調になるし、逆もまたしかりだ。
鉛の影響で知能が低下する背景には、鉛の血液毒性によるものだと考えても間違いではないだろう。

逆に、有機ゲルマニウムによって知的障害が改善することを以前のブログで紹介した。
これは、ひとつには、有機ゲルマニウムの造血促進作用による。古い赤血球を壊して、新しい赤血球を生み出す代謝プロセスが促進され、血流がよくなる。
もうひとつは、同族元素の競合による作用。ゲルマニウムは鉛と同じ14属元素である。ゲルマニウムの摂取によって、鉛が追い出されることになる。同様の作用はケイ素にもあり得るだろう。

14属元素(C Si)

2019.9.29


化学の授業で、周期表を見たことがあるだろう。
14属元素に注目すると、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、と続く。
同族元素は最外殻電子の数が同じで、化学的性質が似通っている、と学校で習う。

炭素は有機化学の花形で、水素や酸素とともに、生命を構成する中心的な元素だ。
一方、そのすぐ下にあるケイ素は、有機化学での扱いは軽い。
どちらかというと、鉱物や無機物を構成することが多い元素で、無機化学の登場キャラ、といった感じだ。
「炭素を生命の元素だとすると、ケイ素は死の元素だ」という人もいる。
どちらも手の数が同じ(最外殻電子の数が4個)なのに、一方は生命を司り、他方は死を司るという、真逆のイメージで語られている。

SFものの小説や映画では、炭素の代わりにケイ素からなる『ケイ素生物』がしばしば登場する。
しかしこういう生物は化学的にあり得ないと言われている。
炭素は手が4本あって、単結合だけではなくて二重結合とか三重結合とか、わりと自由に結合できるが、ケイ素は基本的には単結合しかとれない。
さらに炭素がグラファイト(黒鉛)、ダイヤモンドのような平面構造だけでなく、フラーレンのような球状構造までとるのに対し、ケイ素はせいぜいダイヤモンド構造をとるくらい。
炭水化物、脂質はもちろん、アミノ酸を作ることができるのも、炭素のある種の「身軽さ」のおかげで、そういう炭素に比べて、ケイ素はいかにも柔軟性がなさすぎるんだ。

ケイ素は地殻に含まれる分子のなかで、酸素に次いで2番目に多い元素である。つまり、地球は「酸素の星」であると同時に、「ケイ素の星」といっても過言ではない。
しかしこんなに豊富にある元素でありながら、生命を構成する要素としてはマイナーな印象だ。
せめて炭素のようにメインを張る元素でなくとも、鉄が赤血球に利用されるように、マグネシウムが葉緑体のクロロフィルに利用されているように、ケイ素が生体にもっと利用されてもいいところだが、ケイ素といえば何、とイメージが浮かぶ人はあまりいないだろう。

RDI(アメリカの栄養摂取基準)も定められていないケイ素だが、しかし、生体にとって必須の微小ミネラルだ。
それは、組織を分析してみればわかる。骨、腱、動脈、肝臓、腎臓など、ケイ素を含む臓器は数多い。体は、必要があるからこそ、ケイ素を取り込んでいる。

「君がいなくなって初めて、君が僕にとって大切な人なんだと気付いた」
何かのドラマにありそうなセリフだが^^;、一般にある物質が必要であるかどうかは、それを抜いてみてどうなるかを観察してみればいい。
不要なものなら、何ら問題は起こらないだろう。しかし必要なものであるなら、異常が現れる。
ケイ素欠乏食を与える研究では、頭蓋骨、四肢の骨の変形、関節形成不全、軟骨量、コラーゲン量の減少、大腿骨、脊椎のミネラルバランスの破綻といった症状が確認されている。
逆に、過剰に摂取させればどうなるか。現在のところ、水溶性ケイ素の過剰摂取による毒性の報告はない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17435951
「摂るメリットしかない栄養素」といっても過言ではないだろう。
特に骨への影響は大きい。骨粗鬆症予防には、カルシウムではなくケイ素(とマグネシウム)の摂取を心がけるべきだ。

タバコ4

2019.9.28

「無理して禁煙しようとしないでください」とShkreli氏は呼びかける。
「ケイ素を意識的に摂り始めれば、自然と吸いたくなくなってきます。『いつのまにかタバコをやめていた』そういう禁煙が可能です。
私もそんなふうにやめれましたし、ほかの多くの人もそうです。
しかも、ケイ素の効果はすぐに現れます。『三日後にだんだん』みたいな日単位ではなく、時間単位で効果を実感するはずです」

朝、いつも通りにタバコを加えて、火をつけた。
タバコを吸い始めて以来、例のないことだが、つい咳き込んだ。しかもタバコの味がまずい。
その日の午後、誰かがそばでタバコを吸っている。においが妙に不愉快に感じる。「妙だな」と思う。「いつもと感覚が違うようだ」
夜、彼女から電話がかかってきた。左手に受話器を、右手にタバコを、というのがいつものスタイルで、その間は煙突になる。
電話しながら、ふと、気づいた。「なぜ俺はタバコを吸っていないんだろう」
翌日、あり得ないことが起こった。これが何よりも衝撃的なことだった。タバコのことを思うだけで、気持ちが悪くなったのだ。
二日前には、1日1箱吸っていた。それが今や、タバコのことを想像するだけで、気分が悪くなる。
いったいなぜ、こんなことが起こるのか。

そう、答えはケイ素だ。
上記の描写は、フィクションではない。著者のShkreli氏に起こったことであり、ケイ素を試した多くの人に起こったことでもある。
Shkreli氏はそういう自分の変化を、自分でも不思議に思ったし、周囲の人はもっと不思議に思った。
二十年以上吸ってきて、大好きだったタバコ。酒をやめようと何をやめようと、タバコをやめることは絶対にないと思っていた。
「どうしたの?タバコ、我慢してるの?無理に禁煙しなくてもいいよ」
と友人が心配してくれる。
とんでもない。頑張って禁煙しているつもりなんて、さらさらない。
自 然 と 吸 い た く な く な っ た ん だ 。
それでも周りの人はいう。
「無理して禁煙して、よくやるね」「こっそり禁煙外来にでも通って、ニコチンガムでも食べてるんじゃないの?」

無理してやめようとしていたのではない。ただ、ひとつだけ、意識していたことがある。
ケイ素を豊富に含む食事を毎日摂取するように心がけていた。そうすると、吸いたい気持ちがなくなる。
しかしそうした心がけをやめ、ケイ素の摂取を怠ると、再びタバコが吸いたくなる。それはまるで、スイッチのようだ。

Shkreli氏が食べていたのは、キュウリだ。
特別なものではない。どこにでもある、ごく普通のキュウリだ。
これを1日に2~4本食べる。そうすると翌日には、タバコのことを考えることさえ、嫌になっている。
特殊飢餓によって『食品ならざるもの』が欲しくなる衝動が生じるものだが、タバコが欲しくなるのもそのメカニズムで説明できる。
体内にケイ素が満ち足りれば、体はタバコによるケイ素供給を必要としなくなるのだ。

キュウリ以外ではダメなのか。
もちろん他にも選択肢はある。ただ、キュウリはまるでsilica accumulator(ケイ素吸引器)と言っていいくらいに土壌のケイ素を能率よくため込む。
キュウリが嫌いではなければ、これを利用しない手はない。
かつては穀物を食べれば相当量のケイ素を摂取することができたが、精製技術の進歩の悪影響で、我々はケイ素を最も豊富に含む部分を捨てている。
先人の食事を見習って、ぬかやふすまを含む全粒穀物、雑穀を食べるのも、ケイ素の補給にはプラスだろう。
しかし食品以外に、サプリで摂る方法もある。

サプリで摂るとなれば、ホーステイルがいい。
ポニーテイルは女の子の髪型。ポニーがホースになると、ハーブの名前になります(‘Д’)
日本語ではスギナ(あるいはトクサ)のことだ。春、ツクシの横に生えているあの植物だ。

ツクシは食べても、スギナを食べる人は少ないだろうが、スギナはケイ素の供給源として極めて優秀だ。
スギナは季節限定だから、乾燥させた葉をお茶として摂るのもいい。

その他、ある種の海藻にはケイ素を高濃度に含むものがある。
俗にred algae(紅藻)、正式名称Lithothamnium coralloidesから抽出したケイ素がサプリとして販売されている。

サプリで摂るのなら、1日8錠から始める。
その際、ビタミンB3(ニコチン酸=ナイアシン)のサプリも一緒に摂るといい。B3とケイ素は共同して働くからだ。
そしてB3を摂るのなら、Shkreli氏は合成のサプリではなく、天然由来のB群から摂ることを勧めている。
天然由来のビタミンの方が化学的に合成したビタミンよりも吸収能率・利用能率がはるかによい、という考えのようだ。
これには僕も同意する(だからこそ、食品で摂れれば一番いいんだけどね)。
ケイ素サプリを8錠、B群サプリを4錠で始めて、1週間もたてば体内にある程度ケイ素が充足してくるから、ケイ素を4錠、B群を2錠に減らす。

前回のブログで言及したように、サルサパリラ、リコリス、エキナセアなども利用できる。
サルサパリラはケイ素だけでなく鉄も多く含んでいるから、貧血にも効く。
期待していたところ以外にも薬効を発揮するのが、単体成分の抽出サプリにはない、ハーブ由来サプリのいいところだ。

もちろん食品オンリーあるいはサプリオンリーにこだわることはない。両方併用すればいい。
ケイ素が体内に満ちるのが早ければ早いほど、喫煙欲求の減少も早いだろう。

繰り返すようだけど、タバコを頑張ってやめようとする必要はない。
心がけることは、食事であれサプリであれ、ケイ素を意識的に多く摂取すること。ただそれだけだ。
後はあくまで自然体で過ごし、内なるタバコ欲求の変化を観察する。

依存症は、我慢ではなく、自然とやめられればそれに越したことはない。
「甘いものがやめられない糖質依存も特殊飢餓のひとつで、炭水化物が微量に含むケイ素を摂ろうとする衝動によって引き起こされる」とShkreli氏は書いている。
だとすると、甘いものをやめたい人にもケイ素の摂取が有効ということになるが、そこに関しては詳しい記述はない。
いったん試してみる価値はあるかもしれない。

参考
“The natural cure for cigarette smoking” (Anthony Shkreli著)

タバコ3

2019.9.27

古代インドの神話。
人間が悪に堕落したことを危惧して、自然界(動物界、植物界、鉱物界)の神々が会合の場を持った。
動物界を代表して、クマが言った。「世界から悪をできるだけ減らそう。そのためには、悪の根源である人間の寿命を縮めるべきだ。人間が長生きしては、自然界が破壊されてしまう」
どうやって人間の寿命を縮めるつもりなんだい?
「病気にかかるようにすればいい」
植物界、鉱物界の神々は、動物界の強硬な意見にしぶしぶ同意したが、植物界は人間のことを哀れんだ。
植物界の代表はタバコだった。「気の毒なことだ。もうすぐ人間たちは病気に苦しむようになる。その苦しみを、少しでもやわらげてやりたい」そう思ったタバコは、他の神々に大きな声で言った。「私が聖なるハーブになって、人間がかつての聖なる生活を取り戻せるように、手助けしようと思う」
タバコは、植物界の代表として、様々な植物たちに、ハーブとして人間の苦痛をやわらげてやるよう指示した。
鉱物界の神々も、クマの提言を聞いて、人間を哀れに思っていた。彼らも人間の病苦を癒してやりたいと思った。
鉱物界の代表はクォーツ(石英)だった。「しかし、自分は石。どうやって人間の助けになれるだろうか」
クォーツとタバコは非常に仲がよかったことから、この2人の神は語り合った。
ふと、クォーツが腕を伸ばしてタバコを抱いた。「兄弟よ。君が聖なるハーブになるというのなら、私は聖なる鉱物になろう」

神話は字義通りに解釈するべきものというよりは、何らかの比喩であることがしばしばあるものである。
クォーツとタバコが抱き合うというのは、一体何の比喩だろうか。クォーツがタバコを「兄弟」と呼ぶのはなぜか。
現代科学が、この問題に答えを与える。

タバコは、ミネラル成分として、非常に高濃度のケイ素を含んでいる。ケイ素はクォーツの別名と思ってもらえればいい。
植物のなかには土壌中のケイ素を大量に吸収して蓄えるものがある。タバコ(葉)、スギナ(葉)、キュウリ(実)、サルサパリラ(根)、甘草(根)、エキナセア(全草)、穀物などが有名だ。
なかでもタバコ葉のケイ素含有量は植物のなかでもトップクラスだ。
葉にフィトリス(phytoliths)と呼ばれる小顆粒があって、そのなかにケイ素がぎっしり埋め込まれている。

そう、タバコとクォーツ(ケイ素)が抱き合ったということは、タバコが土壌中のケイ素を吸収して内部に取り込み、植物界の神、鉱物界の神、両者が人間の病苦を癒やすためにこの世に顕現したということだ。
古代インドの神話は、現代科学の目から見ても充分に正しかったということだ。

ケイ素は、骨、皮膚、髪の構成要素であることはもちろん、精神への影響も大きい。
飲み水、食品など、ケイ素の摂取量が多い人ほど、認知機能が高く、アルツハイマー病を発症しにくいことがわかっている。
https://academic.oup.com/ajcn/article/81/4/897/4649100
これは2005年の研究だが、すでにこの30年前にEdith Carlyleが著書”Silicon Biochemistry”のなかで、「脳は、事実上、ケイ素でできている」と述べている。
脳は体の他のどの部位よりも、ケイ素の取り込みが多い。特に、海馬、尾状核、レンズ核で濃度が高かった。
記憶を司る海馬でケイ素の濃度が高いことは、非常に興味深いことではないか。
ケイ素の摂取量の減少がアルツハイマー病の発症率の増加につながることと関連しているに違いない。
ここから類推すれば、タールなどの添加物を含まない純粋なタバコ葉を吸っている人では、ケイ素が多く供給されるため、認知症の発症率が低いと考えられる。
さらに、認知症患者では、脳内のアルミ濃度がケイ素濃度より高い。アルミが蓄積すると、ケイ素を押し出してしまうことがわかっている。

必然か偶然か、ケイ素はコンピューターの半導体メモリーに欠かせない。
人間の記憶にもPCの記憶にもケイ素が関わっているというのは、妙に不思議な一致じゃないか。

PC、ケータイなど各種デバイスには、必ず半導体が、つまりケイ素が使われている。つまり、ケイ素は現代文明を根底から支える元素であり、そういう意味で我々の周りにはケイ素があふれているが、我々の食事からはケイ素がどんどん減っている。
精製した穀物はケイ素を豊富に含むヌカやフスマの部分を捨ててしまうし、現代の農地からは土壌中のケイ素がますます減少している。

ケイ素が不足しがちな現代人だが、食品やサプリを使ってケイ素をしっかり摂取してみるといい。
そうすれば、奇跡が起こる。どんな奇跡かって?
タバコを吸いたい欲求が、魔法のように消えるはずだ。
ケイ素こそ、魔法のミネラルと呼ぶにふさわしい。
次回以降、ケイ素がどのように著効するか、その具体例を見ていこう。