ナカムラクリニック

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2019年7月

ビタミンCと知能

2019.7.10

知能と血中ビタミンC濃度の関係について、Kubala and Katz(1960)がこんな報告をしている。
被験者は3都市にある四つの学校(幼稚園から大学まで)の学生351人である。
彼らを血中ビタミンC濃度測定の結果をもとに、高ビタミンC群(血液100mlあたり1.10㎎以上)と低ビタミンC群(100mlあたり1.10未満)に振り分けた。
さらに社会経済的な指標(家族の収入、両親の教育歴)をもとに調整してペアを作り、各群から72人を選んだ。
すると、高ビタミンC群の平均IQは低ビタミンC群よりも高かった。
具体的には、平均値で高ビタミンC群は113.22、低ビタミンC群は108.71と、4.51の差があった。
条件を均一に調整した両群でこれだけの差が生じる確率は、5%以下である。つまり、統計的な有意差を以て、IQの違いが確認されたということだ。

ここまでで、「血中ビタミンC濃度の高い人は、親の年収や学歴とは無関係に、IQが高い」ということが言えた。
この研究では、さらなる介入を行った。
両群の被験者に6カ月間オレンジジュースを飲んでもらい、その後、IQを再度測定した。
すると、高ビタミンC群ではIQの増加はごく軽微(+0.02)だったが、低ビタミンC群ではIQが3.54増加した。
偶然にこれだけの差が生じる確率はやはり5%以下で、統計的に有意な差である。

この結果を踏まえて、どういうことが言えるか?
「頭の良さは、作れる」ということである。
「まさか。単にオレンジジュースを飲むだけで、頭が良くなるとでもいうのか?」
そう、この研究は、そのまさか、が事実であることを示している。
ただし、同時に限界をも示していて、もともと血中ビタミンC濃度が高い人では、6カ月間毎日せっせとオレンジジュースを飲み続けても、IQの増加はごくわずかだった。
「血中ビタミンCが低いことが原因でIQが低い人」に対しては、IQを上げることが可能だよ、ということ。あくまで条件付きということだね。
ビタミンC欠乏性IQ低下症、とでも呼ぶべき人が存在するわけで、この研究はそういう人にとっては福音だと思う。
だって、単にオレンジジュース飲むだけで頭が良くなるんだから。

ところで、頭が良いからって、一体何の意味があるのか?
世の中には、おバカキャラゆえに愛される人もいる。
それに、頭の良さが幸せに直結するかといえば、必ずしもそうとは言えない。高い知性ゆえに、苦悩もまた増えるものだ。
『アルジャーノンに花束を』がそのあたりの事情を上手に描いていたよね。
しかしそれにもかかわらず、頭の良さは、あって損はないと僕は思う。頭の良い人はアホな振りができるけど、逆はできない。
学業、仕事はもちろん、人間関係でも優位に事を進められるだろうし、スポーツのように運動能力が求められる分野でも、知性がものをいう。
IQと収入に相関があることは、多くの研究が示しているところだ。
自分自身の社会的成功、あるいは我が子の幸福を願う人にとっては、ビタミンCの効用を使わない手はない。

上記の研究にはさらに続きがある。
人数をもう少し絞って、各群32ペア(合計64人)の被験者を、さらにもう1年追いかけた。
つまり、18カ月間、64人の被験者フォローし、この間4回の血中ビタミンC濃度測定と知能検査を行った。
その結果は以下のようである。

グラフを見てわかるように、血中ビタミンC濃度が50%上昇すると(血液100mlあたり1.03㎎から1.55㎎に増加すると)、IQが3.6上昇している。
この増加は、成人がビタミンCの摂取量を1日あたり50㎎増加させることで(1日100mgから150㎎に増加させることで)生じた変化である。

この研究を行ったKubala and Katzは以下のように結論している。
「知能検査によって算出されるIQのばらつきの一部は、そのときの栄養状態が反映されている。
少なくとも今回の研究で明らかになったのは、柑橘系、あるいはビタミンCを含むその他の栄養分がIQに影響している、ということである。
ビタミンCの摂取が減少することで、頭の切れや鋭さが低下する」
またこの研究では、血中ビタミンC濃度とIQに正の相関が見られたが、血中ビタミンC濃度が血液100mlあたり1.55㎎だったときに最も知的パフォーマンスが高かった。
この濃度は、70kgの成人が1日180mgのビタミンCを摂取することで達成できる。

この研究は1960年に行われたものだから、研究で使用されたオレンジジュースは、多分、ちゃんとしたオレンジジュースだったと思う。
ちゃんとした、という意味は、現代のスーパーで一般に売っているような濃縮還元のバッタもんジュースとは違う、ということだ。
だから、この研究を見習ってIQを高めるためにオレンジジュースを飲もうという人は、メーカーとか品質にはこだわったほうがいいよ。
ジュースではなくサプリでビタミンCを摂るのなら、180㎎といわず、もっと多めに摂るといい。
天然のビタミンCと合成のビタミンCではずいぶん吸収率が違うから、たとえばビタミンC(1錠1000㎎)のサプリを、毎日1錠摂るといい。
それだけで、メンタルパフォーマンスを高く保つ一助になるはずだ。

参考
How to Live Longer and Feel Better (Linus Pauling著)

不眠 

2019.7.9

なぜ眠れないのか。
そもそも、人間は朝に起きて、夜寝れるようになっている。
地平線の向こうからお日さんが昇りはじめ、だんだんと明るくなってくると、覚醒の時間。
交感神経が優位になって、「今日も一日頑張るぞ」と意欲がわいて、活動に備える。
そうして太陽の下、なんやかんやと活発に過ごし、やがて次第に日が傾き始める。
日が暮れると、交感神経から副交感神経優位に切り替わり、休息の時間。
食事をとって消化吸収につとめ、睡眠をとって明日への英気を養う。
眠り、そしてまた、日の出とともに目覚めて、、、
というのが人間に備わった生理的なリズムだ。

なぜ眠れないのか。
それは、このリズム、自律神経(交感神経と副交感神経)のスイッチがうまくいっていないからだ。
朝お日さんはすっかり高いのに、まだまだ眠い、寝足りないという人もいれば、逆に、夜休むべきときに目がランランと冴えて、眠気が来るまでゲームやネットで遊び続ける、という人もいる。

副交感神経はrest and digest(休息と消化)を司る神経である。
つまり、眠れないのは、休むべきときに副交感神経が優位になっていないからだ。
夜なのに交感神経優位、「まだまだ戦うぞ!」というモードであれば、眠れないのは当然だ。
ちなみに、こういう人は食欲不振を併発していることも多い。副交感神経が適切に機能していないのだから、restだけでなくdigestもうまくいかないのは筋が通っている。
ほら、逆に、昼ごはんを食べると眠くなったりするでしょう。あれは、消化管の活動に伴って副交感神経が働いて、日中にもかかわらず休息モードに傾いてしまうからだ。
昼食後の午睡、シエスタという習慣は、そういう人間の生理を踏まえたものだろう。

では、なぜ自律神経の切り替えがうまくいかないのか。
その原因は人により様々だ。
たとえば、ある種の食品が睡眠に影響することは間違いない。
カフェインが有名だけど、それだけではない。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5015038/
論文中、「菓子や麺類を食べると睡眠の質に悪影響があり、逆に魚や野菜の摂取が睡眠の質を高める」旨の記述がある。
不眠を訴える患者には「ひとまず精製糖質の摂取は極力控えましょう。できれば小麦もいったんやめてみましょう」と指導するようにしている。
しかし、きちんとやめれる人はなかなかいない。糖質の依存性が、不眠の治りにくさに直結してるんよねぇ。

意外なところでは、重金属による神経毒性から不眠を来していることがある。
たとえば水銀。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10770863
『無機水銀中毒を呈する労働者における慢性不眠』
タイトルそのものが論文の要約になっているから、あえて詳述しない。
有害金属に限らず神経毒性のある物質はすべて、自律神経にも影響し、結果、睡眠にも影響すると考えていい。
化学調味料(味の素)とか人工甘味料(アスパルテームなど)はもちろん、電子レンジで加熱調理した食材も避けるべきだろう。

このように不眠の原因には、摂るべき栄養の不足、避けるべき有害物質への曝露など複数の要因が考えられて、原因を特定することは難しい。
ただ一つ、絶対的に言えることがある。
「不眠は、ベンゾジアゼピン系薬物の不足によるものではない」ということだ。
なるほど、ベンゾを飲めば、ひとまず眠れるだろう。しかしそれは、不眠が治ったということではない。
単なる対症療法にすぎず、根本の原因には何一つアプローチしていない。
こういう治療は必ず行き詰まる。
ベンゾの依存性と耐性に絡みとられて、最終的にどこかで破綻するだろう。

初手が大切。
症状を抑え込むのではなく、原因を見据えたアプローチを心がけよう。

ナイアシン

2019.7.7

「ナイアシンを飲み始めてから、明らかに肌がきれいになりました。そういう作用もあるのですか?」
うつなど精神的な症状の軽快を期待して飲み始めても、ビタミンにはこういう、予期せぬボーナスがあるものだ。
「ナイアシンには血管拡張作用がありますからね。お肌の血流がよくなって、きれいになったということだと思います」
と答えていたのだが、最近読んだ文献によると、どうもそれだけではないようだ。

『ニコチンアミドの経口投与により経皮的水分喪失(TEWL)が減少する』
https://www.mdedge.com/dermatology/article/105426/atopic-dermatitis/eadv-oral-nicotinamide-reduces-transepidermal-water
ニコチン酸(別名ナイアシン)は、血管を拡張させる作用がある。これが皮膚の著明な紅潮や頭痛などの副作用を引き起こす。しかしニコチンアミド(ビタミンB3のアミド型)は、まったく別物と思ってよい。血管拡張の副作用がなく、安全性は確立している。
チェン医師は、ニコチンアミドの経口投与によって日光角化症(皮膚癌の前癌病変)を減らすことができるか、プラセボ対照二重盲検を行なった。
過去5年以内に少なくとも2個以上の非メラノーマ型皮膚癌を生じた患者386人を、ニコチンアミド投与群(500mg錠を1日2回経口投与)とプラセボ群に振り分け、12ヶ月フォローした。
ニコチンアミド投与によって非メラノーマ型皮膚癌の発生率が確かに減少することが、この研究によって示された。 (N Engl J Med 2015;373:1618-26)
この研究のもう一つのエンドポイントは、ニコチンアミドが皮膚のバリア機能にどのような影響を与えるか、経皮的水分喪失量(TEWL)を測ることで評価することだった。
上記の研究に参加した患者のうち292人に対して、開始時と3ヶ月おきに、前額、左前腕、左脚のTEWLを標準TEWL測定法によって測定した。その結果、ニコチンアミド群では、すべての測定でプラセボ群よりもTEWLが有意に減少していた。
たとえば、前額のTEWLは、プラセボ群よりも3ヶ月、6ヶ月時に5%少なく、9ヶ月、12ヶ月時に6%少なかった。前腕や脚では、12ヶ月時に7%少なかった。副作用はまったく見られなかった。
12ヶ月の研究期間中、プラセボ群のTEWLについて、夏は冬より15%多かった。
TEWLは季節によって変動するが、ニコチンアミドによって、その季節のTEWLのおおよそ半分が減少する、とチェン医師は語った。

ナイアシンの美肌効果が、ホットフラッシュに見られるような血管拡張作用によるものだとすると、ホットフラッシュを起こさないナイアシンアミドには美肌効果がないということになる。
しかし上記の研究で示されたように、機序は不明ながら、ナイアシン(研究で使われたのはナイアシンアミドだが、ナイアシンを使っても同様の結果が出たはず)には皮膚からの水分喪失を減らす作用がある。
これは要するに、肌の保湿力が高まったということだろう。
ナイアシンの美肌効果は、このおかげかもしれない。
アトピー性皮膚炎の患者は、角質層が薄く角質細胞間脂質(セラミド)が少ないことが知られている。つまり、保湿力が弱いため、乾燥肌になりやすい。
ということは、アトピー性皮膚炎の治療にナイアシンが有望かもしれない、ということだ。

アトピーの治療といえば、ステロイドかプロトピックぐらいしかなかった。
どちらも対症療法に過ぎず、しかも副作用がひどい。ステロイドを慢性的に使い続けた患者では、アトピー性皮膚炎というよりはステロイド皮膚炎になっていて、これは薬害そのものだ。西洋医学におけるアトピー治療は、もはや治療の体をなしていない。

人間の臓器のうち、最も大きいものは何か?
一般には、「肝臓」というのが答え。
しかし、「皮膚」と考える先生もいる。
そう、皮膚は外と内を区切る防御壁であり、発汗や立毛筋の収縮による体温調整、汗や皮脂を通じた異物の排泄、逆に経皮吸収など、様々な働きをするれっきとした臓器だ。
皮膚疾患は多くの場合、皮膚そのものの病気というよりは、何らかの病態が皮膚に反映されただけのことだ。乾癬にせよアトピーにせよ、症状の現れた皮膚を標的にした治療を続けているようでは、病気の本態が捕まることは永遠にない。
食べるものを変え、栄養の改善に努めること。
遠回りのようだが、根治に至る方法はこれしかない。

上記の研究は、栄養の改善に際して特にどういう点に気を遣えばいいのか、大きなヒントになる。
ナイアシンが皮膚の保湿力を高めてくれるというのだから、ナイアシンを含む食品を意識的に摂取すればいいし、あるいはサプリメントとしてナイアシンを摂取するのもいいいだろう。
ただしナイアシンにはホットフラッシュの副作用があって、アトピーの人ではかゆみがひどくなる可能性もある。
そういう意味では、やはりナイアシンアミドが無難かもしれない。

グルテンフリー

2019.7.6

ジョコビッチの言葉。
「ツォンガは僕がもうヘトヘトだということを見抜いていた。
サーブして、僕をおもちゃのように、前へ後ろへ走らすことができた。
観客たちも彼に声援を送り始めた。彼のサーブはますます速く、そして力強かった。
一方、僕のサーブはますますのろく、弱々しかった。
まるで化け物を相手にプレーしているように感じた。
芝に足が釘付けになったみたいに、彼のショットに反応できないことも一度ならずあった。
彼は第4セットを、6-3でとった。

第5セットが始まる前から、観客の目にはこの試合の勝者は明らかだった。
ツォンガの3-1で迎える0-40のサーブで、僕は自分のテニス人生で最低のサーブを打った。まさに、ブレイクポイントだった。
彼に勝つためには、最高のサーブを放ち、彼のバランスを打ち崩し、ゲームの流れを握らないといけない。
これまでのテニス人生で数十万回のサーブを打ってきたが、次に打つこのサーブを、そのなかでも最高の一打にしなくてはいけない。
そうすることが、僕がこの試合で勝つ最後のチャンスだ。
ポン、ポン、とボールを地面についた。そして、ボールを空中にトスした。
体をめいっぱい反らせ、今まさに、打とうとした。が、胸全体に息苦しさを感じた。
ラケットではなく、重いハンマーを持っているようだった。

体がもうダメだった。
フォルト。
気持ちも折れた。ポン、ポンとボールを二度地面につき、サーブした。
ダブルフォルト。
ゲーム、ツォンガ。
試合終了は唐突にやってきた。まるですみやかな処刑のように。
コートの真ん中で握手した後、ツォンガは喜びのあまりダンスをした。観客の声援を受け、彼は力とエネルギーにあふれていた。
一方、僕は疲れ切っていた。
17年間、毎日休むことなく練習をしてきた。
それでも、この最高の舞台で、フィジカル面、メンタル面両方において、自分のベストパフォーマンスを発揮できるだけの力がない。

なぜなのか。
僕には技術もあれば才能もある。意欲だって誰にも負けない。
メンタルやフィジカルを鍛えるためなら、どんなトレーニング環境も整えることができるし、世界で一番の医者に診てもらうことだってできる。
僕の足を引っ張っていたのは、僕が思いもかけないものだった。
トレーニングや練習には、何の問題もなかった。
僕は食べるものが、まったくなっていなかった。

『僕の人生を変えた食事』
2010年1月27日のダブルフォルトは、僕のテニス人生のどん底だった。
しかし、そのたった18か月後、2011年7月には、僕は見違えるように復活した。
11ポンド軽くなり、しかもショットの切れが増した。自分の人生のなかで最高に健康的で、元気だった。
僕は二つの目標を達成した。ウィンブルドンで優勝することと、テニス選手ランキングの1位になることだ。

ラファエル・ナダルの放った必死のバックハンドがコート外に着地し、ついに僕がウィンブルドンで勝ったその瞬間、僕は6歳の頃に戻ったようだった。
戦火で荒廃したセルビアで、誰しもに「かなうわけがない」と嘲笑された夢を、純粋に追いかけていた、あの子供の頃の気持ちが、よみがえった。
地面に崩れ落ちた。両手を空中に突き出した。かがみこんで、ウィンブルドンの芝の草を幾本か引き抜き、それを口に含んだ。
甘い味がした。こんなに甘いものは食べたことがない。

18カ月で僕を「上手なプレーヤー」から「世界一のプレーヤー」に変えたのは、新しいトレーニングプログラムではない。
ラケットを変えたのでもなく、練習を変えたのでもコーチを変えたのでもない。
僕は食事を変えた。

僕の体が必要としているものを、正しく食べ始めたことで、僕の人生は変わった。
食事を変えて最初の3か月で、体重が181ポンドから172ポンドに減った。
家族や友人はやせすぎじゃないかと心配した。でも僕はこれまでにないほど元気で、機敏で、エネルギーがあふれ出るようだった。
コート上では素早く、かつ、しなやかで、他のどのプレーヤーも追いつけないようなボールを返すことができた。
集中力も冴えわたり、体力もタフになった。全然息切れすることがなくなった。
アレルギーは軽快し、喘息も治った。
恐怖や猜疑心は、揺るぎない自信へと変わった。風邪やインフルエンザにもかからなくなった。
あるスポーツ記者は、僕の2011年のシーズンを、これまでどのテニス選手も成し遂げたことがない最高の一年だったと書いた。
10のタイトルを獲得し、3つのグランドスラムを成し遂げ、試合は43連勝した。
そして、このすばらしいシーズンを迎えるために僕がした唯一のことは、食事を変えることだけだった」

ジョコビッチの”Serve To Win”という本からテキトーに訳しました。
僕は英語のことは多少知ってるけど、テニスのことは壊滅的に知らないので、誤訳はあると思う。
Serving 0-40, with Tsonga up 3-1, I hit the lowest point of my career. It was break point, in more ways than one.
訳せますか?
文法的には簡単でも、テニスを知ってないと訳せない。
とりあえず、『テニス用語辞典』で「ブレイクポイント」の意味を調べてみた。
【ブレイクポイント】
相手のサービスゲームで、サーバーから見て30-40やデュースでアドバンテージレシーバーになった際に、「ブレイクポイントが訪れる」と表現する。
頭にダブルが付くダブルブレイクポイントは、ブレイクチャンスが2回あることを指し、スコアはサーバーから見て15-40となる。
トリプルブレイクポイントはブレイクチャンスが3回あることを指すので、スコアは0-40となる。
テニスのスコアは原則その時のサーバー側から見た基準で考えるので、ブレイクポイントが相手に訪れている時のスコアは、0-40、15-40、30-40、アドバンテージレシーバーのいずれかである。

調べたのに、れっきとした日本語なのに、まったく意味がわからないっていう^^;
テニスのルールを理解することはあきらめた。だから、上記の訳はテキトーです。
興味があってちゃんと読みたいという方は、翻訳本が出ている。
『ジョコビッチの生まれ変わる食事』

ジョコビッチのした食事の変更を、簡単に書くと、
グルテンフリー(小麦をやめる)、砂糖、乳製品をやめる。
基本的にこれだけ。
これだけで、単なる「うまいプレーヤー」から「世界一のプレーヤー」になれた、って彼は言ってる。
要するに、グルテン不耐症が彼の足を引っ張っていた、ということだろうな。
セルビアの実家はピザ屋だっただけに、小麦をやめるというのは相当な決断だったに違いない。

グルテン不耐症の人は、思った以上に多い。
うちの患者でも、小麦をやめるだけで症状がずいぶんよくなったという人はたくさんいる。
体がなんとなく調子が悪いという人は、まず、パンをやめてみるといいよ。

この本を読んでてふと思ったんだけど、、、
錦織圭の成績がパッとしないのは、彼、日清食品の宣伝塔で、カップ麺とか毎日食ってるからじゃないの?笑

スポーツドリンク

2019.7.5

「今日も暑い日になります。熱中症予防のために、こまめな水分補給を心がけましょう」
と気象予報士の姉ちゃんがいう。
しかし、これは大きなお世話じゃないかな。
のどが渇いたら、飲むなと言われたって飲むし、のどが乾いてなかったら、飲まないよ。
でも、こういうことを言うお医者さんがいる。
「熱中症を予防するためには、のどが渇いてからでは遅い。渇きに先回りして、事前に水分補給に努めるべきだ」
本当?
馬を水場に連れて行っても、のどが渇いてなければ絶対に飲もうとしない。
動物は自分の感覚優先だけど、人間は小知恵が働くから、エラい人から言われたら「そんなものかな」って思って、のどが渇いてなくても飲んでしまう。
しかしまぁ、だいたいにおいて、医者の言ってることはデタラメだからね。
まずは疑ってかかるのがいいよ。
ただ、そういう俺も医者だけど^^;

正常を知るために、異常を研究する。対比が物事の本質を浮かび上がらせるのは、よくあることだ。
世の中には、真夏の炎天下にマラソン大会に参加するような酔狂な人がいる。こういう人たちは相当に極端なことをしているわけだけど、彼らの生理を研究することで、逆に、普通一般の人たちが夏の暑さにどう対処すべきか、ヒントを得ることができるんだな。

1980年代に入って、マラソン業界に不思議な現象が起こり始めた。
マラソンのレースディレクターやランニング雑誌などが、こぞって「マラソン中の給水は必須」と言い出したのだ。
「のどの渇きを信用するな」「目玉が浮くほど飲め」とランナーたちは教えられ、今やマラソン中の給水は日常的な風景となった。

ところで、42.195kmを最も速く走る動物は何か、知っていますか?
それは、人間です。
人間は、短距離走ではチーターに及ばないし、パワーでは熊にかなわない。鳥のように空を飛ぶこともできないし、クジラのように水中で生きられない。
自然界でこれといって特技のない、どちらかというとひ弱な動物である人間が、長距離走となれば、無類の強さを発揮する。
脱水に強く、その気になれば給水なしに100km走ることさえ可能だ。いつ、どれくらい水を飲めばいいかは、体がわかっている。アフリカの炎天下、この走行能力を使って獲物が疲れ果てるまで追い込み、仕留める。人間はこうして数百万年を生き抜いてきたのだ。
ティモシー・ノークス博士は以下のように指摘している。「進化の過程で、ヒトは長距離走の名人になった。暑いなか運動するにあたって、比類ない体温調整能力を備えている。さらに、我々の脳は水分補給の欲求を後回しにする能力を発達させた。これは、水が少ししかなく、狩りを中断して水を探す余裕もない暑い日中に獲物を追いかけるには、極めて重要な能力だ」

しかし1980年代になって急に、米国スポーツ医学会は、マラソンの際の水分補給の重要性を言い始めた。人類が急に脱水に弱くなって、走るのに給水が必須になった、というのだろうか。
明らかにバカげている。
事実、過去の記録を調べると、そのバカバカしさが明確になる。
ノークス博士は、マラソン中の給水が一般的になる前の時代のランナーたちは、のどが渇いても平気だったことに気付いた。
「ガムを噛むだけで、水分はまったくとらなかった」と1908年にマラソンの世界記録を作ったマシュー・マローニーは言った。マイク・グラットンは1983年ロンドンマラソンで水を一口も飲まずに優勝した。
コムラッズ(南アフリカのウルトラマラソン。89kmを走る)で5回優勝した伝説のランナー、アーサー・ニュートンは「一番暑い日でも26マイル走るには、1回か、多くても2回の給水で充分」と考えていた。
カラハリ砂漠のサン人は今も摂氏42度の暑さのなかで、ほんの数回のどをうるおすだけで7時間走ってみせる。

それなのに、なぜ急に、アメリカスポーツ医学会は「のどの渇きは運動時に必要な水分の指標として信用できない」と宣言するのか。
コムラッズでは給水所の設置が当たり前になる以前には、一度たりとも脱水症や熱中症が問題になったことはなかった。
脱水症や熱中症が深刻な問題になったのが、頻繁な水分摂取が常識になった後というのは、一体どういうことなのか。
ノークス博士は様々なマラソンのデータを分析した結果、結論した。
「脱水症が原因で死亡したマラソンランナーは、いまだかつて一人もいない」
ところが、水分を多く摂取するランナーに目を向けると、話が変わってくる。マラソンによる死者は、すべてそこに起因していた。
アメリカでは特に暑くもない日にマラソンランナー3人が死亡していた。イギリスでは、自分のクライアントに水分摂取を指導していたインストラクターが、ロンドンマラソンの完走直後に亡くなった。2000年ヒューストンマラソンでは給水所が1マイル置きに設置されたが、数十人のランナーが医療テントに運ばれた。
ノークス博士は言う。「彼らは、溺れていたのだ。水が足りなかったのではなく、多すぎて死んだのだ。水分の過剰摂取により血中ナトリウム濃度が低下し、脳浮腫を起こした。脳浮腫は、脳圧亢進による脳の低酸素状態を引き起こし、結果、ランナーを死に至らしめた。つまり、ランナーの死因は水中毒だ」

スポーツ飲料メーカーなどの巨大企業がすべてを抑えている。スポーツ医学界、テレビ、新聞、雑誌の一大スポンサーとして、多額の資金を提供し、自社製品の販売促進に余念がない。
地球上のすべての生物は、いつ、どれくらい水分をとればいいかわかっている。牛も犬も赤ちゃんも、皆わかっている。しかし、人間は違う。自分の感覚を信じないで、医者が言うから、気象予報士の姉ちゃんが言うから、「暑いときにはこまめに水分補給しよう」と思う。
しかしそれはでっち上げだ。もちろん科学的根拠なんてない。ニセの健康不安を煽りたて、結果、マラソンランナーたちは本当の健康被害を受けた。人々をだまして水分が足りないと信じさせ、飲みすぎるよう仕向けた。それはマーケティングによる死だった。

『ボストンマラソンのランナーにおける低ナトリウム血症』
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa043901
この論文、簡単に要約すると、「タイムの速い一流ランナーは完走後、体重が減っていたが(飲む量が少なく、しっかり汗をかいていた)、タイムの遅い素人ランナーほど、完走後の体重が増えていた(走ってる最中に水飲みすぎて腹チャポチャポになってる)」ということ。後者は、スポーツ飲料メーカーにとっての「いいお客さん」であり、また、低ナトリウム血症による死のリスクが最も高い人でもある。

ちなみに、マッチョになるために筋トレを頑張ると同時に、プロテインをたくさん飲んでる人がいるけど、「プロテインで筋肉増量」っていうのも、企業のマーケティングだよ。
https://www.livescience.com/8086-protein-supplement-myth-revealed-body-work.html
もちろん、プラセボ効果もあるだろうから多少効くだろうし、栄養状態が不良で肉、魚、卵とか食事由来のタンパク質が不足しているなら、プロテインを摂る意味はあると思う。
個人的には牛乳は体によくないと思っているから、牛乳由来のプロテインパウダーは、あえて人には勧めない。でも、下痢しちゃうのに無理に飲もうとしてる人なんか見ると、ずいぶん気の毒だね。

参考
・”Natural Born Heroes”(Christopher McDougall著)
・ミオンパシー整体院UROOMの續池均さんから大きな示唆を得ました。ありがとうございます。