2019.3.19
風邪をひいて、熱が出る。
これは万病を治す治癒反応そのもので、体内にたまった毒物のデトックスはもちろん、癌細胞さえも排除してくれるのではないか、という話がある。
たとえばこんな論文。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5884214/
『癌患者に発熱反応を引き起こすPAMPを用いる治療の安全性について』というタイトル。
要約
ウィリアム・コリーは1895年から1936年にかけて数百人の癌患者の治療にあたったが、その方法が実にふるっている。発熱を引き起こす細菌の抽出液を患者に注射を行ったのだ。
同様の研究として、1940年代にロシアのクリュイエバらがトリパノソーマの抽出液を用いた研究が挙げられる。多くの寛解症例および治癒症例が報告された。
これらの二つの研究において、治療が奏功した理由を分子レベルで説明するなら、『病原体に関連した分子パターン物質(PAMP)』こそがポイントではないかと我々は推測した。
癌のマウスにPAMPを複数回投与することで、固形腫瘍が消滅することを我々は示すことができた。
そこで我々としては、癌の治療に際しては。発熱を引き起こす治療プランを使って、承認された癌治療薬とPAMPを組み合わせて用いることを推奨したい。
この後ろ向き第1相臨床試験において、131人の癌患者に対して、細菌抽出物を用いた発熱惹起療法、発熱惹起療法と承認薬の組み合わせ、承認薬の組み合わせ、これらの治療法の有効性と安全性について我々は報告した。
感染による発熱を引き起こすことで副作用が予想されたが、軽微なものであった。523人以上の患者に対して発熱を引き起こしたが、深刻な有害事象は観察されなかった。
上記の論文は2018年で最近のものだけど、癌の温熱療法は昔からあった。
低体温(35度とか)は癌の増殖に適した環境で、逆に高体温(39度など)は免疫系の活性化と相まって癌細胞が死滅する、と言われている。
風邪をひいたからといって、何も落ち込むことはない。
むしろ大事なのは、風邪をデトックスのチャンスととらえて、上手に利用することだ。
風邪でしんどいからと、むやみやたらに薬で症状を抑え込むのは、実は一番やっちゃいけないことだ。
風邪のときにやるべきことはシンプルで、とにかく寝ること。あとは水分摂取。これだけだ。
これは科学的データというよりも経験的な話だけど、ちょくちょく風邪をひくいわゆる病弱な人のほうが、病気らしい病気をまったくしない人よりも案外寿命が長いのではないか、と思うことがある。
病気らしい病気をまったくしない人は、いざ病気になると癌とか脳卒中とかでぽっくり逝っちゃったりする。
「風邪をひかない人」には、二通りのパターンがあるようだ。つまり、体内に毒物がたまっていなくて本当の意味で健康な人と、風邪をひくことさえできないという人だ。
危険な農薬、食品添加物、遺伝子組み換え食品などが流通している現代日本で、前者の健康を保ち続けるのは相当困難なことだ。
こういう時代だからこそ、上手に風邪をひくことはとても大事だ。
風邪をひくことさえできずに癌になってしまった人に対して、病原体の抽出物を注射してわざと発熱反応を引き起こし、癌の治療に結びつけるというのが上記論文の治療法だ。
しかし、有効性が証明されているにもかかわらず、一般の病院でこの治療法を行っている医者はまずいない。
癌患者にとって不幸なことに、研究と臨床には圧倒的な乖離があって。研究での成果が臨床にまったく反映されていない。
癌の標準治療は何十年もあいかわらず「切る、焼く、殺す」だけ。
ビッグファーマの利益にならない治療法は、絶対に普及することはない。
以下の論文は2019年と最近のものだけど、癌を脂肪細胞に変換しようという発想が斬新だ。
ただ個人的には、実際的な治療法としてちょっと賛同しかねる。MEKインヒビターという抗癌剤を使っているからだ。
しかし製薬会社が利益にいっちょかみしている分、臨床で普及する可能性はあると思う。
https://www.cell.com/cancer-cell/fulltext/S1535-6108(18)30573-7
『脂肪を付けて転移をなくす~浸潤性乳癌細胞を脂肪細胞に変換することで、癌の転移を抑制する』
要約
癌が治療抵抗性を生じたり悪性転化して進行するのは、癌細胞に可塑性があるためである。上皮間葉転換(EMT)のような脱分化のプロセスは、細胞の可塑性を高めることが知られている。
本研究において、我々は癌細胞の可塑性を利用することで、上皮間葉転換に由来する乳癌細胞に分化転換を起こし脂肪細胞に変換させて癌を治療できることを実証した。
分化転換のメカニズムが分子レベルで明らかになることで、治療としてMEKインヒビターとロシグリタゾン(チアゾリジン系抗糖尿病薬)を組み合わせて使うアイデアが出た。
マウスやヒトの乳癌に投与したところ、この組み合わせ療法は浸潤性・播種性の癌細胞を有糸分裂後脂肪細胞への変換を促し、原発性腫瘍の浸潤および転移を抑制する結果となった。
2019.3.18
癌の研究をするには、まず、実験室レベルで癌細胞を作製することが必要だ。
しかし、正常な細胞をどうやって癌化させたらいいものか、世界中の研究者が頭を悩ませていた。
そうしたなかで、1915年世界で初めて癌細胞の作製に成功したのが、山極勝三郎博士である。
ウサギの耳にコールタールを塗ることで、癌を引き起こすことに成功した。
このおかげで、世界中の研究所で癌細胞の作製が可能となり、癌の研究が飛躍的に進むことになった。
山極博士の発見から百年余りの時が流れた。
癌について、かなり多くのことが分かってきた。
正常細胞がどのように癌細胞になるのか、もう少し具体的に見ていこう。

まず、最初の段階で関与しているのは活性酸素だ。この悪影響を抑えるのが体内にある抗酸化物質だが、活性酸素の封じ込めに失敗すると、DNAに傷がつく。
DNAの傷が癌に直結するわけではない。人間には損傷したDNAを修復する仕組みが備わっている。
しかしあまりにも強いストレスや、毒物摂取の多い不摂生な生活によって、修復能力を上回るほどのDNA損傷が蓄積すると、やがて細胞は突然変異を起こす。
ここでもまた、突然変異が細胞の癌化に直結しているわけではない。
突然変異した細胞には、自らの異常を認識するメカニズムがあって、これによって異常細胞は自殺する。これをアポトーシスという。
しかし、異常細胞のなかには、アポトーシスを起こさず、とことん生きようとする細胞がいる。それどころか、彼らは無限に増殖する能力を持っている。これが癌細胞だ。
それでも、癌細胞の発生が、そのままイコール癌の発症、というわけではない。
「健康な人も1日数千個くらいは癌細胞ができているが、免疫のおかげで発症しない」という説を聞いたことがあるだろう。体内には癌細胞を異物として排除する免疫の働きが備わっているわけだ。
この免疫細胞による抑制をも振り切って、異常増殖に歯止めがきかなくなった状態、これが癌の発症である。
上記のように、癌が発症するまでに人間は多くのセーフティネットを張り巡らしている。
ここに、癌治療のヒントがある。
セーフティネットをすべてかいくぐられたせいで癌の発症に至ったわけだから、どこかでこの流れをきっちりシャットアウトできれば、癌を止めることができるはずだ。
たとえばビタミンCがなぜ癌に効くのか。
・まず、ビタミンCは抗酸化物質だから活性酸素の軽減に寄与する。
・DNAの修復酵素の活性化や異常細胞のアポトーシス促進にも関与している。
・さらに、ビタミンCは免疫系を活性化する。ビタミンCを取り込んだ白血球は有走能や貪食能が高まり、癌細胞をも貪食する。
・また、ビタミンCによってコラーゲンの生成が促進され、癌細胞をいわば『コラーゲンの壁』で封じ込め、転移を抑制する。
・癌細胞に対する直接的な作用は、実はビタミンCが酸化剤として働く点にある。
「ビタミンCが酸化剤として働く?抗酸化物質じゃなかったの?」と思うかもしれない。
ビタミンCは還元作用(たとえば3価の鉄イオンを2価にするとか)を発揮した後には、モノデヒドロアスコルビン酸ラジカルになる。
このとき還元された金属が酸素への電子供与体として働く。そのとき、活性酸素種のスーパーオキシドラジカルが発生する。
これはSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって過酸化水素になる。この過酸化水素が、癌細胞に対する特異的な酸化剤として作用する。
正常な細胞にはカタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼがあって過酸化水素を分解できるが、癌細胞にはこうした酵素が少ないため、過酸化水素による毒性をもろに受ける。
そのため、癌細胞内のミトコンドリアが障害を受けATP産生が減少し、細胞死が誘導される、という仕組みだ。
https://www.aimsci.com/ros/index.php/ros/article/view/149
丸山ワクチンって聞いたことありますか?
「ゴキゲン中飛車に対する居飛車側の対抗策のことでしょ」と答えた人は将棋ファンに違いない^^;
そうではなくて、医学でいうところの丸山ワクチンというのは、「結核患者は癌にならない」という観察から、丸山千里博士によって研究開発されたワクチンのことだ。
本来皮膚結核への適応だったが、癌への有効性(しかも副作用がまったくない)が示されている。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnms1923/38/5/38_5_267/_article/-char/ja/
しっかりしたエビデンスがあるにもかかわらず、やはり、一般の医療では認められていない。「知る人ぞ知る治療法」といった存在になっている。
国立がん研究センターで所長を務めた某医師は、患者には一般の抗癌剤を投与しながら、自分が癌になったときには丸山ワクチンを使っていた、なんていう話もある。
丸山ワクチンの抗癌作用は、ビタミンCの効き方と似たところがある。
まず、免疫系に作用する。つまり、マクロファージを活性化して癌細胞の貪食を促進し、NK細胞が活性化して癌細胞を攻撃、排除する。
また、こうした白血球から分泌される様々なサイトカインが、癌の増殖を抑制する。
もう一つ、丸山ワクチンにはコラーゲンの増殖作用があり、癌を封じ込める。このあたりもビタミンCと似ている。
一般に認められてない癌治療としては、他にゲルソン療法、アミグダリン(梅、ビワ、アンズなどの種の成分)療法、重曹、ホウ素、ヨウ素など複数あるが、共通していることがある。
これらの治療法はみな、活性酸素の発生からDNA傷害、免疫系の機能不全、そして癌の発生に至るプロセスのどこか途中で、きっちりと流れを断ち切る点だ。
しかもどの治療法も安価で、比較的容易に実行できる。
ひるがえって、一般のいわゆる三大療法(手術、放射線、抗癌剤)はどうか。
三大療法は要するに、「切る、焼く、殺す」治療法であって、いずれも、上記の癌の発生プロセスをまったく無視している。
癌の発生メカニズムに関する仮説など、研究現場で培われた知見が、臨床現場ではまったく生かされていない。
「癌は一度できたら自然に治ることはない」という考え方のままで、何十年も経過している。こんなおかしな話はない。
術式の変更(腹腔鏡を使いだしたり)とか新しい抗癌剤(分子標的薬など)とか重粒子線治療とか、技術的な変化はあっても、同じパラダイムのなかの変化であって、患者にとって有害無益な治療であることは変わりない。
コールタール塗布によって癌細胞の作成に成功したという山極博士の発明は、本来であればノーベル賞級の発見だった。この発明のおかげで、飛躍的に癌研究が進歩することになったのだから、人類への貢献は計り知れない。
しかし、この発明を断じて容認できない人たちがいた。
石油および石炭由来の製品の販売によって、莫大な富を得ている人たちである。
西洋医学の薬というのは、ほとんどすべてが石油や石炭からできている。石油から精製したベンゼン環や石炭の乾留から得たコールタールに、様々な修飾をほどこして、多様な薬効を持つ薬を作り出し、人々に売るのが彼らの仕事だった。
だから、コールタールによって発癌させることに成功したという山極博士の発明は、彼らにとっていかにも不都合だった。
『自然療法による癌の治癒』を認めることも、彼らには到底できかねることだった。
こうして、今なお、僕らは体にいいはずもない薬を飲み続け、癌の標準治療を受け続けている。
2019.3.17
先進国では癌による死亡は減少傾向にある。欧米では毎年おおよそ5%ずつ死亡数が減っている。
唯一、日本だけが癌の死亡数が増え続けている。
癌になるのは、十年前ほど前には3人に1人だと言われていた。それが今や、2人に1人だと言われている。
なぜか。
なぜ日本だけ、こんなに癌が増えているのか。
高齢化の影響?
なるほど確かに、高齢になるにつれ遺伝子変異が蓄積し、癌を発症する可能性が高くなる、と言われている。
実際、老衰で死亡した高齢者を解剖すると、あちこちに癌が見付かる。
しかしそうした癌はおとなしい。下手に検査で発見されて、抗癌剤で叩くようなことをしない限り、特に悪さはしない。
たとえばドイツ、イタリア、フランスでも高齢化が進んでいるが、これらの国で癌の死亡数は増えていない。
むしろ、検査のせいで癌が増えているのではないか、という話がある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15070562
『診断用X線による発癌の危険性~イギリスおよびその他14か国での評価』という論文。
診断用X線というのは、胸部レントゲン写真とかだけではなくて、当然CTも含んでいる。
衝撃的なのは、すべての癌に対して医原性被爆による発癌の占める割合が、日本では3%以上で、先進国で飛びぬけて多いことだ。
これは総合病院で勤務したことがある医者なら実感としてわかることだと思うけど、何でもかんでも、やたらめったら、CT撮ってるもんね。
救急に「おなかが痛い」って来た姉ちゃんがいた。ただの胃腸炎だろう、って思ったから「家に帰って安静にしてくださいね」で帰そうとしたら、上級医から待ったがかかった。
「一応CT撮っといて。念のために」
「なぜですか」
「胆石、アッペ、結石、急性膵炎。いろいろな可能性が考えられるから、それらを除外しなくちゃいけない。
急性膵炎で帰して、家で増悪して、君、責任とれるの?裁判になったらどうするの?」
若い女性だったから事前に妊娠の可能性の有無を確認し、CTを撮った。
結果から言うと、この人はやっぱりただの胃腸炎だった。無駄に被爆しただけのことで、この人にはCTなんて必要なかった。
「0.1%でも可能性があれば、その可能性を除外しなくてはならない」という大義のもと、そして訴訟のリスクを避けるという事なかれ主義のもと、医療現場ではCTがバンバン撮られることになる。
この上級医が特殊なのではない。むしろ、ガイドライン通りの医療を実践するスマートな医者だったと思う。
でも、こういう先生と分かり合うことって、なかなか難しいんだ。
点数がかさんで保険制度が崩壊する?知ったことか。被爆による発癌リスク?知らねえよ。
分かり合うことなんてハナからあきらめてたから、僕も勤務医時代には遠慮なくCTを撮った。良心の呵責を感じないよう、心の一部を麻痺させながら。
だからみなさん、病院なんてよほどのことがない限り、行くものじゃないですよ^^;
CTでなぜ癌になるのか?
これは活性酸素の影響だ。
放射線、毒物(薬、食品添加物、農薬など)、ストレスによって活性酸素が生じると、DNAに傷がつく。
そうして変異を起こした細胞が癌化するというのが、発癌のおおよそのメカニズムだ。
だとすれば、癌にならないためにはどうすればいいか。
まず、活性酸素を抑えることだ。
危険な薬や食品を摂取しない、放射線を避ける、といったことが重要だけど、この現代社会で暮らしている限り、完全に避けることは不可能だろう。
そこで、抗酸化物質の摂取が助けになる。
たとえば社内検診でどうしてもレントゲンを撮らないといけないとなれば、事前にビタミンCのサプリを摂っておいて、少しでも体内の抗酸化物質レベルを上げておこう。
検診の三日ほど前から、ビタミンC 1錠(1000mg)を毎食後摂っておくだけで、被爆のダメージは相当軽減されるはずだ。
2019.3.16
風邪の人には、「水分摂って布団にくるまって温かくしていっぱい汗かいてください。あ、水分って言っても、ポカリとか甘いのはダメですよ。水かお茶ね」で終わり。
僕のほうでやってあげられることは、基本的にはない。
だって、風邪というのは治癒反応そのものであって、抑え込むべき『病気』じゃないから。
でも、患者のほうでは物足りない顔をする。
「病院というのは病気を治すところであって、病気を治すには薬でしょ?薬、何か出してよ」と顔に書いてある。
医者もサービス業。
患者の要望に応えることも重要だから、こういうときには極力害にならない薬を出してあげる。
まず、シナール。風邪にビタミンCは鉄則だ。
抗酸化を強める意味で、プロマック(亜鉛)もいい。適応外処方だけどね。
咳や痰とか呼吸器系の症状があるなら、ムコフィリン、ムコダインあたりが無難。Nアセチルシステイン、カルボシステイン、いずれも抗炎症作用、抗酸化作用があるから、風邪の治癒を早めてくれるだろう。
あるいは、トランサミン(トラネキサム酸)もいい。のどが痛い、という人にはテキメンに効く。
抗酸化作用があるのはもちろん、シミを消す美白作用もあるから、風邪が治ると同時にお肌がキレイになっちゃうかもよ^^
勤務医の頃、深夜当直してたときに来院した患者。どう見ても、ただの風邪。「病院来る必要ないよ。家で寝てることが一番の薬だろう」って本音では思うけど、上級医の指示に従って、ルーチン通りに採血したり抗生剤出したりしてた。風邪に抗生剤なんて、こんな有害無益な医療行為はないんだけどね。罪なことをしてたなぁ。
まず害をなすなかれ、が医者の基本。
そういう意味で、トランサミンなんてすごく使い勝手がいい。
薬の処方っていう、何か「仕事してる感」を出せて、しかも無害だから^^;
しかしこの薬は、調べれば調べるほど、いい薬だと思う。
トランサミンは、あえてざっくりいうと、必須アミノ酸のリジンみたいなもので、要するにサプリみたいなものだから、副作用はまずない。
肝斑(顔にできる茶色いシミ。ピルを服用する女性に多い)にも適応があって、美容系のクリニックに勤めている先生なら、使ったことのない人はいないだろう。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4235096/
肝斑患者50人に、1日2回、顔の半分にトランサミン3%溶液を塗り、もう半分にハイドロキノン3%溶液と0.01%のデキサメサゾンの混合液を塗ることを12週間続けてもらった、っていう研究(すげぇ実験だな^^;)。本文に比較写真があがってるけど、トランサミンで本当に改善しているね。
美容だけでなく、マジメ(?)な使い方としては、止血作用があるから、救急現場とかの重度の外傷、外科手術、重度の月経などに投与されている。
トランサミンを作ったのは岡本彰祐博士。
なんとこの先生、トランサミンだけでなく、イプシロン(抗プラスミン剤)、アルガトロバン(抗トロンビン剤)の発明者でもあるというんだから、血液内科医はこの先生に足向けて寝れへんぞー笑
日本よりもむしろ外国で適切に評価されている人で、「抗プラスミンの研究」でフランスの学者からの推薦でノーベル賞にノミネートされたことさえある。
「戦前、慶応大学医学部で生理学の講師をしているときに、召集令状が来ました。北支派遣軍に入り、河南省で栄養失調の研究に従事していました。
ところが当時、大陸で急性熱性ライ病が発生し、兵士らがライ性肺炎で死亡する事態が起こりました。私は血液生理学が専門でしたから、急遽、東京の第七陸軍技術研究所での勤務を命じられ、帰国しました。
ここでの研究で、ある酵素をブロックすれば結節ライは治るのではないかと仮説を立て、様々な実験をしていました。そのときに、東大薬学部の落合英二教授が合成したクリプトシアニン(虹波)という色素に、コリンエステラーぜ抑制作用を発見しました。つまり、虹波がハンセン病の筋麻痺をも改善することになるということを発見したのです。
この成果がきっかけで、私は酵素阻害剤の研究に目を向けるようになりました」
クリプトシアニンは、ルミンAという商品名で現在も販売されている。第三類医薬品だから誰でも買えるんだけど、下手な処方薬よりいい薬だと思う。値段が高いのが難点だけどね^^;ルミンAには抗アレルギー作用があって、この時期、花粉症の人には助けになるだろう。この抗アレルギー作用はヘルパーT2細胞を介したものだということが、最近論文で発表された。
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0199666
プラスミンはタンパク分解酵素のひとつで、岡本博士はその阻害物質を追求した。
注射器で血を抜いて、それを試験管に移して放置すると、ゼリー状に凝固する。このときに働く主役が、フィブリノーゲンというタンパク質だ。
普通の血液では、その濃度は0.2〜0.4%であるが、非常に変動しやすく、細菌感染などの炎症が起きると数倍になる。
なぜだろうか。その生理的な意味は?
このタンパク質が、細菌の封じ込めに役立っているのではないか。
1946年にイギリスの研究者がフィブリノーゲンを急速に分解する酵素を発見し、これをプラスミンと名付けた。プラスミンの作用によりフィブリノーゲンが著しく減少すると、致死的な大出血が起きる。これを避けるために、「プラスミンの抑制物質」を探すのが、岡本博士の目標だった。
こうして精力的に研究を続けた岡本博士は、2系列3種類の新薬を世に出すことに成功した。
それも、そこらへんの取るに足りない薬ではなく、3種類の合計で年商100億円の売り上げを持続している薬だ。特にトランサミンは、WHOの必須医薬品モデルリストに収載されているし、イギリス軍や米軍でも常備薬として採用されている(軍隊で使われているということは、有効性の何より雄弁な証拠なんだよ)。
岡本博士は東京出身の慶応ボーイなんだけど、戦後は神戸大学の教授に招聘されて、そのまま神戸を終の住処とされた。
研究者として超一流だったことはもちろんだけど、教育にも非常に熱心だった。インドネシアの教育委員会のお偉いさんたちが、日本の教育モデルを学びたいと岡本博士にお願いしたとき、博士は彼らを連れて、灘高校や神戸大学附属中学校へ連れて行き、教育現場を案内した。
岡本博士が神戸大学附属中学校に来たとき、僕はそこの生徒だった。当時、「探究」という自由課題の授業があって、それを視察に来た岡本博士と、僕はすれ違っている。でももちろん、僕は博士を認識していない。
すれ違った25年後の今、博士が生前書いた本を読んで、彼の歩んだ人生の足取りを追いかけている。人生の縁の糸は、どこでどんなふうに交差してるか、わからないものだね。
参考:『岡本彰祐アンソロジー』岡本歌子編 築地書館
2019.3.15
読売新聞の記事から。
『50M走で骨折、片足で立てず…子どもの体に何が?』https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20190311-OYT8T50009/
「走っただけで、骨折してしまう」「片足立ちでフラつく」「雑巾がけで腕を骨折した」「跳び箱に手をついた際に骨が折れた」「うまくしゃがめない」
昔の子供にはほとんど見られなかった症状が、最近子供たちの間で増加しているという。
なぜ、こんな子供たちが増えているのか。
記事の答えをざっくり要約すると、
「スマホやケータイゲームなど遊びの質が変わり、外で活動的に遊ぶことが少なくなった。そのせいで、骨が弱くなったり運動能力が低下したから」ということになる。
確かにそれはあるだろう。でもそれだけではないと思う。
まず指摘したいのは、血中ビタミンD濃度の低下。
外で活動的に遊ぶことが少なくなった、ということに関して、「活動的に遊ぶこと」、つまり筋骨格系への物理的負荷により骨が刺激を受け、骨形成が促進されることについては記事中でも言及されているが、なぜ「外で」なのかという点に触れていない。
外には太陽がある。これがすばらしいんだ。
日光に当たることによって、皮膚でビタミンDが生成される。
ビタミンDは胃腸からのカルシウムの吸収量や、腎臓でのカルシウムの再吸収量を調整し、骨にカルシウムを沈着させる。
カルシウムだけ摂っても、ビタミンDがなければ骨の強化にはつながらない(さらに言えば、マグネシウムやビタミンKも必要)。
また、血中のビタミンDは、食事由来よりも自分の皮膚由来のほうが多いというから、ビタミンDの補給には太陽に当たることが一番手っ取り早い。
一般の医学は、紫外線による害を不必要に強調していると思う。
日光に当たることによる恩恵(抗ストレス作用、抗うつ作用、抗癌作用、集中力アップなど)も忘れるべきじゃない。
ADHDの子供では血中ビタミンD濃度が低いことが分かっている。2ヶ月ほど前に出た論文で、ビタミンDのサプリでADHDの症状が軽快するというのがあった。参考にあげておこう。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1876382018301975
グリホサート(商品名:ラウンドアップ)という除草剤がある。
発癌性、遺伝毒性などが言われている。
ラウンドアップのせいで癌になったとして販売元のモンサントを提訴した裁判では、モンサントが敗訴して、約2億9000万ドルの支払いを命じる判決が出た。
人間への毒性のみならず、生態系への悪影響もあって、世界中で禁止の方向に進んでいるが、なぜか日本では使用量の規制を緩和する方向に進んでいる。
グリホサートは植物が土から栄養分やミネラルを吸収するのを阻害することで、除草作用を発揮しているわけだけど、この除草剤をまいた畑で育った野菜は、栄養分、特にミネラルの含有量が少ないことが分かっている。
つまり、上記記事に見られるようなひ弱な子供が増えている背景には、食品中に含まれている栄養分の低下があるのではないか、というのが僕の意見だ。
ただでさえ栄養分が低下してる上に、お菓子やジュースなどの糖質を過剰摂取し、さらにそこにアスパルテームなどの人工甘味料が含まれていれば、骨の劣化はますます進むだろう。
さらに言えば、野菜には化学肥料由来の硝酸体窒素が大量に蓄積しているし、おまけにその野菜は雄性不捻(食べ続けたマウスが無精子症になることが示されている)だし、遺伝子組み換え食品もすでに僕らのテーブルに上がっている。
栄養素が低下しているばかりか、毒入りの食物を成長期の子供が食べているわけだから、発育に影響が出ないはずがない。
たかが食事、じゃない。子供の健康こそが、日本の未来だ。
食事をおろそかにする国は早晩滅びる、といっても過言じゃない。
日本の政治は、モンサントなどの多国籍企業の利益を優先し、自国民の方向を向いていない。
となれば、僕らができることはひとつ。
知識を身につけ、自衛に努めるしかない。
最後に、グリホサートの影響(植物中のミネラルの減少)について考察した論文があったので、紹介しよう。
https://core.ac.uk/download/pdf/11741277.pdf
『グリホサートは、非グリホサート耐性大豆の種子や葉に含まれるカルシウム、マンガン、マグネシウム、鉄の濃度を減少させる』
要約
グリホサートが、植物の成長にどのような影響を与えるか、また、非グリホサート耐性大豆(Glycine max, L.)の葉と種子の中のミネラル栄養素にどのような影響を与えるかを研究するため、温室で実験を行なった。
グリホサートを苗条にスプレーで散布した。除草のために推奨されている使用割合の0.06から1.2%の間で、徐々に使用量を増やしていきながら散布した。
3週齢の植物を使った実験で、苗条に散布するグリホサートを増やしていくと、若葉のクロロフィル濃度および苗条の乾燥重量が有意に減少した。減少は特に植物の若い部分で著しかった。
グリホサートの散布量の増加に応じて、シキミ酸の濃度が、グリホサート散布のないコントロール群と比べて、古い葉では約2倍に、若い葉では16倍に増加した。
ミネラルを分析すると、葉に含まれるカリウム、リン、銅、亜鉛については影響を受けていなかった(むしろ、リンと銅についてはグリホサート投与群の若い葉では有意な増加さえ見られた)。カルシウム、マンガン、マグネシウムについては減少しており、特に若い葉での減少が顕著だった。
鉄については、グリホサートによって葉に含まれる濃度が減少する傾向が見られた。
次の実験は、成熟した実を収穫して行なった。
種子中の窒素、カリウム、リン、亜鉛、銅の濃度については、グリホサート散布によって減少していなかった。窒素、カリウム、亜鉛、銅については、グリホサートの散布量が最大のときに、むしろ増加していた。対照的に、種子中のカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガンの濃度は、グリホサート散布によって有意に減少していた。
これらの結果は、グリホサートがカルシウム、マグネシウム、鉄、マンガンの吸収および輸送を阻害したことを示唆している。グリホサートがこれらのミネラルに結合したために可動性を失ったためだと思われる。
グリホサートによる種子中の鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウム濃度の減少は極めて特異的であり、種子の質に影響を及ぼしている可能性がある。