ナカムラクリニック

阪神・JR元町駅から徒歩5分の内科クリニックです

2019年

講演会

2019.6.26

今日も浜学園で講演会をしてきました。

内容は前回とほぼ同じで、『栄養と知能』がテーマ。
平日の昼に行われるだけあって、聴きに集まったのはほとんどが生徒のお母さんだ。

『僕らの体は、食べたものからできている』
これが講演のメインテーマであり、結論でもある。
食べ物がいかに子供の知的・精神的成長に影響するか、多くの研究を示しつつ説明した。
子供の受験に際して、お母さんの役割はとても大きい。
「勉強し、受験するのは子供自身だから、私にできることは何もない」とお母さんが思っているとしたら、とんでもない間違いだ。
多くの家庭では、お母さんが毎日の料理を作っている。その料理を食べて、子供は体を作り、心を作っていく。つまり、子供の成長を下支えしているのはお母さんだ。
お母さんが食事にまったく無頓着で、添加物や農薬も気にせず、グズれば甘い菓子を食べさせて黙らせる、みたいなスタンスだと、子供はどうなるか。
逆にお母さんが、子供が口にするものに気を遣い、知的成長に好ましい栄養を意識して摂らせるよう心がければ、子供はどうなるか。
受験に成功する確率が高いのは、どちらの子供か。答えは明らかだろう。

子供は一人で受験に向かっているんじゃない。お母さんができることは多い。特にお母さんの作る食事の影響の大きさは計り知れないほど大きい。「食事が、人生における成功の可否に関わっている」といっても決して大袈裟ではないと思う。
貧相な食べ物で育った子供は貧相な人生を送るし、逆もまたしかりだ。
このことを、多くの例を交えて説明した。

子供の知的成長について、認知機能の向上が示されている栄養素もあれば、IQが低下することがわかっている物質もある。
後者について、その一つとしてフッ素をあげた。
フッ素への慢性的な曝露によって、子供のIQが低下することが示されている。
それだけではなく、不妊、関節炎、骨疾患、腎臓病、過敏症、癌、糖尿病、甲状腺疾患、循環器疾患との因果関係も指摘されている。

Health Effects


フッ素は、歯磨きのCMなんかでよく目にする言葉で、「フッ素配合」というのがむしろ宣伝文句になっている。歯質強化のためフッ素塗布をする歯医者も多い。
今のところ、日本の水道水はフッ素添加されていないが、外国では虫歯予防のためにフッ素が入れられているところもある。
フライパンなどの調理器具で、テフロン加工を謳っている商品があるけど、テフロン加工というのは要するにフッ素樹脂加工のことだ。テフロン加工のフライパンを長く使っていると、テフロンのコーティングが段々はがれてきて、コゲがこびりつきやすくなるでしょう?はがれたコーティングはどこに行ったのか?僕らの胃袋だ。
フッ素は、フライパンの空焚きなんかによって急性毒性が現れることもあるけど、多くの場合、体に徐々に蓄積して慢性的に毒性が現れる。テフロン加工のフライパンで料理した食事を一回二回食べたところで、毒性は生じない。でもその毒は、年単位で着実に体に溜まっていく。だからこそ症状が出たときには、原因として気付きにくい。これが、よりタチの悪いところだ。
フライパンは鉄製が無難だよ。

どの食材をとるべき、に気を遣ってはいても、まさか、その食材を料理する道具に毒性があろうとは思わない。そういうのでいうと、電子レンジも盲点だな。
現代社会は、思わぬところに毒が潜んでいる。知識を得て、自分の身は自分で守るしかない。こういう講演会に参加して積極的に知識を仕入れようとしているお母さんは、もうその時点で、百点満点のお母さんだと思います。

認知症

2019.6.24

よかれと思って摂るビタミンが、好ましくない影響を与えることがある。
たとえばビタミンB12、葉酸、ビタミンB6は、摂り方に気をつけよう。
B12をシアノコバラミンで、葉酸をfolic acid(メチルテトラヒドロ葉酸)で、B6をピリドキシンで摂っていませんか?
全然摂っていなくて欠乏症になるよりはマシだろうけど、せっかく摂るのなら、もっとベターな摂り方をしたい。
できれば、B12はメチルコバラミンで、葉酸はfolateで、B6はP5P(ピリドキサール5リン酸)で摂りたい。

これらのビタミンをどういう塩で摂るべきかということについては、ホッファーもソールも特に言及していない。
「水溶性ビタミンの過剰摂取は心配ないから、とにかく摂れ」という感じだ。
でも最近の研究で、下手な摂り方をしては血中ホモシステインが上昇し、むしろ各種疾患(癌、心血管疾患、脳卒中、うつ病、骨粗鬆症など)の罹患率が上昇することが示唆されている。
だから、ホッファーの著書を絶対的な金科玉条にしているようでは、ちょっと危ういんだな。
ホッファーが悪いんじゃないよ。彼は超一流の研究者であり、かつ、臨床家だった。その功績は不滅の輝きを放っている。
でも、学問は進歩する。栄養学も例外ではない。
ホッファーやポーリングら、偉大な先人が打ち立てたオーソモレキュラー療法を、そうした最新の知見に照らしてアップデートしていくことは、後進の責務だろう。
後進が先人の著書を頭に押しいただきあがめたてまつることは、彼ら自身、望んでいないだろう。
「時の試練に耐え得ない部分についてはきっちり批判し、乗り越えて行け。そしてもっと完成された体系を作れ」
泉下の彼らは、きっとそんなふうに思っているはずだ。

ホモシステインの値が高いことは、アルツハイマー病のリスク因子だとわかっている。
そもそも、アルツハイマー病とは何か?
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」という動的平衡のなかで生きているのが僕ら人間だが、神経系もこの流れに沿っている。
つまり、記憶の形成に際して重要なシナプスは、絶えず、作っては壊し、作っては壊し、されている。
どうでもいい些細なことまで記憶してしまっては、脳の容量が追い付かない。だから、不要なシナプスはきちんと刈り込んで、デリートすることも必要なんだ。
しかし、このシナプスの「破壊と創造」の均衡が崩れ、破壊優位に進むことがある。これがアルツハイマー病だ。
シナプスがどんどん失われていくわけだけど、その原因は何か?
ざっと、三つある。1.炎症、2.栄養失調、3.毒素だ。

初期の認知症(たとえば長谷川やMMSEでほぼ満点、でも家族の印象としては「相当記憶力が落ちているな」みたいな患者)にビタミンCを出したら、それだけですっかり回復してしまったことがある。
それも一例二例じゃない。かなりの数の患者が見事に回復した。それも単なるシナールで^^;
なぜこんなことが起こったのだろうか。理屈を考えてみれば、極めて筋が通っている。
1.ビタミンCには抗炎症作用があり、かつ、2.ビタミンCは神経系に必須の栄養素であり(脳はビタミンC濃度が最も高い器官のひとつ)、かつ、3.ビタミンCには重金属などの解毒作用がある。
ビタミンCはアルツハイマー病の原因すべてに作用しているわけ。だからこそ、たったの3gのシナールが著効することもあり得るんだな。
こういう人は潜在的にビタミンC欠乏があったに違いない。そして、血中ホモシステイン濃度が高いはずだ。

一般の臨床現場ではホモシステイン濃度を測ることはまずないだろうけど、ホモシステインは炎症と栄養の指標となることがわかっている。
つまり、炎症があると上昇するし、栄養の不足があっても上昇する。
上記のシアノコバラミン、folic acid、ピリドキシンは、どれもれっきとしたビタミンであり、栄養だ。
しかしこれらの過剰服用は、ホモシステインの上昇を引き起こす可能性がある。
どういう機序によってか。メチオニンがホモシステインに変換され、それがまたメチオニンに戻ったり、あるいはシステインなどの他のアミノ酸に変換される代謝系がある。
この変換にはビタミンB12やB6、葉酸、ベタイン(アミノ酸)などが必要なんだけど、この変換に際してビタミンは活性型であることが望ましい。
不活性型では変換能率が悪くて、むしろ炎症の原因になり得る。

認知症に対して、アリセプトを処方されて「これでよし」としているようでは、その人の未来はあまり明るくない気がする。
それよりは、原因に目を向けて、食事や栄養の改善に取り組むことのほうが、本質に近い。
栄養に目を向けたまではいいものの、もっとベターなビタミンがありながら、「いまいちのビタミン」を使っているのなら、もったいないな。

マッスル北村

2019.6.23

自分への厳しさは、他人への優しさと比例するのかもしれない。
動画サイトにあがっているマッスル北村と島田紳助のトークを見ていて、そう思った。
彼、こんなことを言っていた。
「昔から負けず嫌いだった。腕立てが千回できることを皆さんすごいっていうけど、別にそれ自体に意味があるのではなくて、とにかく自分の限界を超えたかった。
東大や医科歯科に受かったのも、肉体だけじゃなくて、精神的なことでも何かに挑戦したいって思ったから。
あしたのジョーを読んで、その生き様に憧れた。僕もこんなふうに、極限まで頑張って、真っ白い灰になりたい、って。それでボクシングを始めた。
でも、僕、人を殴れないの。殴ったら痛いだろうなって思って、もらったパンチの数を数えて、その分だけ殴り返す。それでも、もらった相手が潰れてしまう。
パンチ力があるせいで、パンチングマシンを壊してしまったこともある。
僕は、人を殴るためにボクシングを始めたんじゃない。ひとつの『道』として、ボクシングを始めた。
でも僕のこぶしは、文字通り、凶器だった。だから、サンドバックは殴れても、人間はどうしても殴れなかった」

番組を見ていて、紳助とマッスル北村の対比をおもしろく感じた。
しゃべり一つで成り上がったいたずら小僧のような紳助と、どこまでもストイックで自分に厳しいマッスル北村。
両者ともある種の天才だが、そのベクトルが真逆だ。
こんな両極端な二人が対談すればどんな化学反応が起きることやら、って感じで、おもしろく見ていた。

ボクシングを始めたものの、人を殴れないっていうエピソードに、この人の人間性がにじみ出ていると思う。
人を傷つけることはしたくない。ただ、自分をとにかく追い込みたい。
自分を忘れるくらい熱くなれる何かを、彼は常に探していた。そして東大在学中に出会ったのが、ボディビルだった。
これだ、と彼は思った。この競技では、人を殴らなくてもいい。ただ、自分に対する厳しさだけが求められる。筋肉は、頑張れば頑張った分だけ、答えてくれる。
ついに彼は、自分の『道』を見つけた。

トレーニングは常人離れしていた。とにかく高重量のダンベルにこだわった。あまりの過酷さに、腕や胸の筋肉を何度も断裂したが、治るとすぐにトレーニングを再開した。
食事は、家族と一緒にとる「普通の食事」に加えて、卵20~30個、牛乳2~3リットル、プロテイン粉末300gを毎日摂取した。
また、消化吸収のため、消化剤も大量に摂取した。さらに、鶏肉をミキサーにかけてペースト状にしたものを大量に摂取した。
その結果、ボディビルを始めてわずか10カ月で40kgの体重増加に成功した。1年後には96kgまで増量し、2年後にはボディビル関東学生選手権で優勝した。
その後も社会人大会、世界大会に出場し、見事な成績を残した。

個人的な話だが、ジムに通い始めてほぼ一年が経った。
マッスル北村が取り組んでいたのはボディビルだったけど、、僕がしているのは、とてもボディビルと呼べる代物ではなく、単なる筋トレだ。
ジムにいるのはせいぜい30分。全身を鍛えるようなトレーニングメニューで、そんなにハードではない。
食事もまったく普通で、プロテインも飲んでいない(いくつかサプリは飲んでるけどね)。
それでも、この一年、ほぼ毎日ジムに通い続けた。
その結果は?
体重が3kg増えた。それだけ。マッスル北村の40kgの体重増加というのがいかに図抜けているか、よくわかる。
3kg増えただけでも、明らかに体格が変わった。スーツやズボンのサイズが合わなくなった。周囲の僕を見る目が変わった。
筋トレがどんなふうに生活に影響を与えるか(いい意味で)、この一年で実感した。

マッスル北村のように、体重が40kgも増えるようなトレーニングをすれば、生活が変わるどころじゃない。人生が変わるだろう。
事実、数々の大会で優勝した彼は、テレビにも出演するようになり、男前のマスクもあいまって、大いに人気者になった。
しかし、彼の人生を終わらせることになったのも、やはり、ボディビルだった。
2000年8月3日、世界選手権に参加するべく脂肪を極限まで落とすために20kgの急な減量を行った結果、異常な低血糖状態となり、急性心不全を引き起こし死亡した。享年39歳。

死の数日前といわれる彼の動画を見たが、見事なバルクだった。
表皮の脂肪が薄く、筋肉のすじが浮き出て見える。パンプアップした筋肉の躍動感がすごかった。なるほど、これが世界一の筋肉かと思った。
しかし急激な減量による低血糖状態から、急性心不全を起こし死亡、というのは本当だろうか。
人間の体は、本来低血糖に強い。それは度重なる飢餓をくぐり抜けてきた進化のたまものだ。
飢餓状態に陥って糖が低下すれば、筋肉が分解され、得られるアミノ酸の代謝物からオキサロ酢酸やピルビン酸が作られ、糖新生によってグルコースが合成される。
あれだけの見事な筋肉なのだから、糖新生の材料には事欠かないはずで、それがなぜ、低血糖に陥るのか。
ボクサーには厳しい減量がつきものだが、減量中に心不全で死ぬボクサーが、果たしているのだろうか。

真相は分からない。
ただ、一般論として、ボディビルダーにはステロイド(副腎皮質ステロイドではなく、アナボリックステロイド。筋肉増強剤)を使う人は珍しくない。
「ステロイドだけは使わない」というスタイルの人でも、余分な水分を抜き筋肉のすじを際立たせるために利尿薬なんかを使う人もいる。
ステロイドには心不全の副作用がある。また、利尿薬による脱水から心不全を起こし、ステージ上で死亡したボディビルダーも実際にいる。
https://www.allmaxnutrition.com/post-articles/supplements/diuretics-in-bodybuilding-the-good-the-bad-the-tragic/

仮にマッスル北村が、ステロイドなり利尿薬なり何らかの薬物をやっていたとしても、僕は彼に対する敬意を失わない。
「常人離れした努力と少量のステロイドにより、世界を獲った」それで何も問題ない。
むしろ気持ち悪いのは、「急激な減量により異常な低血糖を来し、そのために心不全で死去した」というのが死の理由になっていることだ。
個人的には、そんなことはあり得ないと思う。科学がバカにされている気がするんだな。

それでも、それでもなお、マッスル北村ならそんなふうに死ぬかもしれない、という思いもある。
あまりにも強すぎる精神力が肉体の悲鳴を聞き入れず、そのまま死んでしまう、というような死に方。
誰よりストイックな彼なら、あり得るかもしれない。

亡くなった後、彼の体の大きさのため、棺におさめるのに大いに難渋したという。
毎日必死の努力で作り上げたその巨体も、火葬で一瞬にして灰になった。
しかし肉体は消滅したが、栄光は人々の記憶の中に残る。
すばらしい生き方やねぇ。

https://www.youtube.com/watch?v=CfEOZZqGqYc&list=PLn_lFJTVJHRmbU9UwOSCDHBrs2PhQCSQe&index=2&t=0s

有機ゲルマニウムと癌

2019.6.21

以前有機ゲルマニウム(Ge-132)について、癌に対する有効性は細胞レベルや動物実験では示されているが、人での有効性のエビデンスは乏しい、みたいなことを書いた。
しかしその後、”Germanium: The health and life enhancer”(Sandra Goodman著)を読んでいて、RCT(無作為化比較試験)も含めいくつかの研究があることを知った。ここで紹介しよう。

切除不能の肺癌患者を対象として、Ge-132の有効性を調べた治験。
患者を化学療法+Ge-132投与群と化学療法+プラセボ群に無作為に振り分ける二重盲検を行った。
チェック項目として、余命期間、腫瘍径、QOL(生活の質)、免疫学的マーカーを評価した。
Ge-132の投与によってこれらすべての項目で統計的に有意な改善が見られた。
‘Some pharmacological and clinical aspects of a novel organic germanium compound Ge-132′(Mizushima at al. 1984)

Sanumgerman(乳酸クエン酸ゲルマニウム。西ドイツのSanum-Kehibeck社により開発された有機ゲルマニウム化合物)を卵巣癌患者に投与した研究がある。
卵巣癌で卵巣と子宮を摘出した6人の女性(44~64歳)にSanumgermanを投与し、術後の健康度、痛み、傷の性状を調べた。
6人全員で健康度が著明に上昇し、痛みが軽減していた。6人中5人で腹部およびダグラス窩に浸出液の貯留が認められなかった。1人ではわずかに貯留が認められた。
‘Experience with Sanumgerman in Poland and Germany'(Samochowiec et al. 1984)

Spirogermanium(Smith Kline社のRiceらによって合成された有機ゲルマニウム化合物。同社により抗癌作用および抗関節炎作用が確認されているが、神経毒性もある)を癌患者に投与した第1相試験(目的は治療効果の検証ではなく、安全性の確認)がある。
癌患者(種類は様々)35人に対してSpirogermaniumを静脈投与した。めまいなど軽度の副作用を生じる患者が数人したが、いずれの副作用も数分から数時間で消失した。蓄積による毒性や骨髄抑制といった副作用は見られなかった。
第2相試験(治療効果を検証)で、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫とホジキン病)の患者を対象にSpirogermaniumを投与した。17人の患者中、5人(30%)で客観的に症状が好転し、2人では寛解した。血液毒性は見られなかった。
‘The clinical pharmacology of Spirogermanium, a unique anti cancer agent'(Schein et al. 1984)

症例報告として、以下のようなものがある。
1.骨髄増殖性疾患の62歳女性にSanumgermanを経口投与したところ、3週間で脾臓腫瘍の縮小が認められた。
“Biophysical results with germanium and Sanumgerman”(Kokoschinegg et al. 1984)

2.精巣および肺の胎児性癌の18歳男性に、Sanumgermanを含む様々な抗癌治療を行ったところ著明に改善し、1985年現在、転移なく良好に経過している。
‘Experience with Sanumgerman in Poland and Germany'(Samochowiec et al. 1984)

3.癌の摘出術を受けた55歳女性が、胃、腎臓、腸間膜、肝臓に癌の転移を生じた。抗癌剤治療を受けた後、Sanumgermanの服用を開始した。血液データなど、症状の変化を詳細にモニターした。手術から4年後、肝臓への転移巣が消失した。しかし、リンパ節の径はわずかに増大した。
‘Case study: adenocarcinoma with liver metastases’ (Paetz et al. 1984)

4.78歳男性の大腸癌に対して、1978年、1979年に手術を行った。1982年に肝臓への転移が見つかったため、癌に対する厳格な食事療法とともにSanumgermanの服用を開始した。その後4年経っても転移は見られていない。
‘The Sanumgerman therapy in biological medicine’ (Zoubek et al. 1984)

5.右肺に癌を生じた54歳男性が、抗癌剤による治療を受けた。しかし食欲が低下し、気力、体力も低下した。そこでGe-132を1日500mg服用を開始したところ、5ヶ月後には癌が消滅し、空咳が出なくなり、体調も以前のように元気になった。

1988年出版の本なので、データがどれも古いのが難点だ。
それに、有機ゲルマニウムと抗癌剤の併用でのRCTはあるが、有機ゲルマニウム単体投与でのRCTはやはり見当たらない。
腫瘍の縮小効果に限って見れば、抗癌剤は有効かもしれない。しかし長期的にはどうなのか。抗癌剤はむしろ余計で、有機ゲルマニウム単体投与で治療したほうが長期的な予後は良好だという可能性は、けっこう高いと思う。「思う」としか言えないところが、RCTのない辛いところだ。

RCTはなくても、上記のように、有効性を示す症例報告は多数ある。この報告を見てなお、有機ゲルマニウムを「エビデンスゼロの民間療法」と批判することはできないはずだ。
というか、そもそも浅井一彦博士は有機ゲルマニウムを抗癌剤として国に認可してもらいたいと考えていた。しかしその思いは結局叶わなかった。なぜか?それは、有機ゲルマニウムの有効性が否定されたからというよりは、政治的・経済的理由によるものだ。だから、当然、効く。高濃度ビタミンC点滴と併用して、そこにさらにαリポ酸、コエンザイムQ10、ビタミンK2なんかも一緒にとればいい。
癌になったからといって恐れることはない。大事なのは、医者の言うがままに抗癌剤治療に飛びつくのではなくて、他の選択肢があることを知っておくことだ。

勉強

2019.6.20

縁あって、小学生向けの進学塾にときどき出向く。
本棚に備え付けの算数の参考書があるから、手にとってぱらぱらとめくってみる。
難関中学の入試問題が並んでいる。
おもしろそうだ。ひとつ、時間潰しに解いてみるか。

下の問題、簡単そうでしょう?
皆さんもいったんスマホをわきに置いて、紙とペンを用意して、ちょっと考えてみてください。

こんなの楽勝だろ、と思いながら解き始めて、途中で、あれ、おかしいな、と行き詰まる。
だんだんこの問題の恐ろしさに気付き始める。
「子供のケンカに大人が出ていくようだが」と思いながらも、三角関数やらベクトルやらを持ち出す。それでも、うまくいかない。
なぜだ?頭を抱えつつ、延々考える。
長々考えて結局答えが出ず、あきらめた。

解答をみる。
補助線一閃。
なるほど、確かに小学生の知識でも十分に解ける問題だ。
しかこんな補助線、思い浮かばないな。

かつて灘中学の入試で同様の問題が出題されたことがある。
もともとの出典をさかのぼれば、1922年に発表された「ラングレーの問題」という有名問題だ。検索すれば、解法を載せたサイトがたくさんヒットする。この問題は具体的な角度だけど、一般化されて十分に研究されている。

この問題を初見で解ける小学生は、間違いなく才能があるから、数学者を目指すといい。
間違っても医者になんてなっちゃダメだよ^^;
本当に理系的才能のある人は、理学部か工学部に行って研究者になるべきで、医学部になんて行っちゃいけない。
医者って給料はそれなりにいいかもしれないけど、仕事の内容は創造性もへったくれもない製薬会社の手先みたいな雑務だから、才能のある人がこんな仕事に埋もれてはもったいない。

親御さんから僕に寄せられる相談は、「子供にどんなものを食べさせるといいですか」「知能の発達に役立つ栄養素は何ですか」など、栄養のことがほとんどだけど、子供の将来の進路についての相談を受けたことがある。

なりたい仕事があるのなら、それに向かって進めばいい。夢があるのは幸せなことだ。
ほとんどの子供はそうではなくて、将来なりたい職業なんて、ない。塾に行けと親に言われてるから、仕方なく塾に通っている。
でもそれでいいと思う。どうせ家にいても、テレビゲームしたりユーチューブ見てるだけでしょ。それぐらいなら、塾で勉強するといい。最初はイヤイヤながら始めた勉強でも、だんだん楽しくなってくるというのは、普通にあることだから。
子供にやりたいことがあるなら話は別だよ。将棋が楽しくて仕方ない、昆虫採集をしてるときが一番幸せだ、無類の読書好きだ、とか。こういう、いわば「ちゃんと遊べる」子供は、将来伸びる。勉強は後でいい。塾でダラダラ勉強してる子供たちにすぐ追いつくから大丈夫。

あくまでひとつの目安だけど、子供の将来性を予見するポイントとして、算数(数学)ができるかどうか、が挙げられると思う。
理系に限らず文系の学科も含めて、全て学問というのは、論理の積み重ねから成り立っている。文学や語学、史学、社会学、文化人類学はもちろん、音楽や芸術にさえ、ロジックは必要だ。
算数(数学)というのは、論理とその運用(主に演繹法)がすごく純粋な形で構成された学問だから、算数が好きな子供は、算数に限らず、学問全般に向いている可能性が高い。
逆に、ロジックの運用が拙いということは、そもそも学問に向いていない可能性がある。
でも、小学生時点で算数が苦手だとしても、学問の道をあきらめるのはまだ早いよ。中学生で数学のおもしろさに目覚める人もいるし、高校で目覚める人もいる(大学で目覚めるのはさすがに遅いかな^^;)
「数学が苦手だから文系」っていう選択は、正直ちょっと寒いな。文系学問の論理性というのをなめてると思う。
純粋現象学(哲学の一分野)の創始者のフッサールは、もともと数学者だった。文系学問でも一流どころの学者は、皆例外なく数学が得意なはずだ。
「数学が得意なのに文系に行く」じゃない。「数学が得意だからこそ文系に行く」であっても、全然おかしくない。

数学者になるようなセンスは僕には全然ないけど、数学の問題を解くことはいまでも好きだ。うんうん唸って難問を解きほぐすのが、すごく楽しい。
論理には人を酔わせる力がある。微積分を大成したニュートンは、ロケットのない時代に、初速いくらで飛ばせば地球の重力を振り切って月に到達するはずだ、とか計算していた。周りの人がどうしようもないバカに見えていたし、神のような万能感に浸っていたのも無理はない。
ニーチェも自分のことを天才だと思っていて、「自分はなぜ、こんなにすばらしい作品が書けるのか」という自画自賛丸出しの文章を書いている。梅毒の末期で、自制心がなくなっていたせいもあるだろうけど。
ニーチェとはスケールが違うけど、文章を書いてハイになる気持ちは僕にもちょっとわかる。数学を解くのも文章を書くのも、要するにどっちも論理の運用で、論理の運用というのは、きっと快感なんだ。

中学、高校と勉強しながら、「自分はそもそも勉強に向いていない」と気付く人もいるかもしれない。これはこれで、有意義なことだ。
そもそも、何のための勉強なのか。
理想は「楽しいから勉強する」だけど、そういう人ばかりではない。学歴を得て有名企業に就職するための「手段としての勉強」の人も多いはずだ。
でも、勉強だけが成り上がる道じゃない。高校を卒業して、専門学校に行って手に職つける生き方が向いている人も、きっといるはずだ。料理人として大成するかもしれないし、美容師として成功する未来が待っているかもしれない。その人だけが持った技術やセンスというのがあるはずで、そこを生かす人生もすばらしいと思う。

「勉強がしんどいならさ、塾なんてやめればいい。勉強だけが生きる道じゃないからね」って子供に言ったら、塾の担当者からたしなめられた。「さすがにそういうアドバイスはちょっと。もっと前向きなメッセージをお願いします」と。
まぁ、担当者の気持ちもわかる^^