ナカムラクリニック

阪神・JR元町駅から徒歩5分の内科クリニックです

2019年8月

スタチンと糖尿病

2019.8.9

会社の検診なんかでコレステロール高値を指摘され、病院受診を勧められた。
素直に病院に行き、コレステロール降下薬(スタチン)を処方された。以来、毎日飲み続けている。
みたいな経過で、スタチンを飲み始める人は多いと思う。

現代医学ではコレステロールは悪者ということになっているが、細胞膜やホルモン、ビタミンDなど構成材料であり、健康維持には不可欠だ。
生体は、食事に含まれているコレステロールを利用するのはもちろんだけど、それだけでは不十分で、自前でコレステロールを産生するメカニズムさえ備えている。コレステロール不足を何とか回避しようとしているのが、僕らの体なんだ。
ところが、現代医学の誤った前提に基づいて、コレステロールを薬で無理に下げるとどうなるか。
当然、様々な悪影響が現れることになる。神経系(気分、認知能力を含む)に対する影響については、以前にもブログで書いたことがあるから、今回は代謝系への影響について書こう。

『非糖尿病者の空腹時血糖に対するスタチンの影響』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6280428/
【背景】ますます多くのエビデンスが、スタチンの服用により糖尿病を発症することを示している。どのスタチン製剤を使うかによって、グルコース代謝に及ぼす影響は異なる可能性がある。国民健康スクリーニングデータを用いて、スタチンの服用が非糖尿病者の空腹時血糖をどのような影響を与えるか、経時的変化を調べた。
【結論】非糖尿病者において、スタチンを怠薬せずにきちんと飲んでいる人ほど、また、高用量で飲んでいる人ほど、空腹時血糖が有意に増加していた。
特にどのスタチンの影響が大きいか個別に分析したところ、アトルバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチン、シンバスタチンの服用は空腹時血糖の増加と有意に相関していた。プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチンは空腹時血糖の増加に対して有意な傾向を示さなかった。本研究により、どのスタチンを用いるかで高血糖をもたらす影響が異なることが示された。

スタチンが糖尿病のリスク因子であることは、近年エビデンスがどんどん増えていて、もはや疑いの余地はない。
今や研究はもっと各論に、たとえば上記の論文のように、「具体的にどのスタチン製剤が血糖値への影響が大きいか」といった問題に進んでいる。
しかしスタチンが血糖値に影響を与えることを知らない医者はいまだに多い。

医者は無知で、患者は無邪気だ。
医者の言いつけをよく守る患者ほど(こういうのを、僕らは「コンプライアンスのいい患者」と言います)、スタチンを休まずしっかり飲み続け、結果、血糖値が高くなっている、というのが上記研究の示すところである。
で、こういう真面目な患者は、次に医者から「血糖値が高いですね。糖尿病のお薬も始めましょう」となれば、また律儀に薬を飲むだろう。
血糖値を薬によって調整するようになると、自前の血糖調節機能が障害されて、当初の薬剤性糖尿病がいよいよ本物の糖尿病になる。
「糖尿病は万病のもと」というのは一般の人もご存知だろう。
癌にもなりやすくなるし認知症にもなりやすくなる(スタチン自体、認知症のリスク因子でもある)。

最初は「コレステロールが高い」という、ただそれだけだった。十分な健康体で、何も問題はなかった。
それが、こんなふうに、薬が病気を作り、さらに薬が増えて、また新たな病気を作り、という悪循環に陥った。
健康が徹底的に損なわれ、本物の病人になってしまった。
患者はまさか、自分の「病気」を治してくれるはずの薬が、あらゆる病気の原因だったとは、思いもしない。
怖い話でしょう?
この暑い時期、下手な怪談よりはるかにゾッとさせてくれる話だと思う。
でも悲しいことに、「治療」と称するこんなデタラメが堂々と行われているのが、今の医療現場なんだね。

癌とビタミンB1

2019.8.7

癌とビタミンB1(チアミン)の関係を調べた研究は多い。
ざっと列挙してみよう。
(参考『癌におけるチアミンの役割』http://cgp.iiarjournals.org/content/10/4/169.full)

・高齢者において、カロテノイド、ビタミンD、チアミン、ナイアシン、ビタミンEの摂取量は膀胱癌のリスクと負の相関がある。
・症例対照研究において、ビタミンC、βカロテン、チアミン、ナイアシンの摂取量は、胃癌の発症リスクの減少と相関していた。
・食事から摂取するリボフラビンやチアミンの量は、子宮頚部の高悪性度扁平上皮内病変の発生率と逆相関を示していた。
・アルコールの消費量が多く、かつ、レチノール、チアミン、その他抗酸化作用のある栄養素の摂取量が少ないと、大腸癌の発生率が増加した。レチノールとチアミンの癌予防作用が示された。
・食事性にビタミンCとチアミンを多く摂ることで、前立腺癌の発症リスクが減少する。
・チアミン、リボフラビン、ビタミンA、C、鉄の摂取量が少ないと、癌リスクが増大する可能性がある。
・消化器系の癌患者の微量栄養素を調べると、特に癌による体重減少が見られる患者において、血中ビタミンC濃度と赤血球内のチアミン濃度が有意に低かった。また、癌で体重減少が見られる患者では、チアミンとビタミンCの摂取量が少なかった。
・急性白血病患者では、白血球内および血中のチアミン濃度が低かった。
・乳癌および気管支癌の患者では、チアミンピロリン酸(TPP)による刺激作用が強く、チアミンの尿中排泄が多かった。これは、これらの癌患者ではチアミン欠乏になる可能性があることを示している。
・トランスケトラーゼ(グルコース代謝に必須の酵素)は、癌細胞がグルコースを使って核酸リボースを産生する際に非常に重要である。癌細胞にオキシチアミン(トランスケトラーゼの阻害作用がある)を投与すると、癌細胞の増殖が劇的に減少した。
・癌のラットにチアミンとパントテン酸を高用量に投与すると、癌の増殖が止まり、 3エトキシ2オキソブチルアルデヒド・ビス(チオセミカルバゾン;KTS)の抗腫瘍活性が高まった。逆に、KTSで処理をしたラットにチアミンを加えると、用量依存性に体重減少を防ぐことができた。

要するに、チアミンを多く摂って血中チアミン濃度が高い人では、癌の人が少ない、ということだ。
チアミン欠乏の症状として脚気が有名だが、欠乏症を防ぐ程度のぎりぎり最低限の量では、日々の健康維持には心もとない。
しっかり摂取していれば癌になりにくいことがわかっているのだから、積極的に摂取するといい。

チアミンの分子構造を修飾したものとして、ベンフォチアミンというのがある。
製薬会社にとって、天然のビタミンは特許がとれないから、天然のビタミンに無理やり修飾を加えて、それでオリジナリティを主張して特許をとる、ということがしばしばある。
ベンフォチアミンもそういう合成ビタミンのひとつだ。
合成ビタミンは、多くの場合、自然の拙い模倣に終始していて、『天然ビタミンの劣化コピー』といったあたりが関の山だ。なかには発癌性が懸念されているものさえある。
ところがベンフォチアミンは例外的で、ある点では天然のチアミン以上の効果が期待できる。
糖尿病から来る神経障害に対して、ベンフォチアミンを使ったりする(ビタメジンでは弱いんだ)。
これは特に栄養療法というわけではなくて、ちゃんと勉強している糖尿病内科の先生ならやっていることだと思う(血糖値下げる薬を出すしか能のないアホがほとんどだけど)。
なぜベンフォチアミンはチアミンよりも効くのか。
ひとつには、チアミンが水溶性であるのに対し、ベンフォチアミンは脂溶性であることが関係しているのかもしれない。

ベンフォチアミンの抗癌作用を調べた研究もある。
『白血病細胞にベンフォチアミンを投与するとパラプトーシスによる細胞死を誘導できた』
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0120709

『がんの特効薬は発見済みだ』(岡崎公彦著)を読んだ。
本の内容は一行で要約できる。
「1985年日本人研究者によりベンズアルデヒド(アーモンド、アンズ、梅、桃、ビワなどの種に含まれる成分)が癌に効くことが発見されたが、この発見は製薬利権を守るため黙殺され、ベンズアルデヒドは今なお一般臨床では用いられていない」
エッセンスとしてはこれだけ。15分で通読できる。
そもそも本として上梓するだけの意味があるのかな、っていうぐらい内容の薄い本なんだけど^^;、個人的には以下の記述に度肝を抜かれた。
この記述のためだけにでも、この本を買う価値はあった、と思った。
「三共製薬のビオタミンと東和薬品のビオトーワは、どちらも同じ構造式のビタミンB1誘導体ですが、分子構造中にベンゾイル基(ベンズアルデヒドから水素原子が一個欠落したもの)を含んでいて、内服すると消化液で加水分解を受け、ベンゾイル基が遊離して吸収され、制癌作用を発揮します。
これはどのような種類の癌にも有効です。効きにくい癌種というものはありません」
ビオタミンもビオトーワも、一般名としてはベンフォチアミンである。
これ、どういうことか分かりますか?
ごく一般的な安価な処方薬によって、癌が治る可能性がある、とういことだ。
すごい話だよね。でも難点がある。
「ビオタミンまたはビオトーワの一日一錠の内服を三週間続け、四週目ごとに四~五割増量して、最終一日につき、三十錠を服用すると、軽度の進行癌も治療可能です」
一日三十錠なんて、薬局から疑義照会が来ることは確実で、さすがに出せないなぁ^^;
そうなると保険を使う処方薬じゃなくて、結局サプリを使うってところに落ち着くんだな。
あと、この理屈で言えば、キョウニン水も抗癌剤として使えるんじゃないかな。
キョウニン水というのは、アンズの種に由来する成分から作った咳止め薬。「メジコンとかカフコデよりもよく効くから」と好んで使う呼内の先生もいる。
しかしそういう先生も、まさか抗癌作用があるとは思ってないだろうな。

乗り物酔い

2019.8.6

今年もまた、神戸の花火を見ることができた。
去年と同様、陸地の混雑を避けて、船の上から眺めた。

ただ、去年は1万5千発だったのに比べ、今年はたったの6千5百発。
去年の半分以下のスケールということになるが、例年これが普通なんだ。
去年は兵庫県政150周年ということで神戸市も気合が入っていて、むしろ例外的だったんだ。
しかし去年の花火のすさまじさを知ってる自分としては、ショボくなったなという感想は否めない。
でも、打ち上げの数が減っただけで、花火の質は変わらない。
真っ暗な夜空に咲く一瞬の花は、恐ろしいくらい美しかった。

写真を撮ったところで実物よりも見劣りするのが普通だけど、夜の海が花火を反映して鮮やかに光って、まるで印象派の絵のようだ。
この写真には、逆に実際では見えない美しさがあると思う。
僕が撮ったんじゃないけどね^^;

相変わらずだったのは、花火の美しさだけではなく、船酔いする姉の姿も同じだった。
去年ひどく船酔いしている姉を見て気の毒に思ったものだけど、今年もまた同じようにぐったりしていた。

ただ、去年と違うことがある。
この一年間、僕は自分のクリニックの患者から、あるいは文献から、いろいろなことを学んできた。知識と経験の点で、去年の自分より優っているつもりだ。
船酔いへの対応となれば、去年はせいぜい一般的な処方薬を出すことぐらいしかできなかったが(そしてまったく効かなかったが)、今の僕には別の知識がある。
CBDオイルだ。船酔いに限らず、乗り物酔いに著効することには、エビデンスがある。
しかし去年と変わらないのは僕のうっかりな性格。
そういう船酔いの特効薬があることを知りながら、姉に事前に飲ませるのを忘れていたっていう^^;

『乗り物酔い、ストレス、内因性カンナビノイド系について』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2873996/
要約
陸路、空路、海路、いずれの道中であれ、乗り物酔いが原因の嘔気・嘔吐に困っている人は相当数いる。
乗り物酔いは非常にわずらわしいものではあるが、なぜ乗り物酔いが起こるのか、その神経学的な機序は未だ明らかではない。
内因性カンナビノイド系(ECS)は、ストレスおよび嘔気・嘔吐の調整に際し重要な役割を担っている。嘔気・嘔吐を抑制するECSの効果は、内因性カンナビノイド受容体の活性化が関与している。
ボランティア21人に放物線飛行操縦(PFs)を行ってもらい、その間のECSの活性具合を調べた。PFsの間、微小重力の状態がおよそ22秒生じ、それが大きな動的刺激となる。採血をPFsを行う前、10回、20回、30回行った後、PFsの終了直後および24時間後に、それぞれ行い、内因性カンナビノイド(アナンダマイドと2-アラキドノイルグリセロール; 2-AG)の血中濃度を測定した。
急性の乗り物酔いを発症した7人のボランティアでは、PFsの間、ストレススコアが有意に高く、かつ、内因性カンナビノイド濃度が有意に低かった。
PFsを20回した後では、乗り物酔いになったボランティアの血中アナンダマイド濃度が有意に低下していたが(from 0.39±0.40 to 0.22±0.25 ng/ml) 、症状のない人では上昇していて(from 0.43±0.23 to 0.60±0.38 ng/ml) 、血中アナンダマイド濃度は有意に高かった (p = 0.02)。
血中 2-AG 濃度は、乗り物酔いをする人では実験期間中、低いかほとんど変わらなかったが、乗り物酔いをしない人では著明に上昇していた。
また、乗り物酔いをするボランティアでは、実験から4時間経過した時点で白血球のカンナビノイド受容体1(CB1)のmRNAの発現量が、乗り物酔いしない人よりも有意に低下していた。
これらの発見は、ストレスと乗り物酔いの背景には内因性カンナビノイドの活性化障害があることを示している。
ECS伝達を高めることは、現在の乗り物酔い治療が効かない人に対して有効な治療手段となる可能性がある。

抗癌剤治療による吐き気に対してCBDオイルが著効することは有名だ。
抗癌剤によるものであれ乗り物酔いによるものであれ、そもそも吐き気という現象には内因性カンナビノイドの不具合があるのだと思う。

花火を終えて、船を走らせて船着き場に戻り陸に上がった後も、姉は回復せず、ぐったりしていた。
車に置いていた僕のカバンにCBDオイルがあったから、それを姉に見せて、「吐き気に効くやつ。今からでもいいから飲んで」と勧めた。胸がムッとするから要らない、と拒否する姉に、強いて飲ませた。
すると、、、
本当ね、びっくりしたんだけど、一瞬で効いた。表情がさっと晴れ渡って、すぐ元気になった。
CBDオイルはしばしば、こんなふうに劇的に効く。
船乗る前にこれを飲んどいたら、酔わずに花火をちゃんと楽しめたのになぁ。

えび2

2019.8.5

前回に続き、またえびの話をしよう。
しかし今度はオキアミの話ではなく、僕の小学校の同級生の話。

あの男が、またリングに帰ってくる。
来週末、僕はリングドクターとして、彼の試合をそばで見守ることになる。
「たくさんの応募があった。そのなかから、4人を選ぶ予定だったんだけど、どうしても絞りきれなくて、6人選ぶことになった。
8月17日に4人と、8月18日に2人と対戦する。
面接ってわけじゃないけどさ、なぜ俺と戦いたいのか、応募者全員から話を聞いたよ。
皆、それぞれに熱い思いを抱えている人たちだった」

たとえば、ボクシングジムに通う大学4年生。
期待して大学に入学したが、特におもしろくもなかった。何かに打ち込みたい、熱くなりたい。そういう思いで、ボクシングを始めた。
やっていくうちに、すっかりのめり込んだ。勉強よりも恋愛よりも何よりも、ボクシングに若い熱量を捧げた。
でも正直なところ、自分には才能がない。プロになってどうのこうの、というレベルじゃない。それは自分にもわかっている。
わかってはいるけれども、これまで三年間、ボクシングにエネルギーを注いできた、その集大成として、何か形になることができないか。
そんなとき、元世界ランカーの戎岡さんがタイフェアの企画で挑戦者を募集している記事を見かけた。
世界レベルのボクシングを知る人の胸を借りられるなんて、こんなチャンスはまたとない。
ぜひ戦わせてください。

「あつし、去年のタイフェア、見た?
見てないのかぁ。去年も戦ったんだけどね。
あのね、祭りのイベントだからといって、お遊びみたいなボクシングかというと、全然そうじゃないよ。
ガチもガチ。どの挑戦者も本気で勝ちに来る。俺も真剣に体を作って、当日に備える。
技術ではこちらが上でも、皆、熱い思いを抱えた挑戦者ばかりだからね。その思いに応えるためにも、こちらも本気でいかないといけない」

40代男性。
2人の子供がいる。習い事をさせようとなったとき、子供たちが選んだのは、塾でもスイミングでもなく、格闘技だった。
子供たちが日々練習に取り組み、試合で勝っては喜び、負けては悔し涙を流す姿を見て、父親として何か感じるものがあった。
「子供たちの戦っている姿を見て、自分はいつも勇気をもらっている。しかし、翻って俺は、子供たちに勇気を与えているだろうか」
自分が何ら父親らしい姿を子供に見せていないことに気付いた。そんな自分が、許せなかった。
思い立って、ボクシングを始めた。格闘技経験はゼロ。それでも、何か始めずにはいられなかった。
そんなとき、ジムに「元世界ランカー、挑戦者募集」の張り紙を見た。
ボクシング経験は二か月に満たない。戎岡さんと戦って、勝つ見込みがほとんど皆無であることはわかっている。ぶざまな姿をさらすことになるかもしれない。
それでも、たとえ勝てない相手であっても、死力を尽くして立ち向かっていく。そういう姿を子供たちに見せて、勇気を与えたい。
ぜひ戦わせてください。

「俺、こういう人、弱いんだ。
俺にも子供がいるからさ、わかるんだよ、この人の気持ちが。父親として立ててあげたい、っていうのかな。
こういう感情は、子供のときはもちろん、二十代のときにもわからなかった。自分に子供ができて初めてわかったよ。
さっき言ったように、タイフェアでのボクシングイベントっていう、お祭りごとではあるんだけど、俺にとってはお遊びじゃない。
だからこういう素人同然の人は、本来ならリングには上げない。真剣勝負の場だから、素人が出ちゃいけない。
でも、切れなかった。挑戦者の一人に選んでしまった。
選んでしまったからには、手は抜かないよ。全力で勝ちに行く。それが相手へのマナーだから」

そう言いながらも、えびは優しい男だから、挑戦者をぶざまに負かせるようなことはせず、相手に全力を出させるようなファイトスタイルで戦うだろう。
そして、リングサイドで見守る挑戦者の子供たちに、戦う父親の姿を見せるように、はからうはずだ。
プロというのは、単に強い人ではない。客を楽しませる人でもあるのだ。

というのは単なる僕の予想で、、、
ほんまに本気で勝ちに行って、強烈な右ストレート一発でKOしてしまったりして^^;

えび1

2019.8.5

オーソモレキュラー学会で、ある演者(石黒伸先生)がこんなことを言ってた。
「皆さんに自分の子供がいるとして、ひとつだけ何かサプリを飲ませるとなれば、何を飲ませますか。
僕ならこれですね。クリルオイル。BDNFの増殖を促します。つまり、頭のいい子になりますよ」
話の途中で「そういえば」的に出てきた言葉だけど、妙に印象に残った。

石黒先生、講演がうまくて、すごく聞かせる人だった。自然と話に引き込まれたな。
「運営側は『写真撮影はダメ』って言ってますけど、僕のスライドは全然写真撮ってもらってオッケーですから」なんていうのも、太っ腹で男前だと思った。

栄養療法を一通り勉強している人にとっては、ビタミンCとかナイアシンとかのメジャーどころの知識は当然抑えているから、大して新味はない。
しかしクリルオイルという言葉は、僕を含め多くの聴衆にとって初耳だったはずだ。

クリル(krill)というのは、日本語でオキアミのことだ。
そもそもオキアミって知ってますか。
「人のものを持ち逃げしちゃいけないね」それは置き引きです。
「網を置いて魚が来るのを待つ漁法のことだね」それは置き網です。
「私の友人に、沖亜美さんという人がいます」いや知らんよそんなん。
そうではなくて、、、
オキアミというのは一見えびのようだけど厳密にはえびではなく、えびに似たプランクトンの一種で、画像的にはこういうの。

釣りをする人なら当然知っている。
サビキのときにオキアミのブロックを買ってきて、撒き餌に使ったりする。
撒き餌に使うぐらいのものだから、特に希少な生物というわけではない。それどころか、ものすごくありふれたものだ。
養殖魚の餌に含まれていたり、ソーセージや調味料の材料として使われたりする。
krill oilで検索すれば、サプリとして売られているのがわかる。でもこういうのはあえてサプリで摂らなくても、食事として摂取すればいいんじゃないかな。
海で豊富にとれる安価なものなのにサプリだと妙に高額だし、効果も普通に食べたほうが高いと思う。
魚屋で乾燥したオキアミが普通に売ってるから、毎日みそ汁にちょっと入れるようにするとかして、摂取すればいい。

オキアミの効用について論文で検索すると、けっこうたくさんヒットする。
たとえばこんな論文があったよ。
『ラットにクリルオイルのサプリを投与すると認知機能が高まり、抗うつ薬のような作用がある』
https://lipidworld.biomedcentral.com/articles/10.1186/1476-511X-12-6
要約
本研究の目的はクリルオイルがラットの認知機能やうつ病様の行動にどのような影響を与えるか評価することである。
認知機能は光刺激忌避試験(ALSAT)を使って評価した。クリルオイルの抗うつ薬様の効果は、不可避光刺激(UALST)と強制水泳試験(FST)で評価した。
【結果】
7週間クリルオイルを摂取したところ、オス、メスともに、訓練の初日からALSATで活動レバー、非活動レバーを見分けるのが有意に上手だった。
クリルオイル投与群、イミプラミン(抗うつ薬)投与群の両方では、UALSTに対して、抵抗をあきらめたり抑うつになったりしなかった。
同様に、FSTでは、クリルオイル群、イミプラミン投与群の両方で、コントロール群に比べて無活動時間が有意に短かった。
これらのデータは、クリルオイルには認知機能を高めたり、抗うつ薬様の効果があることを示している。
さらに、前頭前皮質および海馬において、シナプスの可塑性に関連する遺伝子の発現の変化も調べたところ、クリルオイルを7週間投与したメスラットの海馬では脳由来神経因子(BDNF)の発現に影響するmRNAが特異的にアップレギュレーションされており(p=0.04)、同様の傾向はオスラットでも見られた(p=0.08)。
オスラットではArc mRNA(シナプスの長期的可塑性のカギとなるタンパク質)の前頭前皮質での発現量も増加していた。
イミプラミンはBDNFやArcを含む可塑性に関連したいくつかの遺伝子に明らかに影響を与えていた。
【結論】
これらの結果は、クリルオイルに含まれる活性因子(EPA、DHA、アスタキサンチン)が学習プロセスを高め、抗うつ薬様の作用を発揮することを示している。
また、クリルオイルに含まれるこれらの因子は、イミプラミンとは別の生理的機序で働いていることが示唆される。

オキアミは、一般的なえびよりも赤みが強い。これは、オキアミが大量のアスタキサンチンを含むためだ。
このアスタキサンチンは、オキアミが産生するわけではない。アスタキサンチンを産生する藻類をオキアミが食べ、その藻類中のアスタキサンチンが食物連鎖でオキアミの体内に蓄積する、という流れだ。
アスタキサンチンは美容はもちろん、上記の研究のように神経系にも好ましい作用がある。
ただし、即効性は期待しちゃいけないよ。
上記の研究を見ればわかるだろうけど、7週間もクリルオイルを摂取させている。ラットにとっての7週間は人間でいうともっと長い期間になるだろうし、どれだけの量のクリルオイルを摂取させたのかわからないけど、人間で換算すればべらぼうな量に違いない。相当長期間大量に食わせて、やっとこさ有意差が出た、っていう格好の研究だと思う。
うつ病を治すためとか、頭をよくするためとか、過大な期待はせずに、毎日の習慣としてちょっとずつ食べる、ぐらいの感覚で続けるといいんじゃないかな。