2018.12.11
今ルミナリエの開催期間中で、夜の元町駅周辺は大変な人だかりだ。
近辺は車の通行が規制されているし、歩行者の通行も警備員が規制している。
ジムに行く通りがまさにルミナリエのルートにあたっているものだから、ジムにたどり着くのも一苦労だ。
それにしても、歩いているのはカップルばっかり。
光に誘い出される蛾のように、神戸中のカップルがこのイベントにふらふらと引き寄せられている。
こんなにたくさんのカップルがいるのか、と感心する。
少子化を心配するのは杞憂だな笑
でも今日は夕方から雨が降り始めたから、いつもより落ち着いている。

僕の目の前を、一つの傘を二人で分け合う高校生のカップルが歩いていた。
男の子のカバンにウナギイヌのキーホルダーがついていた。
ウナギイヌ?
40年前の小学生がこのグッズを持っていたとしたら、それはまさしく、人気マンガの人気キャラクターであり、その子には誇らしいキーホルダーだっただろう。
しかしバカボンをリアルタイムで見てないことはもちろん、再放送でも見てないかもしれない今の高校生が、ウナギイヌのキーホルダーをカバンにぶら下げる感覚は?
一周まわっておもしろい、といったところか。
一周まわって、ではなくて、赤塚不二夫作品はどれもおもしろいんだけどね。
バカボンもおそ松くんも、ユーモアがあるのはもちろん、優しさが根底に流れてる。
暴力シーンはいっぱいあるけど、弱虫のハタ坊もいじめられたりしない。ケンカにしても、チビ太が一人で六つ子に向かうような、弱い者が強い者と戦う場面しかない。
ああいうのは赤塚不二夫の人間観がそのまま出ている。
https://www.shogakukan.co.jp/books/09408606
満州から引き揚げてくるときの船内は地獄だった。
大人たちは食べ物の奪い合いで殺伐としていた。皆、生きるために必死だった。
船内の片隅に横たわり、ただ痩せ衰えていく妹。何も食べさせてやることができない。希望を持たせようと、明るくふるまう。笑顔を見たくて、冗談を言う。
最初のうちは笑っていた妹だが、次第に笑う元気もなくなっていき、やがて餓死した。
見るのもつらい。でも、目を背けなかった。
衰弱していく妹の姿は、彼の心に一生深く焼きついた。
60年代は赤塚不二夫の時代だった。
おそ松くん、ひみつのアッコちゃん、天才バカボン、もーれつア太郎。
出すマンガがことごとく大ヒットした。
彼が生み出す斬新なキャラクターたち。キャラクターの滑稽な言動。(しかしギャグの下に一貫して流れる一抹のペーソスに、気付く人は少なかった。)
子供たちは彼の画き出す作品世界に夢中になった。
マンガは飛ぶように売れ、テレビアニメにもなった。
気が付いてみれば、使い切れないほどの大きな財産ができていた。
こんな金が何になる。
高い酒、高い女、高いスポーツカー。何を買ったって、満たされやしない。
今じゃないんだよ。あのときだよ。
引き揚げのときの、あの船内で、今の何百分の一でいいから金があって、食い物を買ってやれれば。
悔やんでも意味のない悔いに身を悶えさせながら、すべて忘れようとして、次第に酒の魔力に溺れていく。
「酒が傑作を生み、酒が赤塚不二夫を生んだのだ」と豪語したが、病的なレベルに達した酒量は、着実に彼の創作能力を枯渇させていった。
作品を生み出す力がなくなっても、彼には楽しみがあった。若い芸術家を支援することだ。
唐十郎、寺山修司など、食うに困っている劇団に惜しみなく資金援助した。
福岡から飛び込んできたタモリに衣食住を提供した。
将来のある若手を助けてやることこそ、彼にとってほとんど唯一、意味のある金の使い方だった。
こうして後進には大いに慕われることになったが、彼の健康はますます酒に蝕まれていった。
アルコール依存症の治療のために、何度も入退院を繰り返している。
退院後、報道陣の前で、これでやっと飲める、と記者らの前で酒をあおって見せた。
どこまでも露悪的な人で、破滅型の人で、繊細な人だった。
僕が彼の主治医だったなら、、、
救えただろうか。
ナイアシンなりビタミンCなりで、アルコールの霧のなかから彼を救い出すことができただろうか。
それとも、少年時に刻まれた餓死する妹を看取った記憶はあまりにも鮮烈で、裕福になればなるほど強くなる自己の破滅願望は、もはやビタミンでどうにかなるものではなかったか。
酒の悲劇は、適切な栄養摂取で防ぐことができると僕は信じている。
こんな才能のある人が、酒で潰れてしまってはいけない。何としても助けたい。
しかしそんな僕の思いをよそに、赤塚不二夫は笑いながら言うだろう。
これでいいのだ、と。
2018.12.11
去年オンエアされたNHKの番組『AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン』で、AIに「健康になるには」と尋ねたところ、「病院を減らせ」という回答が出たという。
これには驚いた。
「健康になるためには病院を減らせ」という主張に驚いたのではない。
こんな主張には、何の新味もない。
人々が救いをもたらすと信じている医学こそ、実は最も健康を害する原因になっているというのは、すでに多くの人が気付き始めている。
僕が驚いたのは、こういう主張が堂々とNHKで放送されたことと、あと、「AIって案外ちゃんとしてるじゃないか」ということだ。
雑誌の特集なんかで、「この先、AIに取って代わられる可能性のある職業」がいろいろ挙げられているが、医者も例外ではない。
これまでの診断、治療成績などの膨大なデータをもとにして、AIは最善の治療方法を提示する。
それは、そんじょそこらの医師よりも遥かに正確無比だ。多くの医師はお払い箱となって、失業することになる。
本当だろうか。
本当であっても、かまわない。
ほとんどの医者は製薬会社の思うがままに薬をバンバン出す機械みたいなもんなんだから、機械が別の機械に代わるだけのことだからね笑
ただ、僕が疑問なのは、そのAIに取り込まれたデータに、栄養療法による治療成績は含まれているのだろうか、ということだ。
あるいは、鍼灸、漢方などの東洋医学による治療成績や、アーユルヴェーダやホメオパシーなど、代替医学といわれる医学の治療成績は含まれているのか。
たとえば癌の患者がいるとして、西洋医学による治療(手術、抗癌剤、放射線)、代替医学による治療、どちらが有効か(患者の真の利益につながるか)をAIに判断させれば、代替医学がダブルスコアで圧勝することは目に見えている。
アロパシー(対症療法)の得意分野はせいぜい救急医学だけで、慢性疾患にまでしゃしゃり出てきてその方法論を適用しようとすることは根本的に間違っている。
そういうことが、白日の下に明らかになるだろう。
だとすれば、、、
製薬会社がそんなAIが世に出ることを許すだろうか。
許すはずがない。
医療行為を代替させるコンピューターを作るにせよ、製薬業界にとって不利なデータは取り込ませない。
薬の売り上げが下がるようなデータは、極力排除する。
AIが医療現場で使われるとしても、そういう「偏向AI」が使われることになるだろう。
僕はそんなふうに思っている。
だから、今回、上記番組でAIが「健康になるためには病院を減らせ」という、至極まっとうな結論を出したことが、僕には大いに意外だった。
取り込むデータに偏向がなければ、正しい事実を提示してくれるんだな、ちゃんとしてるじゃないか、と。
「医者がストライキを起こせば、患者の死亡率が低下する」ということは、レビューでも示されている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18849101
レビューというのは、いわば「論文の論文」とでも言うべきもので、一番エビデンスレベルが高いとされているものだよ。
内容をざっと説明すると、、、
医者のストライキに関して、逆説的な結果が示されている。つまり、医療産業従事者がストライキに入ると、患者の死亡率は横ばいか、あるいは減少する、ということだ。
この逆説を検証するために、過去40年分の文献のレビューを行った。156の文献があり、そのうち7つが我々の基準を満たしていた。1976年から2003年まで、世界で起こった医者のストライキ5件を分析した。
ストライキは最短で9日、最長のもので17週。どの文献でも、ストライキ期間中(なかにはストライキ後も)死亡率は不変か、あるいは減少していた。ストライキ期間中に死亡率が増加した報告はなかった。
「医者がストライキをすれば、患者の死亡率が下がる」この逆説には、いくつかの要因がある。
一番大きいのは、ストライキ中には待機手術がなくなることだ。(やってもやらんでもいいような手術をして、患者の死期を早めてる、ってことだよ)
また、ストライキ中にも、病院は乏しい人材を救急部門にだけは回してたこと。最後に、どのストライキもそんなに長期ではないわけだから、長期間医者にかからなかった場合の影響が評価できていないのではないか、ということ。
個人的には、最後の理由は違うと思う。ストライキがもっと長期にわたっても、患者の死亡率は相変わらず低いままだったと思う。
日本には夕張市の実例がある。
財政破綻のために、公立の病院がなくなった。「病院がなくなった。大変なことになるぞ」って言われていたけど、ふたを開けてみれば、人々の健康寿命は大幅に向上した。
「病気になっても、病院にかかることはできない。自分でちゃんと健康管理しないと」という意識が芽生えたおかげで、結果的に住民のみんなが健康になって、本当に医者いらずになった、というわけ。
すばらしい話だ。
やはりAIは真実を示している。
人々の健康を本当に願うのなら、病院や医者は極力減らさないといけないんだな。
2018.12.11
「便通の具合はどうでしょうかね?」
「え、なんて?」
「便は出てますか?」
「聞こえません」
「うんこ、出てますか」
「え?」
「うーんーこ!」
「ああ、出てます出てます。大丈夫です」
高齢者のなかには難聴の人も多い。
だから、上記のようなやりとりもよくある。
しかし人の耳元で、うんこ!と叫ぶ絵って、なかなかシュールだ笑
こういうご老人方は、「もう年だからね、耳が遠くなるのも仕方ない」って思っていると思う。
これは本当だろうか。
本当に「もう年だから」難聴になったのだろうか。
人がどんなふうに年をとるのか、どこの器官に老化の特徴が顕著に現れるのかには、当然個人差がある。
しかし一般論として、高齢になって出現する症状には遺伝的な要因の影響は少なく、生活習慣の影響が大きい。
たとえば若いときから長らくバンドマンとして活動してきた人が難聴をきたしたとなれば、音響外傷を考える。
しかしこういうわかりやすい因果関係の症例は少ない。
難聴の発生には食生活の影響が大きいことが分かっている。
https://academic.oup.com/jn/article/140/12/2207/4630622
糖質(炭水化物、砂糖)摂取量の多い人では、そうでない人と比べて、難聴の発生率が有意に高いことが示されている。
過剰な糖質は万病のもと、というのが、耳の病気に対しても言えるわけだ。
では逆に、難聴を防ぐ栄養素はないだろうか。
たとえばこのページが参考になる。https://www.hearingwellnessctr.com/nutrition/
葉酸とビタミンB12の欠乏によって難聴になる確率が39%増大するが、これらの栄養素を補うことによって罹患率は20%減少するという。
他にも、オメガ3系脂肪酸やビタミンAの摂取がいいとか、トランス脂肪酸や農薬は避けるべきなど、様々なアドバイスをしてるんだけど、、
網羅的なわりに一番重要な指摘が抜けていると思う。
それは、薬剤誘発性の難聴だ。
難聴を引き起こす薬があるということは、どの医者も知っている。
昔の先生は「ストマイつんぼ」とか普通に言ってたんだけど、抗生剤によって難聴が起こり得るというのは医学部教育の範囲内の知識だ。
ただ、試験対策的には「ストレプトマイシン=難聴」とだけ覚えておけばOKなんだな。
だから、難聴の副作用は、ストレプトマイシンを始めとするアミノグリコシド系抗菌薬全般で起こり得る、ということを知らない先生は多いと思う。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17266591
ざっと、以下のようなことが書いてある。
ストレプトマイシン、ゲンタマイシン=前庭毒性
アミカシン、ネオマイシン、ジヒドロストレプトマイシン、カナマイシン=蝸牛毒性
蝸牛への影響により永続的な聴覚喪失が起こり、前庭への障害によりめまい、運動失調、眼振が起こる。
アミノグリコシド系抗菌薬は内耳でフリーラジカルを産生し、それによって感覚細胞やニューロンが損傷され、結果、聴覚喪失が引き起こされる。
特に、ミトコンドリア12SリボソームRNAの遺伝子が二つとも変異型の人では、アミノグリコシド誘発性難聴にかかりやすい。
難聴のご老人のなかには、かつて抗生剤治療を受けたため、聴力低下をきたしてしまったという人も多いのではないか。
つまり、その難聴は加齢によるものではなく、医原性に引き起こされたものではないか。
一度思い立って、現場で難聴患者に遭遇したら、抗生剤治療を受けた経験があるかどうかを必ず問診しようと決めたことがある。
「抗生剤で治療を受けたことがありますか」
「え、なんて?」
「抗生剤!ばい菌殺す薬!」
「うん、それが何?」
「使ったことありますか?」
「え、なんて?」
だいたいそういう具合だから、いつのまにやら個人的な統計をとるのをやめてしまった笑
谷崎の『春琴抄』に「聾者は愚人のように見え盲人は賢者のように見える」という一節があって、難聴患者さんには申し訳ないけど、正直、言い得て妙だと思った。
学校で学ぶ問診という方法は、当然相手に聴覚があることを前提にしているわけだから、それが通じない(通じにくい)相手に出会ったときには、なかなか大変なんだ。