ナカムラクリニック

阪神・JR元町駅から徒歩5分の内科クリニックです

2018年11月12日

勉強会2

2018.11.12

ケトン体の健康への効果について、の講演。
「私は医学部に入る前に、理学部地質鉱物学科を卒業し地質調査を専門とする某企業で10年近く勤務してました。つまり、石屋から医者に転向したわけです」
使い古した手持ちのジョークだろうけど、会場はこういうので大いに温まる。
ところどころにユーモアが散りばめられていて、かつ、もちろん内容も興味深かった。
「私は本来産婦人科医なんですが、糖質制限のすばらしさに目覚めたきっかけは、自分自身が糖尿病にかかったことでした。
糖質制限を実践し、わずか一か月ほどで血糖値もHbA1cも見事に改善しました。
一般的な医学ではケトン体は人体に有害なものとされていますが、これはまったくの誤解です。事実は逆で、ケトン体は脳を守ります。
妊娠中に糖尿病を発症する人がいます。従来、胎児はブドウ糖で生きているため、妊娠中には高糖質な食事をとるように指導が行われてきましたし、今でも行われています。
炭水化物を多くし、タンパク質、脂質の比率を下げる食事が推奨されています。悲しいことですが、妊婦は現在の栄養指導の最大の犠牲者と言わねばなりません。
私は、胎盤や臍帯に極めて高い濃度でケトン体が含まれていることを発見しました。
http://www.toukastress.jp/webj/article/2016/GS16-10.pdf
こういう客観的データで示してなお、日本糖尿病学会の姿勢は変わりません。糖質制限は有害だ、ケトン体は悪だ、と言い続けている。
なぜか。
彼らにとって、医は仁術じゃない。算術なんです。お金儲けなんです。
実のところ、インスリンが開発されるより前から、糖尿病に対する糖質制限の有効性は言われていました。
しかし、糖質制限で糖尿病が改善してもらっては困るんです。インスリンが売れなくなってしまいますから。
糖質の摂取を推奨し、上がった血糖値はインスリンで下げましょう、と宣伝する。Big Sugar(砂糖産業)と製薬会社のマッチポンプなんです。
製薬会社は薬を患者に直接売るわけにはいきません。それはお医者さんの仕事です。だから、医者への教育と懐柔は入念に行う。
医学部ではインスリンの使い方は教えても、糖質制限が有効な治療法だなんて当然教えません。
『糖質制限によってケトン体が発生するが、グルコースを唯一のエネルギー源とする脳にとってこれは危機的な状況である』みたいなデタラメが平然と教えられています。
いつまでこんな茶番が続くのでしょうか。
日本糖尿病学会会長のこの人は、製薬会社が主催の講演会の謝礼などで、4000万円以上をもらっていました。
http://www.yuki-enishi.com/kusuri/kusuri-21-3.pdf
さすが、製薬会社もよく分かっている。学会トップの重鎮に大金掴ませて黙らせておけば、あとはどうとでもなる、という寸法でしょう。
みなさん、これが医学の正体です。まず患者ありき、ではありません。製薬会社の利益ありき、なんです。
私はこの状況を変えたい。
私は産婦人科医として、数えきれないほどのお産をとりあげてきました。他院で『中絶しかない』と言われた妊娠糖尿病の妊婦さんが、最後の希望として私のところに来られます。
医者の間違った理解、栄養士による間違った栄養指導の影響です。
たとえば血糖値300、HbA1cが7を超えている、こんな状況で出産なんて無理だ、となって、医師から中絶を勧められ、生まれることなく消されている命がどれほどあることか。
医者の無知なんです!問題なく生まれることができるんです!
あるいは医者自身も、誤った医学部教育の犠牲者だと言えるかもしれません。私はこういう状況を変えたいんです」

うーむ、謝礼で4000万かぁ。
これだけもらえるのなら、俺も悪魔に魂売るかもしれへんなぁ^^;

ビタミンCによる疾病治療の最新動向についての講演。
「そろそろ寒くなる季節ですが、ビタミンCが風邪に効くことを示す論文は数多くあります。
たとえばこんな論文。https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/147323001204000104
風邪の患者に対して、ビタミンCを1日1g、亜鉛を1日10㎎投与する。これだけで風邪の罹病期間、症状の重症度が、プラセボ群に比べて有意に軽快しました。
ビタミンC1g、亜鉛1日10㎎というのは、オーソモレキュラー的にはかなり少ない量です。それでも、風邪の治療には見事に効くということです。
実のところ、これは何も新しい発見ではありません。風邪にはビタミンC、ということはライナス・ポーリング博士が何十年も前から言っていることですから。
さて、最近のビタミンC研究で勢いがあるのは、韓国です。
たとえばこういう論文。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4624068/
ビタミンCはセラミド合成の代謝経路を刺激し、皮膚角質でのセラミド合成を促進する、という内容で、別の論文ではこの作用がアトピー性皮膚炎に有効だとしています。
つまり、アトピー性皮膚炎の重症度は、皮膚でのセラミドの量、ビタミンCの量と逆相関の関係にある、ということです。
ビタミンCに抗酸化作用や抗炎症作用があることは既知の事実ですが、セラミド合成促進のためにCが必要なんだ、というのは新しい視点だと思います。
最近、韓国やアメリカでは、ビタミンCを使った多くのRCTが進行中で、優れた論文がたくさん生まれています。
翻って、日本はどうか。
まったくそういう話は聞いていません。日本では誰もビタミンに関心を示さないんです。
このままでは世界の潮流に取り残されてしまうのではないかと、危惧しています」

その他、ビタミンCと各種疾患(骨粗鬆症、うつ、癌、突発性難聴、疲労、敗血症、帯状疱疹)について、最新の研究成果が紹介された。
論文は、なかにはお金を払わないと読めないものもあるけど、ほとんどはネット上で自由に読める。
ただ、自由に読めるからといって、自分で論文を発掘するのは大変だから、こういうふうにダイジェストで紹介してもらえると助かる。

ホルモンについての講演。
「ホルモンというのは、ピコグラム単位のごく微量で作用します。50mのプールにスプーン一杯分の成分を入れれば、それだけで効果が出る、というのがピコグラムのイメージです。
ホルモンといってもストレス反応系、免疫代謝系、性ホルモン系など、いろいろありますが、今日はアンチエイジングに関係するホルモンについてお話しましょうか。
老化の原因は何か。いろいろな要因がいわれています。
主には、活性酸素説、ホルモン説、有害ミネラル説、遺伝子説、テロメア説、炎症説、AGE説があります。
ホルモンは確かに老化と関係しています。
ホルモンの低下が老化を促進するのか、老化によってホルモン分泌が低下するのか、このあたりは複雑ですが、ひとつ確かなのは、まず細胞の老化があって、その次に臓器の老化が、そして病的老化の帰結として、病気になるということです。
成長ホルモン。名前のせいで、体を大きくするだけのホルモンといった印象かもしれませんが、20歳以降ではむしろ『修復ホルモン』として理解すべきでしょう。
つまり、細胞の再生を促すホルモンです。海馬の新生を助けるので、記憶力の向上にも関与しています。
部活動に熱心に打ち込んでいる人のほうが、有り余る時間のある帰宅部の人よりも成績がいい、という事例は皆さん経験的に知っているのではないですか。
運動によって成長ホルモンの分泌が促され、結果、記憶力もよくなるので、成績もよくなるわけですね。
成長ホルモンの分泌を促す因子としては、運動、絶食(低血糖)、アミノ酸(アルギニン、リシン)です。逆に成長因子の分泌を抑制するのは、糖質(グルコース)、コルチゾル、遊離脂肪酸です。
DHEAというホルモンがあります。デヒドロエピアンドロステロンというのですが、これは加齢とともに下がります。
抗老化ホルモンとして重要ですが、それだけではなく、筋肉の生成、記憶力増強、抗うつ作用にも関与しています。
筋肉増量作用を期待してボディビルダーにしばしば用いられますが、過剰摂取で亡くなった人もいます。メガビタミン療法はありえても、メガホルモン療法はありえません。
そういう意味でいうと、ステロイドパルス療法というのは相当な副作用を覚悟しておくべきでしょう。
DHEAはマザーホルモンです。つまり、このホルモンを母体として、様々なホルモンが生成されます。テストステロンもエストロゲンもこのホルモンから作られます。
コレステロールを大本として様々なホルモンが生成されるカスケードを見て頂ければわかりますが、炎症体質の人ではコルチゾルの産生が高まっているため、そちらのほうに材料をとられて、DHEAの産生が低下します。
これをCortisol Steal と言います。たとえば、コルチゾルとDHEA、五分五分の産生であるべきところ、8対2とかになってしまうわけです。
副腎疲労症候群などにDHEAが著効するのは、こうした背景を考えれば当然のことだと言えます。
肌の縦皺とエストロゲンの減少の関連にはエビデンスがあります。つまり、ごく単純に言えば、体内のエストロゲンを補ってやれば、しわを軽減する効果が期待できるわけですが、過剰なエストロゲンは癌の増殖を促すなど、使い方を誤れば危険なホルモンです。
そこで、エストロゲンよりも生成カスケードの上流にあるDHEAを補おう、という発想が出てきます。
実際DHEAのサプリはアメリカでは非常に人気があって、中高年女性の3人に1人が使っているのではないかとも言われています。
ところで、DHEAのサプリは、とある身近な食材を原料にして合成するのですが、どの食材か、みなさん分かりますか。
それは、ヤムイモです。長芋とか自然薯です。
こうしたイモにはdiosgeninという物質が含まれているのですが、この分子構造を見てください。ほとんどコレステロール骨格そのものでしょう。
だから、もし「サプリは人工的だからいやだ。でも若返りたい」という人には、長芋や自然薯の摂取をおすすめすればいいわけです。
100メートルを走れば世界一速い男、ウサイン・ボルトの強さの秘密は、ヤムイモの常食だ、という人もいます。
https://www.sankei.com/photo/story/news/160820/sty1608200015-n1.html
食品だから当然ドーピングにも引っかからない。最高のランナーを作る食材であり、最高の若返り食材でもある、ということです。
さらにいうと、DHEAは子宝に恵まれるためのポイントでもあって、不妊に悩むカップルには、DHEA、コエンザイムQ10、ビタミンEを併せて投与することで大きな成果を上げた、という報告もあります。
さらに、DHEAは骨芽細胞を作る材料にもなるため、歯科治療で歯を削る前にDHEAを服用させる、という歯医者さんもいます。DHEAを事前に投与するしないで、治療予後が全然違ってくるというんですね。
若く見える、ということは、健康そうに見える、ということであり、健康そうに見えるということは、性的な意味での魅力にもつながります。
年の割に老けてて不健康そうな人は、いかにも何か病気を持ってそうで、異性の目から見てそういう人が魅力的に見えますか、ってことです。
日々の食事に気を付けて、なおかつ、サプリメントの摂取によってホルモンバランスの適正化すれば、若々しさを長く保つことができます。
老化のメカニズムはある程度解明されているし、その予防法もある程度わかっているわけです。わかっていて利用しないのは、もったいなくないですか」

あくまで僕の視点から切り取った講演のダイジェストです。
講演中、興味深いスライドはiPadのカメラで撮影してたんだけど、すぐに係りの人が来て、注意された´Д`
写真撮影ダメだっていうのは厳しいなぁ。それならせめて、ちゃんとしたレジュメが欲しいんだけど。
資料なしに耳から聞いた話だけで、話をこういう具合に再現するのって、けっこう大変なんよね。

勉強会1

2018.11.12

日本オーソモレキュラー医学会の勉強会に参加してきた。
朝5時に起きて新幹線で東京に行き、勉強会終了後、トンボ帰りに神戸へ。
学会やら講演会の類は東京開催が多いから、やっぱ東京に住めたら便利だよなぁ^^

内容は盛りだくさんで、有意義だった。

鉄の代謝についての講演。
たとえば感染などによって炎症が起こると、IL-6などのサイトカインが増え、それに呼応して肝臓でヘプシジンが増加し、フェロポルチンが減少する。
ヘプシジンは人間が感染から身を守るための防御システムで、体が鉄を吸収させないように働く。フェロポルチンは鉄を細胞内から外へ汲み出すタンパクだが、それが減少するのは、血中の鉄濃度を下げるためだ。
このあたり、どういう意味かわかりますか。

そもそも鉄というのは、人間にとって毒なんだ。
活性酸素を生み出すフリーラジカル源でもあるし、細菌を爆発的に繁殖させる材料でもある。鉄によって腎臓癌が起こることがラットで示されているが、人間にとっても同じで、鉄は発癌物質にもなり得る。
感染症のあるときに体内に鉄がたくさんあれば、侵入してきた病原体にとって増殖に都合がいい環境を与えてしまう。
人間の体はよくできたもので、そういう炎症下では、鉄の血中濃度を極力低くしようとする。腸管からの鉄吸収は当然落ちるし、細胞(マクロファージも含め)は鉄を血中に出さずに自身の内にとどめようとする。
こうやって、人体がせっかく血中の鉄を少なくしようと頑張っているのに、人間は小知恵が働くから、「血中フェリチン濃度が低い!貧血だ!」と、鉄を増やそうとする。
女性の鉄欠乏貧血など、鉄剤を使わざるを得ない状況もあるけど、そういう場合でも慎重に行うべきで、安易にキレート鉄などを使ってはいけない。フェリチンだけが上がって症状はむしろ増悪する、ということも珍しくない。
ヘプシジンを上げないよう、かつ、フェリチンを上げるには、鉄剤を毎日服用するのではなく、隔日服用するのがいい。
ADHDの子供では血中フェリチン濃度が低く、しかもその重症度はフェリチン濃度と逆相関にある。

講演後、この主張の根拠となる論文を探してみた。多分、これだと思う。
https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/485884
ただ、その後に出た論文で、これと反対のことを言っているのがあるんだな。
https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/1087054711430712
ADHD群とコントロール群で、血中フェリチン濃度に有意差はなかったし、フェリチン濃度とIQやADHDの重症度にも有意な相関は見られなかった。
今日の講演者先生の主張と真逆の内容、、、( ´Д`)
どっちが本当なんだろうね。
ただ後者の論文は、締めくくりに「本研究によって血中フェリチンとADHDには相関がないことが分かった。しかし著者らは、ADHD患者の脳内で鉄欠乏が存在する可能性を否定しているわけではない」と言っている。
血中フェリチンが保たれていても、脳内で鉄の利用障害があるせいでADHDが起こっているのかもね、ということだろう。
内容的に矛盾する論文が両立している状態なんだけど、それでも、僕ら医者は、目の前に困っている患者が来たら、何らかの治療をしてあげないといけない。
こういうときに頼りたいのは、やはり、方法の有効性を主張してくれる論文だろう。「この方法は効きません」という主張はあえて見まいとする。
臨床家の気持ち的には、前者の論文のほうが真実なんだと信じて治療に向かうしかないんだよなぁ。

スーパーフードとその活用、という講演。
僕は最近、患者にアダプトゲンなどのハーブ由来のサプリを使うことが多くなっている。もちろんビタミンやミネラルも使うんだけど、ハーブのほうが食品に近いぶん、さらに使いやすいから。
「オーソモレキュラー栄養療法」という言葉に具体的な定義は多分、ないはず。
ビタミンCやナイアシンを使わずアシュワガンダやロディオラを使っているからといって、天国のホッファー先生、「お前は破門や!」とか言わないと思うんだけどな笑
モリンガとかスピルリナって、僕も一時期、スムージーに入れて飲んでたことがある。けっこう値段が張るからやめちゃったけど、飲んでるときの体調は確かによかった。
有効性のエビデンスレベルはそんなに高くないけど、なかなかバカにできないと思う。
レイシ、チャーガ、クコあたりは、実質的には漢方そのもので、それをスーパーフードという名前で装いを新たに売り出している印象だ。
広く知られていない食材をフィーチャーして健康産業が一儲けしようとしている底意が見え透いているけれど、これは悪いことじゃない。
基本的に病人相手ではなく健康な人が相手の商売で、「何々病に効く!」みたいなフレーズは薬事法に触れるから使えないんだけど、摂取した人の健康を高めてくれるのならすばらしいことだ。
製薬会社は病人相手にもっとえげつない商売してるからね。

ここで昼食休憩。
以下、午後の部に続く。