ナカムラクリニック

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2018年6月2日

医師頭は石頭

2018.6.2

最近はThomas Levyという人の本にはまってる。全然知らない人だったんだけど、4月末に東京で行われたオーソモレキュラー学会に講演者として来てて、その講演聞いて、すごい人だなと思って、著書を読み始めた。
“Curing the Incurable”という本のなかから、印象的な記述があったので、ざっと紹介します。原著は英語だから、僕の翻訳ではちょっとテキトーなところもあるかもしれないけど、許してね´Д`

2000年7月2日の日曜日のゴールデンタイムに、メリル・ストリープ主演のテレビドラマ『まず害をなすなかれ』が放送された。
実話に基づいた話をドラマ化したもので、ストリープ演じる母親とその幼い子供の話。
その子、てんかんの発作がひどくて、苦しんでいた。それでいろいろな薬を投与されていたんだけど、ちっとも効かない。というか、その投与されている薬の中にはひどい副作用のあるものがあって、むしろその副作用の影響で死にそうになっていた。症状は悪くなるばかりで、主治医はこう告げた。「最後の手段として、脳の手術が必要です。しかしその手術に成功しても、長期的な改善は見込めません」
母は医師の言葉を聞いて、子供のそういう運命を素直に受け入れるのではなく、あらがおうと思った。医学図書館に通いつめ、文献の研究に没頭した。
そしてついに、彼女の息子と同じ病気、同じ症状の症例が完治したという症例文献を見つけた。それは『ケトジェニック・ダイエット』という食事療法を用いた治療だった。複数の抗てんかん薬が奏功しなかった症例でも大多数がこの治療法により症状が消えた、ということだった。
主治医はこんな治療法があることを彼女にまったく教えてくれなかった。『ケトジェニック・ダイエット』が最新の治療法だから、主治医がそのことを知らなかった、のではない。その症例文献は、なんと、75年前に出版されたものだった。
母親が主治医にその文献を見せ、その食事療法を我が子に試してみたい、と伝えたところ、彼は嘲笑した。
「そんな文献報告に何の意味もありませんね。だいたいこれ、”anecdotal”じゃないですか。こんなものは科学じゃありません。僕ら医者は科学者であって、占い・まじないの類を臨床実践するわけにはいきません。」
“anecdotal”というのは対照実験のようなエビデンスに基づいているものではなく、文献報告者の主観の要素が強く、エビデンスレベルとしては低い、とされる。
そうした医者の嘲笑に対しても、母親は必死に抵抗した。
「もうあの子には他に方法がないんです。どうか試させてください。どうしても食事療法をやらせない、ということであれば、退院します」
主治医はどこまでも頭の固い男だった。
「僕らは医者で、医者には患者の命を守る責任がある。手術予定をキャンセルして、そのわけのわからない食事療法を試すために、バルティモアにあるジョン・ホプキンス大学に転院する、となれば、こちらとしても法的な手段をとりますよ。適切な治療を受けさせないのは、ネグレクトだ。黙って見過ごすわけにはいかない」
なんだかんだと言葉の応酬、テレビドラマ的な話の紆余曲折があったものの、結局母親は我が子にケトジェニック・ダイエットを行い、子供はすぐさま回復した。もはやてんかん発作が起こることはなくなり、これまで飲んでいた薬もすべてやめることができた。
こうして物語は終了した。

テレビドラマである。
しかし、ゴールデンタイムに全米で放送されたのだ。こういうテレビの影響は非常に大きい。
放送日の翌日、コロラドにある某病院の医局で、医師たちは皆、怒りをあらわにしていた。
あのテレビドラマ『まず害をなすなかれ』のせいで、医師の権威が損なわれてしまったことに、彼ら、不機嫌を隠せないのだった。
ふと、これまで沈黙していた一人の若い医師が、勇気を出してこう言った。
「我々も『ケトジェニック・ダイエット』を臨床現場に取り入れてはどうでしょうか」
他の全員が一様に彼をにらみつけ、場の空気はたちまちに、拒絶一色に覆われた。その空気には、誰も勝てない。その「拒絶」に反対する意見には敵意むき出しとなり、さらなる拒絶しか受け入れない空気なのだった。
「食事で治る?バカバカしい。我々の臨床現場での真剣な努力を踏みにじるものだ」
「アネクドータルな報告がいかに低レベルな報告が多いか、しろうとは知らないんだよ」「裁判、本当にすればよかったのにな」などなど、実際の医師たちの言葉も、テレビドラマの中に出てきた主治医の言葉と同じような範疇に属するものだった。

医者というものがどういう人種であるかを示す上で、おもしろい描写だと思ったので、ざっと紹介しました。
もちろんね、医者の中にも良心派はいるんだよ。「ケトジェニック・ダイエット、よさそうじゃないか」と、素直に開かれた心で受け入れる人も、少数ながら確かにいる。
でも、そういう先生も、組織や集団の論理のなかに飲み込まれると、まったく歯が立たない。そういう先生にも嫁子供がいて生活があるから、集団を敵にまわすリスクを背負ってまでケトジェニックダイエットを実践しようなんて思わない。「ま、ガイドライン通りの治療でいいか」というところに落ち着いてしまう。
結果、医療は変わらず、本当に患者を救う方法は、闇に埋もれたままとなる。
ケトジェニックダイエットが、75年間も図書室の片隅で眠っていたように。

みなさんは、医者のことを勉強ができて頭のいい人だと思っているかもしれない。それは違います。自分の知らない治療法などの新しい知識に対して、医者は柔軟であるべきで、必要があればそれを自分の手技のなかに取り入れるべきなんだけど、そういう医者はまずいません。自分の意に染まない論理には、徹底して拒絶的になります。医者は頑固で、石頭なんです。最も融通が利かない人々、それが医者という種族です。
ポーリング博士は、「医学は科学ではない」と言いました。デタラメな批判にさらされて袋叩きにあったポーリング博士は、理屈の通じない石頭のバカを相手にして、ほとほとうんざりしていたんだと思う。

自分の身を守る方法は一つです。
このドラマのお母さんが図書館でケトジェニックダイエットの記述を見つけたように、自分できちんと調べることです。
今はインターネットという強力なツールもあります。
どうか医療の食い物にされないでください。
金を失うだけならまだいい。このドラマに出てきたてんかんの子供は、下手をすれば病院の言われるがままに手術して、人生を失うところでした。
情報で武装して、我が身、我が家族を守りましょう。
僕の母は、大腸癌になって、主治医の言われるままに手術して、言われるままに抗癌剤やって、別に治ることもなく、亡くなりました。
テレビドラマの話じゃありません。現実の話です。
知識があれば母を助けることができたのに、という思いが僕の中にずっとくすぶっていて、僕が常に勉強を続けているのはそういう無念の思いがモチベーションになっているところがあるのかもしれません。
不必要な不幸がひとつでも減りますように。

ビタミンとIQ

2018.6.2

親は我が子に多くのものを望むものだ。
妊娠中は「五体満足、健康に生まれてくれさえすればいい」と謙虚に願っていたのが、ひとたび健康に生まれ育っていくと、「頭のいい子になって欲しい」とか「運動神経のいい子がいいな」とか「男前(美人)に育ってほしいな」とか、いろいろ要求過多になっていく。「這えば立て、立てば歩めの親心」って誰かも言ってたけど、こういう高望みは自然な親心だろう。

我が子の頭をよくしたい、と思っている皆さん!
実は、子供の頭をよくする方法があります。
それも、根拠のない俗説ではなくて、きっちり科学的なエビデンスの裏付けがある方法です(さらに言うと、これは「子供の頭を」と限定する必要はなくて、成人の知的活動の働きを高める方法でもあります。)

結論から先に言いましょう。
それは、すばり、栄養です。
もっと具体的には、精製糖質(砂糖)をやめることとビタミン(特にB群)の摂取がポイント。

これも”Orthomolecular Medecine For Everyone”に書かれていたことなんだけど、ざっと紹介しましょう。

子供の学習障害の原因は栄養の欠如である、ということをルース・ハレルという女医さんは何十年も言い続けてきた。
1943年に「チアミンの学習への効果」という論文を発表した。「チアミンにより子供の精神的・身体的技能が向上した」と述べている。
1956年には妊婦や授乳中の母親の食事が子供の知性にどのような影響を与えるのかを研究して、「妊婦、授乳中の母親が食事にサプリを補うことによって、その子の三歳時、四歳時の知能指数が向上した」という。
チアミンを与えられた子供は、プラセボを与えられた子供に比べ、学習能力が25%上回った。一方、砂糖は体内での代謝のプロセスでチアミンを消耗してしまう。ADHDや子供の学習障害の発症機序として、砂糖の過剰消費(およびそれに伴うチアミンの不足)が疑われる。

チアミンはじめビタミンB群というのは、神経機能に必須のビタミンだ。神経の栄養状態が不良でありながら学校の成績がいい、というのは、僕らの一般的な感覚からしても考えにくいよね。
実際、科学的にも、ビタミンB群の欠乏によって「神経機能喪失、記憶力低下、集中力低下、イライラ、混乱、うつ」が生じるということは、はっきり事実として確立している。
さらに、ハレル先生は、「チアミンはじめその他のビタミンB群は、一個のチームとして作用する」としている。彼女の用いた方法は、多くの種類のビタミンの大量投与療法だった。

彼女の論文はどれも研究として非常に緻密で科学的なものだったけど、残念ながら、つぶされてしまった。他の科学者がその論文の有効性を確認するために、追試を行った。でも、その科学者はものすごく少ない量のビタミンしか投与しなかった。多種類のビタミンを大量に用いる、というのがハレル先生の主張のキモなわけで、少量のビタミンでは効果がないのはやる前から見えていたことだったのに。学会はこの追試の結果を受理し、ハレル先生の論文は闇に葬ってしまった。だからハレル先生のこの研究は世間一般の人にはあまり知られていない。
なぜこんなことになったのか。
イやな話だけど、製薬会社の経済的動機が背景にある。
子供の学習障害というのは、製薬会社にとって大きな市場なんだ。だから、製薬会社にとっては、特許の取れないビタミンなんぞの投与で子供の学習障害が治ってしまっては困るわけ。金のなる木の邪魔をしてくれるな、と。それで、彼ら、この論文を抹殺した。

信じがたい話かもしれないけど、ビタミンによって、ダウン症の子供さえ知能が高くなった、という研究がある。
これもルース・ハレル先生の研究なんだけど、まぁ、反対派からは激しい批判にさらされました。「ダウン症というのは、21番染色体が3本ある遺伝性疾患であって、まさか、ビタミン投与によって3本ある染色体が2本になるとでもいうのか。ダウン症児のIQ低下はそうした染色体の過剰による影響であって、ビタミンの投与によって治るなどという主張は笑止千万。バカも休み休み言え」といった感じ。
ハレル先生が1981年に行った研究では、ダウン症児の栄養状態を改善させることによって、彼らの知能指数が明らかに向上した。
子供の変化に敏感に気付くのは誰だと思いますか。まず、親が気付くよね。さらに、学校の先生も気付く。IQにして10から15ポイントほど上昇すると、家族や教師も変化にはっきり気付いたらしい。
「単なるプラセボ効果だ」と批判者は言う。
でも、栄養が適切に補われることによって、遺伝子の働きが適正化する、ということは科学的にも十分証明された事実だ。たとえば、ビタミンEはダウン症患者の細胞内の遺伝物質に対して保護的に働くことが証明されている。抗酸化ビタミンは、ダウン症の人に有効であることは、科学的にも筋の通った話であって、ハレル先生の観察はこの事実と矛盾するものではない。
・・・はずなんだけど、学会はこういうことを全然認めません。
ただ、僕は個人的に思うんだけど、別にね、学会が認めようが認めまいが、どっちでもいいような気がする。
大事なのは、こういう情報が、必要な人のものとちゃんと届くこと。
ここが本質。学会の認める認めないはどうでもいい。
たとえば、我が子が学習障害を持っているために悩んでいる親御さんは世の中にたくさんいると思う。
そういう人にとって、こういう情報は福音になるかもしれない。
砂糖をやめる。ビタミンをとる。
バカみたいに簡単なことなんだけど、これだけで我が子の人生が救われるかもしれない、となったら、こんな貴重な情報はないよね。
この方法を実際に採用するしないは、親御さんの判断だろうけど、少なくとも、情報としては提供されるべきだよね。