呼吸には外呼吸と内呼吸がある、ということは高校の生物で習っただろう。
外呼吸というのは、いわゆる呼吸。息を吸って、息を吐く。あの呼吸である。
一方、内呼吸というのは、細胞がエネルギー産生のために行う呼吸のことをいう。その核心はミトコンドリアにある。
尤も、これらは必ずしも別物ではない。
たとえば、窯業で陶器を焼く仕事に従事する者では、膀胱癌の発生率が高いことが言われている。理由は二つある。
ひとつは染料などに使われる化学物質への曝露、もうひとつは、酸素不足である。
陶器を焼くときに大量に酸素が消費されるが、1日何時間もその燃え盛る窯のそばで働き続ける。
外呼吸による酸素取り込みの低下が、そのまま内呼吸(ミトコンドリア呼吸)の不全を引き起こし、発癌へとつながるわけだ。
しかし、なぜ膀胱なのか。
酸素不足の影響が出るのなら、一見、肺や心臓などに負担がかかりそうに思えるが、なぜ膀胱に癌ができるのか。
医学部で受けた病理学の授業を思い出すがよい。
膀胱の内部を裏打ちする細胞群は、全身の細胞のなかでもかなり特殊で、特に「移行上皮」と呼ばれている。
膀胱に尿がたまり細胞表面が伸展してうすくなると、皮膚のような重層扁平上皮になるが、尿が排出されて膀胱が空っぽになると、まるで腸粘膜のような多列繊毛上皮になる。
つまり、膀胱の上皮はその両極の間を行ったり来たりすることから「移行上皮」と呼ばれているわけだ。
そう、膀胱は粘膜質であり、そのため酸素不足の影響を受けやすい。酸素が不足しがちであるということは、そのままイコール、癌になりやすい、と解釈してもらってかまわない。
このことは、逆を考えてみればわかるだろう。たとえば「心臓癌」という病名を聞いたことがあるか?
ないだろう。in vitroでも心筋の細胞を癌化させるのは難しい。ミトコンドリアが豊富で細胞分裂しにくい心筋細胞は、癌になりようがないんだ。
しかし、粘膜はそうではない。
細胞は数日のターンオーバーで常に刷新され、細胞分裂が盛んである。また、水分の代わりに分泌液を分泌する粘膜では、特に癌にかかりやすい。
過去50年、大腸癌の増加に歯止めがかからない。かつて菜食メインの日本人には大腸癌はあり得なかった。
肉由来の糖鎖が組織の炎症および虚血を促進し、発癌を促進することがわかっている。近年の肉食ブームは、今後癌をますます増加させることだろう。
https://www.pnas.org/content/112/2/542?utm_content=bufferb1c33&utm_medium=social&utm_source=twitter.com&utm_campaign=buffer
酸素不足は、癌に限らず、様々な疾患の背景に潜んでいるものであるが、外呼吸の不足(およびこれに起因する内呼吸の不足)は、意識されないことが多い。
「呼吸が浅い」、「酸素が不足している」という自覚は、なかなか持ちにくいものである。
たとえば頭痛。低酸素が頭痛の誘因となることは、高山病の例を挙げるまでもなく、十分なエビデンスがある。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27146279
そこで、深呼吸である。丹田に意識を据えて、深く吸って、深く吐く。
これを何度か繰り返す。それだけのことで、頑固な頭痛が消退する症例がどれだけ多いことか。
頭痛は、ロキソニンで完治しない。まずは、今すぐ、深呼吸である。
それで効かないようなら、有機ゲルマニウムの出番である。
一般に、頭痛も含め、痛みは「組織の虚血」であることが多い。組織は痛みで以て存在をアピールし、相応のケアを求めているのである。
有機ゲルマニウムによって赤血球産生が亢進し、酸素が行きわたれば、痛みは自ずと解消するだろう。
さて、一口に酸素といっても、すべてが同じものではないことをご存知か。
必ずしも科学的に正確な表現ではないが、酸素には二通りある。陽極(プラス)の酸素と、陰極(マイナス)の酸素である。
かつて、未熟児を高濃度の酸素が充満する治療装置に入れ、未熟児網膜症を頻発させるという不幸な出来事があったが、これは陽極酸素の影響である。人工的な酸素はすべて、陽極であると心得よ。
一方、自然界が作り出す酸素は陰極である。森林浴をしたり、滝のそば、海辺に行ったときのすがすがしい感覚を思い出してみるがいい。あれこそが、豊かな陰極酸素のもたらす効果である。
有機ゲルマニウムの働きは、赤血球の再生を通じた酸素の供給であるが、このとき供給されるのは陰極酸素である。ここに有機ゲルマニウムの本領がある。
参考
『天の配慮: 命の源流を探る唾液イオン反応』(岡澤 美江子 大友 慶孝 共著)