院長ブログ

真菌、コレステロール、癌21

2020.2.29

酔狂なことに、僕のブログを毎日フォローしてくれている人がいる。ありがたいことです^^
ちょっと前に東京で会った大学時代の同級生もその一人で、彼にこう言われた。
「あつしのブログはね、医学的なネタのときより、そうじゃないネタのときのほうがおもしろいよ」と。

わかる。ブログを書いている僕自身、お固い医学ネタよりも、都市伝説っぽい話とかゆるいネタを書いているときのほうが楽しいから^^
そもそも、なぜブログを書くのか。
クリニックの宣伝という意味合いはもちろんある。でも、それだけではない。
栄養や健康についての調べ物をしていると、「これはみんなが知るべきだ。公共の知識であるべきだ」というようなことに出くわすんだな。
そういうときには、”書いてて楽しい”という感情や”こういう話はみんなにウケるだろうな”という打算よりも、何か使命感のようなものに突き動かされて書いている。
HofferとSaulの”Orthomolecular Medicine For Everyone”を訳したのも、同じような思いからだった。

たとえば今、ブログで複数回にわたって参考文献にあげている本”Proof for the cancer-fungus connection”は、衝撃の一冊だった。
スタチンがなぜ、どのような機序で体に悪いのかを、スタチンの開発経緯にも言及しつつ、非常にクリアに説明している。
僕が知る限り、日本語文献(ネットや書籍も含め)でスタチンについてここまで深い知識を提供する情報ソースは、他にないと思う(あれば教えてください)。
『オーソモレキュラー医学入門』を訳したときのように、著者(James Yoseph氏)に連絡をとりたいとさえ思った。「ぜひ翻訳させてください。この本の内容は、すべての日本人が知るべきだと思います」と。
しかし、勤務医時代の僕ならともかく、翻訳のためにまとまった時間とエネルギーを割くことは、今の僕にはできない。
だから、せめて、つまみ食いの形であれ、僕のブログで”公共のものたるべき”知識を紹介しようと思った。

今のところ、本の3分の2くらいの内容は紹介した。できれば残り3分の1も紹介したい。
しかしただ単純に翻訳して紹介しても、一般の人はつまらないと感じる可能性が高いから、小ネタ的な話もからめつつ、わかりやすくなるように工夫したい。
結果、単純に翻訳するよりもはるかに大きな負担になっているという^^;
いっそ著者に連絡して翻訳しちゃえばよかったかなぁ。

たとえば、「スタチンの研究から、真菌とコレステロールと癌、これら三者の関係性が明らかになった」という知識。
これ、とてつもなく重要で、医療関係者は全員知っておくべきだと思うんだけど、化学の苦手な一般の人は「HMG-CoAリダクターゼの活性阻害」とかそういう言葉が出てくる時点で、「もう無理!」ってなるかもしれない^^;
でも、身内にスタチンを飲んでいる人がいるとか、あるいは自分が癌になったときとかには、僕がブログで紹介している知識がダイレクトに生きてくると思う。
ネット空間は、その気になれば誰もがアクセスできる公共の場所である。そこに、「僕が紹介しなかったら永久にそのまま埋もれてしまうかもしれない知識」を掘り起こし、記録しておく。
誰かの役に立つ可能性のある情報なのに、言葉の壁のせいでinaccessibleになっている情報を、accessibleにしておく。そういう行為には一応の意味があると感じている。

「カビ毒が体に悪いのは充分わかった。作用機序とかの話はもういい。カビ毒のせいで病気になったとして、結局どういう治療をすればいいんだ?」
恐らくここが、みなさんの一番知りたいところだと思う。しかし、もう少し辛抱して頂きたい。
別に、出し惜しみをしているというわけではない。ただ僕としては、著者(James Yoseph氏)の論理展開を尊重したいと思っているだけだ。
それに、仮にここで早急に結論だけを提示したとしても(たとえば「カビ毒にはウコンが効きます!」とか)、そんな結論には、ほとんど意味がない。
たとえば「人生とは、旅である」と誰かが言う。なるほど、一瞬名言のように聞こえる。でもこんな、結論だけ切り取ったような言葉は、実に空疎だ。
誰が、どのような人生経験を経て、この結論にたどり着いたのか。この言葉が絞り出されるに至った過程が少しでも見えないと、何も語っていないに等しいとさえ思う。
同様に、どの食材や栄養成分が体にいいのか、その結論だけ提示しても、何も届かないだろう。
そういうわけで、『真菌、コレステロール、癌』シリーズは、もうちっとだけ続くんじゃ(←亀仙人風)