院長ブログ

内海塾

2020.2.10

内海聡先生の講演会”内海塾”に参加してきた。
先生のフェイスブックはフォローしているし著作も何冊か読んだことがあるが、先生の肉声に接するのは初めてのことだった。
先生は、フェイスブックや著作において、強烈な”毒”を吐くことで有名である。キチガイ医を自称し、「日本人全員死ね」とか言うことは、多くの人がご存知かと思う。
で、実際に会った先生も、イメージ通りの人でした^^;
いや、ある意味それ以上だった。奇をてらうポーズとして言っているわけでもなく、挑発的な意味を込めて言っているわけでもなく、本当に軽蔑をこめて「死ね」と言っている。
講演でこのように言っていた。
「うちのスタッフは知っていることだけど、『死ね』というのは私の患者相手にも普通に言います。1日に5回くらいは言ってるんじゃないかな、
『〇〇先生の提唱する理論でサプリを飲んでいるんだけど、治りません。何を飲めばいいですか』みたいな、依存的な患者ばかりだよ。もうね、『死ね」っていうしかない笑」
どつき漫才のような雰囲気があると思った。
先生は、いわば、”言葉でどついている”。先生の毒舌で笑いが起こるのは、鋭い言葉の底に、一応の愛があるからだと思う。
ただ、こういうことを先生に指摘すれば、照れて「いや、愛情なんて1ミリもない。本気で『死ね』と思っている」と否定するだろうけど^^

講演会のあとの懇親会にも参加した。そこで内海先生と直接話す機会があったから、率直に疑問をぶつけてみた。
「先生は『ありがとうボトル』を販売されていますね。『水からの伝言』のような、言霊の力を信じておられるということですよね。
でも、先生、『死ね』と口癖のように言われる。そういう言葉の毒に、先生自身、当たってしまいませんか」
この質問をしたとき、僕はすでにかなり酒を飲んでせいもあって、先生がどのように答えてくれたのか、残念ながら正確には覚えていません^^;
おおよそ、「優しいウソのオブラートで包んだ言葉では患者は真に治癒しない、結局ズバリと言ってあげることが必要なんだ」という意味のことを言われたと思う。

こういうノリは大阪なら受け入れられると思う。
「アホやなぁ」というのが、罵倒どころか、愛情表現であったりする。
病人に対して「あんた、まだ生きとったんか。はよ死ねや」とちょっと突き放して言うほうが、「頑張って長生きしてよ」という嘘くさい言葉よりも、よほど本人の奮起を促したりする。
東京でもこの毒舌スタイルで通していて、かつ、受け入れられているというのは、先生がすでに”タレント”になっているからじゃないかな。
フェイスブックや著作の情報発信を通じて、僕らは内海聡のことを知っていて、その”キャラ”のイメージが、ちゃんとある。その先生から「死ね」と言われたところで、「待ってました!」てなもんで、本当に傷つく人なんてもはやいない、ということだろう。
上沼恵美子の番組を見ていると、東京から来たゲストが、容赦なく”関西の洗礼”を浴びている。どのゲストも笑って受け流す。大人げなくキレる人はいない。
同じ意味で、内海先生のスタイルも、ちょっとした”プロレス”なんだな。

講演内容は、『医学不要論~「彼ら」にだまされないために』と『食毒~現代の食の危険性』についてだった。
すでに先生のフェイスブックなどを見ているから、別段真新しい情報はなかったけど、先生の声を通じて直接聞くことで、見えてきたものもあった。
これは僕の解釈が入ってるかもしれないけど、先生の食に関する基本スタンスは、「先住民や野生動物に学べ」と「バランス」、この二点だと思う。
どういうことか、説明しよう。

エネルギー代謝の図をわざわざ持ち出すまでもなく、グルコースは生命にとって必須、というのが生化学の教えるところである。
また、たとえば栄養療法を実践している人は、このような図を見たことがあるだろう。

神経伝達物質を作るためには、グルタミン、フェニルアラニン、トリプトファンがなくては始まらないし、それぞれの代謝カスケードをまわすために、各種のビタミンやミネラルが欠かせない、だからサプリメントなどで栄養を補いましょう、という文脈で、この図がしばしば引用される。
本当にそうだろうか?
グルコースが必要というのなら、砂糖を補えばいい。グルタミン、フェニルアラニン、トリプトファンが必要なら、それぞれ補えばいい。味の素はグルタミン酸そのものだし、アスパルテームはフェニルアラニンとアスパラギン酸の結合体だ。いま流行のアミノ酸だから、摂って悪いはずがない。
理屈の上ではそのはずである。しかし実際摂取すれば、体にいいどころか、毒性物質として作用することになる。
これを内海先生は、”精製物質毒”という言葉で説明していた。
「サプリメントは、全否定はしない。しかし現実問題として、メガビタミン療法でよくならず、うちに流れてくる患者は山ほどいる。精製物質毒による症状そのものだ」
内海先生の結論は、こうである。
「必要なものは、与えてはいけない。与えると狂ってしまう」
具体的には、たとえば、
「糖は必要である。しかし、与えると狂う」
「ドーパミンは必要である。しかし、与えると狂う」という具合である。
もっと言えば、やや抽象的な話になるが、
「愛は必要である。しかし、与えると狂う」
外から何かを求めている限りは、先生のいわゆる”クレクレ君”であることから逃れられない。依存を脱して、真に自立することだ。
「筋肉は破壊により、一層強さを増す。同様に、心も逆境に揉まれてこそ、強くなる。
逆に、与えることは、堕落を招く。
病院でもそうなんだ。老人はできるだけ早く退院させないといけない。はたが世話を焼いては、自分で何もできなくなって、衰弱に拍車がかかるだろう。
だから勤務医時代、私はできるだけ早く患者を病院から追い払おうとしていた。しかし患者は私を恨む。何て冷たい医者なんだ、と。まったく何もわかっていない。『死ね』と思う。
同様に、サプリは人を弱くする。もちろん、私も臨床で使うことはある。しかし、メガビタミン療法のように多くの種類のサプリを長期間大量に飲ませることなど、決してしない。
私は東洋医学も実践しているが、サプリと漢方薬には似たところがある。
一般に漢方薬は、調合する生薬の種類が増えれば増えるほど、効果が減弱する。これを漢方医は『切れ味が鈍る』と表現する。逆に、ひとつの生薬だけ服用すると『切れ味が鋭い』。
要は、使い方だ。
サプリメントやプロテインなどの精製物質を無条件に礼賛する医師は、万死に値する。どれほど多くの人に毒を垂れ流していることか。心から願う。『早く死ね』と」

こう言われると、オーソモレキュラー療法を標榜して翻訳本まで出している僕としては、立つ瀬がないんだけど^^;
でも、いい刺激になる。
オーソモレキュラー療法の学会に参加して、同じような考え方の人たちと交流するのも楽しいけど、内海先生のような違う考え方の人と接するのも、物事を別の角度から見る視座を与えられるようだ。考え方が広がって、こういうのってすごくいいものだね。