8種類の異なるタイプの癌すべてで、血中コレステロールが低下している(逆に組織内部のコレステロールは増加している)ことを確認したSipersteinは、これを初期癌のスクリーニングに使えないかと考えた。
つまり、血中コレステロールが高い人は癌にかかっているはずがないし、逆に低い人に対しては「黄色信号ですよ!」と警告できるのではないか、と。
ところが現代の医療は、Sipersteinの発想と真逆の方向に突っ走っている。幸いにもコレステロールが高い人に対して、スタチン(発癌物質)を使って無理やり下げて癌体質に誘導している。こんなデタラメをしているんだから、医療費の高騰が止まらないのも当然だよね^^;
以前のブログの繰り返しになるようだけど、確認しておくと、
ある種のカビ毒(スタチンも含めて)は、LDL受容体のある細胞に対してコレステロールの流入を引き起こし、結果、血中コレステロールが低下する。
Sipersteinは癌細胞と正常細胞の比較から、次のような結論にたどり着いた。
・正常細胞では、食事由来のコレステロールを吸収すると、細胞内のリダクターゼが減少し、コレステロール産生が減少する。
・癌細胞では、食事由来のコレステロールを吸収すると、リダクターゼが増加し、細胞内のコレステロール濃度が高まる(血中コレステロールは低下する)。
・スタチンを投与した細胞では、食事由来のコレステロールを吸収すると、リダクターゼが増加し、細胞内のコレステロール濃度が高まる(血中コレステロールは低下する)。
スタチンの投与によって、正常細胞がまるで癌細胞のようにふるまう。カビ毒によって癌が生じるのだから、スタチンを投与された細胞は、いわば、”カビ毒に当たった”ような状態である。
スタチンの投与と癌の関係について、以前のブログで紹介したのは動物実験レベルの研究が多かったと思う。
それだけではなくて、大規模疫学研究(PROSPER、SEAS、Chang et al.2011(台湾の前立腺癌研究)、CARE(乳癌研究)など)でもこの関係性は示されている。
PROSPER研究では、スタチンを4年以上服用すると癌の発症率が25%増加していた。
CARE研究では、スタチン投与群のうち12人の女性が乳癌を発症した(プラセボ投与群の発癌は1人だけだった)。
Chang et al.2011では、男性のスタチン服用者では前立腺癌の発症率が有意に高かった。
なぜ、スタチンによって癌を発症するのか。これには2つの機序がある。
やはり繰り返しになるが、まとめると、
・間接的には、スタチンは細胞内のリダクターゼの増加を誘導することで、癌細胞様状態を作り出す。
・直接的には、スタチンは他の発癌性カビ毒と同様の機序(rasタンパクの機能をかく乱させる)で癌を誘導する。
癌細胞の内部ではリダクターゼの濃度が上昇しているが、これは癌の結果であり、また、原因でもある。
癌細胞はターンオーバー(代謝回転)のスピードが速くなっているから、リダクターゼが増加しているのは当然のことだ。
さらに問題を追及しよう。
なぜ、スタチンの投与でリダクターゼが増加するのか。
いよいよ核心部分である。
この問いに対する答えこそ、癌の発生メカニズムの根本である。この秘密を解明すれば、世界から癌を根絶することさえ夢物語ではない。
実は科学者は、すでにこの答えを知っている。
ノーベル賞をもらったBrownとGoldsteinはもちろん、ノーベル賞候補のEndoも知っているし、製薬会社のMerckも知っている。
しかし、この知識は科学者の頭脳にとどまっているだけで、残念ながら一般の癌治療に生かされていない。
答えはこうである。
スタチン投与によるリダクターゼの増加は、イソプレノイドの枯渇(isoprenoid starvation)によるものである。
リダクターゼの増加が、癌の単なる症状ではなく、癌の根本的な原因であるならば、イソプレノイドの投与によって細胞の癌化を防いだり、癌を正常細胞に戻すことも可能なのではないか?
この仮説を検証してみたところ、実際その通りだった。
『食事由来のイソプレノイドによるメバロン酸経路活性の抑制~癌および心血管疾患における予防的役割』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7782923
単純にコレステロールを投与しても、癌細胞の暴走は止まらない。しかし、植物性イソプレノイド(モノテルペン、セスキテルペン、カロテノイド、トコトリエノール)の投与によって、HMG-CoAレダクターゼの活性が抑制され、結果、癌を抑制することに成功した。
この知見を実用にどのように生かすことができるだろうか?何らかのサプリで癌を予防したり治療したりできるのだろうか。
このあたりについては、また稿を改めてお伝えするようにしよう。
参考
“Proof for the cancer-fungus connection”(James Yoseph)