院長ブログ

シモンチーニ

2020.1.23

イタリアの医師トゥーリオ・シモンチーニは「癌はカンジダ(Candida albicans)が原因であり、重曹(sodium bicarbonate)の投与によって治療可能である」という考えのもと、多くの癌患者を治療したという。
癌が重曹で治るとすれば、副作用の多い抗癌剤(というか、副作用で患者を死に至らしめる抗癌剤)を使う必要がなくなるわけで、極めて画期的な発見である。
しかし日本では彼の業績はほとんど知られていない。
いや正確には、知っている人は知っていて、それを広く知らしめようとするのだが、そういうことをすると当局から様々な圧力がかかる。
たとえば最近、世古口裕司氏が著書『イタリア人医師が発見したガンの新しい治療法 重曹殺菌と真・抗酸化食事療法で多くのガンは自分で治せる』を上梓し、朝日新聞の広告欄に宣伝をしたところ、各所から「医学的事実に反する」との指摘が相次ぎ、朝日新聞は以下のような謝罪に追い込まれた。
https://www.asahi.com/shimbun/release/2019/20191114.pdf
この謝罪記事は、要するに、
・シモンチーニ氏はすでに医師免許を剥奪されているのに、そういう人物の呼称に「医師」と書いた点。
・「癌は重曹で治癒する」という科学的に認められていない事柄を宣伝した点。
この二点について謝罪してるんだけど、前者はゴミくずみたいに小さい問題だし、後者のせいで謝罪するくらいなら、もう本の宣伝なんて一切できないんじゃない?
既存の考えにとらわれない新しい治療法を考案しても、頭の固い学会はそれを認めなくて、「それでは広く世に問おう」ということで本を出版する、という先生はちょくちょくいる。こういう類の本は、今後宣伝できない、ということになるのでは?
朝日新聞は、南京大虐殺とか従軍慰安婦問題とか国際的に宣伝しまくって日本の国際的地位を貶めたことについてはいまだに全然悪びれる様子もないんだよね。謝罪すべき順番というか重要度が、ぐちゃぐちゃじゃないの?^^;

検索すれば、シモンチーニ氏の業績を紹介するサイトはたくさんヒットする(ボロクソにけなすサイトも同じくらいたくさんヒットする)。
しかしそういう二次情報ではなくて、シモンチーニ氏の生の声(一次ソース)に触れるのが一番説得力がある。
英語が読める人は、シモンチーニ氏の著作”Cancer is a Fungus: A Revolution in Tumor Therapy”(『癌は真菌である~癌治療における革命』)を読むといい。

しかし値段がとんでもなく高騰している^^;需要が大きいのに当局から出版を止められているものだから、こういうことになるんだね。
でもありがたいことに、ネットの時代である。
http://getmoldtested.com/uploads/Cancer_is_a_Fungus-Tullio_Simoncini_MD_Oncologist.pdf
なんと、無料で読めてしまう。英語が読めることが前提だけど、情報は開かれているんだ。

gogle scholarで「tullio simoncini 」で検索すると、シモンチーニ氏の論文も出てきた。
http://www.artikelkanker.com/download/Cancer/CANCER%20-%20Is%20the%20Cause%20of%20Cancer%20a%20Common%20Fungus.pdf

シモンチーニ氏の方法に対して、「既存の医学で認められていない」という生産性のない批判ではなくて、真っ正面から検証すればいい。それが科学者同士のやりあい方でしょ。
と思って調べていると、こういう論文があった。
『癌の治療戦略として腫瘍の酸性度に対するアプローチ』
http://cancer.cytoluminator.com/cancer-photodynamic-therapy/Manipulating%20pH.pdf
この論文では、「癌はカンジダによって起こる」ということは一言も言っていない。ただ、癌細胞周辺では乳酸産生が亢進して酸性になっているものだから、アルカリ性の重曹を投与してはどうか、という切り口からアプローチしている。
カンジダが関与しているかどうかはともかく、治療として重曹を使うという点はシモンチーニ氏と共通している。患者の治癒こそが最優先事項だから、理屈の違いは本質じゃない。あとですり合わせていけばいい。
要約をざっと訳してみよう。

「癌の治療として、腫瘍の細胞外(あるいは細胞内)のpHに介入することは、かなりのポテンシャルを秘めている可能性がある。ほとんどの腫瘍の細胞外液は軽度の酸性である。これは腫瘍が乳酸を大量に産生するためである。
腫瘍の低酸素状態や好気的解糖は、主に低酸素誘導因子-1(HIF-1)の慢性的活性化によって引き起こされるが、これらが腫瘍酸性化の背景にある。腫瘍の酸性度は癌の進行度と相関する傾向があるが、これは、ひとつには、HIF-1が浸潤や血管新生を促進する能力を反映しているためである。
細胞外液の酸性度それ自体が癌細胞の浸潤と転移を促進し、さらに、この酸性度こそが多くの抗癌剤(軽度のアルカリ性である)に対する耐性を高め、免疫系が腫瘍を排除する働きを阻害している、ということについて、近年ますます多くのエビデンスが出てきている。
従って、腫瘍に対して細胞外液のpHを高めるアプローチは、治療戦略として充分な有用性を持ち得るものである。ネズミの実験では、重曹(炭酸水素ナトリウム)の経口投与によって腫瘍の細胞外液pHが上昇し、転移抑制と細胞毒性因子に対する反応性改善に効果があった。この治療戦略を実際の臨床現場で適用することは充分可能であると思われる。
別のアプローチとして、癌細胞のプロトンポンプを抑制する薬によっても、腫瘍の細胞外液の酸性度を緩和することが可能かもしれない。というのは、癌細胞の細胞内pHも低下することで、腫瘍の増殖を抑制し、様々な癌細胞系のアポトーシスを促進することができるからである。ヒトのメラノーマを移植したヌードマウスでは、プロトンポンプ阻害薬(エソメプラゾール)の投与により、腫瘍の成長が抑制され、生存率が高まった。
最後に、癌の好気的解糖を利用した高酸性化療法(hyperacidification therapy)の可能性について紹介しよう。これは、高血糖状態にし、さらにプロトンポンプ阻害薬(場合によってはジニトロフェノールも一緒に)も合わせて投与し癌細胞の内部を強い酸性にすることで、癌細胞を直接殺そうとする治療アプローチである。化学療法の補助的な手段として使うことも可能だろう。
プロトンポンプ阻害薬を使わない同様のアプローチとして、腫瘍の細胞外液の酸性度を極限まで高めて、そこにpH感受性のナノ分子に細胞毒性薬を詰めて、腫瘍選択的に攻撃する方法もあり得るだろう」

この論文を読んで、食物の保存技術のことを思った。
生ものを保存する、つまり、細菌による腐食から守るには、どうすればいいか。細菌の生育に適さないような極端な環境を作ってやればいい。干物(水分の完全喪失下では、菌も活動できない)、砂糖漬けあるいは塩漬け(高濃度溶液のなかでは、菌体が浸透圧を保てない)など、人間の生活の知恵は様々な保存法を編み出してきた。
上記の論文は、カンジダについて一言も言及していない。でも、極端な環境(アルカリ状態あるいは強酸性状態)にすることが、結果的には、カンジダ(=癌細胞)を叩くことにつながっている。
シモンチーニ氏の理論と全然矛盾していないところが、おもしろいね。