院長ブログ

ストロング

2020.1.22

『ストロング系チューハイに薬物依存研究の第一人者がもの申す 「違法薬物でもこんなに乱れることはありません」』
松本俊彦氏
「ストロングZEROは「危険ドラッグ」として規制した方がよいのではないか。半ば本気でそう思うことがよくあります。私の臨床経験では、500mlを3本飲むと自分を失って暴れる人が少なくありません。大抵の違法薬物でさえも、使用者はここまで乱れません。
結局あれは「お酒」というよりも、単に人工甘味料を加えたエチルアルコール=薬物なのです。そして、ジュースのような飲みやすさのせいで、ふだんお酒を飲まない人や、「自分は飲めない」と思い込んでいる人でもグイグイいけます。そうした人たちが、ビールの倍近い濃度のアルコールをビール並みかそれ以上の早いペースで摂取すればどうなるのか。ただでさえ人類最古にして最悪の薬物といわれているアルコールですが、その害を最大限に引き出す危険な摂取法です。
お酒はお酒らしい味をしているべきであり、公衆衛生的アプローチを考えれば、本来、酒税は含有されるアルコール度数の上昇に伴って傾斜すべきです。それなのに、「税収ありき」の国の二転三転する方針にメーカーが追い詰められて、確実におかしな事態を引き起こしています」
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/strong-1

僕自身酒はときどき飲むほうなので、アルコール全般を「人類最古にして最悪の薬物」と切って捨てているところには同意しかねるけど^^;、この記事にはおおむね共感できる。
僕の患者にもストロングを飲んでいる人は多い。
どれくらい飲みますか?
「寝る前に、缶チューハイ2本くらいですね」
さらっと答えるものだから、別にそれほど多くないですね、なんてスルーしちゃいそうになるけど、ここでしっかり銘柄を聞かないといけない。
缶チューハイって、ストロングですか?
「ええ、そうです。よくわかりますね」
350ミリ?
「いえ、500です」

一般のチューハイか、ストロングかで、アルコールの意味が相当に変わってくる。
まず、アルコール度数の高さ。9%どころか、12%のものまで出てきた。

もうひとつは、アルコールと人工甘味料を一緒に飲むリスク。

アセスルファムカリウムやスクラロースの毒性については以前のブログで書いたから繰り返さない。
これらは単独で摂っても有害だが、アルコールと一緒に摂取することで、毒性の相乗作用が起こる。つまり、アルコールの害と人工甘味料の害の掛け算が起こる。

たとえば、こんな研究がある。
『人工甘味料入りアルコールは、砂糖などの通常の甘味料入りアルコールよりも、胃内容排出とアルコール吸収を促進する』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16945619
「オレンジ風味のウォッカ(600ml中エタノール30g含有)で、通常のショ糖で味付けしたものを飲んだ場合と、人工甘味料で味付けしたものを飲んだ場合で比較した。
エコーで半減期(胃内容物が半分になる時間)を比較すると、人工甘味料が有意に短かった。
血中のエタノール濃度のピークと、0~180分の血中エタノール濃度のAUC(グラフ面積)は、いずれも人工甘味料群が大きかった。」

人工甘味料入りの酒は、普通の甘味料入りの酒と比べて、吸収が早いということだ。
論文の著者は「この研究結果は、学校教育で教えるなり缶のラベルに表示するなりして、人々に周知させる必要があると思います。消費者はアルコール度や飲む量を気にすることはあっても、吸収速度までは意識しないでしょうから」
しかしこの研究の出るずっと前から、酒飲みはこの事実に気付いていた。
「そう、吸収が早い。そんなことはね、学者さんがどうこう言う前に、とっくの昔からわかっている。だからこそ、じゃないか。だからこそ、ストロングを飲むんだよ。手っ取り早く酔っぱらえるからね。ストロング1本で、生ビール3本分くらいの酔い心地だね」

飲料メーカーも商売だから、売れるものを作る。
そして今、ストロング系が売れに売れている。相対的に酒税も安いし、企業側としては実においしい商品だろう。
しかし、これを飲む人の健康はどうか。高いアルコール度と人工甘味料の弊害とその相乗作用とで、相当なリスクにさらされることになる。
甘いジュースのようだから、CMのようにごくごくと飲めてしまう。
リスクを知っててなお「手っ取り早く酔いたいから飲む」という人は、自己責任で好きにすればいいけど、そういうリスクを知らない人は気の毒だね。