院長ブログ

癌とビタミンB1

2019.8.7

癌とビタミンB1(チアミン)の関係を調べた研究は多い。
ざっと列挙してみよう。
(参考『癌におけるチアミンの役割』http://cgp.iiarjournals.org/content/10/4/169.full)

・高齢者において、カロテノイド、ビタミンD、チアミン、ナイアシン、ビタミンEの摂取量は膀胱癌のリスクと負の相関がある。
・症例対照研究において、ビタミンC、βカロテン、チアミン、ナイアシンの摂取量は、胃癌の発症リスクの減少と相関していた。
・食事から摂取するリボフラビンやチアミンの量は、子宮頚部の高悪性度扁平上皮内病変の発生率と逆相関を示していた。
・アルコールの消費量が多く、かつ、レチノール、チアミン、その他抗酸化作用のある栄養素の摂取量が少ないと、大腸癌の発生率が増加した。レチノールとチアミンの癌予防作用が示された。
・食事性にビタミンCとチアミンを多く摂ることで、前立腺癌の発症リスクが減少する。
・チアミン、リボフラビン、ビタミンA、C、鉄の摂取量が少ないと、癌リスクが増大する可能性がある。
・消化器系の癌患者の微量栄養素を調べると、特に癌による体重減少が見られる患者において、血中ビタミンC濃度と赤血球内のチアミン濃度が有意に低かった。また、癌で体重減少が見られる患者では、チアミンとビタミンCの摂取量が少なかった。
・急性白血病患者では、白血球内および血中のチアミン濃度が低かった。
・乳癌および気管支癌の患者では、チアミンピロリン酸(TPP)による刺激作用が強く、チアミンの尿中排泄が多かった。これは、これらの癌患者ではチアミン欠乏になる可能性があることを示している。
・トランスケトラーゼ(グルコース代謝に必須の酵素)は、癌細胞がグルコースを使って核酸リボースを産生する際に非常に重要である。癌細胞にオキシチアミン(トランスケトラーゼの阻害作用がある)を投与すると、癌細胞の増殖が劇的に減少した。
・癌のラットにチアミンとパントテン酸を高用量に投与すると、癌の増殖が止まり、 3エトキシ2オキソブチルアルデヒド・ビス(チオセミカルバゾン;KTS)の抗腫瘍活性が高まった。逆に、KTSで処理をしたラットにチアミンを加えると、用量依存性に体重減少を防ぐことができた。

要するに、チアミンを多く摂って血中チアミン濃度が高い人では、癌の人が少ない、ということだ。
チアミン欠乏の症状として脚気が有名だが、欠乏症を防ぐ程度のぎりぎり最低限の量では、日々の健康維持には心もとない。
しっかり摂取していれば癌になりにくいことがわかっているのだから、積極的に摂取するといい。

チアミンの分子構造を修飾したものとして、ベンフォチアミンというのがある。
製薬会社にとって、天然のビタミンは特許がとれないから、天然のビタミンに無理やり修飾を加えて、それでオリジナリティを主張して特許をとる、ということがしばしばある。
ベンフォチアミンもそういう合成ビタミンのひとつだ。
合成ビタミンは、多くの場合、自然の拙い模倣に終始していて、『天然ビタミンの劣化コピー』といったあたりが関の山だ。なかには発癌性が懸念されているものさえある。
ところがベンフォチアミンは例外的で、ある点では天然のチアミン以上の効果が期待できる。
糖尿病から来る神経障害に対して、ベンフォチアミンを使ったりする(ビタメジンでは弱いんだ)。
これは特に栄養療法というわけではなくて、ちゃんと勉強している糖尿病内科の先生ならやっていることだと思う(血糖値下げる薬を出すしか能のないアホがほとんどだけど)。
なぜベンフォチアミンはチアミンよりも効くのか。
ひとつには、チアミンが水溶性であるのに対し、ベンフォチアミンは脂溶性であることが関係しているのかもしれない。

ベンフォチアミンの抗癌作用を調べた研究もある。
『白血病細胞にベンフォチアミンを投与するとパラプトーシスによる細胞死を誘導できた』
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0120709

『がんの特効薬は発見済みだ』(岡崎公彦著)を読んだ。
本の内容は一行で要約できる。
「1985年日本人研究者によりベンズアルデヒド(アーモンド、アンズ、梅、桃、ビワなどの種に含まれる成分)が癌に効くことが発見されたが、この発見は製薬利権を守るため黙殺され、ベンズアルデヒドは今なお一般臨床では用いられていない」
エッセンスとしてはこれだけ。15分で通読できる。
そもそも本として上梓するだけの意味があるのかな、っていうぐらい内容の薄い本なんだけど^^;、個人的には以下の記述に度肝を抜かれた。
この記述のためだけにでも、この本を買う価値はあった、と思った。
「三共製薬のビオタミンと東和薬品のビオトーワは、どちらも同じ構造式のビタミンB1誘導体ですが、分子構造中にベンゾイル基(ベンズアルデヒドから水素原子が一個欠落したもの)を含んでいて、内服すると消化液で加水分解を受け、ベンゾイル基が遊離して吸収され、制癌作用を発揮します。
これはどのような種類の癌にも有効です。効きにくい癌種というものはありません」
ビオタミンもビオトーワも、一般名としてはベンフォチアミンである。
これ、どういうことか分かりますか?
ごく一般的な安価な処方薬によって、癌が治る可能性がある、とういことだ。
すごい話だよね。でも難点がある。
「ビオタミンまたはビオトーワの一日一錠の内服を三週間続け、四週目ごとに四~五割増量して、最終一日につき、三十錠を服用すると、軽度の進行癌も治療可能です」
一日三十錠なんて、薬局から疑義照会が来ることは確実で、さすがに出せないなぁ^^;
そうなると保険を使う処方薬じゃなくて、結局サプリを使うってところに落ち着くんだな。
あと、この理屈で言えば、キョウニン水も抗癌剤として使えるんじゃないかな。
キョウニン水というのは、アンズの種に由来する成分から作った咳止め薬。「メジコンとかカフコデよりもよく効くから」と好んで使う呼内の先生もいる。
しかしそういう先生も、まさか抗癌作用があるとは思ってないだろうな。