院長ブログ

ビタミンCとコレステロール

2019.3.8

なぜコレステロールが高くなるのか。
「コレステロールから胆汁酸が作られる流れが滞っているせいかもしれない。そしてそれは、ビタミンC不足が原因かもしれない」という説がある。
40年以上前の古い論文だけど、紹介しよう。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1060410
『コレステロールおよび胆汁酸の代謝におけるアスコルビン酸(ビタミンC)』
要約
モルモットの潜在性慢性アスコルビン酸欠乏は、肝臓での代謝障害を引き起こし、コレステロールを異化し胆汁酸を生成するプロセスがうまくいかなくなる。
この代謝異常によって、高コレステロール血症および肝臓でのコレステロール貯留が生じ、コレステロールを排出する循環が滞ってしまう。
アスコルビン酸は、コレステロール核の7αヒドロキシル化の段階で胆汁酸を生合成する反応に関与している。
高用量のアスコルビン酸によってコレステロールから胆汁酸への移行が順調に進み、血中のコレステロールが減少する。

ビタミンCによるLDLコレステロール低下作用はメタ分析でも示されている。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2682928/
『ビタミンCサプリは血中LDLコレステロールおよび中性脂肪を減少させる〜13の無作為化比較試験(RCT)のメタ分析』というタイトル。結論だけ紹介しよう。
最低4週間、少なくとも1日500mgのビタミンCサプリを摂取することで、血中LDLコレステロールおよび中性脂肪が有意に減少した。しかし、HDLコレステロールの上昇に関しては有意差が出なかった。

メタ分析というのは、複数のRCTを総まとめにした研究で、エビデンスレベルとしては一番高いとされている。
つまり、ビタミンCのLDLコレステロール低下作用は、動物実験でもメタ分析でも示された格好で、まず間違いないと言えそうだ。
しかし実臨床ではどうですか?
コレステロール高値を見てシナールを処方する医者がいるとすれば、エビデンスに基づいたすばらしい医療で、こういう先生になら僕がかかりたいくらいだけど笑、そんな医者はまずいない。脂質異常症の診断で、スタチンを処方するに決まっている。
なぜか。
この理由は、まず一つには、医者の金儲けのため。
脂質異常症は特定疾患療養管理料が算定できるし、薬価の高いスタチンを売ることができる。慢性疾患だから、いったん患者になれば、一生通院し薬を飲み続けてくれる。病院の経営的には固定資産のようなもので、こんなありがたい上得意はない。
もう一つには、単純に医者が無知だから。
エビデンスレベルの極めて高い事柄であっても、医学部で教わらなければ、それは存在しないに等しい。よく勉強している良心的な医者が『高脂血症にはビタミンCが有効』と知って、スタチンの代わりにシナールを処方するなど、一般的ではない処方をするようになればどうなるか。彼は医局内で異端視されて、非常に肩身の狭い思いをするだろう。(僕も勤務医時代はきつかった)。
こうして患者が飲むのは、副作用のない安価なビタミンCではなく、副作用の多い高価な薬ということになる。
患者は金と健康を失う。
笑うのは医者と製薬会社だけ。
こんなデタラメが当たり前に行われているのが、今の日本の医療現場だ。
そりゃ保険診療制度が破綻の危機に瀕するわけだよなぁ。