「醜い大きな鼻を恥じて、シラノは自分の容姿にまったく自信が持てない。
しかし天賦の文才は稀有のもので、彼の感性を経て紡ぎ出された言葉は、すべてきらびやかな詩になるのだった。
彼もまた人間。美しい女ロクサーヌに人知れず恋心を抱いていた。
あるとき、ロクサーヌに呼び出されたシラノは、彼女が美男クリスチャンに恋をしていると告げられた。クリスチャンも、ロクサーヌに一目惚れをしていた。
男シラノ、嫉妬にかられて取り乱したりはしない。
やはりロクサーヌは、醜い容姿の自分には手の届かない高嶺の花なのだと、思った。
しかし同時に、愛する女の幸せを願い、この美男美女の恋を成就させてやろうと決めた。寅さんみたいやなぁ^^
ある夜、クリスチャン、ついにロクサーヌに恋心を打ち明けた。しかし彼の口からは凡庸な言葉しか出てこない。
彼女は、もっと情熱的な言葉が欲しかった。いかに自分を愛し、欲しているか、巧みに口説いて欲しかった。
彼女が幻滅を感じ始めたとき、茂みに隠れていたシラノ、クリスチャンにカンペを出す。
美しい修辞に彩られた愛の言葉に彼女は陶酔し、ついにクリスチャンに口づけを許した。
これを知ったド・ギッシュ伯爵、彼もまた密かにロクサーヌを思っていた一人。
この権力者は嫉妬に狂って、シラノとクリスチャンを戦場に送ってしまった。
戦場でもシラノはクリスチャンになり代わって、ロクサーヌに恋文を送り続けた。恋文は彼女を動かした。ロクサーヌ、危険を顧みず戦場に慰問に来た。
『私が愛しているのは、いまやあなたの美しい容姿ではありません。あなたのラブレターからにじみ出る、あなたの人間性、精神性そのものです』と彼女は語った。
ロクサーヌのこの言葉は、彼を喜ばせるどころか、打ちのめした。
好きな女の心を得たものの、それがゴーストライターのおかげだということが、潔白な彼には耐えられなかったんだな。いい男だ。
あわれ、捨て鉢のクリスチャン、前線に飛び出し戦死してしまった」
「あのさ、途中でさえぎるようだけど、何の話?」
「ロスタンの戯曲でね、『シラノ・ド・ベルジュラック』っていう。話はこの後、愛する男に死なれたロクサーヌが修道院でひっそりと暮らすようになって、」
「もういいって。長いよ」
「うん、要するに何が言いたいかっていうとね、僕は君のシラノでありたいって思うんだ。僕のルックスはパッとしない。でも、君を思う気持ちは誰にも負けないし、君の魅力を謳う詩を捧げたい」
「そういうライン、ときどき送ってくるけど、気持ち悪いからやめてくれない?」
「君の美は時とともに失われても、僕の詩の中に書き留めた君は、永遠の美をたたえている」
「どうでもいいけど、鼻毛出てるよ」
恋愛とは何か。
これは昔から哲学者や文学者が取り組んできたテーマだ。
老いも若きも、男も女も、誰しもが恋愛をする。でも恋愛遍歴は人それぞれで、各人各様の恋愛観があるだろう。
芥川龍之介が「恋愛はただ性欲の詩的表現をうけたものである」なんて言ってる。
ずいぶん寒々しいことを言うなぁって、昔は何となく反発を感じたんだけど、今思うと、やっぱり本質を突いてるとも思う。
人間には三大欲求というものがある。食欲、睡眠欲、性欲、この三つだ。
健康であるためには、この三つが過不足なく満ち足りていることが必要だ。
恋愛という心の動きは、その根源に性欲があってこそなんだけど、性欲については社会的に何となくタブー視されがちだ。
ドラマや映画の主題が恋愛であったとしても、成就した恋愛の行き着く先の領域は描かれていない。描かれても、せいぜいキスまで。そこから先は『20歳未満お断り』の封鎖線が張られているようだ。
一般的な『性』以上に、さらにタブー視されているのが、『高齢者の性』だろう。
高齢者も人間。当然、性欲がある。しかし世の中は、何となく「ないもの」として扱ってきた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/55607
この記事は「高齢夫婦間での性欲ギャップ」「高齢男性で風俗店に通う男性が増えている」といった現状を真正面から見据えていて、おもしろかった。
高齢になっても夫の性欲がそれほど衰えておらず、かつ、妻の側で比較的低下している場合、すれ違いが起こることになる。「夫の求めに答えてあげたい」という思いがある一方で、肉体的に受け入れることができない場合、妻としてはつらいだろうと思う。
そういうときには、アダプトゲン、特にロディオラを勧めたい。
https://www.jsm.jsexmed.org/article/S1743-6095(16)00555-5/abstract
『げっ歯類およびヒトにおけるストレス誘発性の性機能低下〜ロディオラ・ロゼア抽出物の臨床的有用性』というタイトルの論文。
要約をさらに噛み砕いて説明すると、
ラットに急性、慢性のストレスを与えた。すると、ラットは抑うつ状態になったりして、エッチどころではなくなって交尾の頻度が減るんだけど、そこでロディオラを含むエサを与える。すると交尾の回数が増えた、という研究。あともう一つ、性欲が低下した患者にロディオラ抽出物を1日2回、4週間にわたって与えたところ、ストレススコアが減少し性交回数も増えた、という研究。
ロディオラは男性だけでなくて女性にも効果があるよ。
他の栄養素としては、亜鉛(テストステロンの増強と、テストステロンがエストロゲンに変換されるのを防ぐために)、マグネシウム、ビタミンCあたりもオススメしたい。
恋愛というのは、心の余裕だと思う。だって、病に臥せっている人が恋愛なんてできないでしょう?誰かに恋心を抱くというのは、それだけ健康で心身に余裕があるということだ。
でも、逆に誰かに恋することで病気から立ち直るエネルギーが沸く、なんてこともあるから、人間って不思議なものだね。
あ、最後に一つ注意。
ロディオラは抗ストレス作用を通じて、性欲を回復させる働きがあるけど、惚れ薬ではないから、振り向かせたい人にこっそり盛っても効きません^^;
個人的な苦い経験で知ってるんだけど、いっぺん気持ちが離れてしまった女の子をもう一回振り向かせることは、どんな上手なラブレターを書いても無理なんだよなぁ^^;