RM(repetition maximum)というのは、ある重量を最大何回上げられるか、ということで、たとえば僕の場合、140kgのレッグプレスだと8回が限界なので、8RMということになる。
筋肉の肥大を目指すなら、繰り返せる回数は、最大5回から15回ぐらいの負荷がちょうどいいとされている。
だいたい毎日ジムに行っていて、自分の限界をちょっとずつ開拓している。
同じような時間帯に、同じマシンを使ってトレーニングしているので、自分の体調の変化の目安になる。
「今日はチェストプレス妙に重くて、いつもは15回できるところ、12回でギブアップしてしまった。きのうの二日酔いの影響だな」とか、敏感にわかる。
ジムで話すようになった人がいて、彼、会社員として働くかたわら、ジムに通って三年になるという。
見事な筋肉の鎧を身にまとっている。
三年鍛え続ければこんなふうになるのか、と思う。
トレーニングの前と後にプロテインを飲み、その他にも筋肥大に効果的なサプリメントを飲んでいるという。
「どんなサプリですか」
仕事柄、サプリにはけっこう詳しいほうだから、興味を持って聞いてみた。
彼、質問に答えていくつかのサプリを挙げたんだけど、そのなかにコーディセップス(冬虫夏草)があった。
冬虫夏草はアダプトゲンのひとつだ。
アダプトゲンとは何か。
ざっと言うと、抗ストレス作用があり、心身の働きを高め、かつ、副作用のない有用植物のことだ。
検索してもらえればわかるけど、アダプトゲン特性を備えた植物はかなりたくさんある。
「体に役に立つ植物って、要するにハーブのことじゃないの?」って思うかもしれない。
確かに、ハーブとアダプトゲン、似たような作用を示すものもあると思うけど、違うところもある。
たとえばラベンダーというハーブは、気持ちをリラックスさせる作用があるけど、集中力が要求される知的作業の能率を高めたり、運動機能や身体能力を高めたりする作用はない。
そもそもアダプトゲンの研究・開発が進んだ背景には、ストレスに強い兵士を作りたい、という軍事的な要請があった。
だから、ハーブに「牧歌的な落ち着いた」雰囲気があるとすると、アダプトゲンには「戦う男をサポートする」といった雰囲気がある。
ロディオラ、アシュワガンダ、朝鮮人参、朝鮮五味子といったアダプトゲンは、すでに僕自身飲んでいて、その効果は実感している。
ただ、アダプトゲンは漫然と長く飲み続けないで、ときどき休薬期間を作ったほうがいい。たとえば1か月飲んだら、1週間休む、とか。
そうすると感受性が鈍ることなく、効果に対して意識的であり続けることができるので。
もちろん天然の植物だから、飲み続けても特に副作用はないんだけどね。
冬虫夏草は自分で試してみたことはなかったんだけど、ジム仲間にそういうふうに勧められたものだから、自分でも購入して試してみた。
どう頑張っても10RMしかできないようなところ、案外楽に12RMできてしまって、自分でも不思議に思った。それで思い出した。「あ、そうか、今日の昼に冬虫夏草のサプリを飲んだからだ」と。
特に、飲んだタイミングがたまたま休薬期間中で、他のアダプトゲンを飲んでいなかったこともあるかもしれない。てきめんに効果を実感した。
「いや、そういうのは個人の感想でさ、科学じゃないよね」と言われれば、その通りなんだ。
プラセボ効果でレップ数が増えたのかもしれない。僕自身は冬虫夏草を昼に飲んだことも忘れてたけど、「無意識に自分に対しておまじないがかかっていたんだよ」と言われたら反論できない。
こういう反論を封じるために、EBMがあるのです。
実薬群とプラセボ群に分けて、パフォーマンスを比較すれば、批判の余地がないわけだ。
冬虫夏草にも当然エビデンスがある。たとえばこんなの。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5236007/
今日事務員から言われて、はっとした言葉がある。「先生、そんなに鍛えて、どこに行くんですか」
そう、僕はどこに向かっているのだろう。
パフォーマンスが上がったから、何だというのか。
たとえば柔道の選手が筋トレをするのは、組み合いでの力を強くしたり、体を大きくするためだろう。そう、彼にとって筋トレは手段であり、目的は試合に勝つことだ。
しかし僕の筋トレは、目的がない。何かの手段でもない。
特に行く当てもなく走り始めて、結果、すでに5カ月間走り続けているといった感じだ。
僕にも行き先は見えていない。
でもこういうのって、人生そのものみたいで、何かいいじゃないの。