アメリカの成人男性の3人に1人が何らかの心臓血管系の疾患を抱えている。
原因としては、食生活の偏りや、肥満による代謝障害が指摘されている。
治療としては、一般の病院では、バイパス手術をするとか投薬による症状のコントロールがメインだけど、栄養療法の立場としては、当然食生活の改善やサプリの投与が中心だ。
ただし、サプリメントによる悪影響も指摘されている。
「過度のカルシウムサプリメントの摂取は男性の心疾患リスクの増加に関連する。National Cancer Institute研究者グループが、50歳から71歳の男女38万8229人(Health-AARP Diet and Health Study)のデータを分析したところ、カルシウムサプリメントを、1日に1000mg超えて摂ると、心血管系疾患による死亡リスクが20%増加すると考えられるとしている。この関連性は男性にのみ認められ、女性には見られなかった。」
やみくもに「サプリを飲め」とすすめているのが栄養療法ではないからね。
飲むべきサプリ、飲んではいけないサプリ、というのがはっきりある。
カルシウムは飲んではいけないサプリの代表的なものだ。
たとえば象を見てごらん。
あんなにどでかい巨体で、骨格も当然大きくて、骨には大量のカルシウムが貯蔵されているわけだけど、彼ら、カルシウムのサプリを飲んでいるか?もちろん飲んでいない。
じゃ、何を食べているか。基本、草食動物だから、緑の葉っぱばっかり食べている。ただの葉っぱで、あの巨体を維持できているわけ。不思議だと思いませんか。
そもそも葉っぱはなぜ緑なのか。葉緑素が含まれているからで、葉緑素の主な構成要素はマグネシウムだ。これは、人間の血液のメインの構成要素はヘモグロビンで、その活性中心に鉄があるのとパラレルな関係だ。
つまり、植物の血液と人間の血液の違いは、構造の中心にマグネシウムがあるか、鉄があるかの違いだけだ。
生野菜を意識して毎日食べている人ならともかく、加工食品ばかり食べている現代人にはマグネシウムが不足しがちだから、マグネシウムをサプリメントとして補うのは理にかなっている。
鉄に関しては、鉄欠乏性貧血ででもない限り、あえてサプリでとる必要はない。というか、ケルブランの原子転換でいうなら、マグネシウムは結局体内で鉄に転換されるので、マグネシウムとっていれば貧血にならない。鉄鋼スラグみたいな粗悪な原料由来の鉄サプリ飲むくらいなら、ちょっとお高めのちゃんとしたマグネシウムサプリを使うか、料理ににがりをちょっと使うようにするといいよ。
あるいは、マンガンも鉄に転換されるとケルブランは言っているけど、これは、統合失調症者が抗精神病薬でなぜジスキネジアを発症するのか、その機序を整合的に説明するのに役立つと思う。
「統合失調症(および精神疾患罹患者)には鉄欠乏性貧血が有意に多い」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3680022/)
「抗精神病薬は代謝のプロセスで血中マンガン濃度を減少させる」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3989508/)
この二つはいろいろな研究者がすでに確認している事実だけど、ケルブランの説はこれらの事実をつなぐ橋渡しになっている。
リーマスが躁に効くメカニズムは精神医学の教科書によると「不明」とされているんだけど、これもケルブランの原子転換で話をうまく説明できる。
つまり、躁病の人も血中の鉄濃度(あるいは鉄代謝)に異常があるんだけど、リチウム(リーマス)は体内でケイ素と結合して鉄になる、とケルブランは説いている。
リーマスを飲むということは、間接的に血中鉄濃度の安定化に寄与しているわけだ。
でも、この機序を考えれば明らかなように、その過程でケイ素がどんどん消耗されているから、リーマス飲んでいる人はシリカのサプリをとるとか、スギナのお茶を飲むといいよ。
ケルブランの話をもっとしたいところだけど、きりがないから、カルシウムの話に戻る。
人間は、腸管から必要なカルシウムを吸収し、体の中で不要になったカルシウムは尿から排出してバランスをとっているわけだけど、一般的に、加齢にともなって、体内にはカルシウムがたまりがちになる。
骨粗鬆症になっている人というのは、カルシウムが不足しているのではなくて、カルシウムをきちんと骨にアンカーできていないことが根本的な病態であって、むしろこういう人の動脈内壁や関節内にはカルシウムが沈着している。
カルシウムの不足が問題なのではない。偏在が問題なのだ。
そして偏在しているところでは、まず間違いなく、炎症が起こっている。炎症のあるところ、カルシウムあり、で、カルシウムのあるところ、炎症あり、だ。
要するに、骨粗鬆症の治療とか予防のためにカルシウムをとっている人がいるけど、ああいうのはむしろ有害無益。骨の強化に役立っているどころか、炎症を助長し、活性酸素の発生を促し、動脈硬化を増悪させるだけだ。
栄養療法的な治療としては、生野菜を食べることを勧めたり、あるいはにがりとかマグネシウムのサプリを勧める。
あと、不必要に日光を避けないこと。むしろ太陽に適度に当たって肌でビタミンDを作っていれば、健全な骨を作るお助けになるよ。
治療のつもりでやっていることが、実は体に悪いことだった、って、精神的にダメージ、でかくないですか。
途中で気付いて引き返せればまだしもマシだけど、全然気付かないで、体にいいことをやっていると信じて、そのまま突っ走ってお亡くなり、という悲劇が、この世界からちょっとでも減ればいいんだけどね。
僕の母は大腸癌の診断を受けて、手術と抗癌剤こそが治療への道、と信じて突っ走り、どこか、この世ではないところに消えてしまいました。
何よりやりきれないのは、母が大腸癌の診断を受けたとき、僕はすでに医者だったということだ。
「医者でありながら、他ならぬ自分の母を説得できず、正しい治療の道へ導けなかった」
医者である限り僕は、この後悔をずっと心の隅に抱えて生きていくことになるだろう。
そして、縁あって僕のクリニックに来られた患者には、同じ不幸な目にあわせまい、と思っている。