院長ブログ

水虫

2018.7.14

ごうちゃんは僕のビジネスパートナーで、なおかつ、患者でもあり、僕の友人でもあるんだけど、そのごうちゃん、最近、水虫を発症した。
「ほら、これ、見て。ここの部分、痛いようなかゆいような感じやねん」
なるほど、皮膚科の診察を待つまでもなく、誰の目から見ても文句なしに、水虫だ。
「どっち路線で治したい?」と一応聞いてみた。
抗真菌薬を使う一般的な治療でいきたいか、それとも、そうじゃない方針をご希望か、という言外の意味は当然ごうちゃんにも伝わって、
「うーん、治るならどっちでもいいけど、抗生剤使いたいって言ったら、また副作用がどうのこうのとか言うんでしょ」
「まあね、確かに笑。でもあり得る副作用の説明は、医者の義務やからね」

水虫に対しては、ニンニクが著効する。もう、抗生剤の存在意義が大気圏外に吹き飛んでしまうぐらい、明らかに効く。
何年間も皮膚科に通い続け、処方される抗真菌薬を律義に塗り続け、それでも全く治らなかった人が、ニンニクのすりおろしを患部に当てたら一発で治ってしまった、という話がある。
ニンニクを使う、などというと、民間療法丸出しやな、と妙に小ばかにしたような反応が返ってくることがあるけど、こればっかりは効くんだから仕方ない。
というか、ニンニクの抗菌作用については、もはや民間療法というレベルではなくて、科学エビデンスとしては5000以上の文献がある。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=garlic)

ニンニクは何も水虫だけに効くわけじゃない。細菌、真菌どちらの感染症にも効く。驚くべきことに、薬剤耐性菌にも効く。
ペニシリンをはじめとした抗生剤の開発の歴史は、薬剤耐性菌の出現の歴史でもあって、両者の関係はいたちごっこそのもので、泥沼の様相を呈した戦争のようだ。
人間がその叡智でどんなに優れた抗菌薬を開発しようとも、細菌のほうではその盲点をついて見事に適応を成し遂げる。
製薬会社のほうでもこの戦争にうんざりしていて、新たな抗生剤の開発にはもはや消極的だ。
巨額の開発費をつぎ込んで新薬を開発したところで、結局薬剤耐性を備えた菌が出現することは見え透いている。
同じ巨費を投じて新薬を作るのなら、高血圧や糖尿病の開発費に回したほうがまだしもリターンが見込める、と彼らは考えているわけだ。
彼ら、ボランティア団体じゃなくて営利企業なんだから、当然の発想だよね。

というか、もっと本当のことを言うと、この抗生剤VS耐性菌の戦争って、実は終わらせようと思えば、すぐにでも終わる戦争なんだ。
ニンニク。この一撃で、メチシリン耐性ブドウ球菌もバンコマイシン耐性腸球菌も、みんな死滅する。
人間は何千年も前からこのニンニクの抗菌作用を知っていて、生活の中で利用してきた。そして何千年も利用してきたにもかかわらず、細菌のほうではニンニクの抗菌作用に対する耐性など、生じることがなかった。
だから、今、病院現場で薬剤耐性菌の出現が問題になっているのなら、解決策は簡単。
ニンニクから抽出したエキスを抗菌薬として大量生産し、臨床で使えばいい。解決策は未知なる化学式のなかにあるんじゃない。スーパーの野菜コーナーに並んでいるニンニクの中にあるんだ。

でも、ひとつ大きな問題がある。
天然の生薬由来の成分では、製薬会社は特許をとることができないんだな。
やはり、彼らは営利企業であって、目的は人命救助ではなくてお金儲けなわけだから、ニンニクで戦争が終わってしまうとなっては、抗菌薬が売れなくなって、おまんまの食い扶持がひとつ減ってしまう。
サラリーマン経験のある人なら、企業のこういう隠蔽体質はよくわかると思う。
製薬会社だけじゃない。どこの会社だって、自分の首を絞めるようなことはしないよね。

ニンニクを使ったら、ごうちゃんの水虫はすぐに治った。
治ったんだから、もう万々歳、これにて一件落着、でいいんだけど、僕はおせっかいだから、ついでにひとこと言ってしまう。
「ごうちゃん、最近太りすぎやで。暴飲暴食しまくってるでしょ。
過食すると、血中の栄養分も過剰になって、白血球がその処理に追われて、ばくばく貪食する。で、肝心の細菌感染症に対しては、白血球、腹いっぱいなもんやから、ちゃんと免疫機能が発揮できない。
だからね、水虫が治ったのはいいことやけど、もっと本質は、食生活の改善やで。免疫機能がちゃんとしてる人は、そもそも水虫にかからへんよ」
「うん、わかったわかった。じゃ、あつし、これからラーメンでも一緒にいこか。水虫治してくれたし、大盛、おごるで」
「お前絶対わかってへんやろ笑」