認知症には、アルツハイマー、レビー、脳血管性、ピックなどいくつかの種類がありますが、あえて断言しますけれども、これらは皆、栄養療法で治ります。
ただし、受け身の姿勢ではダメで、本人が努力してもらうことも必要です。
だから、症状が進んで末期になって、家族の顔もわからない、寝たきりの糞尿垂れ流し、という状態になって、本人が治療意欲を持ち得ないようでは、正直回復は難しいです。
でも初期ならば、治ります。
認知症のタイプによって若干治療法は違いますが、どのタイプにも共通して有効なのは、糖質制限です。
「甘いものは大の苦手で、お菓子の類はまったく食べません」という認知症患者を僕は見たことがない。
食生活を聞けば、皆、菓子パンとかケーキとか、よく食べている。
脳機能の低下を防ぎたいなら、甘いものは極力控えましょうね、と指導すると、
「でも、先生。甘いものは脳の唯一の栄養って、この前テレビでやってましたよ。
糖がなかったら頭が働かなくなって、ますます認知症が進むんじゃないですか」
と、患者のご家族が質問する。
マスコミの刷り込みは強烈だ。
砂糖菓子を売りたい大企業がそういうテレビ番組にどれほど巨額の宣伝費をついやしていることか。
そうした宣伝が見事に功を奏して、砂糖中毒患者の大群を作り出し、そのごく一部が、こうして僕の目の前に現れる。
僕は自分の仕事の半分は、この「洗脳」を解除し、栄養の重要性を新たに吹き込むことだと思っている。
だから、しっかり説明する。
なぜ、糖質がよくないのか。どのような機序で認知症を引き起こすのか。
患者とご家族にきちんと理解してもらう。
アルツハイマー病患者の脳内にはアミロイドベータ(Aβ)が蓄積しているが、インスリン分解酵素はこのAβの分解酵素でもあるため、インスリンの分泌を極力減らすことによって、インスリン分解酵素が節約され、その分、Aβの分解が進むんだ、ということを、極力簡単な言葉で説明する。
で、1ヶ月後。
「前の診察のとき、先生がケーキはダメだっていうんでね、まんじゅうで我慢してます。日本の伝統の和菓子なんでね。まぁ害は多少マシだろうと」
僕の説明がわからないのではなく、わかりたくないんだろうな、と思う。
わかってしまったら、砂糖菓子の喜びにふける最高の時間がなくなってしまう。
甘いものを食べられないような味気ない人生なんて、とても考えられない。
私のささやかな喜びを奪わないでくれ。
そういう気持ちなんだと思う。
砂糖の魔力は、本当に麻薬だよ。
「甘いものはやめたくない。でも、認知症はどうにかして欲しい」
こういう二律背反を突きつけられて、さて、どうしたものか、と悩む。
臨床現場ではつきものの悩みなんだな。
黙ってアリセプト出して、一丁あがり、みたいなスタイルなら、こんなに悩まなくてもいいんだけどね。
ちなみに、アリセプト(抗認知症薬)は副作用ばかりでまったく効かないということで、フランスでは今年の8月1日以降、保険適用中止になるよ。
http://solidarites-sante.gouv.fr/actualites/presse/communiques-de-presse/article/l-interet-therapeutique-des-medicaments-de-la-maladie-d-alzheimer-n-est-pas
日本はありがたがって使い続けてるけど、いつまでこんな茶番が続くことやら。
甘いものの断ちがたさは、認知症患者に限らなくて、誰しもがそうだと思う。
糖尿病という、その病名に「糖が悪者」ってデカデカと書いてある病気になってさえ、やめられない。
「蜂蜜ならオッケーって聞いた」「黒砂糖ならいいだろう」「メープルシロップは血糖の上昇がゆるやからしい」あの手この手で甘さの喜びを得ようとする。
そもそも自分が中毒だって自覚、ありますか。
一般には糖質が原因とは言われていない病気でも、実は背景には糖質の過剰摂取がある病気は無数にある。
しかし、「糖質はやめてください」と言われて、「はいわかりました」とあっさりやめられるぐらいなら、世の中にこんなにたくさんの病気は存在しないだろう。
病気の多さ、治りにくさは、つまり、糖質のやめにくさのことだ、とあえて言い切ってしまってもいいぐらいだと思う。
だからこそ、栄養療法をオススメしたいんだな。
栄養療法には甘いもの欲求を抑える対策がちゃんとある。
まず、患者本人の治療意欲がないとダメだけど、そこに適切な栄養を補うことで、甘いものが自然と欲しくなくなります。
偉そうにいろいろ言ったけど、実は僕自身、糖質依存症だったから、患者の気持ちはすごくわかるんだよね。