院長ブログ

子宮頸癌ワクチン

2019.11.18

国民の知る権利に奉仕するのがマスコミの務めだけど、同時にマスコミは収益構造上、スポンサーの意向に逆らえない弱みもある。
そのせいで、国民が知っておくべき事柄が報道されないということは、ざらにある。
しかしときどき週刊誌が、テレビや新聞などの大手メディアには絶対報道できない問題に対して、ズバリと切り込んだりする。
たとえば以下のような記事。
『現役医師20人に聞いた”患者には出すけど、医者が飲まないクスリ”』(週刊現代)
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/42507
『なぜ、医者は自分では受けない治療を施すのか』(PRESIDENT)
https://president.jp/articles/-/15153

製薬業界を敵に回すようなこんな記事を、よく書けたものだ。マスコミはこうでないといけない。
週刊誌も企業からの広告収入に依存している部分は大きいはずだけど、新聞・テレビよりは自由度が高いようだ。
近年、新聞の購読者数、テレビの視聴率が落ち続けている。
インターネットやSNSの発達の影響はもちろん大きいだろうが、国民がテレビや新聞のウソを見抜き始めているというのもあるだろう。
賢い人はすでにテレビの言うことは話半分に聞いていて、ネットにある真相のほうに耳を傾ける。
もちろんネット上の情報も玉石混交だが、かつて「情報の絶対王者」として君臨したテレビがその地位から転落したのは間違いない。

上記の記事は、いずれも現場の医師の声である。
そう、医者は、わかっている。
現場を見ていれば、自分のやっている治療が本当に患者のためになっているかどうか、わかる。
患者が救われていれば万々歳。すばらしいことだ。胸を張っていい。
しかし、経過を見ながら「この治療は、有害無益。患者にはむしろデメリットになっている」と気付いたらどうするか?
良心の呵責に耐えかね、その治療法が有害であることを学会に告発する?
まさか。そんな医者はほとんどいない。
医者も商売人。建前と本音を器用に使い分けて、毒のような薬を平気で処方し続ける。
「患者には出すけど自分は飲まない薬」、「患者にはやっても自分は受けない治療」そんなデタラメは、医療現場に山ほどある。

そう、医者は二枚舌なんだ。
信じられないって?
よろしい。そういう方のために、医者のダブルスタンダードを実証するこんな研究を供覧しましょう。
『日本における産婦人科医の娘のHPVワクチン接種について』
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26155971

子宮頸癌ワクチン(HPVワクチン)が日本で定期接種されるようになったのが、2013年3月から。
しかしその後、ワクチン接種後の副作用の報告が全国で相次ぎ、なんと定期接種開始からわずか3か月後の6月には、接種勧奨の取り消しとなった。
被害者たちの動きは早く、2013年3月には「全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会」が結成され、マスコミもこれを報じた。
つまり、2013年の報道以降、HPVワクチンの危険性は一般人にさえ知れわたることになった。

一方、こうしたマスコミ報道にかかわらず、日本産科婦人科学会の立場は一貫している。
『子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために』(公益社団法人日本産科婦人科学会)
http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
このページをざっくりまとめると、
「子宮頸癌予防効果は94%と高い。なるほど、副作用の報告はあるが救済措置制度もある。我々は科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要と考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求めていきたいと考えている」
では、日本産科婦人科学会を構成する個々の先生方は、どのように考えているのだろうか。
2013年6月以降、HPVワクチンの接種は勧奨からはずれたものの、希望すれば受けることはもちろん可能だ。
日本産科婦人科学会は子宮頸癌予防のワクチンの有効性を信じ、何とか勧奨接種の再開を希望しているのだから、当然その構成員も、自分および自分の娘に、ワクチンを打たせているに違いない。
そうでしょう?
まさか、学会のスタンスに内心疑問があって自分の娘にワクチンを受けさせていない、なんていうダブルスタンダードは、ないですよね?

このあたりを検証するために、産科・婦人科の先生方にアンケート調査を行った。その結果が、以下のグラフである。

この棒グラフは産科・婦人科医の娘のHPVワクチンの接種率を表している。白いバーで書かれている棒グラフは2012年の接種率。一方、黒いバーは、2014年の接種率。
2014年の6th(小学校6年生)から9th(中学3年生)でHPVワクチンを受けた割合が、2012年より有意に低下した(p = 0.012)。
どういうことか、わかりますか?
産科・婦人科の先生方の二枚舌が立証されてしまった、ということです。

寄らば大樹の陰、で、学会には所属している。学会は副作用騒動の後もワクチン接種勧奨のスタンスを崩していない。しかし自分の大事な娘には、受けさせない。
恥ずかしくないですか、そんな露骨な二枚舌。
また勧奨再開になれば、どうせ患者には遠慮なく打つんでしょ。
患者は他人だから、副作用が出ようがどうなろうが、知ったことじゃないよね。

参考:『ビタミンCによる疾病予防と治療~最新動向』(柳澤厚生氏の2019年11月10日の講演)